<資料> 1995年度全国教研アピール




「いじめ」・体罰をなくし,人間を大切にする教育をみんなですすめよう


 いつの時代でも,子どもたちは次の時代の希望の象徴です。その子どもたちがゆたかに育ち,たしかに学ぶことがますますたいへんになってきています。競争に傷つき,いじめにさいなまれ,自分探しの重荷を背負いながら,それでも,子どもたちは,いっしょうけんめいに生き,学ぼうとしています。親たちは,子どもたちの健やかな成長を願い,日々の生活に追われながらも,精一杯の愛情を子どもたちに注いでいます。教職員もまた,子どもたちの人間としての成長と発達を支えようと,昼も夜もがんばっています。

 それにもかかわらず,「いじめ」による自殺はあとをたちません。いま,すべての人々が,子どもたちと教育をめぐる状況に心をいため,希望あふれる学校をつくることへの思いをつのらせています。

 子どもたちは,競争を強いられ,ゆとりある生活と,健やかな成長を奪われています。子どもたちは,「いじめ・いじめられ」を通して,自分たちの苦しさを表しています。そういうなかにあっても,父母や教職員のていねいな子どもたちとの対話やはたらきかけは,子どもたちの人間どうしの関係をつくりあげ,子どもたちに困難を克服していく力をはぐくんでいます。

 しかし,子どもたちとのかかわりを確かにもてないほど,教職員は多忙です。教職員は本当に疲れています。政府の政策によって学校は「生徒指導」「指定研究」などで競わされ,教員も「学級経営」「部活指導」「進路指導」などで競わされているからです。そのための管理統制が強められているからです,そのもとで子どもたちとの人間的なふれあいはみおとされ,「子どものための学校」ではなく「学校のための子ども」という逆さまの事態さえ引き起こされています。ここに,「いじめ」や登校拒否の背景の一つがあります。「いじめ」をなくするためにも,子どもと教育にかかわる時間の確保はどうしても必要です。そのための勤務条件や教育条件の改善を教職員・父母・国民がいっしよにすすめましょう。

  教職員のみなさん

 子どもたちと教育に直接責任をもつ教職員として,子どもたちや父母の思いをまっすぐに受けとめましょう。一人ひとりの子どもが人間として大切にされる教育をつくるために、いま、何ができるか,何をしなければならないのか、あらためて確かめあいましょう。

 いそがしさのなかで,体罰などの管理主義的な「指導」があっても「しかたがない」というあきらめがないでしょうか。殴る,蹴るということはなくても人間としての誇りを傷つけ,「いうことをきかせる」というような「指導」になっていないでしょうか。いまあらためて,子どもたちは人間としての権利の主体であるという視点から子どもたちと学校のことを,率直にみんなで話しあいましょう。暴力や「いじめ」のない学校をつくるために,一人からでも発言し行動する勇気をみんなで確かめあいましょう。

  父母・国民のみなさん

 「学校も教師も何もわかってくれない」とあきらめてはいませんか。「子どもがいじめられてはいないか」など,子育てのことで一人で悩んではいませんか。いまこそ,この国のすみずみに,子どもたちの幸せのための連帯をひろげましょう。もう始まっているこうした流れをもっとゆたかなものに育てましょう。

 憲法は教育を受ける権利を,子どもたちを含むすべての国民に保障し,教育基本法は,その教育が「人格の完成」を目的にしてなされなければならないど定めています。子どもたちと教育とを競争の原理から解きはなち,子どもたちの成長をしっかり支える教育の原理に取りもどすための発言と行動を強めましょう。教育に参加し,子どもたちの幸せのための学校づくりを教職員と手をたずさえてすすめましょう。

 1995年度教育研究全国集会に参加した私たちは,子どもたちのいのちが輝き,希望に満ちあふれた学校をつくるために,父母・国民と教職員が力をあわせることをよびかけます。

1996年1月17日

1995年度教育研究全国集会(全日本教職員組合)






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