認知症予防の情報(2010年~2011年)


2011年
血糖管理がよいと認知症を少なくできるかもしれない(アメリカ)
降圧剤がアルツハイマー病の発症リスクを減らす(イギリス)
全身性の感染や炎症で認知機能が低下したり行動問題を起こす(アメリカ)
政府の認知症予防活動(シンガポール)
インフルエンザワクチンがアルツハイマー病の原因?(アメリカ)
自分の健康状態が悪いとみる人ほど認知症になりやすい(フランス)
「認知症「高崎式」で防ぐ 市歌体操や ウオーキング群大と実践、効果」(日本)
「第1回日本認知症予防学会開催」(日本 )
ビタミンB12欠乏は認知機能を低下させる(アメリカ)
「アルツハイマー病 修正可能な7つの危険因子の是正で大きな予防効果」(アメリカ)
増加するアルツハイマー病にできることは予防だけ?(アメリカ)
食塩を多く取り運動が少ないと認知機能が低下(カナダ)
中等量の飲酒は認知症を防ぎ、多量の飲酒は認知症を促す(アメリカ)
「認知機能低下の予防 ウオーキングが有効」(日本)
心房細動は認知症の危険因子(アメリカ)
中年期の高血圧などは血管性危険因子は高年期の認知機能低下の危険因子(アメリカ)
若い時に親を失った人はアルツハイマー病になりやすい(アメリカ)
運動はやはり認知機能低下を防ぐ(カナダ・フランス)
アルツハイマー病予防のニュースをどう理解するか(アメリカ)
身体的健康は認知症の予防因子(カナダ)
高齢者の認知機能を低下させる怖れのある薬(イギリス)
健康的な食事はアルツハイマー病を防ぐかもしれない(アメリカ)
アフリカ系カリビアンに認知症が多い(イギリス)

アルツハイマー病の予防因子についての証拠は乏しい(アメリカ)
中年期の肥満は高齢期の認知症の危険因子(スウェーデン)
社会的活動は認知機能の低下を少なくする(アメリカ)
ストレスや不安は認知症の発症要因(アメリカ)
高血圧などあるとアルツハイマー病になりやすい、治療するとなりにくい(中国)
適量の飲酒は認知症を減らす(ドイツ)
「認知症は予防できるか 人と交流で趣味を持つのも効果的」 (日本)
不適切なICU治療で認知機能障害(アメリカ)
聴力障害は認知症の危険因子(アメリカ)
メタボリックシンドロームの高齢者は認知機能が低下(フランス)
ホルモン療法は中年期では認知症の保護因子に、高年期では危険因子(アメリカ)
有酸素歩行運動で海馬が増大し一部の記憶機能が改善(アメリカ)
「歯がない人は認知症のリスクが最大1.9倍に―厚労省研究班」(日本)
抗酸化剤は有効なのか?(アメリカ)
記憶トレーニングの効果は認められない(イギリス)
認知症のリスクがわかるネットのテスト(アメリカ)
社会的要因で認知機能が低下(台湾)
2010年
殺虫剤は認知症の危険因子かもしれない(フランス)
職場の磁場は認知症の危険因子になりうる(スウェーデン)
アルツハイマー病になる人とならない人がいる理由(アメリカ)
アルツハイマー病のスクリーニング検査は意味があるか(カナダ)
喫煙者は認知症に2倍なりやすい(アメリカ)
がん既往のある人は記憶障害を起こしやすい(アメリカ)
「【日本高血圧学会リポート】久山町研究 VD発症は中年期の高血圧がリスクに」(日本)
ビタミンBサプリメントがアルツハイマー病の発症を遅らせるかもしれない(イギリス)
中年期女性のストレスは認知症の危険因子らしい(スウェーデン)
2型糖尿病はアルツハイマー病の危険因子(日本)
中等量のワインは認知機能によい(ノルウエー)
ライフスタイルを変えると認知症の発症を21%抑える(フランス)
歯周炎の人は認知機能が低下しやすい(アメリカ)
ビタミンEを食事で多く摂ると認知症になりにくい(オランダ)
教育は認知症症状を抑える(イギリス)
運動、茶、ビタミンDが認知症を予防するらしい(アメリカ)
イチョウエキスがアルツハイマー病予防に有効(ドイツ)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の人は認知症に2倍なりやすい(アメリカ)
コーヒーはアルツハイマー病の進行を遅らせるかもしれない(ポルトガル)
認知症の配偶者を介護している配偶者は認知症になりやすい(アメリカ)
アルツハイマー病の予防の根拠の程度を分析(アメリカ)
EPA も DHAの脳に効果認めず(イギリス
脳トレから得るものはない(イギリス)
食事が認知症のリスクを決めるようだ(アメリカ)
心房細動は認知症の危険因子(アメリカ)
アルツハイマー病予防に関する新たな研究(アメリカ)

人生の目的意識が高いとアルツハイマー病になりにくい(アメリカ)
「DHA・EPAが認知機能低下を抑制 島根大などによる研究グループが発表」(日経ヘルス)
重症疾患で入院した高齢者は認知症になりやすい(アメリカ)
治療を受けていない視力低下の高齢者は認知症になりやすい(アメリカ)
アルツハイマー病の少ないインドの村(インド)
認知症の発症を減らす方法(イギリス)
「DHAの「認知症予防効果」を実証 」(日本
喫煙は、やはりアルツハイマー病の危険因子(アメリカ)
運動は身体だけでなく脳にもよい(カナダ・ドイツ)
受動喫煙は頸動脈狭窄があると認知症の危険因子(アメリカ)
ブルーベリーが記憶を改善(アメリカ)
降圧剤が認知症の発症と進行を防ぐ(アメリカ)
ビタミンD欠乏は認知症になりやすい(アメリカ)


2011年


血糖管理がよいと認知症を少なくできるかもしれない(11月14日/アメリカ)
アメリカには認知症の人が約680万人います。
健康問題で最も気掛かりなことは、2型糖尿病と認知症です。この二つは共通の生物学的要因を持っており、偶然の一致ではないと考えらえるようになっています。
実際、私たちが既に適切な血糖管理をすることによって、アルツハイマー病など認知症の人を減らし、加齢に伴う通常の認知機能の低下も少なくなると信じられています。
アルツハイマー病協会カリフォルニアサウスランド支部.Alzheimer's Association California Southlandのデブラ・チェリーDebra Cherry副会長(写真左上)は「心疾患や脳血管障害の進行過程で重要な特徴が脳にも影響します。糖尿病のリスクを減らすものは認知障害のリスクをも減らすのです」と話しています。
アメリカには約680万人の認知症の人がいて、そのうちアルツハイマー病は最も多い病気で540万人います。アルツハイマー病協会Alzheimer’s Associationによると、その数は2040年までに2倍になると推測されています。アルツハイマー病協会の原因は不明ですが、脳βアミロイドという蛋白が脳に蓄積することは分かっていますが、進行を遅くしたり止めたりする治療はありません。
アメリカの成人と小児と合わせて、その8%以上が1型か2型の糖尿病で、肥満が増えていなかで今後、増加すると予測されています。糖尿病は、身体でインスリンが十分に産生されないか、血流から糖を移行させるためにインスリンを適切に利用できない状態のことです。高い血糖のままでは、組織が破壊され、心疾患、腎不全、神経障害などの合併症が起こります。
1型糖尿病は、通常、小児期に診断され、インスリンが不可欠ですが、2型糖尿病は、典型的には成人期に体重増加に伴うものです。両方とも高年期の認知機能に影響することがあります。
糖尿病と認知症の関係について日本での大規模研究の結果から、糖尿病の人はアルツハイマー病に2倍なりやすいことが今年の9月に報告され注目されました。この報告(訳注)はアメリカの神経学雑誌Neurologyに掲載されましたが、血糖管理が悪い人は35%多く認知症になりやすいことも認められました。
オランダのユトレヒト大学Utrecht Universityの神経科医のジールト・ジャン・ビーセッルズGeert Jan Biessels医師(写真左下)は次のように述べています。
「認知症の10例に1例は糖尿病に関係すると推測されます。糖尿病から認知症への経過は記憶障害などの症状が現れる数10年前から始まっているいようです。糖尿病と関連危険因子―高血圧、高コレステロール血症―を治療することで、多くの認知症の予防に役立つでしょう」
アルツハイマー病の効果的な治療を見つけようとしたここ数年のがっかりする失敗から、糖尿病や関連疾患―心疾患や脳血管障害―との関連に特別な関心を向けるようになったのです。
退役軍人グレートロサンゼルス医療システムVA Greater Los Angeles Healthcare Systemの老年精神科のデニズ・フェイルDenise G. Feil医師は「認知障害や認知症になる前に介入する方法を見つけたい」と話しています。
研究者は、血管障害と血糖管理との二つの方向で研究しています。
血管性疾患が認知症になるということは、この間知られてきました。血流を減少させ細胞を死滅させる微小脳血管障害という形での脳の血管障害が、いわゆる血管性認知症です。糖尿病はこのタイプの脳障害を促進させる疾患の一つなのです。
アルツハイマー病は別ですが、糖尿病がその過程でなんらかの役割を果たしているようです。ある研究者たちは、不適切な血糖管理によって身体に形成されたアミロイドを除去しにくくなると考えています。他の研究者たちは、血糖が高いと身体内のある種の毒素―酸化ストレス―が作られ、そこで有害なフリーラディカル分子が組織を損傷するのではと疑っています。
チェリー副会長は「フリーラディカルはどのような分子とも化学的反応を起こす状態にあり、その結果炎症が起るのです。少なくともある程度、アミロイド斑はこの炎症の結果かもしれない」と述べています。
また遺伝子をみると、アルツハイマー病と糖尿病の二つの病気が関連あることが示唆されています。ApoE4として知られる突然変異を持っているとアルツハイマー病にも糖尿病になりやすいのです。
Seattle Times November 14, 2011 Managing blood sugar well may stave off dementia)
訳注:論文”Glucose tolerance status and risk of dementia in the community The Hisayama Study” Neurology September 20, 2011 77:1126-1134
編者:糖尿病と認知症との関係について現在の医学的所見に基づいたわかりやすいLos Angeles Timesから転載記事だ。せっかく久山研究が紹介されているのに日本人医師の名前が載らない。
ところでアメリカのアルツハイマー病協会は、アルツハイマー病の人は540万人と言ってきたが、認知症の人が680万人という数値の根拠はU. S. Congress Office of Technology Assessmentの報告書らしいが、その報告書がネットで見つからない。それにしても大変な数だ。


降圧剤がアルツハイマー病の発症リスクを減らす(10月19日/イギリス)
ブリストルのイギリスアルツハイマー病研究Alzheimer's Research UKのネットワークの指導的な薬学者であるパトリック・ケヘーPatrick Kehoe氏(写真左上)らのグループは、降圧剤―アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤(略称:ARB)(日本の商品名例:ブロプレス)とアンジオテンシン転換酵素阻害剤(略称:ACE-I)(同:カプトプリル)―による治療とアルツハイマー病、脳血管性認知症などの認知症の発症の関係について調べました。
イギリスの一般医(GP)による医療に関する1000万人分ほどのデータのうち4万人ほどの降圧剤が処方された記録の人について匿名で追跡調査しました。このうち1997年から2008年の間に60歳以上でアルツハイマー病(5797人)、血管性認知症(2186人)および原因疾患不明の認知症(1214人)と診断されたグループでそれぞれの認知症についてARBろACE-Iの2種類の降圧剤およびその他の降圧剤の処方が少なくとも6カ月間処方されたグループと、このグループと喫煙歴、社会経済的状態、受診率、血圧については同じ条件として診断された日の前の8年間で相関関係を分析しました。その結果、アルツハイマー病、血管性認知症、その他の認知症と診断されたグループは処方されなかったグループより2種類の降圧剤の処方が少ないこと、アルツハイマー病に限ってはARBの方がACE-より逆相関関係が強いこと、またARBについてはアルツハイマー病の方が脳血管性認知症より逆相関関係が強いことを認めました。この結果からより積極的な無作為対照の臨床試験が必要であるとしています。
この研究論文はJournal of Alzheimer's Diseaseの2011年10月号(Vol.26 Nr.4)に掲載されました。
この結果についてケヘー医師は次のように述べています。
「これらの2種類の薬の効果がでるのに最低どのくらいの期間が必要かは分かりませんが、投与量が多いほど予防の効果があるようです。大切なことは、こうした認知症の人の血圧の治療が必要であり、その治療が認知症の予防効果が生んだということです。認知症の進行を遅らせています。これらの薬は、レニン‐アンジオテンシン系とよばれる特別な生化学的経路を標的にしたもので、アンジオテンシンⅡというホルモンを阻害する効果があり、アルツハイマー病に特異的な脳のアミロイド斑を破壊する作用もあるようです。ARBは、すこし異なる作用ですが、より効果的です。次の段階として、この効果を確かめるための臨床試験です。今回の研究は後ろ向き研究であり、結果に影響する別な要因があるかもしれないので試験が必要です。この臨床試験は、これらの薬が軽度認知障害から完全な認知症になるのを防ぐことができるかどうかを調べるものです。さらに新たにアルツハイマー病と診断された人でその進行を防ぐかを調べることにもなるでしょう」
血圧治療ガイドラインでは、55歳までの患者にこの2種類の降圧剤が処方されるべきとされ、これより高齢の人は旧来の降圧剤がより効果的とされています。
過去10年間、新しい降圧剤の処方が増え、とくにACE-Iは安価になりベータブロッカーの降圧剤が効果が少ないと分かってきてためでもあります。
王立ロンドンカレッジImperial College Londonの高血圧の世界的専門家であるピーター・シヴァーPeter Sever教授(写真左中)は、次のように述べています。
「今回の研究でとてもよい研究で堅実な発見です。しかし、結果に影響を与えるとは知られていない因子によって間違った結果が出ているかもしれません。20年前の動物実験で、この種の降圧剤がよい結果をもたらしましたが、多くの臨床試験ではアルツハイマー病に系統的予防の証拠は見つかりませんでした」
イギリスの指導的な認知症研究団体であるイギリスアルツハイマー病研究の代表であるサイモン・リドレイSimon Ridley医師(写真左下)は次のように述べています。
「高血圧は認知症のよく知られた危険因子です。今回の研究は、ある種の降圧剤がアルツハイマー病によく影響する可能性を明らかにしました。こうした結果が、さらに臨床試験で支持されるなら重要な第一歩となるでしょう。イギリスには認知症の人が82万人以上います。新しい治療法や予防法を見つける必要性がとても重要です。しかし認知症研究は、他のよく知られた病気と比べ、研究費がとても少ないのです。もっとこの分野の研究に投資することが不可欠です」
dailymail 19th October 2011 Blood pressure drugs can lower Alzheimer's risk by up to 50 per centおよび論文:Associations of Anti-Hypertensive Treatments with Alzheimer’s Disease, Vascular Dementia, and Other Dementias
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編者:高血圧の治療が認知症の予防になり、降圧剤のなかでレニンアンジオテンシン系の降圧剤がより有効だととするこれまでの研究は少なくない。今回の論文はそれを補強している。


全身性の感染や炎症で認知機能が低下したり行動問題を起こす(10月18日/アメリカ)
怒り、過敏、鈍感、認知機能の低下などは、認知症に関連した症状と容易に理解できますが、もしよくなるはずの状態が原因としたらどうでしょう。
数年前、私は母がどのように見当識障害になりどのように午前中ぼんやりしているかを書きました。その抜粋が以下のとおりです。
「母にとっても私にとっても悪い週でした。母が尿路感染症になったのです。今年で4回目です。そのたびにアルツハイマー病が悪化し、今回が最悪です。母は完全に見当識障害になり、月曜日の朝、母が『ボビー、ボビー、ボビー』と叫んでいる声で目をさましました。母は階下の私の部屋に来て、夜間のベッドはあるのかと聞くのです。その時は朝の6時45分でした。今は朝だと説明しようとしましたがブツブツ言い始め、ベッドがどのように無いのかを話し始めました。先週、母は感染症で抗生物質をのみ始めました。それまで経験したことがないように仲間はずれされていると母は話し、ある朝、どこにいるのかとたずねるのです。家に居ると話しましたが、ここが住んでいるところとたずねるのです。
この時から、私が病気になっていると感じ始め、痛みだるさを感じました。2日後、ついにストレスでまいりました。実際、このようにしてアルツハイマー病の人を介護する人がうつ状態に陥ってしまうのだろうと実感しました」
介護家族がメールなどで何度なく私に相談をしますが、こうした話の多くには感染症が関係しているのです、病院にすぐにでも行くべきでしょう。
神経学雑誌Neurologyに掲載された研究によると感染症がアルツハイマー病の人の認知機能を悪化させることもあるのです。この研究によると、感冒や尿感染などのありふれた感染症が認知機能の低下する速度を早くする脳に関連した炎症と関係があるのです。感染症になった人はならない人より認知機能の低下の速度が2倍になることを示しています。
イギリスのアルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの研究主任のスザンヌ・ソレンセンSusanne Sorensen医師(写真左下)は次のように述べています。
「重要なことは、高齢者、認知症の人、介護者が真剣に感染の治療を受けることです。アルツハイマー病の専門的な治療者もまたアルツハイマー病の人に早くて効果的な感染症治療を注意深く行う責任があります」
執筆者:ボブ・デマルコBob DeMarco氏(写真左上)は、ブログ「Alzheimer's Reading Room」の創設者であり、アルツハイマー病の人の介護者でもあり、フロリダ州に住んでいます。
alzheimersreadingroom October 18, 2011 Systemic Infection and Inflammation Leads to Cognitive Decline and Behavioral Problems in Alzheimer's Patients
参考論文
Neurology July 19, 2011 :Proinflammatory cytokines, sickness behavior, and Alzheimer disease
Neurology September 8, 2009  Systemic inflammation and disease progression in Alzheimer disease
編者:全身的な感染症がアルツハイマー病の中核症状と随伴症状とを悪化させることは経験的に理解できるが、上記の2つの研究は、譫妄としてではなく、悪化の要因であることを明らかにしている。ただし、論文は観察調査であり、感染症を治療することで症状の改善につながったとするものではない。医師ではなく介護家族の文章で、元となる医学論文は2009年9月と今年の7月に既に発表されてはいるが見逃せない内容なので紹介した。


政府の認知症予防活動(10月10日/シンガポール)
リンダ・チャウLinda Chuaさん(53歳)は、母が一度の50回も自分に電話をかける時、手当たりしだいに電話してアフガニスタンの電話番号で電話をかけたりしたので電話代の請求がとてつもない額になり、何かおかしいと思いました。
記憶テストを受けたところ認知症と診断されました。
チャウさんは「初期症状ははっきりしませんが、ふつう2年ほどではっきりするそうですが、母の場合もそうでした。でもその時には遅すぎるのです」と話しています。
政府の保健推進委員会Health Promotion Board (HPB)によると、シンガポールの60歳以上の認知症の人は現在2万人ですが、2020年までに5万3000人になると推計されています。
HPBは、昨日、認知症の発症予防を目的とした12週間のプログラムを始めました。これには精神刺激ゲーム、認知能力訓練などが含まれ、高齢者の精神能力を高めるためのものです。
このプログラムは当初の6カ月間は実施地区としてマリンパレイドMarine Parade地区の2500人の高齢者を対象として始まることになっています。この地区の5人に1人は65歳以上で、予備的調査によるこの地区では認知症の有病率が全国平均が5.2%に対して7.8%と高かったのです。
「精神向け応急セット"Mental First Aid Kit"」には、HPBのプログラムによる介護者が初期症状を知ることができる教材も含まれています。
HPBのアン・ハク・センAng Hak Seng事務局長(写真左上)は「調査地区で終わると、このプログラムはシンガポール全体に広げ、50歳以上すべての人が対象です」と話しています。
ガン・キム・ヨン保健大臣Health Minister Gan Kim Yong(写真左下)とマリキ・オスマン南東地区長South East District Mayor Maliki Osman(写真右)は、このプログラムをスタートさせましたが、マリク医師は、「介護者と高齢者の両方への支援体制があることで認知症やアルツハイマー病の精神障害の発症を社会的に管理することができる」と話しています。
チャウさんは賛同して「母は認知症になる前に社会的に活発ではありませんでした。認知症を防ぐためには精神的な刺激が必要です」と話しています。
today Oct 10, 2011 'First aid kit' to fight dementia
関連情報:シンガポールアルツハイマー病協会
編者:記事が正確であるとすれば、短絡的でおそまつな政府の認知症予防対策だ。


インフルエンザワクチンがアルツハイマー病の原因?(10月9日/アメリカ)
インフルエンザの新たな季節が始まっています。アメリカ疾病管理予防センターU.S. Center for Disease Control and Prevention (CDC)は、アメリカ人にワクチン接種を受けるように強く勧めています。
しかし、「小児青年医学雑誌Archives of Pediatric & Adolescent Medicine」の今年の2月号に掲載された最近の研究論文によると、子供のなかで若年の子供たちにとってインフルエンザワクチンは最近の2年間の流行期でインフルエンザに関連する入院や受診に何ら影響を及ぼしていないのです。
データを一見したところ生後6カ月から5年までの子供たちにとってこれらの年にワクチンが健康を守ったように見受けられますが、データを調整した後は、二つの流行期でも年齢に関してもワクチンの有意な効果は認められないのです。
さらに、グループヘルスGroup Healthの研究は、インフルエンザワクチン接種は高齢者の肺炎―インフルエンザによる合併症の最大死因―になるのを予防してはいないことを認め、インフルエンザワクチンが死亡を防ぐという利点があるのかという疑問も提示しています。インフルエンザワクチンは、1980年に高齢者の15%が受け、現在では65%に増えていますが、インフルエンザあるいは肺炎による死亡は減少していないのです。
インフルエンザワクチン接種がアルツハイマー病の原因であるとするいくつかの証拠がありますが、その最大のものはアルミニウムおよびホルムアルデヒドと水銀の混合によるものとするものです。ワクチン中の水銀が自閉症の原因であるとも理解されています。
インフルエンザワクチンのさらに別の3つの重篤な副作用は、炎症、関節炎。およびアナフィラキシーショック、および麻痺性自己免疫疾患のギランバレー症候群です。
850近い論文を査読する雑誌に発表した免疫学者で生物学者のフー・フーデンベルグHugh Fudenberg医師(写真左上)は、もし1970年から1980年の間に人が5回続けてインフルエンザワクチン接種を受けた場合、アルツハイマー病になる可能性は、ワクチンを全く受けないか、1回または2回の人より10倍高いと報告しています。
アメリカ・ケンタッキー州レキシントンに在るケンタッキイー大学University of Kentuckyの化学部長Department of Chemistryのボイド・ハーレイBoyd Haley教授(写真左下)は、水銀の毒性と脳の関係について熱心な研究を行っています。ハーレイ教授は、水銀毒性とアルツハイマー病の密接な関係があることを証明しました。カルガリー大学University of Calgaryの研究者との共同研究の論文によると、アルツハイマー病と診断するための特異的な生体指標のうち7つは、極めて少ない量の水銀を添加すうことで正常な脳組織または神経培地で産生されると報告しています。
こうした報告からインフルエンザワクチン接種がアルツハイマー病の発病に直接関係していることになるのでしょうか。まったくこのようなことはありません。しかし、この分野についてはさらに研究が必要です。ワクチンがアルツハイマー病の原因であるという証拠がない、ということは、原因では「ないという証拠」にはならないのからです。
筆者のJoseph Mercola医師(写真右)のサイト:www.mercola.com
The Canadian 09 October 2011 Flu shots linked to Alzheimer’s disease
編者:以前から言われていた水銀とアルツハイマー病との関係のむしかえし記事だが、筆者の言う通り、関係ないと思われるが、無視はできない問題としておきたい。今年のNIHのアルツハイマー病の危険因子では判定では対象外となっている。なお上記の「10倍説」の論文がネットでは見当たらない。1997年の口頭発表らしい。


自分の健康状態が悪いとみる人ほど認知症になりやすい(10月5日/フランス)
フランスの国立保健医療研究所INSERM(Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale)のクリストフ・ズリオChristophe Tzourio医師(写真)らのグループは、健康の自己評価と認知症の発症および、この関係への認知機能症状、うつ症状、心身の機能の影響について疫学調査を行いました。3Cスタディ3C Studyの参加者は、地域在住の65歳以上の8169人で、1999年から2001年の間の調査開始時に各自の健康状態について自己評価の質問をし、平均6.7年追跡を行い、この間に認知症の有無のチェックと診断を行いました。健康の自己評価を「よい」「ふつう」「悪い」の3段階の分類し、追跡期間総量の4万6990人年のなかで618人が認知症になりました。認知症の発症は、自己評価が低いほど高い傾向を認め。この傾向は、認知機能の症状が無い人、および心身機能の障害のない人でも認められました。また自己評価が低い人はアルツハイマー病と血管性認知症ともに発症が多くことも認められました。
この論文は、神経学雑誌Neurologyの2011年10月8日号に掲載されました。
この結果についてズリオ医師は「こうした関係の要因はなにかについてさらに研究が必要であるが、簡単な質問『自分の健康状態をどう思う』と聞くことで高齢者の認知症の発症の危険性に気づくきっかけになるだろう」と述べています。
WebMD Health News  Oct. 5, 2011 Poor Self-Rated Health Linked to Dementiaおよび論文Self-rated health and risk of incident dementia
編者:つかみどころのない漠然とした認知症の危険因子の疫学調査―観察試験で介入試験ではない―だが、健康状態の自己評価が低い人は認知症になりやすいという関係を診療の場に活かして、自己評価が低い要因を把握し改善することで発症を減らせるかもしれない。



「第1回日本認知症予防学会開催」(10月3日/週刊医学界新聞)
人口の高齢化に伴い認知症の患者数が増加の一途をたどり,予防・早期発見への関心が高まる中,「発症や進行の予防」という観点から認知症診療を考える日本認知症予防学会がこのたび発足。その第1回学術集会が9月9-11日,米子コンベンションセンター(米子市)にて浦上克哉会長(鳥取大)のもと開催された。「認知症の予防時代の幕明け」をテーマとした今回は,医療関係者や自治体職員など認知症予防に取り組む多職種による議論が展開された。
◇認知症の早期発見と予防を多職種で,地域社会で
学会の模様 「認知症の早期発見と予防の必要性」をテーマに講演した浦上氏は冒頭,同学会理事長の立場から学会設立の意義について言及。認知症予防の科学的データが示されてきたこと,国際的な潮流としても認知症予防への積極的な取り組みが行われつつあること,高騰する医療・介護保険の問題からも認知症予防への早急な対応が求められていることなどを挙げるとともに,同学会を「認知症診療・ケアにかかわる多職種の連携や認知症予防に携わる人材の育成などを実現する場にしていきたい」と抱負を述べた。また,認知症の早期診断の有効な方策の一つとして,嗅覚機能検査を提示。アルツハイマー型認知症患者の場合,記憶障害よりも嗅覚異常が先行して現れるという。早い段階で嗅覚に異常が生じていないかをチェックすることが,認知症の早期発見につながるとした。
招聘講演「認知症予防に向けての地域社会としての取り組み」では,原淳子氏(Shankle Clinic)が米国における認知症問題と予防の取り組みについて報告。自身がかかわるカリフォルニア州オレンジ郡での予防プログラムにおいては,認知症患者・家族を地域でサポートするためにかかりつけ医の役割が重要であることから,知識レベルに合わせた複数のセミナーや診断ガイドラインの提供,専門医とのネットワークづくりなどを通じてかかりつけ医のサポート体制を強化しているとした。
本学会においてはそのほか,画像診断の活用法や運動療法による認知機能低下抑制効果の検証,認知症による行動障害への対応など,認知症の早期発見や発症進行防止に関するさまざまな取り組みが紹介された。
週刊医学界新聞 第2947号2011年10月3日 原文のまま
関連情報:日本認知症予防学会


ビタミンB12欠乏は認知機能を低下させる(9月26日/アメリカ)
アメリカ・シカゴにあるラッシュ大学医療センター臨床栄養学科Rush University Medical Center Department of Clinical Nutritionのクリスティン・タングネイChristine Tangney准教授(写真左上)らの研究グループは、血中のビタミンB12に関連する生体指標と脳容積、脳梗塞、認知機能の関係について地域在住でシカゴ保健加齢プロジェクトChicago Health and Aging Projectに参加している高齢者121人について、血液中のビタミンB12関連の生体指標、認知機能および脳MRIによる神経心理学的検査結果との関係を平均4.6年追跡して調べました。
その結果、ビタミンB12生体指標濃度と全般的認知機能および総脳容積とが関連すること、ビタミンB12生体指標の一つマロン酸メチル濃度がエピソード記憶と認知速度の低下に関連すること、同じく生体指標のホモシスチン濃度が総脳容積の減少とに関連することを認めました。結論として、ビタミンB12に特異的な指標であるマロン酸メチルは、総脳容積を減少させることで認知機能の影響しているようです。また非特異的な指標であるホモチルチンの認知機能への影響は、脳白質の超強度―微小脳梗塞の疑い―および脳梗塞の増加することによるようです。ビタミンB12の状態は多角的な過程を通して脳の機能に影響すると考えられるのです。
この研究論文は、アメリカの神経学雑誌Neurologyの2011年9月27日号に掲載されます。
タングネイ医師は次のように話しています。
「ビタミンB12は、肉、魚、卵、乳製品に含まれています。ビタミンB12が欠乏することは、菜食主義者や第3世界の人たちによく見かけます。しかし先進国の高齢者もまたビタミンB12欠乏症になる可能性があるとする証拠が増えています。この結果から、医師は、認知症の症状がある人の治療についてはビタミンB12の濃度を測定すべきす。
年をとると人の腸管は変化してビタミンB12の吸収能力が変わります。多くの人にとって、その理由は胃酸の産生が低下することによります。ビタミンB12と蛋白との結合を解くためには酸が必要です。そこで高齢者は欠乏症になりやすく、もっとビタミンB12を摂る必要があります。
正常の脳では、ビタミンB12は記憶形成につながる神経細胞の新しい接続を形成するのに役割はあります。またビタミンB12は神経細胞を保護する膜のミエリンの必須要素です。こうしたビタミンB12の役割としてビタミンB12の濃度低下が認知症あるいは記憶障害に繋がると考えられます。」
オックスフォード大学薬学部Department of Pharmacology Oxford Universityのダヴィッド・スミスDavid Smith名誉教授は、イギリスで同様の研究をしましたが、次のように述べています。
「さらにビタミンB12サプリメントが認知症を治したり予防するかどうかの研究が必要です。ビタミンB12がアルツハイマー病の進行を遅くらせたり防いだりするかどうかの臨床試験を行う必要あります。
今回の研究で注目すべき結果の一つは、脳容積の減少と認知機能の低下がビタミンB12欠乏の公的な基準より高い人でも確認されたことです。このことから高齢者の望ましいビタミンB12のレベルは何なのかという疑が新たに湧いてきます。ビタミンB12欠乏症の基準値を再考する必要があります」
さらに当面として、タングネイ准教授は次のように述べています。
「医師と患者は、少なくともビタミンB12欠乏症の症状にともに気づくべきです。認知症や記憶障害だけでなく、手のうずき、腱反射など反射の低下、バランスの低下、視力障害の症状についてです。
問題は、家庭医は患者がこうした症状を持って受診しても必ずしもビタミンB12について考慮してないということです。もし高齢者が記憶問題の経験をし始めると、食事やサプリメントでビタミンB12を十分摂っているかどうかについて医師に話すのが賢明です」
myhealthnewsdaily Sep 26, 2011 Low Vitamin B12 Level in Elderly May Spur Dementia および論文Vitamin B12, cognition, and brain MRI measures A cross-sectional examination
編者:昨年、NIHはビタミンB12をアルツハイマー病の危険因子としないとする証拠が乏しいと判定し関連が乏しいと断定している。サイト内関連記事


「アルツハイマー病 修正可能な7つの危険因子の是正で大きな予防効果」(9月22日/メディカルトリビューン)
〔ロンドン〕カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF,サンフランシスコ)のDeborah E. Barnes助教授(写真左上)とKristine Yaffe教授(写真左下)らは「アルツハイマー病(AD)の発病に関連する危険因子には,修正可能な7つ(喫煙,低身体活動,低教育水準,中年期高血圧,糖尿病,中年期肥満,うつ)が含まれ,これらが関与しているとみられる症例は最大で世界の症例の半数に上る」とする分析結果をLancet Neurology(2011; 10: 819-828)に発表した。また,これら7因子すべての影響を25%減らすことができれば,全世界において300万人のADを予防できる可能性があるとしている。
米国では運動不足が最大の危険因子
認知症は,高齢者における障害の大きな原因の1つである。AD患者は世界で3,390万人と推定され,40年後には3倍に増加すると予想されている。
Barnes助教授らは「ADでは,病態を改善させる薬剤が現存しないことや,器質的な変化から症状が現れるまでに何年もかかり,時には数十年を要することから,どのような予防戦略が有効かという問題に関心が高まっている」と説明。また「観察研究から,さまざまな修正可能なADと認知症の危険因子が見いだされている」と述べている。
同助教授らは今回,心血管系の危険因子,心理的因子,健康的な行動など, ADとの関連を示すこれまでのエビデンスについて分析した。分析には2010年に米国立衛生研究所(NIH)が発表した,ADと認知症の危険因子に関連するエビデンスの包括的なシステマチックレビューなどを用いた。
その結果,修正可能な危険因子として,喫煙,低身体活動,低教育水準,中年期高血圧,糖尿病,中年期肥満,うつの7因子を同定した。
同助教授らはさらに,AD発症を遅らせるのに有効な介入法を明らかにするため,最近のシステマチックレビューとメタアナリシスのデータを用いて,リスクを軽減させたときに,どの程度のAD症例を予防可能か検討した。
その結果,これら7つの因子が関与しているとみられる症例は,世界と米国でそれぞれ最大約50%(それぞれ1,720万人,290万人)に上ることが示唆された。また,それらのリスクをすべて10~25%軽減できれば,AD患者を世界で110万~300万人,米国で18万4,000~49万2,000人も減少できる可能性があることが分かった。
各因子について見ると,教育水準の低さが関連しているとみられるAD症例は650万人(19%),次いで喫煙470万人(14%)であった。また,運動不足は,世界では第3位(430万人,13%),米国では第1位(110万人,21%)の因子であった。
世界的には低教育水準が大きく影響
Barnes助教授は「本当に問題なのは,母集団における各危険因子保有者の割合である。米国では,約3分の1がほとんど座ったままの生活を送っていることから,AD症例の多くが運動不足に関係している可能性がある」と指摘。また「世界では,読み書きのできない人や小学校以上の教育を受けていない人が非常に多く,教育水準の低さがより重要な役割を果たしていた。喫煙者も残念なことに依然として多いため,喫煙が影響する割合も多かった」とコメントしている。
同助教授らは,ADの治療薬はまだ研究段階であるが,これらの危険因子を減少させるさまざまな取り組みにより,AD予防に劇的な効果が期待できると指摘。具体的な方法として,禁煙の奨励や身体活動レベルを向上させるための公衆衛生イニシアチブなどを挙げている。
カロリンスカ大学とストックホルム老年学研究センター(ともにスウェーデン・ストックホルム)のLaura Fratiglioni教授(写真右上)と同大学のChengxuan Qiu博士(写真右下)は,同誌の付随論評(2011; 10: 778-779)で「疫学研究で蓄積されたこれまでのエビデンスは,認知症の病因と発症にライフスタイルと心血管系危険因子が一定の役割を果たしているとの考えを支持している。しかし,ADとの因果関係が証明された因子はまだない」と指摘。さらに「多くの住民対象観察研究から,予防と治療を目的とした介入が非常に有効であることを示す知見が得られており,実際に有効かどうかを検証する必要がある。心血管疾患に関して行われたような大規模な多領域介入計画をADの高リスク集団においても実施する必要がある」と付け加えている。
MTpro  2011年9月22日(VOL.44 NO.38)号 原文のまま
関連情報
論文The projected effect of risk factor reduction on Alzheimer's disease prevalence
付随論評Prevention of cognitive decline in ageing: dementia as the target, delayed onset as the goal
編者:興味深い論文だ。アルツハイマー病の危険因子をなくしてどのくらい発病が減るのかよく分かっていなが論文で具体的な数値をあげている。


増加するアルツハイマー病にできることは予防だけ?(9月18日/アメリカ)
最近、医学は奇跡的な業績があります。ときには科学フィクションのようにもみるのです。。患者がカメラを飲みこんで胃腸のなかをビデオに記録して新たに腫瘍を見つけます。コンピューターと神経系統との相互作用で麻痺した手足を動かせるようにします。
医学の大きな流れとして、アルツハイマー病などの認知症の原因疾患の原因と治癒に関する研究がありまが、不幸なことに、こうした壮大で新しい医学技術は、どれも高価で、私たちが利用する余裕はないようです。
医学技術の進歩によってアルツハイマー病の診断方法は進み、脳スキャンでアルツハイマー病を特徴づけるアミロイド斑を見ることができるほど向上しましたのですが、患者一人の検査に数千ドルかかります。新たに開発された血液検査や脳脊髄液検査でアルツハイマー病の生体指標を見つける方法は数千ドル、あるいは数百ドルになるようです。
アルツハイマー病と診断されたあとの治療の薬もまた高価です。現在使われている薬は一人1年間で2000ドルほどとします。アルツハイマー病を治すという次世代の薬はもっと高くなるようです。不幸なことに、アルツハイマー病の脳で生じる変化は、記憶や行動の変化に気づく15年ほど以上前から始まっているのです。こうしてアルツハイマー病と診断されるまでに、脳は損傷されしまい高価な治療でこの病的な経過を遅くすること以上の効果はないのです。たとえ、病気が早い時期に診断されても、的確で簡単で高くはない治療法が見つかるという予測はほとんどないのです。
現在、アルツハイマー病を増えていることを知っています。また、厳しい経済的低迷の苦闘のなかにもいるのです。ある国では十分に議論されて、医療を含めた政府の支出を抑えることにしました。新たに認知症のなる数百万人の患者が今後数年の間に増えることによって薬だけでも数十億ドルの増加が見込まれています。ナーシングホームのケアも年間5万ドルになり、その経費は毎年上昇しています。次の数年間で、アルツハイマー病の治療費は急上昇するでしょう。2005年でメディケアで910億ドルがアルツハイマー病の人の介護や治療に使われましたが、2015年までにその費用は2000億ドルほどになります。政府が財政的に破綻しないように厳しい政策が導入され、私たちは、アルツハイマー病が増加するので、この病気のための診断や治療を受けることが簡単には出来なくなりつつあります。
こうしたなかで、とるべき最も合理的なやり方は、技術的に進歩するアルツハイマー病の診断や治療の高額な方法ではなく、アルツハイマー病を発病する危険性のなかで生活していることを考え、発病にいたるアルツハイマー病の因子のなかでその危険性を少なくするために実践すべきだと、私は信じています。ありがたいことに、危険因子のすべてではないのですが、アルツハイマー病の予防、あるいはその発病を置こうらせることができそうな生活様式を変えるという簡単で高価ではない方法があるという多くで増えている証拠があります。
先駆的な多くの証拠は、国立保健研究所NlHがアルツハイマー病を進行させる危険因子を少なくするために何ができるかという助成研究からものです。昨年、その研究の結果が「アルツハイマー病と認知機能の低下の予防Preventing Alzheimer's Disease and Cognitive Decline(pdf6.7M)」という報告が出版されました。この検討会議は、アルツハイマー病の発病リスクを下げるために、いくつかのライフスタイルと健康維持がリスクを下げることを確かめました。たとえば、糖尿病の治療、禁煙、うつ状態の治療、定期的な運動、知的活動の持続がアルツハイマー病の進行の危険要因を減らすのに役立つのです。
NIHの会議では、アルツハイマー病の危険性を減らすためだけでなくの科学的研究でしめされたその他の方法についてはその効果は認めませんでした。さらに研究が必要であり、有効であるとの証拠は間違ってはいないかもしれないが推奨するには十分な証拠がないとするものでした。こうした方法のほとんどは高価でなく、アルツハイマー病の発病の危険性を下げるだけでなく、同時に一般的な健康を改善するためも高価でなくありふれた方法なのです。これらの多くの方法で患者が幸福や健康のために受診する必要もないのです。アルツハイマー病の危険性を減らすための別の方法とは、望ましい体重を維持する、高血圧を下げる、健康的なコレステロールと中性脂肪を維持する、ストレスを減らす、睡眠をよくとる、歯科医に定期受診する、ビタミンB12、C、E、Dの健康的な血中濃度を保つ、抗酸化物―色とりどりの果物や野菜など―を多く摂る、友情を保持する、実りある精神生活を送ることです。
アルツハイマー病を治癒させる特効薬の研究を完全に止める必要はありません。アルツハイマー病の進行を止める方法をまだ手にしてなく、研究自体に価値はあります。脳についての研究から、まったく新しくて予期しない理解が生まれるかもしれません。その他の病気の治療に応用できるかもしれません。しかし、政府の財政が安定せず、アルツハイマー病が克服できるのがまだ先であり、医療費の高騰のため、私たちが既に知っているった安全で安い方法を実践することで、この恐るべき病気の予防の重要性を強調しないということは無責任です。
寄稿者:スコット・メンデルソンScott Mendelson(写真)は、精神科医で「アルツハイマー病を超える―現代の認知症の増加をどう避けるか―Beyond Alzheimer's: How to Avoid the Modern Epidemic of Dementia」の著者。
Huffington Post 9/18/11  Is Prevention the Only Answer to the Alzheimer's Epidemic?
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編者:編者が思っていることに近い内容だ。アルツハイマー病の検査も高く次世代治療薬の効果も限定的で高価だろう。その恩恵を受けられる人は限られ、公的保険の対象から外される恐れもある。このため十分が証拠はないかもしれないが、生活に予防方法を取り入れるのが賢明だろう。貧富の差なく誰もがやれるという利点がある。こうした分野に製薬会社は興味はなく公的な補助でされに証拠を求める研究を進めてほしい。


食塩を多く取り運動が少ないと認知機能が低下(8月25日/カナダ)
トロント大学University of Torontoのアレキダンドラ・フィオッコAlexandra J. Fiocco医師(写真左上)らのグループは、食塩摂取と身体運動の認知機能への影響についてケベック州の住む高齢者男女1262人を対象に3年間の追跡調査を行いました。これは「ケベック栄養・加齢追跡調査Quebec Longitudinal Study on Nutrition and Aging (NuAge)」の参加者からの対象者(67歳から84歳)を選びました。対象者は、調査開始時にナトリウムなどの栄養素摂取などを食事摂取に関する質問票から状態を知りました。同時に、調査開始時の身体運動状態については「高齢者身体活動スケールPhysical Activity Scale for the Elderly (PASE)」で分類しました。認知機能については「修正ミニメンタルステート検査(MMMS)」で、調査開始時、1年後、2年後、3年後に調べました。
その結果、性、年齢、教育、ウエスト周囲、糖尿病、食事内容を同じとして認知機能の低下はPASEが低くいグループにのみ認められました。そのうちナトリウムの摂取が少ないグループは、多いグループおよび中程度のグループより認知機能がよいことを認めました。このことから研究グループは、認知機能には単一の要因ではなく複合的要因―少ない食塩と多い身体運動―の生活スタイルが重要であることを示唆したと結論づけました。
この研究論文は、雑誌Neurobiology of Agingの2011年8月19日電子版に掲載されました。
この結果についてカリフォルニア大学サンフランシスコ校University of California in San Franciscoの認知症専門家であるデボラ・バーネスDeborah Barnes医師(写真左下)は「これはナトリウムに注目した最初の研究の一つです。食事に関するものひとつの重要な事柄といえます。新鮮な果物と野菜と摂り、加工食品は避けるべきです」と話しています。
イギリスでは食品基準局Food Standards Agencyが、成人の1日食塩摂取量は6g以下に制限すべきとしていますが、イギリス人の平均食塩摂取量は8.6gです。また研究者は、一日3gほどが望ましいとしています。
Mail Onlinel 25th August 2011 Salt link to dementia: Just a teaspoon a day 'dulls the mind' and increases your risk of Alzheimer's diseaseおよび論文Sodium intake and physical activity impact cognitive maintenance in older adults: the NuAge Study
編者:食塩と認知機能あるいは認知症との関係についての疫学調査は聞かない。報告によると運動と減塩が有効と示唆している。


中等量の飲酒は認知症を防ぎ、多量の飲酒は認知症を促す(8月16日/アメリカ)
アメリカ・シカゴに在るロヨラ大学シカゴ校ストリッチ医学部Loyola University Chicago, Stritch School of Medicineの分子薬学治療薬学科Department of Molecular Pharmacology and Therapeuticsのエドワード・ニーフセイEdward J Neafsey教授(写真左上)らのグループは、中等量の飲酒と認知機能の関係についてこれまで公表された143の論文について分析評価しました。
1977年から1997年までの論文では、若年期から中年期の人を対象としたものが多く中等量の飲酒が認知機能を障害することが示唆されましたが、同期間のその後の研究ではこの関係は証明されず、同時に飲酒グループと非飲酒グループによるリスクの違いは認められませんでした。1998年から現在までの期間の論文では、55歳以上の対象者が多く、中等量の飲酒は認知症または認知機能障害の発症リスクを低下させるか効果なしとする報告が多いことを認めました。
少量から中等量の飲酒の発症抑制効果は、認知症、アルツハイマー病、血管性認知症ともに認められました。他方、多量の飲酒は認知症と認知機能障害の発症リクスを高めることも認めました。ま
ワインがビールや蒸留酒よりよいとする報告もあるが、この種の研究論文は少なく確定的結果とはいえません。アポリポ蛋白E4の遺伝子を持つひとでは中等量の飲酒による発症抑制効果は認められていませんが、これも論文が少なく確定的なことは言えません。
中等量の飲酒は男女とも保護効果を認め、国によってはこうした効果を認めないこともあります。なお中等量の飲酒とは、おおよそ男性では1日2杯、女性では1杯で、多量飲酒とは1日5杯以上のことです。
この論文は、雑誌Neuropsychiatric Disease and Treatmentの2011年8月号に掲載されています。
この結果についてニーフセイ教授は「この結果から飲まない人が飲酒を始めることは勧めるものではありません。飲酒の影響は、年齢、教育歴、性別、喫煙などの影響を考慮してもなお認められた」と述べています。
ランゴーンニューヨーク大学医療センターNYU Langone Medical Centerのパールバロウ記憶評価治療センターPearl Barlow Center for Memory Evaluation and Treatmentのジェームス・バルヴァンJames Galvin所長(写真左下)は次のように話しています。
「中等量の飲酒が脳の健康によいということは、生活全体で健康的にライフスタイルであることの指標にすぎなかもしれません。地中海風食事とは穀類、新鮮な野菜と果物、オリーブ、適量の赤ワインからなっていますが、これも認知症の発症リスクを下げます。同じく、運動、社会的関わり、精神的活動、楽観的な人生観も同様です。健康的な行動は脳にとっても健康的な行動なのです」
今回では、なぜ中等量の飲酒が認知症や認知機能障害をリスクを下げるか、その理由が明らかにしていませんが、ある研究によると、アルコールが脳血流を改善し、その結果、脳代謝を改善すると示唆されています。また別に説は、少量のアルコールが脳細胞を軽く刺激することで認知症を起こす可能性のある強いストレスから守ることができるように脳細胞を適応させるというものです。
usnews health August 16, 2011 Moderate Drinking May Help Prevent Alzheimer's, Other Dementia および論文Moderate alcohol consumption and cognitive risk
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「認知機能低下の予防 ウオーキングが有効」(8月16日/東京新聞)
高齢者の認知機能低下の予防にウオーキングの習慣が有効なことを、群馬大大学院保健学研究科(前橋市)の山口晴保教授(リハビリテーション学)(写真)と高崎市が共同研究で実証した。ウオーキングの有効性を科学的に実証したのは国内で初めて。ウオーキングは高齢者も取り組みやすく、市は本年度から事業化を進めている。 (菅原洋)
共同研究は厚生労働省が昨年度の事業として、来春予定される介護保険制度の改定に反映させるため、「介護予防実態調査分析支援事業」と題して全国の自治体から公募。事業を知った山口教授が高崎市に応募を呼び掛け、市は選ばれた三自治体の中に入った。
研究は高齢者が市内計四カ所の公共・医療施設に週に一回集まり、約一時間半かけて運動を習慣化するプログラムを実施した。各自でも、週に三~五日程度、約三十分歩き続けるのを目標にした。
期間は昨年八月中旬~十一月上旬と、同年十二月上旬~今年二月下旬の二コース。応募した六十五~七十九歳男女計約百五十人がいずれかのコースに参加し、うち計百三十三人のデータを分析した。
高齢者に「野菜」など一つの分野を示す言葉から、「トマト」など具体的な名称がいくつ思い浮かぶかをテストした結果、参加前は平均一六・〇語だったのに対し、参加後は同一七・二語に増えた。山口教授は「(一語増えているということで)物忘れなどが始まった高齢者の認知機能低下の予防に、ウオーキングが効果的と分かった」と指摘。
このほか、参加の前後で▽日常生活の歩数が約二割増加▽日常生活が活動的になる▽幸福感が高まる▽運動能力が高まる-などの効果が表れた。
同教授は「ウオーキングは仲間を集めて楽しく取り組むのに適しており、地域社会で取り上げてほしい」と勧めている。
Tokyo Web  20111年8月16日 原文のまま
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編者:山口教授が行った介入研究であるが、ある同じ対象群にある介入―この場合はウオークング―を行い同じ対象者について変化をみて効果を判定するというこの種の単純な比較介入調査では、ウオーキングそのもので効果があったのかどうかの判断はできない。もっとも外国のいくつかの報告では汗をかく歩行が認知機能に有効とされている。


心房細動は認知症の危険因子(8月8日/アメリカ)
アメリカ・ワシントン州シアトルに在る「グループヘルス研究所Group Health Research Institute」のザスチャ・ダブリンSascha Dublin医師(写真)らのグループは、不整脈の一種の心房細動が脳血管障害とは別にアルツハイマー病など認知症の危険因子であるかどうかについて地域在住の認知症および脳血管障害のない65歳以上の高齢者3045人(平均年齢74歳)を対象に1994年から2008年にかけて追跡調査をしました。
これはワシントン大学University of WashingtonとグループヘルスGroup Healthが高齢者の認知症の危険因子調査である共同プロジェクトAdult Changes in Thought (ACT)の一環として行われたものです。
心房細動の有無はグループヘルスの保健情報の電子データで確認しました。対象者は2年毎に認知機能スクリーニング法Cognitive Abilities Screening Instrumentの検査を行い86点未満の人については、詳しい神経心理学的および臨床評価を行いました。認知症およびアルツハイマー病の診断は標準的な基準に基づき多職種からなるグループで行いました。
その結果、調査開始時に心房細動を132人(4.3%)に認め、平均6.8年以上の追跡期間中に370人(12.2%)に新たに認めました。この間に572人(18.8%)が認知症になり、このうち449人がアルツハイマー病でした。心房細動のあるグループは心房細動のないグループより認知症に38%多くなり、アルツハイマー病については50%多くなることを認めました。この傾向は臨床的に脳血管障害があるグループとないグループで比較した場合と近似した結果でした。
この研究論文はアメリカ老年医学雑誌Journal of the American Geriatrics Societyの2011年8月1日号の電子版に掲載されました。
この結果についてダブリン医師は次のように述べています。
「心房細動と脳血管障害は加齢とともに増えます。今回の研究から心房細動が脳血管障害を起こしその結果として認知症になるのではなく、心房細動そのものが認知症の危険因子であることがわかりました。アメリカでは心房細動の人は300万人います。この不整脈は心臓のポンプ機能を低下させて脳への酸素供給が減少し、さらに血栓形成を促しそれが脳に入り臨床的には確認できない脳血管障害を生じます。医師らが心房細動の重要性について改めて認識してほしいものです。今後、心房細動の治療によって認知症の発症が少なくするかどうかの研究することが重要です」
Group Health Research Institute August 8, 2011 Common irregular heartbeat raises risk of dementiaおよび論文Atrial Fibrillation and Risk of Dementia: A Prospective Cohort Study
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中年期の高血圧などは血管性危険因子は高年期の認知機能低下の危険因子(8月2日/アメリカ)
アメリカのカリフォルニア大学デイヴィス校University of California, Davisの神経学科Department of Neurologyのチャールス・デカーリCharles DeCarli医師(写真左上)らのグループは、中年期(平均年齢54歳)の血管性危険因子とMRI上の脳の変化および認知機能の関係についておおよそ10年間の追跡調査を行いました。
対象者は、1949年に始められた地域住民を対象とした世界的著名な心臓血管疾患の疫学調査であるフラミンガムスタディFramingham Offspring Cohort Studyに参加している認知症のない1352人でした。脳の変化はMRIによる白質高強度容積(WMHV)、総脳容積などを、認知機能については記憶想起遅延などを検査項目としました。
その結果、中年期の高血圧はWMHVの進行と実行機能の低下と、糖尿病と喫煙は海馬の萎縮と、喫煙は脳全容積の減少と、肥満は実行機能の低下と、そして時系列的な脳構造の変化は記憶および実行機能の低下と相関することを認めました。
中年期の高血圧、糖尿病、喫煙、肥満などの血管性危険因子は脳血管の損傷、脳全体および海馬の萎縮さらに実行機能の低下に関連すると結論づけられました。
この論文は、アメリカの神経学雑誌Neurologyの2011年8月2日版に掲載されました。
この結果についてデカーリ医師は次のように述べています。
「アメリカ人は中年期に高血圧や糖尿病など血管性危険因子を複数持っている人が多く、認知症になる危険性が高いので、中年期のこうした疾患の有無を健診で見つけ、ライフスタイルを変えることが重要です」
またフロチェスターに在るメイヨクリニックMayo Clinicの神経科のダヴィッド・ノップマンDavid Knopman教授(写真左下)は次にように述べています。
「今回の研究はとても科学的で示唆に富んだものです。研究結果から心臓血管性の危険因子が比較的早い時期から脳に変化を及ぼしていることを示しています」
Medscape August 2, 2011 Midlife CV Risk Linked to Brain Atrophy, Cognitive Declineおよび論文Midlife vascular risk factor exposure accelerates structural brain aging and cognitive decline)
編者:高血圧などの血管性危険因子が認知機能の低下の因子であることは良く知られているが、その説を補強した研究結果だ。こうした因子は血管性認知症との関係は濃厚でああるが、アルツハイマー病との関係も示唆している。


若い時に親を失った人はアルツハイマー病になりやすい(7月29日/アメリカ)
アメリカ・ユタ州のキャッシュ郡Cache Countyの住民に基づく研究によると、子供の頃、両親が死亡した子供は、高齢になるとアルツハイマー病になりやすいとのことです。
ユタ州立大学Utah State Universityのエンマエクレスジョンズ教育人間学部Emma Eccles Jones College of Education and Human Servicesでの研究によると、親が亡くなって遺された子供や青年は、うつ病やPTSDなどの神経疾患になりやすく、さらには生活習慣病や認知症になりやすいことが示されました。
この研究のユニークなところは、15年間のキャッシュ郡記憶スタディCache County Memory Studyとユタ人口データベースUtah Population Databaseとがリンクして行われたことです。研究者は客観的で公的な出生記録や死亡記録を繋げることができるのです。
記憶スタディによる認知機能のデータを統合してマリア・ノートンMaria Norton准教授(写真)らは、とりわけストレスの多い出来事―親、子供、配偶者の死亡あるいは認知症の配偶者の介護―を経験することによって、有意に、アルツハイマー病の発病リスクを高めるということの関係を知ることができました。
これらの知見は、常時、生体内のステロイドホルモンの一つである糖質コルチコイドが高値のままであることによって神経系統の細胞死の割合を高めるということに合致しています。
高齢期問題の原因は子供が経験する両親との死別だけではありません。慢性的なストレス、心的外傷あるいは悲しみといったことすべてが脳の細胞死をもたらすことがあるのです。
ノートン准教授は「目の前で誰かが爆破されるような戦闘を経験しなくても、既に、あきらかによくない結婚や子供の死が引き金になりえる」と話しています。
記憶スタディは、1995年にユタ州立大学が65歳以上のキャッシュ郡の住民に研究に参加するように依頼して始まりました。人口のおおよそ90%にあたる5092人が同意して参加しました。特別に研修を受けた看護師や技術者によるスクリーニング検査を受けた人たちは、さらに老年精神科医や神経心理学者によって診察を受け、その結果、570人がアルツハイマー病であることがわかりまし。口データベースから両親の死や再婚の情報を詳しく知ることができました。
さらにノートン氏は「ストレスが人生のどの時期に起こるのが重要です」と話しています。
両親が亡くした5歳以上の子供は、高齢期にアルツハイマー病になる頻度が2倍であることを認めました。思春期の母親の死亡は父親が再婚しなければアルツハイマー病の発病リスクを倍増させます。両親の死亡は、アルツハイマー病ではない認知症の発病には影響していないようです。
思春期に母親が死亡した人たちは、全人生にわたりうつ病になる頻度が高いのです。しかし、ノートン医師は次のように話しています。
「うつ病の頻度が低い人たちでは、たとえば宗教的介入がかなりあるという要因を見つけました。これは心理的災難に対処する人たちを支え、アルツハイマー病の発病リスクも下げることになるかもしれません。認知症の発症を防いだり遅らせる可能性のある予防方法が見つかるかもしれません。実際には個々人に大きな違いがあり、宗教によって霊的領域の課題となります」
研究の対象者は、その90%は末日聖徒イエスキリスト教会(通称:モルモン教)Church of Jesus Christ of Latter-day Saintsの信徒で、全員が白人で、両親の多くは農村地域の農家の出身でした。「その他の人種や都市部の人たちについて調べると異なる結果が出るかもしれません」とノートン准教授は話しています。
The Salt Lake Tribune Jul 29 2011  USU study: Losing parent at young age elevates Alzheimer’s risk
編者:この記事はユタ州立大学のニュースリリース(New Study: High Levels of Stress May Increase Risk of Alzheimer's Jul. 27, 2011)に基づく報道で、雑誌掲載の論文が見つからない。記事のなかのストレスと発病の因果関係はあくまでも推測と理解するのが妥当だろう。ノートン先生は認知症の人の介護者が認知症になりやすいという報告もしている(サイト内記事)。


運動はやはり認知機能低下を防ぐ(7月22日/カナダ・フランス)
カナダのウオーターロー大学University of Waterlooとサニーブルック研究所Sunnybrook Research Instituteのローラー・ミドルトンLaura Middleton氏(写真左上)らのグループは、これまでの研究で身体的に活発な人は高齢期に認知機能低下のリスクを少ないことが示唆されていますが、その研究は参加者の自己報告に基づく身体活動は主観的であり、実際の運動の頻度や期間を数量的に表わしてはいない可能性があり信頼性に疑問があることを指摘し、主観的な運動量ではなく実際の活動エネルギー消費activity energy expenditure (AEE)と認知機能との関係を調べました。その消費量は、水素と酸素の放射性同位元素から成る特別な水を少量、参加者が飲み、尿中の同位元素を測定して算出しました。
今回の調査では、調査開始時(1998-1999年)に疾患もなく認定機能障害もない男女(平均年齢:74.8歳)の安静時の代謝率を引いた全エネルギー消費の90%をAEEとしました。認知機能は、調査開始時、2年あるいは5年後に改定版MMSEで行いました。認知機能障害は、調査開始時と追跡時に少なくとも9ポイント低下している状態としました。
調査結果としえ、調査開始時の改訂版MMSEの点数、年齢、性別、除脂肪量fat-free mass、睡眠時間、自己報告による健康状態、糖尿病で補正して比較し、AEEの点数を性別に3グループに分けた消費エネルギーが最高のグループは、最低グループより認知障害の頻度が有意に低いことを認めました。さらにAEEの値と認知障害の頻度との比例関係も認めました。このことからAEEが高いことが認知機能障害の保護因子となることを示唆していると結論づけました。
この論文は、アメリカ医師会American Medical Associationの内科学雑誌Archives of Internal Medicineの2011年7月19日号電子版に掲載されました。
同雑誌に関連論文が掲載されています。
フランスの公衆保健財団Foundation of Public Health Mutuelle Generale de l'Education Nationaleのマリー-ノエル・ヴァーカンブルMarie-Noel Vercambre氏(写真左中)らの研究グループは、血管性疾患やその危険因子をもった人たちは実質的に認知機能低下のスピードがより速いことが認められていますが、その認知機能を維持する方法についてはほとんど知られてないとして研究を行いました。
女性抗酸素心臓血管スタディWomen's Antioxidant Cardiovascular Studyの参加者―血管性疾患あるいは冠動脈疾患の危険因子―肥満や糖尿病など―を少なくとも3つ持っている人たち―について身体活動と認知機能低下の関係について調べました。調査開始時(1995年10月から1996年6月)にレクレーション的身体活動を始め、2年ごとに追跡調査しました。1998年12月と2000年7月の間、65歳以上の総参加者数は2809人で電話による聞き取りで認知機能検査を行いました。この検査は、全般的認知機能、言語記憶、カテゴリー流暢性検査を含みます。検査は、4,5年の間に3回実施しました。
その結果、エネルギー消費が多くなるに従い認知機能低下をスピードが遅くなる有意な傾向を認めました。定期的な歩行運動―毎日の活発な30分の歩行―は、認知機能の低下を遅くすることを強く示唆しました。結論として、血管性疾患またはその危険因子をもつ女性高齢者の認知機能は、歩行など定期的な身体的運動によって保持されるのです。
これらの研究結果について、ワシントン州シアトルにあるグループ保健研究所Group Health Research Instituteのエリック・ラーソンEric Larson副所長(写真左下)は次のように述べています。
「運動が脳を健康にするだろうことはあまりよく知られていません。これら二つの研究は別個の集団に異なる方法でより詳細な分析を行ったもので、結果として、運動と脳機能の関係について科学的でより説得力がある証拠を示したのです。こうした両者の関係があるとの証拠を積み重ねることで、どのように身体的に活発であればよいのか―とくに高齢期―示されつつあるのです」
(Voice of America July 22, 2011  Studies Show Exercise Reduces Dementia Riskおよび論文Activity Energy Expenditure and Incident Cognitive Impairment in Older AdultsPhysical Activity and Cognition in Women With Vascular Conditions
編者:運動が認知機能の維持あるいは認知症やアルツハイマー病の保護因子とする疫学的研究は多い。ラーソン氏が述べている通り、研究集団と手法を変えてより科学的な根拠を示したものと考える。毎日の速足の歩行は身体にも認知機能にもよいようだ。


アルツハイマー病予防のニュースをどう理解するか(7月22日/アメリカ)
最近聞いたCBSイーヴニングニュースCBS Evening Newsの報道は「アルツハイマー病にならないために、もう一つ外国語を学ぼう。最近の脳研究の役立つ成果です」でした。
すぐにでも出かけてフランス語教室に入学すべきなのか?
2006年には「カベルネソービニヨンの赤ワインはアルツハイマー病の発病リスクを減らす」と報じられました。ピノグリージョの白ワインを好む人はカベルネソービニヨンの赤ワインに換えるべきなのか?
1日3から5杯のコーヒーを飲む人はアルツハイマー病に65%なりにくいという記事を読むと、認知症になりたくない紅茶党はコーヒー党に移るべきか?
アルツハイマー病研究のニュースを理解するのは難しいのです。多分、研究者は、データを正確に報告し、かつその肯定的な結果が将来の蓄えになることを期待しているのです。また多分、公平で誠実なニュースレポータや編集者は、びっくりするような見出しで一面を作りたいのです。さらにすべてのニュースの読者は、アルツハイマー病のできるだけ良い報道を聞きたいのです。
バイリンガルと認知症の関係の場合、2011年5月、ニューヨークタイムズは、研究報告者のエレン・バイアリストックEllen Bialystok氏(カナダ・ヨーク大学York University心理学部)(写真左上)のインタビュー記事を載せています。最初のニュース報道では、バイリンガルの集団を発病から守るのか、あるいは多言語を話す人たち―ほとんどはカナダ在住か、英語を公用語としない国からのアメリカ移住者で、は英語、スペイン語、中国語を第2言語とする人たち―の発病を守るとは述べていません。
私の両親は、オーストリア・ハンガリーからニューヨークに移住し、英語とドイツ語を話します。母の場合はハンガリー語も話します。二人は、ほとんど英語を書いたり話したりしていました。しかし私たち子供が理解してほしくない時は―私たちが多言語を理解するまでは―ドイツ語で話していたのです。このことが両親とも認知症にならない理由なのでしょうか。それは疑わしい。私は、フランス語とドイツ語を話し、スペイン語も学習を始めました。これは認知症の予防に役立つのでしょうか。ニュースは、予防ができるかのように報じていますが、バイアリストック氏はインタビューのなかでこのことは話していません。
バイリンガルの研究は、「使わないと失う」という考え方の一つの現れのようです。この考え方は、複数の言語を頻繁に使うということだけでなく、フランス語と英語、言葉と音楽、数学と言語といった双方の一つを選んで考え脳内での交流に頻繁に関わることにも当てはまるのです。このことは、また認知機能の問題に直面する時、信頼できることが提供されることになるのです。バイリンガルの研究は私にとっての意味合いは、脳内のシステムの間で常にスイッチを入れたり切ったりできる心の働きをもって十分で豊かな生活を送ることで、アルツハイマー病に関係した特別な認知機能低下から多くの人を2,3年進行を長く止めるかもしれないだろうということです。
これは、多くの人が考えているような認知機能の予備力でもなければ、アルツハイマー病の病変の影響を遅らせるような特別な脳の力を付加するものでもありません。そうではなく脳の生理的な変化を止められるような神経の再接続といったものと考えています。
私たちは何をしたらよいのでしょうか
軽度認知障害という早い時期の記憶障害があり、バイリンガルのような能力があれば、その能力を毎日使ってみることを考えてもよいでしょう。退職した技術者であれば、何か作ったり、家族や友人から壊れた機械を持ってきてもらい修理することを続けてみるのもよいでしょう。
退職した心理学者リチャード・テイラーRichard Taylor氏(写真左中)は、毎日、何千という友人や同僚に、ほとんど毎日、説得力のあるメールを送って心の活性を維持しています。彼は、「アルツハイマー病:内から外へAlzheimer's From the Inside Out」という本を書いています。
認知症の人を介護している人なら、特に初期には認知症の人が興味あることをできるだけ長く続けるようにしましょう。落ち込ませたり、持っている技能を使うのを止めたり、消極的な考えにならないようにしましょう。
しかし、大切なことは、効果を出すために続けてやることです。新たに別な言葉を学ぶのではなく、若いころからの能力をすべて使い、複数の作業を同時に行うことを心配する必要はありません。認知症が進行して学術的な作業が困難になると、古典の教授であるクリスティーナ・チュー Kristina Chew氏(セントピーターダ大学Saint Peter’s College)(写真左下)は、予算の関係で公立学校や大学で取り止めた多くの外国語教室について困惑して、次のように話しています。
「若者のための言語教員を数多く育てることは、全国的にも認知症の発症を遅らせる社会的投資の一つとなるでしょう。子供たち、またその子供たちは、私たちが開発するすべての技術を使い、若い頃から人生を通して美術館を訪ね、演奏会に行き、楽器を演奏するといったこと行い、私たちが開発した多言語翻訳システムを使うのもよいでしょう。こうして認知機能の問題に直面したとき、信頼できある何かを保持することになるのです」
寄稿者のジョン・ザイセルJohn Zeisel氏(写真右)は、I’m Still Here Foundation and Hearthstone Alzheimer Careの創設者で会長。
huffingtonpost healthy-living 7/22/11 Alzheimer's in the News: What Does it Mean?
編者:我が国でも認知症予防のニュースは多いが、無批判、注釈なしで報じられることが多い。こうしたニュースをどう理解するのかという記事もほしい。


身体的健康は認知症の予防因子(7月18日/カナダ)
カナダ・ノヴァ・スコティア州ハリファックスにあるクイーンエリザベス2世健康科学センターQEII Health Sciences Centreのケネス・ロックウードKenneth Rockwood医師らのグループは、これまで認知症を危険因子とはみなされてこなかった19項目の健康問題―関節炎、聴力障害、視力障害、義歯、胸部、皮膚および膀胱の症状、副鼻腔疾患、骨折、脚および足関節の状態など―が認知症の発症に関係するかについて疫学調査を行いました。
調査は、「カナダ健康・加齢スタディCanadian Study of Health and Aging」 に登録している地域在住の認知症のない65歳以上の高齢者7239人を対象に調査開始時に認知機能および健康状態について調べ、さらに5年後、10年後にアルツハイマー病など認知症の発症を調べました。
調査期間の10年間に2915人が死亡し、416人がアルツハイマー病に、191人がその他の認知症になりました。833人は認知機能の低下がまったくありませんでした。
健康上の個々の問題は、その他の健康問題および年齢、性別、教育歴、調査開始時の認知機能で補正すると、問題ごとに認知症の発症リスクをそれぞれ3.2%上げました。すなわち、調査開始時に健康問題のなかった高齢者は10年間に認知症になる可能性は18%でしたが、健康問題を8または12持っているとそれぞれ30%および40%発症のリスクが高まることを認めました。
この調査論文は、アメリカの神経学雑誌Neurology の2011年7月19日号に掲載されました。
この結果について調査主任のロックウード医師は「今回の調査から、既に知られている認知症の危険因子―糖尿病や心疾患など―ではない其の他の一般的な健康問題に注目し、こうした状態をより健康にすることで認知症のリスクを減らすことができそうだ」と話しています。
Times of Malta.com July 18, 2011 Healthy body helps avoid dementiaおよび論文 Nontraditional risk factors combine to predict Alzheimer disease and dementia
編者:認知症とは関係ないと思われるありふれた健康問題が認知症に発症を高めることが疫学的に認められたとする報告である。健康問題のある高齢者は運動量が減少し社会生活が不活発になるなど従来から言われている危険因子を増加させるとも考えられる。


高齢者の認知機能を低下させる怖れのある薬(6月25日/イギリス)
イギリスに在るイーストアングリア大学University of East Anglia (UAE)のノーウイッチ医科部Norwich Medical Schoolのクリス・フォクスChris Fox講師らのグループは抗コリン剤に関する調査結果から市販薬や処方薬でこの成分を含む薬が高齢者の認知機能低下やや死亡が増える可能性を示唆しました。
調査は、1991年から1993年の間、医学研究審議会Medical Research Councilの認知機能・加齢研究Cognitive Function and Ageing Studyに参加した地域在住および施設入居の65歳以上の1万3004人を2年間、追跡して行われました。
調査開始時、抗コリン剤認知機能負荷スケールAnticholinergic Cognitive Burden Scale(pdf9K)により認知機能への影響度で分類した抗コリン剤の使用状況およびMMSEによる認知機能を調べました。2年後には同じく認知機能の低下の程度をMMSEで調べました。
その結果、調査開始時に抗コリン剤を使用している可能性のある人は対象者の47%で、明らかに使用している人は4%でした。年齢、性別、教育レベル、社会階層、非抗コリン剤の使用数、合併身体疾患、調査開始時の認知機能で補正した後に比較すると、あきらかに抗コリン剤を使っている人については、使っていない人と比べMMSEの点数が0.33低くなりましたが、抗コリン剤を使っている可能性のある人では使用に伴う認知機能の低下は認められませんでした。2年間の死亡については抗コリン剤を使っている人で多いことを認めました。
この調査論文はアメリカ老年医学会雑誌Journal of the American Geriatrics Societyの電子版2011年6月24日版に掲載されました。
この調査では80種類以上の薬について分析され、このなかにはアセチルコリンとよぼれる神経伝達物質を阻害して脳機能の影響すおそれのある抗コリン作用とよばれる副作用の可能性がある薬も含まれ、これに該当する薬として、抗ヒスタミン剤のchlorphenamine(日本の商品名の一例:ポララミン錠)とpromethazine(同:ヒベルナ)、抗うつ剤の amitriptyline(同:トリプタノール)とparoxetine(同:パキシル)、失禁治療薬のoxybutynin(同:ウルゲント)、抗凝血剤のwarfarin(同:ワーファリン)、胃酸抑制剤のranitidine(同:ザンタック)、鎮痛剤のcodeine(同:コデイン)と緑内障点眼剤timolol maleate(同:チモプトール点眼液)があります。
リス・フォックス医師は次のように話しています。
「ありふれた脳の神経伝達物質であるアセチルコリンに対する薬の長期的影響について調べた世界的に初めての大規模調査ですが、その結果から認知機能および死亡への影響の可能性が示唆されました。市販薬あるいは処方薬について心配な人はかかりつけの薬剤師や医師に相談することをお勧めします」
Health Aim June 25, 2011 Well known OTC Drugs could put elderly at increased risk for dementia and even deathUEA Press release  Fri, 24 Jun 2011 Drug side effect linked with increased health risks for over 65s および論文Anticholinergic Medication Use and Cognitive Impairment in the Older Population: The Medical Research Council Cognitive Function and Ageing Study
関連情報:日本老年医学会「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」(2005)(pdf100K)
編者:抗コリン剤の副作用というと口渇、便秘、尿閉が代表であるが、認知機能への影響は少ないとはいえ無視できない。なお死亡が増えるとあるが、抗コリン剤を使用するような身体状態によるためではないかと思われる。


健康的な食事はアルツハイマー病を防ぐかもしれない(6月15日/アメリカ)
アメリカ・シアトルにあるワシントン大学医学部University of Washington School of Medicineの精神医学行動科学部Departments of Psychiatry and Behavioral Science のスザンヌ・クラフトSuzanne Craft教授(写真)らのグループは、退役軍人病院に通う健康成人(20人、平均年齢69歳)および健忘型軽度認知障害(aMCI)(訳注1)(29人、平均年齢68歳)を無作為に分け、飽和脂肪(訳注2)と血糖インデックス(グリセミック指数glycemic index略語:GI)(訳注3)が共に高い食事(HIGH)、またはこれらが共に低い食事(LOW)を4週間摂取してもらい、インスリン、脂質代謝および脳脊髄液(CSF)中のアルツハイマー病生体指標などの変化を調べました。
HIGHの「不健康な食事」の内容は、脂肪45%(飽和脂肪25%以上)、炭水化物35~40%(GI70以上)、蛋白15~20%で、LOWの「健康な食事」では、それぞれ25%(7%未満)、55~60%(55未満)、15~20%でした。認知機能検査、経口ブドウ糖負荷試験、腰椎穿刺検査などを試験開始時および4週間目に行いました。またCSF中のβアミロイド(Aβ42 および Aβ40)、タウ蛋白、インスリン、F2イソプラスタン(訳注4)およびアポリポ蛋白Eの濃度、血漿中の脂質とインスリン濃度を測定しました。
その結果、aMCIグループの人たちでLOWの食事を取った人たちではCSF中のβアミロイドの濃度が上昇し、逆に健康成人のグループでLOWの食事を取った人ではその低下を認め、HIGHの食事をとった人たちで上昇を認めました。CSF中のアポリポ蛋白E濃度は両方のグループでLOWの食事で減り、HIGHの食事で増えました。同じく両方のグループでHIGHの食事で血漿脂質、インスリンおよびCSF中のF2イソプラスタンが増え、LOWの食事で減少しました。さらに両方のグループで視覚記憶についてLOWの食事を取った人で改善しました。
このことから、食事がアルツハイマー病の危険因子を変化させる強力な環境要因であることが示唆されたと結論づけています。
この研究論文は、アメリカの神経学雑誌Archives of Neurologyの2011年6月号に掲載されています。
msnbc.com 6/15/2011 Healthy diet may help stave off Alzheimer'sおよび 論文Intervention and Cerebrospinal Fluid Biomarkers in Amnestic Mild Cognitive Impairment
訳注1:軽度認知障害の 3タイプ―健忘型,複数高次機能軽度障害型および記憶力外高次機能障害型―に分けたひとつの型。
訳注2:バター、脂の多い肉などに多く含まれる。
訳注3:炭水化物の摂取後の血糖上昇の程度の指標で、100から0―ブドウ糖は100、大豆は15など―で示す。わが国では馴染みが薄いようだが、「日本Glycemic Index研究会」があり、理由が理解できないが「つくばピンクリボンの会」のページに詳しい解説がある。
訳注4:リン酸が活性酸素によって形成されるプロスタグランジン様化合物で喫煙、糖尿病、動脈硬化に関連する。
編者:被験者数が少ない予備的研究とはいえ、食事によってアルツハイマー病の生体指標が変化することが示されたことは、「健康的な食事」が健康人のアルツハイマー病への進展を抑える可能性が示唆されたことになる。なお視覚記憶がわずか4週間の「健康な食事」で改善しているとは驚きだ。


アフリカ系カリビアンに認知症が多い(6月9日/イギリス)
ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ精神保健学部Department of Mental Health Sciences, University College Londonのサイモン・エレルマンSimon Adelman医師らのグループは、 認知症の有病率についてカリブ海域で生まれでイギリスに住むアフリカ系カリビアン高齢者とイギリス生まれの白人高齢者を比較調査しました。対象者は、ロンドン北地区の5人の一般医から紹介された60歳以上の218人のアフリカ系カリビアンと218人の白人を対象とし、その文化的背景の考慮した調査方法で認知機能障害のスクリーニングで陽性と判定された人について標準的な実用的基準で二人の医師が別々に診断を行いました。その結果、アフリカ系カリビアンの対象者は2歳若かく、さらに認知症のアフリカ系カリビアンは白人より8年若いことを認めました。認知症の有病率は、アフリカ系カリビアンの方が白人より、年齢、社会経済的要因の条件を同じとしても、有意に高い(9.6%:6.9%)ことを認めました。また対象者のなかで最も多い認知症のタイプは、アルツハイマー型認知症(69%)で、次が血管性認知症でした(28%)。10人の血管性認知症の人のうち9人がアフリカ系カリビアンでした。調査グループは、この結果が医療や社会猿サービス提供や予防的介入に活かされ、有病率が高い要因として血管性危険因子や社会的立場が関係していると思われ、さらなる調査が必要としています。
この調査論文は、イギリス精神科医師会The Royal College of Psychiatristsが発行するイギリス精神医学雑誌British Journal of Psychiatryの電子版2011年6月9日版に掲載されました。
この調査結果について、エーデルマン医師は、次のように述べています。
「私たちの調査で、カリブ海生まれでイギリスに住む高齢のアフリカ系カリビアンたちに認知症が多いこと、そして認知症がより若いアフリカ系カリビアンに多いこともわかりましたが、その要因を解明したわけではありません。イギリスの高齢黒人たちは、一般に第一世代の移民で黒人グループの多くはアフリカ系カリビアンの血統です。この人たちの多くが退職年齢に達してきます。医療関係者は、認知症が白人よりアフリカ系カリビアンに多いこと、より若い層に多いことを知っておくべきです。年齢ではなく、人が必要なことに基づいた医療や社会サービスを提供するよになることを支援したい」
HealthCanal.com 09/06/2011 Dementia more common in older African-Caribbean people, study showsおよび論文Prevalence of dementia in African?Caribbean compared with UK-born White older people: two-stage cross-sectional study
編者:多民族国家で旧植民地からの移民が多いイギリスならではの調査だ。研究者はただ調査するだけでなく、その結果が医療や社会サービスに活かされることを期待している。



アルツハイマー病の予防因子についての証拠は乏しい(5月9日/アメリカ)
アメリカ・シカゴにあるノースウエスタン大学ファンバーグ医学部Northwestern University Feinberg School of Medicineの予防医学科マーサ・ダヴィグラスMartha L. Daviglus教授(写真左上)らのグループは、昨年4月にアルツハイマー病に関する国立保健研究所最先端科学会議National Institutes of Health State-of-the-Science Conferenceで、これまで研究されてきた認知機能の低下やアルツハイマー病と変更可能な因子(訳注)との関係にについてほとんどの証拠が乏しいとの指摘がありましたが、これに関する研究の最終報告を行いました。
これは、保健社会福祉省医療の研究と質の局Department of Health & Human Services Agency for Healthcare Research and Qualityが委託したものです。
調査対象は1984年から2009年10月27日までのメドラインMEDLINEとコクランCochrane Collaborationのデーターベースなどで英文で書かれた報告書およびこの分野の専門家の発表や公の場での討論としました。さらに、先進国の研究で、一般人で50歳以上が参加し、対象者数は300人以上または無作為対照研究では50人以上で、追跡期間が変更可能な因子に関わってから評価までの期間が2年以上、アルツハイマー病の診断が納得できる診断基準によるものとしました。決められた基準に該当するか検討し、因子についての全般的にみた証拠の質を「低い」「中程度」「高い」に分類しました。
その結果、糖尿病、中年期の高脂血症、現在の喫煙はアルツハイマー病の因子とされ、また地中海風料理、葉酸摂取、低または中程度の飲酒、認知機能訓練、身体的活動は危険性を下げることに関係していましたが、その証拠の質はこれらすべてについて「低い」と認めました。結論として、現在、変更可能な因子とアルツハイマー病の関係を認めるにたる不十分な証拠を見つけることができなかったとしています。
この研究論文は、アメリカの神経学雑誌Archives of Neurologyの電子版5月9日版に掲載されました。
この結果についてダヴィグラス教授は次のように述べています。
「こうした主要な因子がアルツハイマー病の進行に関して重要な役割を持っていることを否定するものではありませんが、現在のところ、たとえ持っていたとしても病気の危険との関係を確認することができなかったのです。確実は証拠を得たいなら、私たちはさらに研究を進める必要があります」
セントルイスにあるワシントン大学医学部Washington University School of Medicineの神経学講師でありこの分野の専門家であるが今回のグループのメンバーではないキャサリーン・ロエCatherine Roe氏(写真左下)は「今回、見当されたことは、今後数年間、多くのアメリカ人に影響を与えるでしょう。実際のところ、今後50年内にアルツハイマー病が急増します。これは全般的いって誰もが長生きするようになっているからです」と話しています。
またダヴィグラス氏の次のように述べています。
「原因としての関連を認めるにたる証拠の質についてどれも不適切でありますが、一般の人たちはこれまでと同様にライフスタイルに注意し、他の慢性疾患と関係する行動は避けるべきです。健康的なライフスタイル―運動、血圧のコントロール、禁煙、肥満防止、適度な睡眠―は続けるべきです。もちろん、私たちの勧告は、将来、もっと計画されよく考えられた研究を行うことで、より多くの集団でのアルツハイマー病との関連を確認できるような質の高い証拠を得ることができると確信することがとても重要です」
またロエ氏は次のように話しています。
「質がより高い研究は必要ですが、その他の研究資金と異なり状況が悪いとは思っていません。これは困難ですが挑戦すべき仕事です。現在、科学研究の資金が危機的である時にこそ、より多くの資金が必要となります。緊迫感をもって望むべきです。アルツハイマー病が多くなる高齢にベビーブーマーが到達し始めています。もし、アルツハイマー病を治したり進行を遅くする方法を見つけられなかったら、私たちに膨大な被害者と経済的損害をもたらすことになるでしょう。もっと多く、もっとよいことを行うことがとても重要だと思います」
usatoday May 9,2011 Little evidence that diet, lifestyle cuts Alzheimer's riskおよび論文Risk Factors and Preventive Interventions for Alzheimer Disease State of the Science
訳注:変更不可能な因子とは、年齢、性別、遺伝の因子こと。
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編者:アルツハイマー病の因子に関する厳しい報告が昨年4月に出た。それを確認するための研究の報告記事だ。文中にあるとおり証拠の質が低いとしても現在分かっている危険因子を避け、保護因子を取り入れた生活習慣を続けるのがよい。実際のところ質の高い証拠を得るための疫学研究はとても大変だ。これまで以上の参加者、時間、資金、研究者が必要だ。一体誰がどこでやるのか。新薬の開発と異なり利益を生まないテーマに企業は興味を示さない。これまでの継続された研究の手法をできれば改善しながら進めるのが現実的だと思う。
関連情報:「証拠が無いことは無いことを証拠づけるわけではない」ジョン・ブライトナー(2011年5月16日)
今回の結論については予防的介入などの介入試験を推奨するもので、現在の標準となっている「証拠の基づく医療(EBM)」を反映したものです。こうした基準によるとアルツハイマー病の予防研究の分野は推奨するに足る結果は出されていません。この結論自体は疑いの余地はありません。
確かに、この予防研究の分野でそのような証拠が出るように計画されてきましたが、1,2の例外はあるものの、すべての無作為対照試験(RCT)は、軽度認知障害も含めアルツハイマー病の症状を改善さえるか、安定させるかを目指したものです。しかしこれまでの試験の驚くほどの失敗で私たちは困惑し士気喪失しました。このため予防ではなく治療の研究を行うように強いられています。アルツハイマー病の病理過程のなかで発症前の状態に介入する方法を検討することになります。これも1次予防なのです。
現在まで、私たちの予防研究の分野で1次予防に関する成果はほとんどないのです。よく知られていることですが、1次予防試験はとても費用がかかり多くの年月が必要です。それにもかかわらずアルツハイマー病が忍び寄り公衆保健の危機にあるなかで、この課題に関わることに気が進まないというわけにはいきません。実際、アメリカでは心臓疾患やがんの予防試験に数10億ドルを使っていますが、アルツハイマー病にはなぜ使わらえないのでしょうか。
「部屋の住む象」は、現在まで、少なくともこれまでの試験がうまくいくであろうと示唆するデータも集められていません。アルツハイマー病予防に関するこれまでの最善の証拠は、介入研究ではなく観察研究から得られたもので、そのため一定の結論が得られていません。動物モデルは明らかに代替的試験ですが、この信頼性も当てにならないことがわかっています。多分、現在の動物モデルが人間のアルツハイマー病には似ていないので、動物による治療反応から人間による試験を裏付けることにならないのです。
しかし、人間で候補に挙がっている予防因子の有効性についての試験を向上させることに積極的になる必要があります。このことからアルツハイマー病の発症前の状態での介入の効果を示す方法を発見する努力が求められます。幸い、現在、画像や生化学的指標によって発症前での経過を調べることができるとことまで来ています。こうして生体指標の使い方を向上させる必要があります。特に、アルツハイマー病の発症前の過程での時間的に変化する充分に感度があり正確な方法を見つける必要があります。もしこうした方法を手に入れると、有効性が比較的高く短期間の試験によってアルツハイマー病の発症前の進展を軽減するのがどのような要因が介入するに有効であるか知ることができます。このような方法で長期にわたり経費が高くつくこれまでのアルツハイマー病予防試験に対して論理的にも新たな選択となるでしょう。
Absence of proof is not proof of absence(John Breitner: McGill University Faculty of Medicine
( Alzheimer Research Forum 16 May 2011 Research Brief: Last Word from NIH Panel on AD Prevention より)
編者:ジョン・ブライトナーJohn Breitner氏(写真左)はアルツハイマー病予防の研究方法について、アルツハイマー病発病してはいるが症状がない状態での生体指標を使って危険因子を調べることを提案している。発病は予防出来なくても発症が予防できれば1次予防としている。


中年期の肥満は高齢期の認知症の危険因子(5月2日/スウェーデン)
スウェーデンにあるカロリンスカ研究所Karolinksa Institutetの加齢研究センターAging Research Centerのウエイリ・フWeili Xu医師(写真左上)らの研究グループは、中年期の過体重および肥満と高齢期の認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)との関係について調査しました。既に行われていたスウェーデン双子登録Swedish Twin Registryに登録している65歳以上(平均年齢74.4歳)の双子8534人について認知症の有無(DSM-Ⅳに基準による)を判定し、登録情報から中年期(平均年齢43.4歳)の身長、体重の情報をもとに解析しました。
その結果、対象者のなかで認知症と診断された人は350人、認知症の疑いとされた人は114人でした。中年期で過体重(Overweight)は肥満係数BMIが25以上30までとし、肥満obesityは30以上としました。これに該当する人は2541人(対象者の29.8%)でした。中年期の正常体重(BMIが20以上から25まで)の過体重、肥満と高齢期の認知症との関係をみたところ、正常体重に比べてそれぞれ1.71倍、3.88倍でリスクが高いことを認めました。また中年期の過体重も肥満ともにそれぞれAD、VaDの発症リスクも高めていました。認知症の発症には遺伝因子と早期の生活環境因子―肥満―が認知症発症に関与していることが示唆されました。
この研究論文は、アメリカ神経学雑誌Neurologyの電子版2011年5月2日版掲載されました。
この結果についてフ医師は次のように述べています。
「今回の研究によって過体重・肥満が認知症を起こすことを証明したものではありませんが、両者の関係を証明したことにはなるでしょう。中年期にできるだけ早い時期に体重をコントロールすることは高齢期の認知症を防ぐためにも重要でしょう」
中年期の過体重・肥満と高齢期の認知症との関係が認められてにもかかわらず、研究者たちは137組の双子に関心を示しています。その双子群では双子の一人は認知症になりの他方が認知症にならなったのです。この場合、中年期の過体重・肥満の影響はかなり小さいのです。
これについてフ医師は「結果からみて過体重・肥満と認知症の両方になりやすい遺伝子があるようですが、この程度の小集団で強い相関の有無を決めるのは難しい」と述べています。
さらに次のように話しています。
「遺伝子によって過体重・肥満になりやすいのか単に食習慣が悪いかどちらにしても、過体重・肥満と認知症の関係でわかりやすい説明として、身体の脂肪組織がホルモンが分泌する物質が脳機能に影響しているかもしれないというものです。また過体重・肥満は糖尿病、心疾患、血管疾患のリスクを増すことは示されていますが、これらの影響を考慮してもなお体重と認知症との関係があるのです」
この研究に加わってはいないカイザーパーマネント研究部Kaiser Permanente Division of Researchのラッヘル・ホワイトマーRachel Whitmer氏(写真左下)は次のように述べています。
「こうした結果は、アルツハイマー病や認知症の予防には典型的に症状が出るはるか前に始める必要があることの証拠です。人々は今日行っていることが、今から30年、40年後に自分たちに影響することを理解する必要があります。健康的な体重を維持することは、『心臓によいことは脳にもよい』というに繋がります」
Reuters Health  May 2, 2011 Extra weight linked to dementia risk: studyおよび論文Midlife overweight and obesity increase late-life dementia risk A population-based twin study
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編者:肥満と認知症との関係についての研究、調査は多いが、今回は世界的にみて最も規模が大きいと思われる双子調査からの結論で、肥満が認知症の危険因子とすることを補強したものだ。


社会的活動は認知機能の低下を少なくする(5月2日/アメリカ)
アメリカ・シカゴにあるラッシュアルツハイマー病センターRush Alzheimer's Disease Centerの博士課程修了研究者であるブライアン・ジェイムスBryan D. James氏らのグループは、社会的活動と認知機能の関係について、認知症のない1138人(平均年齢79.6歳)を対象に最長12年間、平均5.2年間の追跡調査行いました。
年齢、性別、教育歴、人種、社会的つながり、うつ状態、慢性疾患、障害、神経症的傾向、外向性、認知活動、身体活動を同じとして比較したところ、追跡結果から社会的活動が多いほど認知機能の低下が少ないことが認めました。社会的活動指数が1ポイント上がるたびに全般的認知機能の低下率が47%少なくなることも認めました。全般的認知機能の低下の割合について最も頻繁に社会的活動をしている人は最も活発でない人より70%少なかったのです。この関係は、認知機能の5つの構成分野のどれにも共通に認められました。結論として社会的活動する高齢者ほど認知機能の低下が少ないのです。
この研究論文は、国際神経心理学会雑誌Journal of the International Neuropsychological Society電子版に2011年4月に掲載されました。
この結果についてジェームス氏は「今回の研究で、鶏が先か卵が先かという問題―認知機能が低下したために社会的活動が低下したのか、社会的活動が低下したために認知機能が低下したのか―に答えたことになるでしょう。12年から14年間、追跡し認知機能の変化だけでなく社会的活動の変化も観察してきました。その結果、認知機能の変化がより社会的活動の変化の方が先であることを知ることができた」と述べています。
研究者は、対象者の社会的活動―家族や友人を訪問、ビンゴやスポーツ行事への参加、外食、ボランティア活動、宗教行事への参加、コロンブス騎士会Knights of Columbusのような団体会員になるといったことについて聞き取りました。回答内容によって社会的活動を数値化しました。
研究者の同じ対象者による前回の調査の結果、社会的活動が1ポイント増えると身体的障害になる危険性を43%少なくなることが認められています。さらにジェームス氏は「社会性は知能や思考の機能に関連しているといだけでなく、生活の自立の程度にも関連する」と述べています。人格や社会的つながりといった要因が同じとしても、社会的活動の影響が大きいことを認めました。
また前回の調査で著しい社会的孤立は少なくとも喫煙などと同じくらい死亡に関係し、早期死亡の危険性が2倍になることを、またより頻繁で親密派な社会的関係が心疾患や脳血管障害などの疾患発症の危険性を下げることも認められています。事実、強い友人関係や家族関係があると、運動や肥満軽減より早期死亡の危険性を下げることも認められています。これは私たちにとってありがたいことで、楽しみながらまた自制することは少なくてよい関係によって危険性が少なくなるのです。
いったい何故、友人や家族らとの相互作用が治癒になるのでしょうか。ストレス反応は社会的つなばりに緊密に関係しています。大人になっても母の手を握ることでほとんどの人の血圧が下がります。あるいは最も少ない人間的接触のなかで育つ幼児は、ほとんどの場合、小児期死亡の危険性が何倍も高くります。社会的接触が乏しいことは、すべての社会的動物にとってストレスになることが多いのです。また高い慢性的なストレスは、心疾患、ある種のがん、肥満、すべての精神疾患、依存症の危険性を高めます。
ジェームス氏は次のように述べています。
「社会的であることはストレスを和らげ、ストレスと脳機能との間には加齢と同じくらいとても強い関係があります。人間の脳の発達は、社会の複雑性によってもたらされたもののようです。社会生活は霊長類のなかで人間が最も複雑で、これは関係の数がはるかに多いことに関連します。霊長類では社会的な関わりの数が大きいと、人間の最高の機能を持つ脳の部分であり人類で最も発達している新皮質がますます肥大します。私たちの脳では150人との関係を持つことができるように進化していているらしい。それが1人や2人との関係しかない場合は、発達にそぐわないことになるのです」
このことからて驚くことではありませんが、社会性をもつことが認知症の危険性を下げることになり、脳は他人との関係を管理するように出来ています。筋肉と同様に脳も「使わないと失う」という同じ助言が当てはまるのです。
Time healthland May 2, 2011 Friends With Benefits: Being Highly Social Cuts Dementia Risk by 70% および論文Late-Life Social Activity and Cognitive Decline in Old Age
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編者:平均年齢約80歳の高齢者を対象として追跡調査でも社会的活動が認知機能のよい影響を及ぼすということは、これより若い層はもっと影響を受けるということか、同じなのか、あるいは影響が少ないということなのか。若年層では、もっと良い影響を受けことになるのだろう。


ストレスや不安は認知症の発症要因(4月/アメリカ)
アメリカ・シカゴにあるラッシュ大学医療センター神経科学部ラッシュアルツハイマー病センターRush Alzheimer's Disease Center, Department of Neurological Sciences, Rush University Medical Centerのロバート・ウイルソンRobert S. Wilson医師(写真)らのグループは、高齢者の認知機能の低下の要因と考えられる神経症的傾向neuroticismについてアルツハイマー病発症との関係について疫学調査を行いました。
対象者は、シカゴ在住の認知症のない高齢者785人で、神経症的傾向について自己報告をしてもらい、毎年、対象者の臨床的評価を行い、平均3.4年追跡しました。死亡例については脳の病理学的検査も行いました。調べたことは、アルツハイマー病の臨床的診断、全般的および部分的認知機能の検査、脳の病理検査については斑、梗塞およびレビー小体について調べました。
その結果、追跡期間中に94人がアルツハイマー病になり、発病した人たちと発病しなかった人たちとで比較したところ、不安およびストレスに弱いことが強いことが認められ、アルツハイマー病の発病の用意になっていると考えられました。
この研究論文は、アメリカ老年精神医学会雑誌American Journal of Geriatric Psychiatry の2011年4月号に掲載されています。
論文:Vulnerability to stress, anxiety, and development of dementia in old age
編者:不安やストレスに弱いということでアルツハイマー病による症状がそうでない人より早目に出やすいと理解してよいだろう。


高血圧などあるとアルツハイマー病になりやすい、治療するとなりにくい(4月13日/中国)
中国・重慶にある解放軍第三軍医大学の大坪病院Daping Hospital, Third Military Medical Universityの神経学科および臨床神経科学センターDepartment of Neurology and Center for Clinical Neuroscienceのヤンジアン・ワンYan-Jiang Wang教授(写真左上)は重慶加齢研究グループChongqing Ageing Study Groupの代表ですが、その研究に一環として軽度認知障害(MCI)がアルツハイマー型認知症(DAT)への進展と高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、および脳血管障害の血管性危険因子(VRF)との関係について疫学調査を行いました。
調査対象者は、軽度認知障害がある55歳以上の男女837人で、このうち414人はVRFを一つ以上もっておりました。この人たちを5年間、毎年追跡し調査しましたが、最期まで追跡できたのは650人で、アルツハイマー型認知症になったのは298人、MCIのままの人は352人でした。VRFがあるMCIの人はアルツハイマー型認知症に2倍なりやすかったが、対象者がそれぞれもっていたVRFをすべて治療した人は治療しなかった人よりDATになるのを39%少なく、VRFの一つの治療をした人はしない人よりDATに26%少なかった。
この論文はアメリカの神経学雑誌Neurologyの 2011年4月13日号に掲載されました。
研究結果についてワン教授は次のように述べています。
「動物実験によるとVRFはアルツハイマー病の進展に関与しています。しかし人間で同じ因子がアルツハイマー病の進展因子であるかどうかはっきりしていません。しかし今回の研究は非介入によるものですが、VRFがDATに進展するのに重要な役割をするとの考えを支持する重要な証拠になりました。またVRFを治療することが無意味ではないはずで積極的介入すればMCIがDATへ進行するのを少なくするかもしれません」
アメリカ・アルツハイマー病協会Alzheimer's Associationの医学科学担当部長のウリアム・ティエスWilliam Thies氏(写真左下)は次のように述べています。
「この研究から多くのことが伝わってきます。まずVRFがあるかどうか、どの程度かを調べ、必要があれば治療しましょう。それによる利益は、血管性疾患の予防以上かもしれません。しかし、今回の研究は非介入試験であり、介入する臨床試験ではないので、VRFを治療することによってアルツハイマー病になりにくいという証拠にはならないのです」
WebMD April 13, 2011 Treating High Blood Pressure May Delay Alzheimer'sおよび論文Vascular risk factors promote conversion from mild cognitive impairment to Alzheimer disease


適量の飲酒は認知症を減らす(3月2日/ドイツ)
ドイツのマンハイムにある精神保健中央研究所のCentral Institute of Mental Healthのジーグフリード・ワイアラーSiegfried Weyerer教授(写真)らの研究グループは、ドイツ認知症研究ネットワークGerman Research Network on Dementia (KND)およびドイツ退行性認知症研究ネットワークGerman Research Network on Degenerative Dementia (KNDD)の一環として高齢者の飲酒とアルツハイマー型認知症など認知症の発症との関係について疫学調査を行いました。
調査対象者は、ドイツの一般医に受診する75歳以上(平均年齢80.2歳)で調査開始時には認知症を認めなかった3202人で、調査開始時、1,5年後、3年後に飲酒も含め医師による専門家による臨床的質問を行いました。認知症の診断はDSM-Ⅳにより、飲酒は量(エタノールのグラム数に変換)および酒の種類も調べました(飲酒期間は問わない)。なお調査期間中に死亡した301人については家族やかかりつき医師から情報を得ました。飲酒状態は、全く飲まない人50.0%、1日アルコール量10グラム未満の人24.8%、1日10以上19グラムは12.8%、20グラム以上は12.4%であった(訳注:アルコール5%の缶ビール350ccではアルコール量は17.5グラムとなる)。また飲酒する人の48.6%はワインのみ、29%はビールのみで、飲酒は、男性、年齢が若い、教育歴が高い人に多く、一人暮らし、うつ状態とは関係ありませんでした。
平均追跡期間3年の間に対象者のなかで認知症になったのは217人(うちアルツハイマー型認知症は111人、血管性認知症は42人、その他の認知症は14人、原因不明は50人)で、調査開始時の飲酒量と認知症発症およびアルツハイマー型認知症とのあいだにそれぞれ有意な関係を認め、軽度から中程度の飲酒量の人ほど認知症の発症が少ないことが認められました。
この研究論文は雑誌Age and Ageingの電子版2011年3月2日号に掲載されました。
EurekAlert 2-Mar-2011 Research suggests alcohol consumption helps stave off dementiaおよび論文Current alcohol consumption and its relationship to incident dementia: results from a 3-year follow-up study among primary care attenders aged 75 years and older
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編者:本論文では適量とはどの程度なのかはっきりしないが350mlのビール一缶に相当する量とみてよいだろう。なお適量の飲酒がアルツハイマー病、認知症および認知機能低下の予防因子とする報告は多い。今回の調査は対象者が75歳以上であり、調査時だけでなくそれまでの飲酒歴が強く関与していると思われる。


「認知症は予防できるか 人と交流で趣味を持つのも効果的」 (2月27日/日本経済新聞)
認知症を防ぐ効果的な手法を探る研究が少しずつ進んでいる。体をよく動かし、ボランティアなどの活動に積極的に取り組み、できるだけ買い物なども自分の力でやるよう心がけるのがよいという。人間関係をどう築き、計画を作り実行に移していくかを考える習慣が、認知機能の衰えを防止するようだ。
「仲間に報告するので張り合いもある。体調もよくなり、集まるのが楽しみになった」。東京都板橋区に住む武田国彦さん(76)は、区が実施する認知症予防のためのウオーキングプログラムに参加している。会社員時代は営業マンで外出が多かったが退職後は、家にこもりがち。軽い物忘れが気になり認知症になるのかと不安になった。そんなときに区のプログラムをみつけて応募した。
板橋区のプログラムは東京都健康長寿医療センター研究所が作成。ウオーキングの習慣が認知症の予防に効果があるかどうかを検証する事業の一環だ。65~79歳までのアンケート調査などで公募した約140人が対象。認知症の前段階とされる軽度認知症障害(MCI)の人も含む。
昨年9月から実施、毎日7000~8000歩のウオーキングなどを3カ月続ける群と講話会だけの群で比べた。3カ月後、認知機能がやや低下した人ではウオーキングをしたグループがしないグループに比べて認知機能が改善した。まだ検証途中だが、同センター研究所の高橋龍太郎副所長(写真左上)は「ウオーキングを習慣づけると一定の予防効果が期待できそうだ」と話す。
話し合って計画作り
このプログラムのポイントは、数人でグループを作り自主的に活動する点。連絡や記録の確認などは仲間同士で実施、定期的に開く合同ウオーキング会のコース決めもする。「同じ目的をもつ仲間が集まり、目標や計画を立て、実行するという習慣も認知症の予防に役立つ可能性が高い」(同研究所の宇良千秋客員研究員)
世界でも例のないスピードで高齢化が進む日本。アルツハイマー病など認知症の患者は2010年には208万人だが、25年には323万人に増えるともいわれている。根本的に治療できる薬の開発はメドがたっておらず、予防に期待が集まる。
人との交流や趣味などが認知症を防ぐことにつながるとの研究結果が増え始めた。
星城大学の竹田徳則教授(写真左中)と日本福祉大学の近藤克則教授(写真左下)らは愛知県の65歳以上の男女約9700人を対象に、行動や生活環境などの違いで3年後に認知症になりやすいかどうかを調査した。
趣味がない人はある人より男性で2.2倍、女性で1.5倍なりやすかった。趣味のサークルや地域活動に参加していない人は、している人に比べて男性で2.1倍、女性で1.7倍なりやすかった。
男女差があるものも多い。例えば趣味の種類。男性は園芸や庭いじり、作物栽培をしない人はする人に比べて2倍近く認知症になりやすかった。一方、女性で差がでたのは、散歩、ジョギングなどのスポーツ。やっていないと2倍近く認知症になりやすかった。竹田教授は「園芸では計画性や実行力が鍛えられ、スポーツは有酸素運動が認知機能の低下を防ぐ」と話す。
編み物のような手先を使う作業は、今回の調査で予防効果はみられなかったという。
健康格差の拡大も
近藤教授らが神奈川歯科大学と実施した調査によると、歯を失うと認知症の発症リスクが高くなることがわかった。65歳以上で自分の歯がほとんどなく入れ歯も使っていない人は、歯が20本以上残っている人に比べて認知症になるリスクが1.9倍になった。差が出る背景を、近藤教授は「健康格差の拡大も無関係ではない」と指摘する。
例えば、所得でみると男性では年収が200万円未満の人は200万円以上に比べて1.5倍ほど認知症になりやすい。受けた教育年数でも差が出る。10年未満の人は10年以上の人に比べて1.9倍ほどなりやすかった。「男性は高学歴で経済的に裕福な人ほど認知症になりにくい傾向がみられる」(近藤教授)
教育年数や所得の差などは本人の責任と片付けてしまいがちだ。趣味やボランティアなどの活動も住んでいる地域によって参加しやすさに差がある。近藤教授は「認知症の発症予防を個人の努力だけに任せるのは無理。社会全体で取り組んでいくことが重要だ」と話す。(西村絵)
《インターネット》◇認知症について詳しく知るには「日本認知症学会ホームページ」(http://dementia.umin.jp/g1.html
《本》◇健康格差と認知症のなりやすさについて知るには「『健康格差社会』を生き抜く」(近藤克則著、朝日新書)
日本経済新聞 2011年2月27日 原文のまま


不適切なICU治療で認知機能障害(2月15日/アメリカ)
集中治療室Intensive-care unit(ICU)では、重症患者を身体的に拘束したり、強力な鎮静剤を投与したり、人口呼吸器につないだりしてきました。目的は、治癒、積極的治療および監視の間に、患者の痛み、不安、興奮を無くすことにありました。
しかし、こうした治療によって患者が退院後、また数年後に新たな問題を起こす危険性が高いことがわかってきました。いくつかの研究によれば、たとえば、長期におよぶ強力な鎮静でせん妄―死亡や認知症になりやすい脳の一時的急性障害―が起ったり増悪したりするのです。ICUでの身体拘束は、筋肉や骨の弱くし虚弱にすることで回復が遅れるのです。退院後1年、ICUの患者の半数ほどは職場に復帰でていません。
痛みやせん妄の評価を可能なかぎり定期的に行い患者に鎮静を強いることを少なくすることも含めた新しい5段階の基準を実践する病院が増えています。また病院は、患者をできるだけ覚醒させ自発呼吸を定期的に観察するようにしています。さらに、患者の精神的身体的な安定が保てるように可能な限り起こし身体を動かすようにしています。
連邦政府の助成で行われたヴァンダービルト大学Vanderbilt Universityの「ICUせん妄認知障害研究グループICU Delirium and Cognitive Impairment Study Group」などが開発したいくつかの手順のどれかをアメリカのおおよそ40%の病院が採用しています。
アメリカ集中治療医学会Society of Critical Care Medicineは、ICU患者の治療を専門とする職種の団体ですが、現在開発中のICU治療のガイドラインの一部の基準を再検討しています。
ICUの患者は、一般に自分の治療を監視することはできないので、友人や家族が重篤な状態で最も適切な治療を受けているかどうかを確認することはとても重要です。ヴァンダービルト大学は、せん妄の診断および痛みや鎮静に関するテストに使える新しい基準や評価方法の情報をwww.ICUdelirium.orgで提供しています。
ノースカロライナ州ダーラムにあるデユーク大学Duke Universityと退役軍人医療センターVeterans Administration Medical Centerの神経科医であるバーバラ・カムホールBarbara Kamhol氏は「ICUに入ることの最終的な目的は、自分の生活に戻るためによくなることです。もし、ICUで障害が生まれることがあれば回復の目標に沿いません」と述べています。
毎年、約500万人のアメリカ人が少なくとも1日ICUに入っています。心不全、大手術後の回復期、敗血症や肺炎のような重篤な感染症などによります。重篤な患者ほど死亡率が高いのですがICUでの平均生存率は80~90%です。
しかし、ヴァンダービルド大学の関係者は「最近行われた調査によるとICUを出た人の50~80%の人はその後、入院中のせん妄の期間に応じて長期的認知機能障害を持っている」と述べています。 ジョンズホプキンス大学Johns Hopkins Universityなどの研究によると、ICU生存者の3分の1は退院後、うつ状態になり、15から40%は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を経験しています。
せん妄は、怖い幻覚を含む一時的な急性脳障害で、ICUの多くの患者にはありふれたものですが、患者とのコミュニケーションが困難になり見落とされることがあります。医師は、せん妄の影響が一時的で回復可能な脳障害と思っておりせん妄にあまりにも関心がありませんでした。
ヴァンダービルト大学の救命治療の専門家で、今回の新しい基準の開発に加わったE.ウルシー・エリーE. Wesley Ely教授(写真左上)は次のように述べています。
「最近の研究により、ICUでの長期間のせん妄が長期的認知障害や死亡の危険因子であることが明らかにされました。ICUの生存者は、仕事を失い、『脳が糖蜜に浮遊しているようだ』と間隔を抱き、記憶や思考の問題をもちながら退院しているようです」
インディアナ大学加齢研究センターIndiana University Center for Aging Researchのマラス・ボウスタニMalaz Boustani准教授(写真左中)は次のように述べています。
「高齢患者は認知機能が低下しやすいが、40歳代、50歳代の成人でも同様です。この年代では脳を損傷から自然に守る神経が若い脳よりは能力を失っています。今年の7月にセンターで認知機能および機能リハビリテーションのためのICU退所生存者の外来を始めます」
メルシア・エイカース氏(51歳)は、2年間の白血病の化学療法から回復したあと、2009年、急性呼吸促迫症候群ARDSという重篤な疾患のためヴァンダービルト大学の病院に入院しました。彼女は「看護師が鎮静レベルを少なくため、頻繁に起こし『石は水に浮かぶか』といった質問で精神状態を評価していた」と述べています。彼女は、ICUに6週間入り、幻覚を経験し、筋力がかなり低下しましたが、「会社の管理職としては仕事に戻れず、日常的作業にも困っています。復帰への長い旅ですが戻ってはいない」と述べています。
エリ医師は「多くのICUが、患者を傷つけたり、表現できない痛みに苦しむことを恐れて、自分たちの診療方針をいやいや変えたりしてきました。患者を起こし、部屋のなかを歩かせたり、痛みや混乱のレベルについて質問するより、鎮静させられた患者の方が治療しやすい」と述べ、痛みのコントロールが常に最も優先すべきだと強調しています。
ジョンズホプキンス大学の重症疾患の専門医であるデイル・ニードハムDale Needham准教授(写真左下)は次のように述べています。
「医師や看護師が新しい方法を納得するのには数年かかるでしょう。私たちは医学部や看護学部で、患者はICUでの経験を覚えてはないが、妄想的記憶や幻覚や長期的障害が起こると教えられました」
リース・ミッチェル氏(55歳)は、4年前、ヴァダービルト大学のICUに入院し、エリー医師の治療を受けました。リンパ腫ために幹細胞移植を受けたあと発熱と重度の敗血症にかかりました。当初、人工呼吸器に適応できなかったので強力な鎮静がおこなわれました。ミッチェル氏には妊娠中の妻のジェシカ氏が傍についていましたが、エリー医師はできるだけ毎日、鎮静を減らし痛みや精神状態の評価を度々行いました。夫が治り始めコミュニケーションできるようになってそのことを確信しました。9日後に退院して、今度は妻の出産でベッドサイドにいることができました。生まれた息子は、エリー医師にちなんでウエスWesと名付けました。
ミッチェル氏は「コンピューターソフトの会社で販売代表として仕事に戻ることには問題がなかった」と話し、ブリッジやテニスも楽しめるようになりました。しかし複数の仕事をしなければならないとき、時々、困難を感じると言っていますが、適切な治療が受けられず人生にとって重大な変化に直面しなければならない人よりは、もっとよい状態になると思っています。
Wall Street Journal FEBRUARY 15, 2011  Changing Intensive Care to Improve Life Afterward
編者:WSJのロウラ・ランドロLaura Landro記者(写真右)の記事だが、内容を裏付ける論文の紹介がないが、アメリカのICUでの意義ある取り組みの紹介だ。我が国でのICUではこうした問題の認識はどうなのか、また取り組みはどうなのだろう。


聴力障害は認知症の危険因子(2月14日/アメリカ)
アメリカ国立加齢研究所National Institute on Aging(NIA)のルイジ・フェルッチィLuigi Ferrucci医師(写真左上)らのグループは、聴力障害とアルツハイマー病を含む認知症との関係ついて追跡調査を行いました。
調査対象者は、バルティモア加齢追跡スタディBaltimore Longitudinal Study of Agingの一環として1990年から1994年まで聴力検査を受けた認知症のない639人(36歳~90歳)で、2008年まで追跡しました。聴力障害は、正常(~24デシベル)、軽度(25~40)、中程度(41~70)重度(71~)に分けました。認知症の診断は、複数の医師によって行われました。分析に際しては、性別、人種、教育、糖尿病、高血圧、喫煙を考慮しました。
追跡期間中に認知症になった人は58人(うちアルツハイマー病は37人)でした。認知症の発症頻度と聴力障害に程度に相関が認められました。聴力が正常な人と比較すると、聴力障害が軽度の人は1.89倍、中程度の人は3.00倍、重度の人は4.94倍に発症頻度が高くなることを認めました。アルツハイマー病についても似たような傾向を認めました。聴力障害は初期認知症の徴候の一つなのか、認知症の危険因子なのかについてはさらに調査が必要と結論づけています。
この論文は、神経学雑誌Archives of Neurologyの2011年2月号に掲載されています。
この結果について、フェルッチィ医師は次のように述べています。
「聴力障害が認知症の危険因子であるので補聴器や手術で聴力が回復することで認知症発症の危険性を下げることは可能かもしれませんが、科学者としてこれを認めることはできません」
また、アルバートシュタイン医科大学Albert Einstein College of Medicineの神経科のリチャード・リプトンRichard B. Lipton医師(写真左下)は次のように述べています。
「聴力障害は神経細胞の損傷によるとする考え方から、聴覚器官と内耳および振動を伝える有毛細胞の損傷によるとみなされます。音を伝える神経の損傷が、記憶や高度の認知機能に関係する神経細胞の損傷を示唆するのかもしれません。可能性としては3分の1ですが、聴力障害が社会的孤立を招くという証拠は多くあります。認知的活動は認知症を防ぐという証拠もあります。このことから認知機能の刺激が少ないことがアルツハイマー病のリスクに関与することになります」
HealthDay News February 14, 2011 Study Suggests Hearing Loss-Dementia Linkおよび論文Hearing Loss and Incident Dementia
編者:聴力障害は認知症の発病要因というよりは悪化要因と考えたい。聴覚神経細胞の変性と記憶関連神経細胞の変性が連携して進行するとは考えにくい。むしろ、聴力障害→社会的活動の低下→認知機能活動の低下→認知機能の低下という流れが理解しやすいと思う。


メタボリックシンドロームの高齢者は認知機能が低下(2月2日/フランス)
フランス・ボルドーに在る国立保健医療研究所Institut national de la sante et de la recherche medicale(INSERM)のクリステル・ラフエティンChristelle Raffaitin医師(写真)らの研究グループは、メタボリックシンドロームと認知機能の関係について疫学調査をしました。調査参加者は、3市で行っている追跡調査Three-City Studyの登録者の 65歳以上の7087人(女性4323人、男性2764人)で、認知機能については、開始時、2年後、4年後に、全般的な認知機能をみるMini-Mental State Examination(MMSE)、言語機能をみるIsaacs Set Test(IST)、視覚記憶をみるBenton Visual Retention Test (BVRT)で調べました。メタボリックシンドロームの基準は、国立コレステロール教育プログラムの成人治療委員会第3基準National Cholesterol Education Program?Adult Treatment Panel III criteria(高血圧、大きい腹囲、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール、高血糖の5つのうち少なくとも3つある状態)により、参加者のうち約16%が該当しました。分析には、年齢、性別、教育歴、開始時の認知機能、APOE4遺伝子について考慮しました。
その結果、調査開始時にメタボリックシンドロームの人は、ない人よりMMSEとBVRTで認知機能の低下を有意に認めましたが、ISTでは認めませんでした。またメタボリックシンドロームの項目のうち、高中性脂肪血症、低HDLコレステロールはMMSEの低下に有意に関係し、糖尿病はBVRTとISTの低下と関係するが、空腹時高血糖では関係しませんでした。
この報告は、アメリカ神経学会雑誌Neurologyの2011年2月2日の電子版に掲載されています。
この結果についてラフェティン医師は次のように述べています。
「私たちの研究は、メタボリックシンドロームとその項目が認知機能にどのように関係するかに重点を置きました。結果からメタボリックシンドロームを適切に管理することで年齢に関係した記憶障害の低下を遅くしたり、認知症の発症を遅らせることになるでしょう」
Newswise  2/2/2011  Metabolic Syndrome Linked to Memory Loss in Older Peopleおよび論文Metabolic syndrome and cognitive decline in French elders The Three-City Study
サイト内関連記事:記事1 記事2
編者:メタボリックシンドロームと認知症との関係については疫学調査に基づくいくつかの報告がある。


ホルモン療法は中年期では認知症の保護因子に、高年期では危険因子(2月2日/アメリカ)
アメリカ・サンフランシスコ退役軍人医療センターSan Francisco VA Medical Centerの老年精神科主任のクリティン・ヤッフェKristine Yaffe医師(写真)らの研究グループは、これまでの研究で高年期のエストロゲンホルモン療法が認知症のリクスを高め、他方、中年期のホルモン療法は認知症の保護因子として働くことが示唆されています。ホルモン療法のこの相反する結果について既存のデータから調査を行いました。
これを確かめるため、民間医療保険会社のカイザーパーマネント医療プログラムKaiser Permanente Medical Care Programの北カリフォルニア地区の閉経後の女性会員5504人についてホルモン療法の中年期と更年期におけるリクスについて調べました。1964年から1973年の調査による中年期(平均年齢48.7歳)のホルモン療法の有無を、1994年から1998年までの薬局のデータから高年期(同76歳)のホルモン療法の有無を把握しました。認知症の診断は、1999年から2008年までの神経科、神経心理科、内科で入院・外来のおける診断を根拠としました。
その結果、1524人(27%)が認知症と診断されました。認知症でない人と年齢、教育歴、人種、肥満度、子供の数、合併症を同じとして比較すると、中年期にホルモン療法を受けた人は受けなかった人より認知症のリクスが26%減り、高年期にホルモン療法を受けた人では受けなかった人よりリスクが46%高くなりました。両方の時期に受けた人はそうでない人とリスクは同じでした。中年期のエストロゲンホルモン療法は、認知障害に保護的に働き、高年期では危険因子として働くことが認められるとされました。
この論文は、アメリカ神経学会雑誌Annals of Neurologyの2011年1月号に掲載されています。
この調査結果についてヤッフェ医師は次のように述べています。
「全国的調査として行われた女性保健企画Women’s Health Initiativeでは、エストロゲンホルモン療法が認知症の危険因子であり、さらに乳がん、脳血管障害、心臓血管疾患の危険因子であることが明らかにされました。しかし、エストロゲンと認知症の問題が、なぜある時期―閉経期中と閉経後―で異なる影響を及ぼすのかについて疑問が残りました。今回の調査はこの疑問に答える最善の方法です。臨界仮説critical window hypothesisが確認されたとみてよいでしょう。この研究は二つの理由で重要です。第1は、高年期のエストロゲンホルモン療法が認知症の危険因子であり、認知症予防のため服用すべきでないとした女性保健企画の結果を再確認したこと、第2は、閉経期、すなわち中年期にはエストロゲンが神経に有益でありアルツハイマー病でみられるような脳の変化を少なくすることにエストロゲンホルモン療法が保護的に働くことを示唆したことです。今回の研究は非介入の観察研究であり、介入する臨床試験ではありません。あくまでも結果は示唆したものであり証拠となるものではありませんが、私は閉経後のホルモン療法を支持しません」
HealthCanal.com 02/02/2011 Estrogen linked with lower dementia risk when taken in middle age, higher risk later in life および論文Timing of hormone therapy and dementia: The critical window theory revisited
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「中年期のホルモン療法は高年期の認知症の発症を抑える」(2008年)
「65歳前に女性ホルモンを服用するとアルツハイマー病になりにくい」(2007年)
「女性の早期のホルモン療法は認知機能の低下を防ぐ可能性」(2006年)
「女性ホルモン療法は痴呆発症の危険を増やす」(2004年
編者:エストロゲンホルモン療法と認知症との関係については研究と議論が積み重ねられてきたが一応の結論が出たとみてよいのだろう。critical window hypothesisとは興味ある仮説だが、どのあたりが臨界なのか。


有酸素歩行運動で海馬が増大し一部の記憶機能が改善(1月31日/アメリカ)
アメリカのイリノイ大学心理学部Department of Psychology, University of Illinoisのアーサー・クレイマーArthur F. Kramer氏(写真)らの研究グループは、運動と海馬および記憶機能の関係について介入試験を行いました。
120人の男女の高齢者を無作為に60人づつ分け、介入グループには有酸素歩行運動を1週間、3回、1年間続けました。非介入グループにはストレッチ運動を行いました。試験前、半年後、1年後に記憶テストとMRIによる脳容量を調べました。
介入グループでは2%、海馬容量を増大し、非介入グループは1.4%減少しました。記憶機能については二つのグループで空間記憶以外には有意な差を認めませんでした。
この研究論文は、アメリカ米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences電子版の2011年1月31日号に掲載された。
この結果についてクレイマー氏は「わずか中程度の運動で年齢に関係する海馬の萎縮を乗り越えられるかもしれません。空間記憶にもよさそうだ」と話しています。
研究者によると、通常、海馬の容量は年間、1から2%減少し、記憶低下や認知症に繋がると考えられています。
MedPage Today January 31, 2011  Exercise, Brain Volume Linked in Older Adults および論文Exercise training increases size of hippocampus and improves memory
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編者:運動が認知症の保護因子であることについてはさまざま報告があるが、記憶に関係する海馬の容量を増大させることはその裏付けになるかもしれない。


「歯がない人は認知症のリスクが最大1.9倍に―厚労省研究班」(1月26日/ケアマネジメント)
日本福祉大学の近藤克則教授(写真)を主任研究者とした、厚生労働省の研究班は、高齢者の歯の状態と認知症の関係についての調査結果を発表した。
この調査は愛知県に住む65歳以上の高齢者4,425人を対象に4年にわたって追跡し、その期間、新たに認知症を発症して要介護認定を受けた220人を割り出し、分析した。その結果、年齢の違いや持病の影響を考慮しつつ、認知症になるリスクを計算した数値は、自分の歯が20本以上ある人に比べ、歯がほとんどなく入れ歯も使っていない人で1.9倍にのぼった。同様に、あまり噛めない人のリスクは、何でも噛める人の1.5倍、かかりつけ歯科医院のない人は、ある人の1.4倍だった。
これまでは歯の状態と認知症の関係はわかっていなかった。しかし、今回の結果から研究班は、「歯を失うことや噛めなくなることで、認知症発症のリスクが高まることが示された。また、歯を失う原因となる歯周病などの炎症が直接脳に影響することや、噛めなくなって咀嚼機能が落ちることで、脳の認知機能の低下を招く可能性があると考えられる」としている。
認知症予防の観点からも、高齢になったら、定期的に歯科で口の中のチェックを受け、噛む力を保つために入れ歯を入れておくように心がけることが大切だと言えそうだ。
ケアマネジメント 2011年1月26日 原文のまま
サイト内関連記事:奈良医科大学のグループの報告


抗酸化剤は有効なのか?(1月25日/アメリカ)
有名なダイエット成分は何もよいことはなく、むしろ有害なこともあります。
抗酸化剤を多くの摂ってないと悪いことをしているように感じる人たちは、抗酸化剤を救いとみている食品生産者は、このことをどう考えたらよいのでしょう。この間、メディア、食品表示、栄養学者、科学者は、抗酸化剤―果物や野菜に多く含まれ加齢やがんや心疾患を起こす悪人と指摘され、微小分子によく反応するフリーラディカルを取り去る―についておびただしいを助言し推薦してきました。
まず、研究によると、抗酸化剤―ベーターカロチン、ビタミンC、ビタミンEなどありふれ無害にもみえる物質―を摂るサプリメントが健康に有益でないだけでなく危険―その理由は明らかではありませんがーかもしれないことが明らかになってきました。総体として死亡率を高めるといったような表現で報告されています。
現在、この種の研究は、大流行している抗酸化剤のもっとも基本的なとらえ方に挑戦しているのです。実は、抗酸化剤で中和されるフリーラディカルの多くは身体とって価値ある作用を持っていると言われているのです。最も重要なことは、最近の毒素と戦いう白血球は細菌感染に戦うために多量のフリーラディカルを生産し、このフリーラディカルはがんとも闘っているのです。
イギリスの化学者で科学ライターのダイヴィド・ブラドレイDavid Bradley氏(写真左上)は、かれのブログ”Reactive Reports(Reactive Chemistry Blog)”で「酸化物が病原体やがん細胞に対する免疫の最前線にあるので、過剰な抗酸化剤を摂取することは、いつもおかしいと思っていました。がんや感染症など健康上の問題があれば抗酸化剤のサプリメントを摂ることは、健康にとって必ずしもよいことではない」と指摘しています。
抗酸化物についてのこれまでの流行を壊した最初のヒントは、抗酸化剤サプリメントの健康への効果について評価する試みで、何百という研究論文からのもので、その結果は、些細なことではありませんでした。2008年、国際的な科学者の団体で医学研究について評価するコクランコバボレーションCochrane Collaborationは、総数40万人近くが参加した67の研究の論文について徹底的に調べました。その目標は、抗酸化剤のサプリメントが健康な人、または臓血管疾患、神経疾患、リウマチ、腎疾患、内分泌疾患などを持つ人の死亡率を下げるかを調べることでした。その結果は、「抗酸化剤サプリメントが、1次および2次予防に有効であるとする証拠は認められなかった。さらに、ビタミンA, ベータカロチン、ビタミンEは、死亡率を高めることが認められた」というものです(訳注報告)。
またこれらの抗酸化剤サプリメントとルーゲリック病(ALS)、アルツハイマー病、軽度認知障害、肺がんとについて分析したところ、コクランの科学者の見解は、すべて同じで「ノー」でした。さらにそれぞれの分析から、総体として死亡率が高くなると繰り返して警告されています。
サプリメントの形での抗酸化剤がそれほど危険である明らかな理由は分かっていません。一つの考え方は、高用量で、それが酸化促進剤となりDNAと細胞損傷反応を刺激するというものです。しかし、よくある解釈は、動物実験での研究で科学者がよく認める抗酸化剤が感染症やがんと戦う免疫細胞に干渉するという現象を人間でみているのではないかというものです。
脂肪や赤みの肉のように鉄分が豊富な食品はフリーラディカルカルをよく産生させますが、フリーラディカルは身体における通常の代謝で作られています。フリーラディカルは、人体の構成物である蛋白、脂肪、炭水化物、DNAを損傷し、さらに血管細胞も損傷し血液中から腫瘍細胞の侵入を可能とし転移させるのです。タフ大学抗酸化剤研究室Antioxidants Research Lab at Tufts Universityのジェフリー・ブランバーグJeffrey Blumberg室長(写真左中)は「こうしたフリーラディカルによる破壊は、通常の加齢と同様に、心臓血管疾患やがんなどの多くの慢性疾患の起し促進し刺激していると考えられる」と述べています。この仮説では損傷を防ぐことができれば病気を防ぐことになります。
研究によって多くの抗酸化剤が、フリーラディカルを抑制するほかの物よりと示唆されることは、食品生産者の耳には心地よい音楽です。たとえば、ベーターカロチンは、酸化作用が強いスーパーオキシドジスムターゼsuperoxide dismutaseを抑えますが、ビタミンEはこれより相対的に重要です。他方、ビタミンEは、LDL(いわゆる「悪玉コレステロール」)の酸化反応の抵抗性を増します。こうしたことは健康によいことで、酸化されたLDLは血管壁に付着する沈着物を産生しやすくします。こうしたいろいろな抗酸化剤によるいろいろな機能があるということは、市場関係者に抗酸化剤サプリメントを勧めることになります。
次に抗酸化剤サプリメントを使う人たちに警告すべき研究による知見と直接的な利点についての疑問を以下紹介します。
○「アメリカ科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences」の次号に発表される報告は、抗酸化剤が生殖能力を傷害するかもしれないというものです。イスラエルのワイズマン科学研究所Weizmann Institute of Scienceの発達生物学者のナヴァ・デケルNava Dekel氏(写真左下)が指導する研究は、メスのマウスの卵巣に抗酸化剤を投与したところ、排卵レベルが急落し卵胞がほとんど卵を排出しないことを認めました。これは、排卵にとって抗酸化剤が中和するフリーラディカルが必要なことを示唆しています。活性酸素種reactive oxygen speciesとよばれるフリーラディカルの一種は、排卵の生理的引き金となる黄体形成{おうたい けいせい}ホルモンに反応して産生されるのです。このことは、黄体ホルモンが、介する活性酸素種を通して排卵が起きていることを示唆しています。もし活性酸素種が抗酸化剤で無くなると排卵は起こらないのです。
○2010年発表された実験動物の研究によると、よく知られた2種類の抗酸化剤―ケルセチンquercetin(紅茶、緑茶、赤たまねぎなどに含まれる)とフェルラ酸ferulic acid(リンゴ、チョウセンアザミ、小麦などに含まれる)は腎臓がんの発生と増殖を促しているらしいのです。農業食品科学雑誌Journal of Agricultural and Food Chemistryの掲載された論文の科学者は、「抗酸化剤の腫瘍発生有害効果について再評価する時期だ」と指摘しています(訳注論文1)。
○最後に、実験動物による新しい研究によると、血液中の抗酸化剤のレベルを上げる自然界にある蛋白は動脈硬化や動脈閉塞を促進させるようだとしています。動脈硬化・血栓・血管生物学雑誌Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biologyの今年の1月号に掲載された論文によると、抗酸化剤が心臓の健康状態を改善する作用があるようには認められない理由についての手がかりを提供しています(訳注論文2)。Nrf2という蛋白は抗酸化剤の促進作用があるが血中と肝臓内のコレステロールのレベルを高めらことが認められました。コレステロールは動脈硬化の最大の要因です。
市場調査会社のミンテルMintel によると、2009年に抗酸化剤とラベルに表示された新商品108種類がアメリカの店舗の棚に置かれています。これは2005年の16種類、2007年の82種類と比較すると多くなっています。「購入者注意」が防止の役に立ってはいません。
本記事の記者Sharon Begley(写真右) はニューズウイークの科学関係のライター。
Newsweek January 25, 2011 Antioxidants Fall From Grace
報告:Antioxidant supplements for prevention of mortality in healthy participants and patients with various diseases
論文1:Quercetin and Ferulic Acid Aggravate Renal Carcinoma in Long-Term Diabetic Victims 
論文2:NF-E2-Related Factor 2 Promotes Atherosclerosis by Effects on Plasma Lipoproteins and Cholesterol Transport That Overshadow Antioxidant Protection
編者:悪人扱いされているフリーラディカルのすべてが悪いのではなく生体内でのよい役割もあり、この働きを抑える抗酸化剤が場合によっては有害となるとの指摘を初めて知った。生物学的、医学的内容で批判的に解釈できない個所もあるあが貴重な記事として紹介した。もっとも高血圧の最大要因である食塩も人体には不可欠な物質であり、量が多いと問題となる。抗酸化剤もそうしたもので多ければよいというわけではなく、抗酸化剤への安易な依存への警鐘の記事と理解したい。さらなる研究を待ちたい。


記憶トレーニングの効果は認められない(1月18日/イギリス)
イギリスにある医療の有効性の評価に関して国際的権威を言われているコクランコラボレーションCochrane Collaborationは、今月、発表したコクランライブラリーCochrane Library最新版で健康な高齢者および軽度認知障害の人に対する認知機能訓練の有効性を認めたかったとする報告をしました。
チューリッヒ大学心理学研究所 Psychologisches Institut der Universitet Zurichのマイク・マルチンMike Martin氏(写真左上)ら評価グループは認知機能訓練の効果に関する研究論文を審査しました。
これまで多く―すべてではないが―無作為ではない方法による認知訓練が60歳以上の高齢者の認知機能に影響あるとする証拠があります。しかし再度、論文を審査することにしました。対象は、高齢者および軽度認知障害の人の認知機能(記憶、実行機能、注意、スピードなど)が認知機能訓練の介入による効果に関する文献を体系的に審査しました。
文献は、1970年から2007年までの健康な高齢者および軽度認知障害の人に対する認知訓練の有効性を無作為介入試験を行ったもので、36の研究がありこの研究に参加した人の計2229人です。研究はグループ単位で認知訓練を行ったもので、訓練の総時間は6時間から135時間、日数は1日から2年までの幅があります。
審査の結果、健康な高齢者については、訓練後直ちまたは遅れて現れる効果として言語想起の改善が認められたが、会話など通常の活動をしているグループを凌ぐのではありませんで、特別な記憶訓練効果は認められませんでした。軽度認知障害についても同様でした。これまでのところ、健康な高齢者および軽度認知障害の人に対する記憶訓練の介入によって効果があるとの特別な証拠を認められませんでした。
なお審査グループは、このことは、さらに長期、あるいは異なる介入方法によっても効果がないことを意味するものではないと付け加えています。また、今後の課題として介入方法の標準化が求められると勧告しています。
今回の審査結果についてマーチン氏は次のように述べています。
「すべての人ではないが、多くの高齢者は認知機能の低下を経験します。覚えにくい、計画を立てにくい、集中しにくい、以前のように仕事を早くこなせないといったことを経験します。こうした高齢者のなかで認知症の危険因子とみなされることがある軽度認知障害になる人がいます。いくつかの研究によると、脳訓練が認知機能の低下を遅くしたり改善することがあると示唆していますが、こうした研究や訓練の方法にはかなりのバラツキがみられます。どのような方法の訓練が高齢期の認知機能の低下を防ぐ可能性について連携ある研究を進める必要があります」
ある研究者は、脳を適切に働かせるための訓練として身体運動―アエロビクスからバランス運動まで―を追求しています。たとえば、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学University of British Columbiaのテレサ・リウアンブロースTeresa Liu-Ambrose氏(写真左下)が進める小規模な研究では、女性高齢者の抵抗訓練は精神集中の改善と関係あると結論づけています。同氏は「現在、認知機能障害に明らかに有効な薬物がないという保健上の大きな問題があり、薬によらない訓練は臨床的に重要である可能性をもつ」と述べています。
Health Behavior News Service January 18, 2011 Memory Training Might Not Be Best for Reducing “Senior Moments”および報告書”Cognition-based interventions for healthy older people and people with mild cognitive impairment”)
編者:脳トレについての最も新しい評価報告である。残念ながら既存の方法では認知機能の長期的な効果は期待できない。川島教授の脳トレ、学習療法も同様か。もっともこうした研究や試みを今後続けることを否定するものではない。


認知症のリスクがわかるネットのテスト(1月14日/アメリカ)
ジュンズホプキンス大学医学部Johns Hopkins University School of Medicineの精神医学・行動科学科の教授であり、アメリカ・アルツハイマー病協会発行の雑誌「アルツハイマー病と認知症Alzheimer’s & Dementia」の電子版に掲載された論文Preliminary findings from an Internet-based dementia risk assessmentに筆頭者でもあるジェイソン・ブランドJason Brandt氏(写真)らによって開発された短時間でできるオンラインの評価法は、認知症になる危険性があるのではと心配している高齢者に役立ち、医師から直接の診察を受けるかどうかを決めることができます。
この方法は、改良されその有効性が確認されたものですが、診察、血液検査、画像検査などの医師による総合的な評価に代わるものではありません。代わりに、この評価は、医師が早期に発見して最善な方法で管理できると思われている認知症について自分自身を教育できるような科学的な方法でもあります。
ブランド教授は次のように述べています
「人口の高齢化に伴い認知症はますます増えているので早期診断は重要です。アルツハイマー病など認知症は忍び寄ってくるものではなく、脳のなかで何10年も潜伏しているのです。この評価方法は、誰にその危険性があるかを判定するのに有用な可能性をもっています。『認知症リスク評価Dementia Risk Assessment』の質問項目のなかには、認知症の危険因子として証拠があるとみなされている高血圧、うつ状態、糖尿病、高脂血症、頭部外傷の既往が含まれています。また評価には、些細な記憶力の低下を見つけることができる単純な記憶テストも含まれています」
www.alzcast.org のサイトで評価を受けて50歳以上の357人の結果について分析されました。記憶テストが最下位の人たちは、高齢、男性、高血圧に、また重い記憶上の問題があると報告している人に多いことが認められました。記憶障害があると報告した人のうちの9%に重い記憶障害が認められていますが、3分の1以上の人は、一親等に認知症か記憶障害の人がいると報告しています。
この評価方法は、オンラインでは5分から10分ほどで終えることができ、質問内容な他の科学的に有効性を認められたものを利用したものです。
さらにブランド教授は次のように述べています。
「評価方法は、加齢や多忙な生活による単なるもの忘れから認知症を区別することに役立つでしょう。鍵が見つからない、駐車場所が思い出せないといったことから、認知症であるかどうか厳密に判定できるようになっています。私たちの目的は、実際、危険因子は何であるかを認識することであり、さらに安心させることでもあります。私たちは、50歳の自分の記憶力が30歳のときと同じと期待するものです。20年前のようには早く走ることはできません。記憶だけがよいはずはないでしょう。アルツハイマー病はまだ治癒できない病気であり、早期の介入によって認知機能の低下を遅くすることができます。この評価方法でいくつかの危険因子があるとわかった場合あるいは症状がある場合が受診のきっかけいになることを期待しています。認知症の多くは、必ずしも持続的ではなく、受診することによって脳機能を維持するのに役立つでしょう。高齢者は、ときどき自分の記憶や認知機能について話すことを恐れています。この新しい評価方法は、自分の個人的な危険因子について自宅で誰にも知られずに学ぶことができるのです」
高齢化する社会で多くの人たちが10年、20年後に認知症と診断されるかもしれないのです。
ブランド教授は以下のように追加して述べています。
「評価方法の有効性とそれによる予測値が示され、身体に触れることなく簡単で特別な専門技術を必要としないこのスクリーニング方法は、多くの人たちに受け容れられ、実際におおいに利用される可能性があります。予備的な研究でその有効性が確かめられていますが、さらに向上させるための第一歩でもあります」
ブランド教授のグループは、現在、オンラインによる認知症リスク評価による結果を、ジュンズホプキンスのクリニックの医師によって個々人を実際に多角的に評価した結果と比較する研究を進めています。
なおこの研究は、ジョフリービーネ基金GBギヴスズバックアルツハイマー病企画Geoffrey Beene Foundation GB Gives Back Alzheimer’s Initiativeからの助成金を受けて行われています。ジョンズホプキンスのマーク・ロガーソンMark Rogerson氏も共同研究者です。
Johns Hopkins medicine News and Publications 14/01/2011 Online Tool Can Help Seniors Quickly Determine Risk for Dementia
編者:アルツハイマー病など認知症の危険因子についてのこれまでの知見をもとに作られた認知症リスク評価は試みるに値する新しい試験的なツールだ。日本語版がほしい。


社会的要因で認知機能が低下(1月11日/台湾)
台湾(中華民国)の国立保健研究所National Health Research Institutesの老年学研究科Division of Gerontology Researchのツオユン・ランTzuo-Yun Lan研究員(写真)らのグループは、人口・社会的要因および健康関連要因(慢性疾患、ライフスタイル、食事など)と認知機能との関係について台湾の高齢者を対象に調査を行いました。
研究グループは、2005年に行われた「国民健康聞き取り調査National Health Interview Survey」に参加した65歳以上の高齢者2119人のデータを分析しました。認知障害はミニメンタルステト検査(MMSE)で24点以下と規定しました。
分析の結果、認知障害の頻度は22.2%でした。認知障害と要因とを比較分析したところ、教育歴が低い、単身である、社会支援が少ない、脂肪摂取が少ない、脳血管障害の既往がある、身体的に不活発である、コーヒーを飲まない、身体機能が乏しいといった要因が認知障害の危険因子であることを認めました。
この結果から研究グループは、こうした要因は変えることができるものであり、ライフスタイル、定期的な運動や社会参加することで認知障害を予防したり、少なくすることが可能であろうと思われるが、さらなる調査が必要であるとしています。
この論文Socio-demographic and health-related factors associated with cognitive impairment in the elderly in TaiwanはBMC Public Healthの2011年1月11日版に掲載されています。
7thSpace  11 January 2011  Socio-demographic and health-related factors associated with cognitive impairment in the elderly in Taiwan




2010年


殺虫剤は認知症の危険因子かもしれない(12月2日/フランス)
フランスのボルドーにある国立公衆保健・疫学・発達研究所Institute for Public Health, Epidemiology and Development(ISPED)のイザベル・バルディIsabelle Baldi医師(写真)らの研究グループは、フランスのワイン畑の労働者の神経行動能力に対する殺虫剤の影響の調査をPHYTONER スタディとして行いました。
南西フランスのボルドー地区の農民対象の健康保険制度に加入している929人が1997年から1998年まで調査対象として登録されました。この人たちは2001年から2003年に追跡の最初の調査が行われました。参加者は、決められた質問票に回答し、9項目の神経行動検査―記憶、言語、反応時間など―を受けました。また生涯にわたる殺虫剤への暴露―直接暴露、間接暴露および非暴露―に従って分類されました。また教育レベル、年齢、性別、飲酒量、喫煙、向精神薬の服用、鬱状態も調べられ分析に際に考慮がされました。追跡できたのは614人でした。検査結果で低い能力が示されたのは暴露グループで、低暴露あるいは非暴露グループより約5倍リスクが高いことが認められました。追跡期間中の検査結果の変化については、暴露グループは最低の能力を示し、MMSEで2ポイントの低下を認めるリスクは暴露グループで2.15倍高いことが認められました。これらの結果から殺虫剤への長期の持続的な暴露は認知機能の低下を招き、認知症への進展する危険性も示唆されました。PHYTONERスタディーは、殺虫剤暴露に関係した神経学障害の自然経過についての最初の前向きデータです。
この研究論文は産業環境医学雑誌Occupational and Environmental Medicine電子版2010年11月22日号に掲載されています。
バルディ医師らは、次のように述べています。
「こうした機能低下は40歳代後半か50歳代の比較的若い年代で短期の追跡でも著しいことを認めました。認知機能の軽度障害により暴露集団で外傷の危険性が高まり、またアルツハイマー病など神経退行性疾患への進展の可能性も高まるのではという疑問も生じます。この経過の間、認知障害やその進展がよく理解できます。65歳に近い集団内で65歳に近い人が初めてアルツハイマー病になっています」
フランスはヨーロッパで最も殺虫剤を使う国で、世界的には、アメリカ、日本、ブラジルについで第4位です。フランスでは農業分野で80万人以上が殺虫剤に暴露されています。さらに暴露された80万人が退職しています。世界的には殺虫剤の定期的に使う労働に従事している者の数は数千万人と推計されています。
なお研究チームは、同じ集団で最初の調査から12年後の第3の評価を行っており、その結果は2012年か2013年の発表されることになっています。
(AFP 02/12/2010 Working with pesticides linked to dementia: studyおよび論文Neurobehavioral effects of long-term exposure to pesticides: results from the 4-year follow-up of the PHYTONER Study)
サイト内関連記事:記事1 記事2
編者:殺虫剤は神経伝達物質に関与して神経細胞の機能を低下させる働きがあり、これが長期に及ぶと認知機能の低下ひいてはアルツハイマー病などの神経退行性疾患に誘因になると考えられる。それにしても殺虫剤の使用で世界第2位とは知らなかった。この狭い国土で。


職場の磁場は認知症の危険因子になりうる(11月23日/スウェーデン)
スウェーデンのカロリンスカ研究所Karolinska Institutetの医療疫学・生物統計学科Department of Medical Epidemiology and Biostatisticsのナンシー・ペダーセンNancy L. Pedersen医師(写真)らの研究グループは、磁場と認知症との関係について疫学調査を行いました。
超低周波磁場extremely low-frequency magnetic fields (EMF)が認知症の発症のリスクになるかどうかについて、スウェーデン双子認知症研究Study of Dementia in Swedish Twins (HARMONY)の登録者9508人を対象に、職業歴や診断情報をもとに分析しました。
具体的には、電話で認知症の判定を行ったうえ、さらに詳しい臨床検査を行い、また職業歴からEMF暴露レベルを分類し、年齢、性別、教育、血管性危険因子、就労状況の同じ条件に調整し、さらに75歳未満発病事例と75歳以降発病事例、職業歴から手作業と非手作業とにグループ分けしました。
その結果、EMF暴露のレベルと認知症およびアルツハイマー病とは有意な相関を認めませんでした。ただし、75歳までに認知症発症および手作業に従事していた人については、中程度および高度のEMF暴露は低暴露と比べ、認知症の危険性が高いことを認めました。また、認知症の遺伝が異なる42組の双子についても認知症とEMFとの有意な相関は認めませんでした。結論として、職業上のEMF暴露は、手作業労働に従事していた人で75歳未満発症の認知症に限り危険因子と認められました。
この調査論文は、老年学雑誌Journals of Gerontology Series a - Biological Sciences and Medical Sciencesの2010年11月号に掲載されています。
Behavioral Health Central  November 23, 2010 New dementia research reported from R. Andel and co-authors および論文Work-Related Exposure to Extremely Low-Frequency Magnetic Fields and Dementia: Results from the Population-Based Study of Dementia in Swedish Twinsより)
編者:磁場と認知症発症との関係について定説はない。なお認知症と電磁波の関係については次の報告書が参考になる。
”Environmental Threats to Healthy Aging With a Closer Look at Alzheimer’s & Parkinson’s Diseases” Greater Boston Physicians for Social Responsibility and Science and Environmental Health Network(pdf5M)


アルツハイマー病になる人とならない人がいる理由(11月22日/アメリカ)
アルツハイマー病の研究のなかで、認知症症状がなかった多くの人の死後の脳解剖でアルツハイマー病に関係する脳の変化を認めることは驚きとみなされてきました。
ジョンホプキンス大学Johns Hopkins Universityの脳資源センターBrain Resource Centerの研究者であるフアン・トロンコソJuan Troncoso医師(写真左上)は、ビッグシンクBig ThinkのブレイクスルーBreakthroughsの番組で、このことはアルツハイマー病の発症を阻止できる人が居ることの証拠であると述べています。
こうした人たちは弾力性が関与する物質が、脳に形成されるアミロイドを呼ばれる繊維性の蛋白です。マウントサイナイ病院Mount Sinai Hospitalのサミュエル・ガンディSamuel Gandy医師(写真左下)の話よると、この物質は一生の間、全身の細胞で産生されるが、ある時点までは身体にほとんど影響を及ぼさないのです。
ガンディ医師は「その理由について理解されていませんが、脳のある部位で形態的な変化が起きている」と述べています。
ガンディは言います。
アミロイド蛋白は神経細胞に毒性のある塊を形成します。アミロイド仮説として知られているアミロイドの脳毒性は、アルツハイマー病でどのように神経が分解され、死滅した細胞が脳の働きを妨害するかについての普及した仮説であり、最終的に、認知症になり死に至るのです。
ガンディ医師は「脳にアミロイドが形成されているにもかかわらず認知症の症状のない人たちは、少なくとも、しばらくの間、アミロイドの毒性に抵抗性を示している」と述べています。
脳の局所的な変化を補完するような働きを新たに行う脳の多くの部分が代償するシステムによってこうした状態が生まれているのです。
トロンコソ医師は「アルツハイマー病のアミロイド毒性に対して弾力性の証拠となるものを探しています。たとえば、脳画像研究で発病しない人の海馬が一般的に大きいことが示されている」と述べています。
ガンディ医師は次のように述べています。
「認知症のない多くの人たちの大きな脳細胞が弾力性の原因である可能性を示唆しています。現在、確立された治癒方法がないなかで、弾力性を創ることによってアルツハイマー病による認知症の発症を遅らせる、さらに治療に結びつくかもしれません。そのメカニズムを確認できれば、病気の予防や症状の軽減に役立つかもしれません」
Big Think November 22, 2010 Why Some People Get Alzheimer’s and Others Don’t
編者:討論の要約記事で、弾力性は曖昧な概念ではあるが、生物学的裏付けが期待されれとしても、アルツハイマー病の発症要因を説明する概念として有意義かもしれない。


アルツハイマー病のスクリーニング検査は意味があるか(10月30日/カナダ)
早期から頻繁に検査して病気を早期にみつけることは健康な生活に重要だと長く信じてられてきました。健康にとって重要なことのひとつは常に警戒し注意深くしおき、病気になる前に病気を見つけるように努めることです。
予防によって健康を保つと信じられてきたことには、今日、乳がんのマモグラフィーや前立腺がんのPSAといったスクリーニング検査も含まれます。医師は、こうした定期的に受けることを勧める無害な検査は、血液中の糖分やコレステロールを調べるのと同じようなものとみなされています。
病気のスクリーニングへの誘惑は強いのですが、その理由は、将来を見通して健康を保つために何かをしなければと促されるのです。病気がまだ小さくて管理可能な時期に発見して、手術を受けるか薬を飲むかといった病気に対応する時間が持ち悪化を予防することができます。
私の直観からして、健康そうな人をスクリーニングすることをあまりに熱心に勧められると困惑し、証拠がないのにスクリーニングを支持することによってなんらかの危害を招くことになるということを、これまでのクリーニングのデータから主張することは難しいことです。スクリーニングは、将来、病気になる危険性に高めることに関係する因子を示すかもしれないが、確定的に危険因子を示すことは稀なのです。医師から危険因子を持っていると告げられると、本当の病気と危険因子とを混同するという問題があります。危険因子は病気の状態ではないのです。
健康な人をスクリーニング検査をすることが理に適っているためには次の基本的な事柄に合致する必要があります。
○検査は簡単で安全である
○高い信頼性で問題が発見される
○有効な治療を行うことができるほど早い時期に見つかる
○他の方法では発見できなくて、さらに診断につながる
○発見さえる病気について、なんらかの有効なことができる
アルツハイマー病の人と共にいる人たちのグループの立場から、スクリーニングの必要性がかなり強調されているとみています。カナダのアルツハイマー病協会Alzheimer Society of Canadaによると、認知障害と認知症をもった人はカナダの高齢者の約20%を占めていますが、カナダでアルツハイマー病の人の4分の1以下の人しか診断と治療を受けているに過ぎません。協会は、現在、カナダには50万人ほどの認知症の人がいるが、ベビーブーマーが65歳になる2015年までに認知症の人は50%増えると指摘しています。私たちが遭遇するだろう認知症という明らかに津波が起こるにもにもかかわらず、病気の原因や予防や治療について私たちがほとんど知らないということが問題です。アメリカの研究者は、アルツハイマー病や認知機能低下の原因を特定するために、25の系統的な評価と、250の単独の研究についても分析しました。その結果、不幸なことに決定的な原因は見つかりませんでした。
糖尿病、アポリポE蛋白の遺伝子、うつ状態、喫煙歴などは、アルツハイマー病になる可能性が高くなる危険因子とみなされ、発病を抑える因子として、精神的身体的に活発であることとみなされていますが、この種の研究が示す根拠の質のレベルは低いのです。
アルツハイマー病を早期にみつけるという試みは、病気の進行を変える可能につながるとすることに基づくものですが、アルツハイマー病の進行を遅らせると証明された治療はまだありません。
カナダ・アルツハイマー病協会は、交通事故、処方の間違い、経済的困難さといった認知症の発症に関係することは早期の診断で避けることができると指摘しています。また協会は、早期にアルツハイマー病を発見することで診断に基づいて行える多くの時間を持つことができるとも指摘しています。アルツハイマー病ためのスクリーニングを行うことは、破壊でしかありません。何も症状がない状態の10年、20年の間を「前アルツハイマー病」とラベルが貼られることになると思わざるをえません。私にとっては、何時、執行されるかわかならに残酷な死刑判決を受けたようなものです。
健康な人を対象として集団スクリーニングが弊害よりも病気を発見する意味があるのはわずかな事例しかありません。今年、マモグラフィーとPSAについての深刻な否定的見解が示されました。この二つのスクリーニングは多くの研究に基づいて行われてきましたが、偽陽性による弊害についての認識が高まり、また一人の死亡を防ぐために何年もかけて何千人という人をスクリーニングしなければならないという事実があります。不必要な医学的スクリーニングは、時間の浪費であり、出費がかさみ、不安に陥れ、さらに危険も副作用も伴うのです。
アルツハイマー病のスクリーニングは一般的な高齢化の津波と交差しして、カナダの高齢化するベビーブーマーによる膨張を津波と言われ、大切な医療制度を滞らせ破壊するかもしれないと書かることが多いのです。カナダの公的医療制度が、高齢化する患者および認知症の患者で積み荷が重すぎて暗礁に乗り上げ、沈むようなことになるから、沈没を避けるためにあらゆる種類の可能な解決方法―たとえばスクリーニング検査―を受け入れることになるのかもしれません。もっと多く人がもっとよいアルツハイマー病スクリーニング検査を受けたいと思うかもしれないし、この破壊的な病気を発見して避けるため、もっと多くの公的投資も受け入れることになるかもしれません。
高齢化という津波は本当なのでしょうか。これは虚構の上での話です。何年もかけた多くの研究によると、人口の高齢化は医療費に、1年あたり1%ほどの出費を押し上げるにすぎにないと推計されています。医療制度が沈没すると恐れることは、すべての年齢の人がもっと医療を利用することになるという事実によるものです。証明されてはいないで高価で危険な医療―もっと多くの薬とスクリーニング―を使うようになることが問題なのです。確かに、高齢化した人々には住む場所と世話する人が必要です。地域社会もそれに合わせて変化し適応しなければなりません。いずれにせよ医療制度への津波はありません。
発病前のアルツハイマー病の危険因子について熱心な研究のなかに、バイオマーカーや生物学的な徴候についてのものがあります。症状が出る前に発病する危険性を持っているかどうかを示されることが望まれています。こうした因子を探すことにはかなり介入した技術が必要で、脳CTによる脳構造の変化や脳脊髄液検査でアルツハイマー病の関係する蛋白を特定すると検査、また遺伝子検査もあります。これらの検査は、決定的な決め手にはなっておらず、上に挙げた受け入れ可能なスクリーニング検査の条件の最初の二つを満たしていません。それらの検査は、簡単ではなく、安全でもなく、信頼できるものでもありません。
こうしたなかで、アルツハイマー病の診断基準を変えようとする科学者のニーズがあります。臨床的および生物学的症候群と規定することを主張しています。診断を確立する方法として、記憶障害などの認知症の人の症状だけでなく、脳画像や脳脊髄液などのマーカー基づくものがあります。
もしマーカーが確認できればファイザーなどの製薬会社のその人たちに対して薬に開発に参加することを勧めるでしょう。ところがアルツハイマー病の治療は、開発の最前線ではうまくいっていません。ごく最近の例では、巨大製薬会社のイーライリリーは、脳の斑を少なくすると考えられていたアルツハイマー病薬が認知障害を悪化させたり、偽薬と比較して結果がよくないことから臨床試験を中止しました。
最近の薬に臨床試験の失敗にもかかわらず本当に失望したことは、アルツハイマー病の本当の原因に対応する薬が開発されてこなかったということです。その原因が何であるかわからないので、本当に難しい仕事です。
また、がんなどと同様に、大部分の投資は、予防や治癒ではなく、お金になる医療に向けられるでしょう。
アルツハイマー病は、いくらお金をかけても避けることができないほど、やっかいな病気です。知的機能を失い、脳細胞は破壊され、混乱し見当識が無くなるのです。人生で知っていた人、愛していた人が分からなくなるのです。ぞっとします。スクリーニングで見つけて10年、20年内には発病すると、ぞっとする思いが少なくなるかもしれません。
アルツハイマー病のために人々をふるい分けしようとする思いについて、医学分野で厳しく問い直されてはいません。検査は早く頻繁にというパラダイムが強く信じられているからです。このパラダイムは、マモグラフィーや前立腺がんのスクリーニングには当てはまりませんが、アルツハイマー病についてはなぜ違うことを期待するのかという疑問が問われるべきです。
寄稿者:アラン・カッセルスAlan Cassels氏(写真)は、カナダのビクトリア大学University of Victoriaの薬剤政策の研究者であり著述家です。彼のサイトAlan Cassels.com に多くの論文などが掲載されています。
common ground 30 November 2010 Screening for Alzheimer’s What good can it do?
編者:アルツハイマー病のスクリーニングについては広く認められた科学的方法はなく、有効性の医学的に証拠もなく、広く行われているスクリーニングはない。カナダのアルツハイマー病協会も基本的に住民対象のスクリーニングを支持してはいないPopulation Screening for Dementia – Position Statement。スクリーニングよりは認知症の予防として一般に推奨されている方法を実施することが現実的と考える。なお、寄稿にある乳がんと前率腺がんのスクリーニングの意義がないことについては「乳癌マンモ不要論の衝撃」「厚労省がん研究班編/医療・GL(08年)/ガイドライン」を参照されたい。


喫煙者は認知症に2倍なりやすい(10月25日/アメリカ)
アメリカ・カリフォルニア州にあるカイザーパーマネント研究部Kaiser Permanente Division of ResearchのRachel A. Whitmerラッヘル・ホワイトマー氏(写真)らの研究グループは、喫煙とアルツハイマー病など認知症の発症の危険性に関する疫学的調査を行い、中年期の喫煙が20年後の認知症、アルツハイマー病、血管性認知症の発症を2倍高めることを認めました。
同グループは、カイザーパーマネントの医療システムに登録された1978年から1985年の間に診療を受けた当時50歳から60歳にあたる多民族の2万1123人のデータを調べました。
認知症の診断は、1994年1月から2008年の7月まで内科、神経科、神経心理科で行われました。その結果、平均23年の追跡期間中に5367人(25.4%)が認知症(アルツハイマー病1136人、血管性認知症416人)と診断されました。年齢、性別、教育、人種、結婚、高血圧、高脂血症、肥満度、糖尿病、心臓疾患、脳血管障害、飲酒について条件を同じとして認知症になったグループと、ならなかったグループで比較したところ、喫煙歴がない人とくらべ、1日2箱以上喫煙していた人は、認知症として2.14倍、アルツハイマー病で2.57倍、血管性認知症で2.72倍、発症の危険性が増すことを認めました。
この研究論文は内科学雑誌Archives of Internal Medicineの2010年10月25日の電子版に掲載されました。
この結果について、ホワイトマー氏は「危険性が高くなるのは、ヘビースモーカーだけではないことを知ってほしい。脳は喫煙による長期の損傷を修復できない」と述べています。
喫煙は、脳血管障害の危険因子であり、血管性認知症を起こしやすいくなりますが、さらに喫煙は、酸化ストレスや炎症を引き起こしてアルツハイマー病の発症に関係すると考えられています。
世界保健機関WHOは、煙草に関係した心臓疾患、脳血管障害、がんで毎年500万人が、さらに受動喫煙で43万人が死亡していると報告しています。
(Reuters Oct 25, 2010  Smoking doubles dementia risk in late life: studyHealthDay News Oct. 25 2010 Heavy Smoking Linked to Alzheimer's in Studyおよび論文Heavy Smoking in Midlife and Long-term Risk of Alzheimer Disease and Vascular Dementiaより)
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編者:喫煙と認知症との関係については定説となっていると思われるが、今回は長期にわたる大規模な調査であり、喫煙量で定量化され、認知症は認知症だけでなく、アルツハイマー病、血管性認知症とで比較されている点が貴重だ。それにしても調査対象者の4人に1人ほどが認知症になるというのは高すぎないか。カイザーに登録している人たちは健康問題が多いグループなのだろうか。また認知症と診断されたが、その原因疾患についての診断がされていない事例も少なくないことに疑問が残る。


がん既往のある人は記憶障害を起こしやすい(10月19日/アメリカ)
マイアミ大学ミラー医学部University of Miami Miller School of Medicineの小児学科とシルベスター総合がんセンターSylvester Comprehensive Cancer Centerの准教授のパスカルジャン‐ピエールPascal Jean-Pierre医師(写真)らのグループは、9月30月から10月3日までマイアミで開催されたアメリカがん研究学会American Association for Cancer Researchの「がん医療の格差に関する会議Conference on the Science of Cancer Health Disparities」でがん既往のある人は記憶障害が多いことを発表しました。
研究グループは、アメリカ疾病管理予防センターCenters for Disease Control and Preventionが行った国民保健栄養調査National Health and Nutrition Examination Surveyのデータを使い、対象は、教育歴、人種、民族が異なる40歳以上のアメリカ人9,819 人で、このうち1,305人にかん既往がありました。
がん既往のある人の14%にある種の記憶障害―がん関連認知障害―、一時的な混乱を経験し、がん既往のない人では8%でした。
この結果についてジャンピエール医師は次のように述べています。
「がん治療のもっとも重要な部分の一つは、生活に質を改善するために、注意力低下、記憶障害、倦怠感といった症状を管理することです。今回の研究から、以前認識されていたより記憶障害がかん既往の人に多いことがわかり、すべての患者についてこうした評価すべきです。がん患者の記憶障害に特別な注意をはらうべき国民的問題であることを強調したい。がんによって、記憶障害という依存的な要因の要が起こりうることがわかりました。
この記憶の問題は、必ずしも化学療法といったがん治療による長引く副作用というわけではありませんが、化学療法、放射線療法、ホルモン療法といった治療に関係するかもしれないし、あるいは脳の化学的変化や神経運動機能の変化を生じさせる腫瘍そのものの生物学的影響かもしれません」
Examiner.com October 19th, 2010   Cancer survivors and memory lossおよびAACR Press Releases October 1, 2010 Memory Impairment Common in People with a History of Cancerより)
編者:脳への放射線照射を受けたがん患者に記憶障害を多いことは知られている。


「【日本高血圧学会リポート】久山町研究 VD発症は中年期の高血圧がリスクに」(10月19日/ミクスOnline)
脳血管性認知症(VD)の発症では、老年期のみならず中年期の高血圧がリスクになることが明らかになった。九州大学病院腎・高血圧・脳血管内科の二宮利治氏(写真)が15日、日本高血圧学会のシンポジウム「わが国の高血圧の代表的疫学コホートとその成果」で、国内の代表的コホート研究「久山町研究」に基づき報告した。福岡市に隣接する糟屋郡久山町(人口約8000人)では1961年から九州大学医学部が住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を現在まで継続的に行っている。
同研究では過去に認知症に対する断面調査が1985年を皮切りに4回行われており、現在の認知症有病率は10%を超えている。85~2002年までに認知症発症が確認された65歳以上の275例での病型別分類ではアルツハイマー症(AD)が45%と最多を占め、次いでVD30%、ADやVDなどを含む混合型認知症12%などとなっており、ADやVDが大多数を占めている。一方、従来から高血圧はVDのリスクファクターであると指摘され、近年では高血圧が大脳灌流の低下を招くことでADを引き起こしているとの仮説も浮上している。しかし、内外の研究では、AD、VDともに高血圧がリスクファクターであるか否かは結論が得られていない。
そこで二宮氏らは認知症のない65~79歳の久山町往民668人を対象に1988年12月から17年間追跡したデータを基に老年期血圧と認知症との関連を検討した。ちなみに88年以前の73~74年時から研究にエントリーされている534人については当時50~64歳時点で88年までの15年間追跡の血圧データがあるため、これを中年期血圧として解析に加えた。
対象668人のうち追跡期間中にした。今回からは、高齢者の高血圧管理の在り方を報告。中年期の高血圧患者で脳血管性認知症の発症リスクが高くなることから、この時期からの積極的な血圧管理の重要性が指摘された。
50~64歳の中年期の高血圧患者で、脳血管性認知症(VD)の発症リスクがより高くなることを示した。
二宮氏は認知症のない久山町往民668人を対象に、中年期血圧と老年期(65~79歳)血圧の影響を検討。 1988年12月から17年間追跡したデータを解析した。
老年期血圧値でアメリカ高血圧合同委員会第7次報告書(JNC-7)に基づき正常血圧者(120/80mmHg未満)の相対危険を1とした場合、前高血圧者(120~139/80~89mmHg)4.O、ステージ1高血圧症(140~159/90~99mmHg)5.8、ステージ2高血圧症(160/100mmHg以上)7.4となり、ステージ1高血圧症(p<0.05)、ステージ2高血圧症(p<0.01)では正常血圧者に比べ、有意にVDの相対リスクが高かった。
また、中年期血圧値での相対危険も前高血圧者2.3、ステージ1高血圧症5.2、ステージ2高血圧症8.0と老年期血圧と同様でステージ1高血圧症以上で有意差が認められた。これに対し、アルツハイマー病発症では老年期血圧値、中年期血圧値ともに各分類間で相対危険に有意差は認められなかった。
これを収縮期血圧値、拡張期血圧値別により詳細に相対危険度を検討すると、収縮期血圧では老年期で140~159mmHg群6.0(p<0.05)、160mmHg以上群7.5(p<0.01)、中年期で40~159mmHg群5.6(p<0.01)、160mmHg以上群8.6(p<0.01)で有意差を認めたほか、拡張期血圧では中年期血圧値が90mmHg以上の群のみで相対危険2.5で有意差がついた(p<0.01)。また、ADに関する同様の検討では老年期、中年期とも各血圧群間での有意な相関はなかった。
さらに二宮氏らは中年期から老年期にかけての血圧レペルの変化別にVD発症の相対危険度も検討。中年期と老年期ともに正常血圧(140/90mmHg未満)だった群の相対危険を1とすると、老年期のみ高血圧群3.3(p<0.05)、中年期のみ高血圧群4.7(p<0.01)、中年期・高年期ともに高血圧群4.6(p<0.01)となり、中年期の高血圧患者でVD発症リスクがより高くなった。また、ここでもADでは各群間で有意差は認められなかった。このことから二宮氏は「より健康的な高齢期を過ごすために、老年期のみならず中年期の生活習慣改善を含めた積極的な血圧管理が重要である」と強調した。
また、中年期のみで高血圧と判定され、老年期では正常血圧だった群が老年期だけ高血圧だった群よりも相対危険度が高かったことについて二宮氏は「おそらく中年期から長期に高血圧だった場合には脳皮質下の細動脈病変などが増悪し、一旦、神経細胞などへ障害など、病変が確立してしまうと、降圧療法の効果が減弱してしまうのではないかと思われる。このような患者で老年期により一層厳格な血圧管理をすべきか、降圧薬を変更すべきかは今後の検討が必要」としている。
ミクスOnline  2010/10/19 原文のまま


ビタミンBサプリメントがアルツハイマー病の発症を遅らせるかもしれない(9月8日/イギリス)
イギリスのオックスフォード大学記憶加齢研究プロジェクトOxford Project to Investigate Memory and Ageing (OPTIMA)の研究者で同大学薬学部のダヴィッド・スミスA. David Smith名誉教授(写真左上)らの研究グループは、高齢者で認知機能低下があると脳の萎縮が多く、またホモチシチンが脳萎縮、認知機能低下および認知症の危険因子であり、さらにビタミンBサプリメントで服用することでホモチスチン血中濃度が低下できることなどから、ビタミンBの脳萎縮との関係を軽度認知障害の人で検証しました。
対象者は、70歳以上の軽度認知障害のある271人で、多量のビタミンB6(20mg/日)、ビタミンB12(0.5mg/日)、葉酸(0.8mg/日)のサプリメントを服用するグループと偽薬を服用するグループとに分け、2重盲検法で比較しました。参加者のうち187人については調査開始時と終了時に脳MRIの検査を行いました。調査期間は24カ月でした。
その結果、サプリメントを服用していたグループでは脳萎縮の割合は年間0.76%に対し偽薬グループは1.08%でした。また、サプリメントへの反応は調査開始時のホモシスチン血中濃度と関係し、調査開始時の血中ホモシスチン濃度が13μmol/L以上の人では脳萎縮がサプリメント服用グループは偽薬グループより53%少ないことも認めました。さらに脳萎縮が強い人ほど認知機能テストの点数が低いことも認めました。今回の調査で重篤な副作用はありせん。研究グループは、軽度認知障害の高齢者の脳萎縮の進行度は血中ホモチスチン濃度を低下させるビタミンBによって遅くすることができますが、同じサプリメントでアルツハイマー病への進展を遅らせるかどうかについてはさらなる臨床試験が必要と結論づけています。
この研究論文はPLoS Hub for Clinical Trialsに掲載されています。
スミス氏は次のように述べています。
「今回のような単純で安全な治療方法によって軽度認知障害の人の多くがアルツハイマー病に進展するのを遅らせることが私たちの希望です。イギリスには70歳以上の高齢者の17%にあたる150万人が軽度認知障害です。5年以内に認知症になるのは半々で、こうした人たちには今回の結果は有益です。しかし、この結果はとても有望ではありますがが、アルツハイマー病の発症を防いだり遅らせるということを証明したわけではありません。認知症を避けたいという健康な中年の人や記憶障害が現れ始めた高齢者はビタミンを毎日服用したくなるかもしれません。しかし、これらのビタミンは初期がんを刺激することがあるので医師に相談してから服用を決めてほしい」
イギリスの医学研究委員会Medical Research Councilの神経科学・精神保険部会の議長であるクリス・ケナードChris Kennard氏(写真左中)は次のように述べています。
「今回お研究結果は加齢と認知機能の低下に関わる複雑な神経生物学的事実を明らかにする一歩をもたらしました。またアルツハイマー病などの状態の将来の治療への発展の鍵を与えてくれました」
アルツハイマー病研究基金Alzheimer's Research Trustのレベッカ・ウードRebecca Wood事務局長(写真左した)は次のように述べています。
「ビタミンBによって高齢者でアルツハイマー病を防ぐ見通しが示され結果はとても重要です。この成果から、アルツハイマー病へ進展すると思われる人を対象に、さらなる臨床試験が始められ成功することを期待します」
現在、イギリスには約62万の認知症に人がいて、その最大の原因はアルツハイマー病です。人口の高齢化するにより、その数は急増すると予測されています。
guardian.co.uk 8 September 2010  Vitamin B supplements could delay onset of Alzheimer's, says studyおよび論文Homocysteine-Lowering by B Vitamins Slows the Rate of Accelerated Brain Atrophy in Mild Cognitive Impairment: A Randomized Controlled Trial
訳者:我が国の「日本人の栄養所要量(第6次改定)」によると1日必要量は、VB6が1.6mg、VB12が2.4μg、葉酸が0.24mg。


中年期女性のストレスは認知症の危険因子らしい(8月27日/スウェーデン)
スウェーデンのヨーテポリ大学Gothenburg UniversityのサールグレンスカアカデミーSahlgrenska Academyの精神医学神経化学科Department of Psychiatry and Neurochemistryのリーナ・ヨハンセンLena Johansson
医師らのグループは、ヨーテポリ女性集団前向きスタディ(Prospective Population Study of Women in Gothenburg)の一環として,中年期の心理的ストレスと認知症の発症との関係について地域住民を対象に追跡調査をしました。
1968年から69年の間に38歳から60歳まで認知症のない女性(1462人)を対象者とし、同じ対象者を1974年から75年、1980年から81年、1992年から93年、2000年から03年に再調査しました。心理的ストレスは、1968年、1974年、1980年に標準的な質問方式で調べましたが、ストレスとは、過敏、緊張、神経質、恐れ、不安、睡眠障害とみなしました。認知症の診断は、DSM( Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の基準により、神経精神学的検査、面接、病歴の情報で判断しました。35年間の追跡中に、161人が認知症(アルツハイマー病105人、脳血管性認知症40人、その他の認知症16人)になりました。認知症になった人とならなかった人とを教育、結婚、血管因子、体重を同じ条件として比較すると1968年、1974年、1980年に、過去1年から5年の間に常時あるいは頻繁なストレスがあると報告した女性では認知症になる危険性が高いことを認めました。1968年と1974年に同様の報告をした女性ではアルツハイマー病になる危険性が高いことも認めました。脳血管障害ではこの関係は認めませんでした。
他方、1回目,2回目、3回目の質問でストレスが多いと報告した女性は、回数に応じて認知症の危険性が高いことも認めました。他方、稀にしかストレスのない女性では認知症の発症の危険性を認めませんでした。
この調査論文はBrainの2010年8月号に掲載されています。
この報告についてアメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校University of California, San Franciscoの神経学科Department of Neurologyのアンドリュー・ジョゼフソンAndrew Josephson医師(写真)は次のように述べています。
「この興味深い研究には限界があります。ストレスに対処する能力、あるいは状況をストレスとみるかどうかには個人間でばらつきがあるからです。このばらつきの背後に神経学的に病的な状態があるかもしれないし、ないかもしれないのです。単一の質問票では生活のストレスを必ずしも正確に把握できません。臨床医にとって、この研究から中年期のストレスが認知症の危険因子と示唆されたとしても、このストレスをどのように軽減することで認知症の発症や発症を遅らせることになるのか研究を求めたい」
Medscapetoday 08/27/2010 Midlife Stressors May Increase Risk of Dementia in Womenおよび論文Midlife psychological stress and risk of dementia: a 35-year longitudinal population studyより)
編者:ストレスと認知症の関係は単純ではなく、この研究結果をどう解釈するか難しい。研究手法についてもコメンテーターの見解は的をえているし、たとえストレスが多いと認知症になりやすいとしたとして、どうしたらよいのだ。


2型糖尿病はアルツハイマー病の危険因子(8月25日/日本)
九州大学医学部大学院神経病理学科の佐々木健介助教(写真左上)らの研究グループは、久山スタディの一環として、糖尿病とアルツハイマー病との関係にについて地域住民を対象に調査をしました。
1998年から2003年の間、久山町の住民で亡くなった人の一連の死亡解剖135例(男性74人、女性61人)で脳の神経班Neuritic plaques (NPs)(アミロイド斑)および神経原線維変化neurofibrillary tangles (NFTs)についても調べました。また1988年に、調査対象者に糖尿病に関係した75g糖負荷試験、空腹時血糖、食後2時間の血糖値、空腹時インスリン、インスリン抵抗性指標(HOMA-IR)について調べておきました。追跡期間中に対象者の約16%がアルツハイマー病を発症しました。
その結果、年齢、性別、血圧、総コレステロール、肥満度、喫煙、運動、脳血管障害を同じとして比較したところ、食後2時間の血糖値、空腹時インスリンおよびHOMA-IRが高い人で、アミロイド斑をよい多く認めました。空腹時インスリンが最も高いグループは最も低いグループより6倍近く多く認め、HOMA-IRでは5倍多く認めました。空腹時血糖ではこの関係は認めませんでした。また神経原線維変化についてもこの関係は認めませんでした。
アルツハイマー病の危険因子でアポEの遺伝子については、高血糖とアポE4遺伝子が共に在ると、アミロイド斑の形成の危険性が高まることも認め、高インスリン血症とHOMA-IRが共に高い場合にも危険性が高いことが認められました。
この研究論文はアメリカの神経学雑誌Neurologyの2010年8月25日号の電子版に掲載されています。
この研究結果について、アメリカ糖尿病協会American Diabetes Associationの医学科学部長のリチャード・ベルゲンシュタールRichard Bergenstal医師(写真左中)は「この研究結果は糖尿病と認知症、アルツハイマー病とを関連づけたことになります。糖尿病をコントロールするのがよいと言ってよいさらなる証拠です」と述べています。
またアルツハイマー病協会Alzheimer's Associationの医学科学担当主任のウリアム・タイスWilliam Thies氏(写真左下)は「この研究からも2型糖尿病をよくコントロールすることでアルツハイマー病の認知機能の低下を防ぐことができることを示唆しています。アルツハイマー病に関係するブドウ糖の代謝に介入する方法を私たちは知っています。現在、アルツハイマー病と的確に防ぐ方法を知りませんが、運動や体重管理などで2型糖尿病を防ぐますますよい理由を知ったことになる」と述べています。

(Bloomberg Businessweek Aug. 25,2010 Link Between Diabetes, Alzheimer's Disease Strengthenedおよび論文Insulin resistance is associated with the pathology of Alzheimer disease. The Hisayama Study より)
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編者:介入試験ではないが、全例病理解剖の所見と生前の糖尿病検査の結果との相関関係を明確に示した貴重な研究だ。糖尿病を的確にコントロールすることがアルツハイマー病を防ぐ手段と言えそうだ。


中等量のワインは認知機能によい(8月19日/ノルウエー)
ノルウエーのツロムソ大学University of TromsøのアルンツエンArntzen, Kjell Arne医師らの研究グループは、ツロムソスタディTromsø Studyの一環として飲酒と認知機能の関係について地域在住の人を対象に大規模な7年間の追跡調査を行いました。
ツロムソスタディーに参加している脳血管障害のない男女5033人(平均年齢58歳)を対象とし、飲酒量や他の心臓血管系の危険因子については調査開始時に調べ、また認知機能テスト―言語記憶テストなど―は7年後にも行いました。
その結果、中等量のワインを飲む人は全く飲まない人より男女とも他の要因とは関係なく認知機能テストで成績がよいことを認めました。ビールやスピリッツの消費についてはこの関係は認められませんでした。また女性にかぎり、全く飲酒をしない人では認知機能の低下することを認めました、
この研究論文は北欧の神経学雑誌Acta Neurologica Scandinavicaの2010年7月号に掲載されました。
これまで、「中等度の人は中等度のことをするmoderate people do moderate things」ということは長く言われてきました。
ワインのプラス効果は社会経済的あるいは好ましい食事など生活習慣といった交錯因子に関わっているとされています。
食事、収入、専門の要因については同じ条件にして飲酒と認知機能を比較できなかったが、年齢、教育、体重、うつ状態、心臓血管疾患については条件を同じとして比較しました。
飲酒のよい影響は、抗酸化作用のあるポリフェノールを多く含むワインとの関係がありそうだと研究者は述べています。これはアルコールそのものが動脈硬化、血液凝固、炎症に効果があって認知機能に保護的に作用すると考えられています。
ScienceDaily Aug. 19, 2010 Moderate Drinking, Especially Wine, Associated With Better Cognitive Function および論文Moderate wine consumption is associated with better cognitive test results: a 7 year follow up of 5033 subjects in the Tromsø Studyより)
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編者:ワインと認知機能あるいは認知症との関係に調査は多い。今回の報告は大規模調査でも同様の関係を認めたとするもののようだ。


ライフスタイルを変えると認知症の発症を21%抑える(8月6日/フランス)
フランスの国立保健医療研究所Institut national de la sante et de la recherche medicale(Inserm)のカレン・リッチーKaren Ritchie氏(写真)らの研究グループは、認知症の危険因子を取り除くことで認知症の発症がどの程度減るかについて調べるため、モンペリエ在住で65歳以上の認知症も軽度認知障害も認めない1433人を対象(調査開始時の平均年齢72.5歳)に7年間の追跡調査をしました。調査開始時、2年後、4年後、7年後に対象者は認知機能テストを行い、対象者の病歴、食事、教育、収入、飲酒、喫煙についての情報を得ました。追跡期間中に31人が認知症になりました。
その結果、教育、果物と野菜の摂取、うつ状態と糖尿病の除去が認知症の発症を抑える最大の要因で、これらすべてが行われると21%、認知症の発症を抑えられるとしました。また教育だけで18%、うつ状態を取り除くだけで10%減らせるとしました。なおアポE蛋白の遺伝的要因がなければ7%減るとしています。
研究グループは、こうした因果関係と認知症との因果関係は不明であるが、糖尿病の管理、ライフスタイルの改善などの保健対策を優先的に行うことが重要であろうと提言しています。
研究論文はイギリス医師会雑誌BJM電子版8月5日号に掲載されました。
Bloomberg Businessweek Aug. 6, 2010  Could Lifestyle Changes Cut Dementia Rates?および論文Designing prevention programmes to reduce incidence of dementia: prospective cohort study of modifiable risk factors
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編者:対象者のライフスタイルを変えるなど介入した追跡調査ではなく、認知症の危険因子が発症に寄与する割合から導き出した数値ではあるが、21%減らせるというのはイギリスの報告に近い値だ。


歯周炎の人は認知機能が低下しやすい(8月3日/アメリカ)
ニューヨーク大学歯学部New York University College of Dentistryの歯周病学インプラント歯科のアンジェラ・ケイマーAngela Kamer准教授(写真左上)らの研究グループは、歯周病の人はアルツハイマー病にも関係する認知機能障害の危険性が高いことを長期追跡調査で初めて確認しました。この調査は、歯肉炎が、脳の炎症や神経退行性疾患やアルツハイマー病に関係するかもしれないという明確な証拠を示したことになります。20年におよぶ調査は、歯周疾患がアルツハイマー病と因果関係がある可能性についての仮説を支持するデータを調べました。
ケイマー医師は「研究によれば、認知機能面で正常は人で歯周炎のある人は、歯周炎がない人より認知機能が低下する危険性が高い」と述べています。
デンマークのコペンハーゲン大学Copenhagen Universityのポウル・ホルムペダーセンPoul Holm-Pedersen(写真左下)などの研究者らとも以前行った2008年の研究では、アルツハイマー病の人は、血液中の歯周炎の関係する抗体や分子が、健康な人より優位に高いことを認めています。
ケイマー医師の最近の研究は、デンマークの男女について医療、心理、口腔、社会面のデータを集めたグロストロップ加齢スタディーGlostrop Aging Studyの参加者152人について歯周炎と認知機能に関する分析に基づくものです。同医師は、調査開始時50歳の人を対象として1984年から20年間に及んで調べました。この結果をケイマー医師が、スペインのバルセロナで開催された2010年国際歯科研究学会International Association for Dental Researchの年次会議で7月16日に報告しました。
ケイマー医師は、知能を調べるDigit Symbol Test(DST)で50歳と70歳のときの認知機能を比較しました。その結果、70歳で歯周炎の人はDSTの点数は、歯周囲炎のない人より9倍、低いことを認めました。肥満、喫煙、歯周囲炎のなり歯欠落、を含むDSTが低下する他の要因をもった人と比較してもこの相関は強いことを認めました。
eurekalert 3-Aug-2010 New evidence from NYUCD supports link between gum inflammation and Alzheimer's disease
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編者:報告書を読んでないが、歯周炎になりやすい人は健康面で他の疾患―高血圧、糖尿病など―を持ちやすく、また運動などライフスタイルに問題が多く、教育歴も短いといった他の要因が認知機能の低下に関係しているのではないのか。歯周炎が直接、脳機能に影響しないのではないか。しかし、アルツハイマー病の人では歯周炎に関係した抗体が高いという報告もあり、複合的要因とみた方がよいのか。


ビタミンEを食事で多く摂ると認知症になりにくい(7月28日/オランダ)
オランダ・ロッテルダムにあるエラスムス医療センター疫学部Department of Epidemiology, Erasmus Medical Centerのエリザス・デボレElizabeth E. Devore医師らの研究グループは、前回の6年間にわたる追跡調査でビタミンEとCを食事として多くとることはアルツハイマー病など認知症の発症リスクを下げることを認めましたが、今回はより長期間、認知症の発症リスクと食事中の抗酸化物質との関係を調べることにしました。対象者はロッテルダムスタディーRotterdam Studyに参加する地域在住の55歳以上で認知症のない5395人で、平均9.6年追跡し、調査開始時に食事内容を調べました。
抗酸化物質としてビタミンE,ビタミンC,ベータカロチン、ファラボノイドを調べました。追跡期間中に465人が認知症となり、このうち365人がアルツハイマー病でした。年齢、教育歴、アポ蛋白E遺伝子、摂取総熱量、飲酒、喫煙、肥満度、サプリメントについては条件を同じと調整して、認知症発症グループと非発症グループとを比較したところ、調査開始時にビタミンEを多く摂っていたグループは認知症の発症が低いことを認めました。またビタミンEの摂取が最も少ないグループより最も多いグループの方が25%ほど認知症の発症が少ないことも認めました。ビタミンC, ベータカロチン、フラボノイドと認知症の発症との関係は認められませんでした。
この論文はアメリカの神経学雑誌Archives of Neurologyの2010年7月号に掲載されました。
medscape today 07/28/2010 Vitamin E and Dementia: An Updateおよび論文Dietary antioxidants and long-term risk of dementia
関連情報:JAMA2002年6月26日号掲載論文Dietary Intake of Antioxidants and Risk of Alzheimer Disease
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教育は認知症症状を抑える(7月26日/イギリス)
長く教育を受けた人ほど認知症の脳の変化を代償するようです。イギリスとフィンランドの研究チームは、より長く教育を受けた人は、死亡時の脳の認知症変化は教育が少ない人と同じであることを認めました。しかし、長く教育を受けた人は生前、認知症の症状を示すことは少なかったのです。なぜそうなるのかの原因を調べなければなりません。
この10年間、認知症の研究によって、教育期間が長ければ長いほど認知症の危険性が低いことが示されてきました。しかし、認知症を抑えるのが教育なのか、それに関連した社会経済的理由なのか、健康的なライフスタイルなのかについては明らかではありませんでした。
今回、研究者たちは872人の脳を調べました。死亡前、教育についての質問を行いました。
より教育を受けた人は、認知症に関係した脳の変化をより代償することができることがわかったのです。死後の病理解剖では、認知症に関連した脳の変化は教育を長く受けない人とそうでない人と同じでした。しかし教育を長く受けた人はその変化を代償することできる研究者は見ています。教育期間の1年長ければそれだけ認知症になる危険性は11%少なくなることも示されました。
この研究グループの一人であるケンブリッジ大学University of Cambridgeのハンナ・ケージHannah Keage医師(写真左上)は次のように述べています。
「前回の調査では生前の認知症の診断と死後の脳の変化の間に一対一の関係は認められませんでした。同じように認知症であった人でも、ある人は脳も多くの病的変化をみますが、別の人には変化がほとんどないのです。私たちの研究では人生の早い時期の教育が認知症症状を呈する前に脳の多くの変化を代償しているように見えます」
今回の研究は、エクリプスEClipSE共同研究からのデータを使いました。これはイギリスとフィンランドの加齢に関するヨーロッパの地域住民を対象とした20年ちかい3つの追跡の調査(Medical Research Council Cognitive Function and Ageing StudyCambridge City Over-75s Cohort Study とVantaa 85+ Finland) です。
この研究を指導したケンブリッジ大学のキャロル・ブレイン教授Carol Brayne(写真左下)は次のように述べています。
「教育は人々の健康と公正によいと知られています。今回の研究から、社会と全人生に強い影響をおよぼす初期の人生に投資することの意義を強く支持します。これは健康と教育との間での資源配分の重要性についての政治的決定に関連したものです」
BBC  26 July 2010  Education 'helps brain compensate for dementia changes'およびUniversity of Cambridge 26 July 2010 Why more education lowers dementia risk
Brainの論文 Education, the brain and dementia: neuroprotection or compensation


運動、茶、ビタミンDが認知症を予防するらしい(7月11日/アメリカ)
アメリカ・ハワイのホノルルで7月10日から15日までアルツハイマー病協会が開催しているアルツハイマー病国際会議2010 Alzheimer's Association 20109 International Conference on Alzheimer's Disease (ICAD)で、12日に報告された3つの調査結果から、運動、茶、ビタミンDが認知症の予防になりそうです。
第1の研究は、フラミンガムFraminghamの心臓血管リスク調査によるもので、この調査ではボストンにあるブライハム女性病院Brigham and Women's Hospitalのザルディ・タンZaldy Tan医師(写真左上)らが1200人以上の人を20年以上追跡し、このうち242人が認知症になりました。認知症になった人とならなかった人との比較したところ、中程度から高度に身体活動をしている人が認知症になる割合は少なく、最も少ない運動量の人は最も多い人とくらべると45%認知症になりやすいことを認めました。
第2の研究は、65歳以上の4800人の男女についての14年以上追跡したものです。茶の飲む人は飲まない人より精神機能が低下しにくいことを認め、1週間に1回から4回の茶を飲む人は飲まない人より年間37%低下の認定機能の低下の割合が遅いことを認めました。
コーヒーは最高量飲む場合以外、こうした影響は認めませんでした。カリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLAのレノーレ・アラブLenore Arab氏(写真左下)は「興味深いことに、茶より2倍から3倍多くカフェインを含むコーヒーではこうした相関はなく、こうした関係はカフェインの量に関係ないのです」と述べています。
第3の研究は、ビタミンDが脳の健康に影響するというものです。これはThird National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES III) の研究からのもので、65歳以上の男女3325人について調べました。ビタミンD濃度は血液で、また認知機能も調べました。その結果、ビタミンD欠乏の人は認知障害が42%高いことを、高度に欠乏している人で394%高いことを認めました。
エクスターベニンシュラ大学医学部University of Exeter Peninsula Medical School.のダビット・レーウェンリンDavid Llewellyn(写真右)は「ビタミンDは。脳血流を保護し、毒素を除去するなど神経保護作用があります」
加齢の専門家であるデューク大学Duke Universityのムラリー・ドライスワミーMurali Doraiswamy氏は「多くの研究からライフスタイルの変化によって後成的遺伝と呼ばれる表現型の危険遺伝子による発病を抑えることが知られている」と述べています。
USA TODAY 07/11/2010 Study: Exercise, tea and vitamin D to ward off dementia)
編者:アルツハイマー病に関しては最も権威がある国際会議での報告の記事の紹介で論文を読んだわけではない。なお運動ビタミンDが認知症の保護因子とする報告は既にある。


イチョウエキスがアルツハイマー病予防に有効(6月22日/ドイツ)
イチョウエキスから成るEGb761を、1日240mgを服用することでアルツハイマー病になる危険性を50%近く減らすことができることを認めました。
EGb761(薬品名:テボニンTebonin)の製造元であるドイツのカールスルーエにあるドクター・ウイルマー・シュワーベ会社Dr. Willmar Schwabe GmbH & Co.の管理部長であるマイケル・バブスMichael Habs教授は「ガイドエイジGuidAgeスタディの結果は特筆すべきもので、アルツハイマー病に予防効果のある薬が初めて確認されました。多面的効果をもつ植物抽出液が複雑なアルツハイマー病の進行過程に効果的だった」と述べています。
ガイドエイジスタディは大規模試験で、もの忘れの訴えのある高齢者2854人について無作為二つのグループに分け、ひとつのグループの人には1日240mgのEGb761を、他のグループの人には偽薬を5年間服用してもらいました。これら薬を服用したひとたちのうち、少なくとも4年間、偽薬を服用していた966人のうち29人(3.0%)がアルツハイマー病に、EGb761を服用していた947人のうち15(1.6%)がアルツハイマー病になりました。この結果、EGb761がアルツハイマー病の発病を47%有意に抑えたことになります。
アルツハイマー病の発病には脳の病理的変化が何年もかけて起こり、症状はないが既に病気を持っていた可能性の人もあり、試験の初期にアルツハイマー病に既になっていた人にはEGb761の予防効果が少ないことは驚くことではありません。
この試験結果について、デュッセルドルフ大学University of Duesseldorfの教授でクレフェルドのマリアヒルフ病院Maria-Hilf Hospitalの老年精神科長のフラルフ・イールRalf Ihl医師(写真)は「イチョウエキスに予防効果があるらしいことは知られていました。それを私たちが初めて科学的に証明したこの試験結果から、EGb761がアルツハイマー病の発病予防に有効なことが示された」と述べています。
ガイドエイジスタディの結果は、EGb761の予防効果を示唆したフランスの二つの集団試験の結果と合致します。アメリカ国立加齢研究所US National Institute on Agingによる研究もイチョウエキスを定期的に服用することで同様のアルツハイマー病の予防効果を認めています。しかし別のアメリカの研究では、予防効果は認められませんでした。もっとも、この試験では最後までエキスを服用した人は対象者の半数より少なかったのです。ガイドエイジスタディの結果では、240mgのEGb761を長期に定期的に服用することの重要性を示しています。試験参加者の93%が最後まで定期的に服用しました。またEGb761の長期服用の安全性も確かめられました。
動物実験によるとEGb761はアルツハイマー病に進展する欠かせないいくつかの過程に介入することがわかりました。たとえば、有害な蛋白合であるベータアミロイドの形成が阻止され、これと加齢による影響に伴う神経細胞の損傷が少なくなり神経細胞のエネルギー産生を維持することになるのです。EGb761は、イチョウエキスの特別な物質をとくに高濃度に含んでいます。これはギンコライドginkgolidesとビロバライド bilobalideです。これらの物質は神経細胞の保護に特に重要です。
EGb761による認知症治療の有効性についてのいくつかの別個の研究結果を分析したことからもその有効性が確認されました。EGb761は明らかに認知障害をもっていない人の認知機能を改善させます。分析を行ったオスナブラック大学University of Osnabruckの臨床神経心理学講師のライナー・カッシェルReiner Kaschel医師は「別々のデータを分析したところEGb761の効果は、認知機能が低下し始めるときに有効であることが実証された」と話しています。
テメボニンは精神能力低下の治療に使われる植物製薬物質です。イチョウの特別な抽出物のEGb761を含み、ドクターウイルマーシュワーベ会社によって開発、製造されました。EGb761はもっとも研究された世界的な植物製薬で80以上の国で利用されています。
ドクターウイルマーシュワーベ会社は、植物製薬の開発と製造の世界的なリーダーで、カールスルーエを拠点とするグループは、4大陸で3700人ほどの従業員がいます。
BUSINESS WIRE June 22, 2010 New Results in Dementia Research: Major Study Shows That Long-Term Intake of Ginkgo Biloba Special Extract EGb 761Protects against Alzheimer’s Disease
Encouraging results of GuidAge®, large scale European trial conducted in the prevention of Alzheimer’s Dementia Paris (France), 22 June 2010 - Ipsen(pdf90K)
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編者:今回の記事に関係した学術論文が見当たらない。会社のニュースリリースだけ。EGb761は日本でも購入可能である。試験での服薬用量は240mgは通常よりかなり多量のようだ。これを長期服用することでアルツハイマー病の危険性が半減するという。記事にあるようにアメリカでの臨床試験(1日240mg、平均服用期間4年)では効果を認めておらず、アルツハイマー病予防に関するNHIの研究グループの評価も「有効性なし」と結論づけている。どちらが本当なのだろう。どちらも本当な程度しか効果がないとみるのが妥当かもしれない。それにしてもおおよそ1000人近い人がイチョウエキスを4年間服用しても約15人(残りは何もしなくてもアルツハイマー病にならない)が、服用しなければ30人がアルツハイマー病になる。すなわち15人減らすために1000人が4年間安価ではないエキスを服用しなければならない。これをどう考えるか。ところで今回の臨床試験の方法として有効性が期待さえるエキスを含まない偽薬を5年間服用したためにアルツハイマー病になったことについての倫理的問題はないのだろうか。


PTSD(心的外傷後ストレス障害)の人は認知症に2倍なりやすい(6月7日/アメリカ)
アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部School of Medicine, University of California, San Franciscoの精神科のクリスチーン・ヤッフェKristine Yaffe医師(写真)らの研究グループは、アメリカの退役軍人のあいだで戦闘のためにPTSDが極めて多く、認知機能障害をもっていることがあることに注目し、退役軍人医療センターに受診している高齢の退役軍人についてPTSDと認知症との関係について調べました。退役軍人省Department of Veterans Affairsの全国患者ケアデーターベースNational Patient Care Databaseを使って追跡調査にもとづき分析しました。2000年から1997年のあいだで認知症のない55歳以上の退役軍人18万1093人(PTSDありが5万3155人、PTSDなしが12万7938人)を調査対象としました。追跡期間は2000年10月から2007年12月までとし、この間3万1107人の退役軍人が国際疾病分類International Classification of Diseases(ICD)に基づいて新たに認知症と診断されました。対象者の平均年齢が68.8歳、で96.5%が男性です。7年間でPTSDありのグループで認知症の有病率は10.6%で、PTSDなしのグループで6.6%でした。二つのグループ間で年齢、頭部外傷、物質中毒、うつ状態の影響を除くと認知症の発病頻度はPTSDがある人の方がない人より1.77倍高いことを認めました。
論文は精神医学雑誌Archives of General Psychiatryの2010年6月号に掲載されています。
ヤッフェ医師は次のように述べています。
「残念ながら退役軍人ではPTSDはありふれた障害で、戦闘後、10%近くがなります。これは短期的な障害ではなく、長期的障害です。PTSDがなぜ認知症の危険因子がよくわかっていませんが、長期のストレスにより脳に変化が生じると考えられています。PTSDの患者の医療に関連して、彼らも年をとることなどから、この問題についてよりよく理解することは重要で、またPTSDに関連した認知症の危険性を減らすための方法を見つける必要があります」
Reuters Health 07/06/2010 PTSD may boost dementia risk in older vetsおよび論文Posttraumatic Stress Disorder and Risk of Dementia Among US Veteransより)


コーヒーはアルツハイマー病の進行を遅らせるかもしれない(5月17日/ポルトガル)
コーヒーは、心理的に活発にするため世界中で最も広く消費されていますが、脳機能を適切に維持すする可能性があるとする研究が評価され始めました。疫学的研究や動物実験による基礎研究から得られた有効性の証拠によって、カフェインがアルツハイマー病など認知症にみられる認知機能の低下を防ぐ働きがあるらしいことがわかりました。アルツハイマー病医学雑誌Journal of Alzheimer's Diseaseの2010年5月6日電子版に掲載された「アルツハイマー病など神経退行性疾患のカフェインの治療的有効性Therapeutic Opportunities for Caffeine in Alzheimer's Disease and Other Neurodegenerative Diseases」を題する増刊号に新しい見解を報告されています。
ポルトガルのリスボン大学医学部Faculty of Medicine, University of Lisbonのアレクサンドレ・メンドンサAlexandre de Mendonca氏(写真左上)とコインブラ大学医学部Faculty of Medicine, University of Coimbraのロドリゴ・クアーニャRodrigo A. Cunha氏(写真左下)の二人が編者となり、カフェインの脳への効果について研究する国際的専門家グループを招集しました。課題は、分子レベル、神経生理学的応用、明らかに病的な脳への行動神経保護的作用にわたる分野の多面的な独創的研究にわたっています。
メンドンサ教授らは次のように述べています。
「疫学的研究によって、初めてパーキンソン病の発症はカフェインを長期に消費すればするほど少なくなる関係が明らかになりました。このことはカフェインが神経退行と運動障害を防ぐことを示すパーキンソン病の動物実験の結果に似たものです。その後のいくつか疫学的研究によって、カフェインを中程度に消費することはアルツハイマー病の発症および加齢関連認知機能低下を少なくする関係が示されました。これもアルツハイマー病動物と高齢動物の実験による記憶低下と神経退行性変化がカフェインを長期に投与することで予防するとする結果に似たものなのです」
今回の論文では以下のことを明らかにしています。
○ 脳機能の正常化および脳退行の予防にカフェインの多面的な効果を認める。
○ カフェインがアミロイドベータの産生を抑える性質と作用をもっている。
○ カフェインがアルツハイマー病を変化さえる有効な候補物質である。
○ 認知機能と記憶能力にカフェインが有効な働きをする。
○ カフェインの消費による神経保護作用の主な標的がアデノシンA2Aである。
さらにメンドンサ氏らは、次のように述べます。
「アルツハイマー病の人を毎日追跡することから、記憶能力の客観的な測定によるわずかな改善より日常生活の改善の方が有意義な指標であることがわかりました。アルツハイマー病でもっとも多い合併症の一つがうつ状態ですが、カフェインが感情を正常化するという最近の研究結果はとりわけ興味深い」
今回の増刊号はコーヒー工業商業協会Associa??o Industrial e Comercial do Caf?の援助を受けましたが、すべての投稿者には科学的な独立性を保障しています。またこの論文は2009年6月にリスボンで開催された「カフェインと脳Caffeine and the Brain」の会議の報告をもとにしたものです。
Eurekalert 17-May-2010 New evidence caffeine may slow Alzheimer's disease and other dementias, restore cognitive function および増刊号Therapeutic Opportunities for Caffeine in Alzheimer's Disease and Other Neurodegenerative Disordersより)
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編者:カフェインが認知症の予防、認知機能の維持改善に有効とする報告は多い。コーヒーに限らず、わが国では緑茶の有効性についての報告もある(サイト内関連記事)。


認知症の配偶者を介護している配偶者は認知症になりやすい(5月5日/アメリカ)
ユタ州立大学Utah State Universityの家族・消費者・人間発達学部Department of Family, Consumer and Human Developmentのマリア・ノーロンMaria Norton医師(写真)らの研究グループは、ユタ州在住の65歳以上で調査開始時に認知症のない1221組の夫婦(2442人)について12年間認知症の発症について追跡調査し、この間に125組の夫婦で夫が認知症に、70組で妻が認知症に、30組(60人)では両方ともが認知症になりました。
両方の配偶者が認知症になった人についてみると、年齢が認知症発症の危険因子であることも認めましたが、年齢を補正しても配偶者が認知症にならなかった配偶者とくらべ配偶者が認知症になった配偶者では6倍認知症になりやすいことを認めました。さらに後者の事例についてみると女性の配偶者をみている男性の配偶者の方が、男性の配偶者をみている女性の配偶者より認知症になりやすいことも認めました。
この研究論文はアメリカ老年医学会雑誌Journal of the American Geriatrics Societyの2010年5月号に掲載されます(論文表題:Increased Risk of Dementia When Spouse Has Dementia? The Cache County Study)。
この結果についてノートン医師は次のように述べています。
 「認知症の人を介護している人の方が身体障害の人を介護している人よりストレスが多く、より支援が必要です。認知症介護の長期に頻回の重度のストレスが配偶者に加わり認知症発症に実質的なリスクのようです。家族に認知症の人がいることはどの年齢でもストレスが多いのですが、配偶者間では情緒的なつながりが強いのでストレスがさらに増段するようです。しかし配偶者間のこうした相関が本当にストレスによるものか、共有する環境要因によるものかの研究がさらに必要です。もっとも、認知症になった配偶者を持つ配偶者のほとんどは認知症にはなっていません。このことからどのような人が発病しやすいのかを決める要因についても研究が必要です」
Sydney Morning Herald May 5, 2010 spouses of dementia sufferers 'at risk' およびAmerican Geriatrics SocietyApril 30th, 2010発表の情報Spouses of Dementia Sufferers Have a Six-Fold Increased Risk of Dementia Onset: Husbands Appear at Higher Risk Than Wivesより)
編者:論文を未読であり、よく理解できない報告だ。私的な経験からしても配偶者が認知症の人は認知症になりやすいという印象はない。


アルツハイマー病の予防の根拠の程度を分析(4月28日/アメリカ)
アメリカ国立保健研究所National Institutes of Healthは4月26日から28日まで同研究所で「アルツハイマー病と認知機能低下の予防Preventing Alzheimer’s Disease and Cognitive Decline」をテーマに会議を開きました。この会議では、これまでに研究されたアルツハイマー病の予防に関する研究結果の評価やこれからの研究方法について15人の専門家で議論されました。
この会議の議長でもあるノースウエスタン大学Northwestern University医学部予防医学科のマーサ・ダビグラスMartha Daviglus教授(写真左上)は次のように述べています。
「サプリメント、脳トレ、運動などがアルツハイマー病の予防として試みられていますが、いずれも十分な証拠はありません。卵が先か鶏が先かという問題もあるのです。たとえば、精神的に活発な人は身体的にも社会的にも活発なのかもしれません。これを身体的に活発であることが精神的に活発の要因であると解釈されるかもしれないのです。アルツハイマー病についてまだ完全に理解されているとはいえません。たとえば、アルツハイマー病の脳にみられるアミロイド斑が病気の原因なのか、結果なのかにによくわかっていません」
この会議に先立ち、アルツハイマー病の予防に関するこれまでの研究成果について、評価するに値する原著論文250についてデューク大学医学部のデューク証拠に基づき臨床センターDukeEvidence-based Practice CenterのJohn W. Williams医師(写真左下)らが分析してまとめた「報告書Preventing Alzheimer’s Disease and Cognitive Decline」が、今年4月にアメリカ保健人間サービス省Department of Health and Human Servicesの医療の研究と質局Agency for Healthcare Research and Qualityから公表されました。この報告書のなかにこれまでアルツハイマー病の危険因子あるいは保護因子についてその証拠度を分類しています(表)(アルツハイマー病の危険因子および介入についての証拠度の分析結果pdf140K)。
(Reuters Apr 28, 2010 Prevent Alzheimer's? No evidence you can: panelおよびNIH news April 28, 2010 Independent Panel Finds Insufficient Evidence to Support Preventive Measures for Alzheimer's Diseaseおよび報告書Preventing Alzheimer’s Disease and Cognitive Decline(pdf6.7M)より)

編者:科学的に明確な根拠のあるアルツハイマー病の予防法がないからと、いつ始まるかわからないさらなる研究―厳密には介入試験を行わなければならないが、時間、費用、参加者の人権の問題から容易ではない―と、何時になるかわからない結果を待つわけにはいかない。根拠の程度が中程度と低いものついて今日から予防として試みてよい。

報告に関する見解

アルツハイマー病の危険因子および介入について分析結果
関係 因子 証拠の程度 関係 因子 証拠の程度 関係 因子 証拠の程度
危険性を高める アポEe4遺伝子 中程度 関係なし 銀杏の葉エキス 高い 評価不能 飽和脂肪酸の摂取 判定不可
プロジェステロンとエストロゲンの併用 ビタミンE 中程度 果物野菜ジュース
いくつかの非ステロイド性抗炎剤 低い コリンエステラーゼ阻害剤 微量金属
うつ状態 降圧剤 低い 高カロリー摂取
糖尿病 エストロゲン メマンチン
高脂血症(中年期) オメガ3脂肪酸 睡眠時無呼吸
頭部外傷(男性) ビタミンB12C,ベータカロチン 不安障害
殺虫剤 ホモシスチン 弾力性
未婚、乏しい社会支援 高血圧 非認知的非身体的活動
喫煙(現在) 肥満 枯葉剤、湾岸戦争症候群
危険性を低める 地中海風料理 低い メタボリックシンドローム 溶解剤、アルミニウム
葉酸 幼児期要因 アポE以外の遺伝要因
高コレステロール血症剤(スタチン) 職業レベル
高い教育歴
飲酒(軽度から中程度)
認知的活動
身体的活動(高い)

EPA も DHAの脳に効果認めず(4月28日/イギリス)
イギリス・ロンドンの衛生熱帯医学ロンドンスクールLondon School of Hygiene and Tropical Medicinの疫学人口保健部Department of Epidemiology and Population Healthの栄養公衆保健介入研究部Nutrition and Public Health Intervention Research Unitのアラン・ダングールAlan D. Dangour医師らのグループは、魚に多く含まれるエイコサペンタエン酸eicosapentaenoic acid (EPA)とドコサヘキサエン酸docosahexaenoic acid (DHA)が認知機能の維持に効果があると言われていることを確かめるため高齢者を対象にこの2種の物質を含むサプリメントを使った2重盲検法による臨床試験を行いましたが、その効果は認められませんでした。
対象者は、イギリスとウエールズの20の一般医からの紹介で70歳から79歳(平均年齢75歳)の男女(男性55%)で認知機能が正常な867人です。EPA200mgとDHA500mgを含むカプセルとオリーブオイルの含むカプセルを2重盲検法により無作為に選んだ対象者に1日1回、24カ月服用してもらいました。試験中にEPAとDHAの血中濃度を測定しましたが、EPAとDHAのグループと偽薬のグループより有意に高いことを認めました。認知機能テストを試験開始時と終了時とに行いました。年齢、性別、教育最終年齢で補正して比較しましたが、24か月後、二つのグループとも認知機能の変化を認められませんでした。なお試験完了したのは748人で、脱落した人の割合は二つのグループでほぼ同じでした。
この試験結果はアメリカ臨床栄養雑誌American Journal of Clinical Nutrition2010年4月21日号に掲載されています
この結果からダングール医師は次のように述べています。
「魚の脂が認知機能によいと期待して服用している人が多いことからして今回の結果は重要です。しかしこの結果から、もっと長期に服用すると効果があることを否定するものではありません。多くの研究から、魚を多く食べることは知的機能によい効果があり認知症にもなりにくいことがわかっています。ただこうした研究の問題は、なぜその人たちが魚を多く食べるかについての理由が明確ではないことです。試験で2年後に効果を認めませんでしたが、これまで行われたこの種の試験としては最も規模が大きく最も長期間の対照試験であることははっきり言えます。もっと長く服用すると脳に効果があるかもしれませんが、現在のところ、認知機能によいという不作為対照試験による証拠はありません」
Reuters Health 4/28/2010 Two-year study finds no brain benefit for fish oilおよび論文Effect of 2-y n?3 long-chain polyunsaturated fatty acid supplementation on cognitive function in older people: a randomized, double-blind, controlled trial
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編者:わが国でも脳のよいとされ大手企業も販売しているEPAやDHAのサプリメントの効果を認めなかったとう報告であるが、まったく効果なかったとは少し違う。しかし、もっと長く調べ、もっと多く服用し、もっと若い人を対象に、別の認知機能テストにしたらと条件を変えたら異なる結果が出るかもしれないが、この種の試験は条件をあれこれ変えて行うことは費用や対象者の人権の面でも容易ではなく、今回の結果を受け入れるのが妥当だと思う。精々、効いたとしてもわずかというところだろう。お金もかかるし、EPAやDHAのサプリメントはお勧めとはいかないようだ。


脳トレから得るものはない(4月20日/イギリス)
コンピューターゲームによる脳トレの大規模試験の結果は、知的機能を高めるためのソフトで脳トレを行っている人たちと失望させたようです。
イギリスの研究者とBBCのウエブサイトによる共同研究は、BBCの番組であるBang Goes the Theoryの視聴者に参加を要請し1日10分以上1週間3回で6週間、オンラインのゲームを使ってもらいました。参加者を3つのグループに分け、第1のグループは、全般的知能に関係する論理、計画、問題解決を重視した訓練を行い、第2のグループは、販売されている脳トレソフトに合わせた知的機能―短期記憶、集中、視覚空間能力、数学―の訓練を行い、第3のグループは、これらのグループの対照として単に質問に答えるネットを使った単純な作業を行いました。全参加者はボランティアで1万1430人(18歳から60歳)が試験を終えました。その結果から、参加者はそれぞれのグループの作業能力は改善しましたが、どのグループでも記憶、論理、学習といった全般的な認知機能テストで改善は認められませんでした。
今回の研究を指導したイギリス・ケンブリッジの医学研究委員会認知脳科学部Medical Research Council (MRC) Cognition and Brian Sciences Unitの神経科学者であるアドリアン・オーエンAdrian Owen氏(写真上)は次のように述べています。
「脳トレによって一般的な認知機能テストの結果が改善するという証拠は全く認められませんでした。自分の脳をするどくしようと広範囲におよぶ認知機能の訓練を行うことは全く支持することはできません」
しかし4月20日のネーチャーNature電子版に掲載された研究によって脳トレ議論が鎮まるというわけではありません。
アメリカ・ロードアイランドのブラウン大学アルパート医学部Brown University's Alpert Medical Schoolで加齢の研究をしている神経学者のピーター・シンダーPeter Snyder氏(写真下)は「この研究については疑問視しています。研究に不備があると思う」と述べています。
同氏は脳トレの効果はわずかだとは認めています。サンフランシスコにある脳トレのソフト会社のポジトサイエンスPosit Scienceが助成した以前の研究では、効果はあまり大きくはなかったがそれなりの効果を認めていますが、同氏の再分析では効果ははほとんどありませんでした。
しかし、シンダー氏は次のように述べています。
「販売されているほとんどのソフトは、記憶や知的機能が低下することを恐れる60歳以上の人を対象としており、こうした人たちを対象に試験を行うべきです。高齢者の検査グループは開始時に平均点数が低く、実際の行うともっと変化し有意義な改善をもたらすにはなお余地が残っています。健康な人で平均以上の効果を出そうとするなら試みるなら効果がでる能力をもっと持っているようです」
イギリスのノッチンガムにあるMRCの聴覚研究所Institute of Hearing Researchの副所長で脳トレのマインドフィットMindFitを販売しているオックスフォードのマインドウイーバーズMindWeaversの創始者であるダビッド・モーアDavid Mooreは「この試験の参加者は自らで選んだ人たちであり、この種のゲームを楽しむだけの自然な嗜好を持っているようです」と述べています。
さらにモーア氏もシンダー氏も「訓練時間が十分に長くなかったかもしれません」と同意し、シンダー氏は「参加者は平均24セッションを実行しました。1セッション10分で、これでは訓練は4時間にすぎません」と述べ、モーア氏は「5週間以上で1回4時間の試験では有意義な変化をもたらすに十分ではありません。弱視や脳血管障害後遺症の訓練などの治療では脳トレはもっと時間が必要」と述べています。
これに対してオウエン氏は反論して「いくつかの同様な研究でも6週間の訓練期間を使っています。セッションの平均数は24ですが、実際には数値が2から非常に熱心に実施した人で数百倍です。こうした極端な人たちのあいだでも実行機能に違いはないと見なされています。また6週間では全く効果がないことを示す心理学的理論はないのです」
これにオウエン氏は譲歩して「私たちの結果からして必ずしも幼い子供や高齢者の訓練が無意味と言っているわけではありません。私たちにも強力な証拠がないのです」と述べています。
NatureNews 20 April 2010 No gain from brain training および論文Putting brain training to the test
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関連記事:脳ブームに「待った」 学会「根拠示す配慮を」
編者:不完全な試験と結論かもしれないが、脳トレが無意味とするインターネットを使った大規模試験の結果は無視できない。


食事が認知症のリスクを決めるようだ(4月12日/アメリカ)
アメリカのアルツハイマー病・加齢脳タウブ研究所Taub Institute for Research in Alzheimer's Disease and the Aging Brainとコロンビア大学医療センターColumbia University Medical Centreのヤン・グYian Gu医師らの研究グループは、食事内容とアルツハイマー病発症の危険性とについて疫学調査を行いました。これまで地中海風食事がアルツハイマー病の発症の危険性を下げることは示されてきましたが、食事のどの栄養素が関与しているか明らかではありませんでした。このため、研究グループは食事内容から栄養素を推計しました。
対象者は、ニューヨーク在住の認知症のない65歳以上の2148人で、食事内容を提供し、神経学的検査を平均1.5年ごとに行いました。平均3.9年追跡したところ、253人がアルツハイマー病になりました。年齢、教育,人種,性、喫煙、摂取量カロリー,合併症,APOE遺伝子のついての同じ条件として、アルツハイマー病に関係すると思われる7つの栄養素―飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)、3価不飽和脂肪酸(リノレン酸など)、6価不飽和脂肪酸(DHAなど)、ビタミンE,ビタミンB12 、葉酸―について分析したところ、単価不飽和脂肪酸、3価不飽和脂肪酸、6価不飽和脂肪酸、ビタミンE、ビタミンB12 、葉酸が多い食事―サラダドレッシング、木の実、魚、トマト、鶏肉、ブロッコリー類の野菜、果物、濃い緑の葉野菜を多くとり、飽和脂肪酸を多いく含む食事―脂肪の多い製品、赤肉、臓器肉、バター―を少なくとる人にアルツハイマー病が少ないことを認めました。
この論文はArchives of Neurologyの電子版2010年4月12日版に掲載されました。
この結果について研究者は、食事だけでアルツハイマー病が防げるわけではないことに注意するように強調しています。また、イギリスのアルツハイマー病研究基金Alzheimer's Research Trustのレベッカ・ウードRebecca Wood事務局長は, 「食事内容と認知症の発症リスクとの関係を理解することがアルツハイマー病など認知症の予防につながるでしょう。年をとるにしたがい、定期的な運動、適切な食物、活発な社会活動といった生活様式に変えることで認知症の発症の危険性を少なくなるでしょう」と述べています。
BBC 12 April 2010  Diets may determine dementia riskおよび論文Food Combination and Alzheimer Disease Risk


心房細動は認知症の危険因子(4月1日/アメリカ)
アメリカのユタ州にあるインターマウンテン医療センターのIntermountain Medical Centerのジャレド・バンチJared Bunch医師(写真)らのグループは、心房細動が認知症の危険因子であることを認め、その研究論文が、医学雑誌HeartRhythm2010年4月号に掲載されました。
研究グループは、インターマウンテン心臓共同研究Intermountain Heart Collaborative Studyに参加している3万7025人のデータをもとに、平均5年間の追跡期間中に心房細動の人は1万161人で、また認知症になった人は1535人でした(平均年齢は60,6歳)。認知症になったグループと認知症にならなかったグループ人とを比較したところ、前者に高齢、高血圧、冠動脈疾患、腎不全、脳血管障害の既往をより多くみとめましたが、心房細動はこれらの要因とは独立して有意に認知症のグループに多く認めました。
Cardiologytoday April 1, 2010 AF associated with various forms of dementia および論文Atrial fibrillation is independently associated with senile, vascular, and Alzheimer's dementia
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編者:心房細動が認知症の危険因子とする報告は多い。


アルツハイマー病予防に関する新たな研究(3月30日/アメリカ)
アルツハイマー病の治癒の方法も効果的な治療もないことに欲求不満な医師たちが、予防も含めた新たな研究を始めました。
新しいプロジェクト―「認知機能フィットネスと革新的治療Cognitive Fitness and Innovative Therapies(CFIT)」―は、アルツハイマー病の発症の危険性がある人にクイズなど認知機能に関する問題を提供して知的にも身体的にも健康的になり、病気の発症を遅らせるかどうか―これははっきりしないかもしれませんがーを観察しようとするものです。アルツハイマー病の研究や治療の分野で著名な人たちの助言を受けて行われるこの計画は、食事の改善、社会生活の維持を図り、認知機能の低下を遅らせ、アルツハイマー病の初症の危険性を下げることを意図したものです。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校University of California, Santa Barbaraの神経科学研究所Neuroscience Research Instituteの共同所長であるケネス・コシクKenneth S. Kosik医師(写真)が、昨年、サンタバーバラにセンターを設けて研勇を始めました。コシキ医師は、50歳代からアルツハイマー病を予防する努力を始めることを勧めています。
さらにニューヨークとカリフォルニアを含め全国に四つのCFITセンタ―をオープンさせる計画を持っていますが、コシク医師は、次のように述べています。
「病気の症状が出てから歩く運動を始めても遅すぎる。この新しい研究のアイディアは、ライフスタイル面での介入が症状が現れる前からでも病気を遅らせ予防できるかもしれない、あるいは症状が現れてからでも進行を遅らせるかもしれないということから生まれたものです」
この研究を始めようとする考えに変わったのは、アメリカで530万人いるアルツハイマー病を予防したり遅らせたり、あるいは認知機能の低下を防いだりしようとする一般の人たちの支えがあったからです。2007年、疾患管理予防センターCenters for Disease Control and Preventionとアルツハイマー病協会Alzheimer's Associationの報告書は、運動や食事面を改善して認知機能の健康を維持するように実践することを要請しています。科学的な文献の疾病センターの評価は、今年、公表されることになっています。今回の研究グループは、認知障害の程度により個々の人の状態の情報を集める作業を行い、脳の健康を向上させるための一般向けのキヤンペーンを進めるために州政府の健康担当者との会合も持ってきました。
アルツハイマー病には遺伝や年齢が関係しているようだが認知症の多くを占めるこの病気の本当の原因を研究者は知りません。アルツハイマー病には4つの薬が承認されていますが、症状を改善するものの、病気の進行を止めるものではありません。現在、臨床試験中の新しい薬が実際に使われるまでに数年かかるようです。
アルツハイマー病になることが決まっていても、2,3年発症を遅らせるだけで生活の質は劇的に改善します。アルツハイマー病協会によると、毎年、50万人の新患者が減るだろうと推計されています。
現在、CFIT計画には50人が登録していますが、これらの人には臨床的に症状はありません。しかし、アルツハイマー病になる遺伝的な危険性を持っていることは知っています。、一等親がアルツハイマー病である人、あるいはアルツハイマー病の危険因子であるアポE遺伝子を持っている人なのです。
参加者は50歳代から80歳代で、少なくとも週1回、CFIセンターに行きます。最初、認知機能の基本的健康状態を評価され、6か月と1年後に再評価されます。センターは、アルツハイマー病を止めるために個別的な身体運動、食事、認知機能訓練、音楽療法、社会活動の組み合わせの処方を行います。CFITセンターは、参加者に年間4000ドルを請求しますが、これは計画を維持するためのもので、別に個人寄付として100万ドルを集めていますが、これは全額の自己負担を払えない4分の1の参加者の経済的補助に充てられます。
参加者は、決められた運動を行い、地中海風料理に基づく食事を摂り、血圧やコレステロールをコントロールします。認知機能の低下の危険因子として友人を持たないことがあり、センターでの社会的活動としてウイーのゲームを楽しんだり、歌ったり踊ったり演奏したりしています。さらにCFITでは、認知機能を改善するため徐々に難しい脳問題に挑戦するように勧めています。
10年前からアルツハイマー病研究者は、いわゆるナンスタディNun Studyの初期の結果から新しい言語学習といった認知活動が脳に保護能力があることに驚きました。ナンの研究は、1986年に始まり現在も進められていますが、同じ修道会でアメリカの複数の別の市に住む75歳から106歳までの678人の修道女を追跡しました。
1996年、アメリカ医師会雑誌Journal of the American Medical Association(JAMA)に報告が掲載されました。研究者は93人の修道女の記録から自伝を知りました。入会する女性は20歳代でしたが、入会する前に200から300字の短い自伝と、家族や入会のきっかけについても書くように要求されました。研究者は58年後、同じ修道女を調べ、随筆を多く書いて複雑な考えをもった女性はアルツハイマー病になる割合が有意に低いことを認めました。この発見とそれに続く研究から、高い言語的能力が人生の早期に発達することが、高齢期に認知症になることを防ぐらしいことが分ったのです。現在、多くの科学者は、こうした能力が人生の後半でも形成され再強化することができると考えています。
ジャネット・シャッケルJeannette Shackell氏(85歳)は、サンタバーバラの退職者地域に住んでいますが、人の名前を思い出すのが難しくなり神経科医にCFITを紹介されました。シャッケル氏は、週1回、運転してセンターに通い、勝つために前以て計画を立てるといった能力が必要なトランプなどのゲームを楽しんでいます。またバランスを取るためにウイーも楽しんでします。センターに行かない日は、20分から30分、家でコンピュータを操作して精神を鋭利にしようと徐々に難しい脳問題を問うソフトウエア―を使っています。
シャッケル氏は「私は、今ではよく名前を思い出すことができるようになりました。別の部屋に入ってもなぜ入ったかを理解できるようになりました」と語っています。
コシク医師は次のように述べています。
「CFITに来るようになって、1年後、シャッケル氏の認知機能の健康度の点数は向上しました。しかし、センターの他の参加者と同じようにこのプログラムによって彼女がアルツハイマー病に発症するのを遅らせていると断定するにはまだ早すぎます。その結論を得るにはまだ時間が必要です。認知機能の健康維持方法にこだわるようにすることは容易ではありません。しかし、プログラムの成功の理由のひとつは、食事、フィットネス、認知機能訓練といったレベルの高いことを提供することです。すべとは言えませんが多くの参加者は、認知機能の健康テストの点数を維持し向上させています。しかし、このテストには限界があります。グループはまだ小さく、異なったレベルで始めています。前のテストのことを覚えている人が再テストでよい結果を得ていることもあります」
コシキ医師は「CFITは地域のアシストリビング施設の高齢者の対照グループを立ち上げています。その人たちはプログラムに参加しないで認知機能やアルツハイマー病についてどのようになるかを比較します。こうした研究のデータを集めるには時間がかかります。異なるアイディアの方法でアルツハイマー病と防ぐ方法と組み合わせれば効果を上げるかもしれません」
コロンビア大学医療センターColumbia University Medical Centerのグループによる最近の研究には、ニューヨークの特定の地域に住む1880人の研究開始時に認知症のない高齢者が参加し、1992年から2006年まで行われました。参加者は、オリーブオイル、魚、豆類が多く、乳製品や肉が少ない地中海風料理に自分たちの食事内容がどれほど近いか、また身体運動が評価され、さらに認知機能が18カ月ごとに再評価されました。
この研究は、昨年の夏のJAMAに掲載されましたが、身体運動が高いことと、よい食事は別々にアルツハイマー病の発症のリスクを、そうでない人たちと比べて下げると結論づけています。しかし、二つの内容を合わせると、効果はさらに高くなることも認めました。運動が多く地中海風料理をよく食べる人は、そうでない人より35~44%発症の危険性を下げることを認めました。しかし、この仮説にはさらに別のグループによる研究が必要だと研究者は指摘していいます。
Wall Street Journal  MARCH 30, 2010 How to Outsmart Alzheimer's
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編者:研究中の報告だが興味あるので紹介した。アルツハイマー病のアミロイド原因説に基づく薬の臨床試験の効果が期待されたほどではなさそうか、効果がないようななかで予防の研究が重視されてきたようだ。







人生の目的意識が高いとアルツハイマー病になりにくい(3月1日/アメリカ)
アメリカのラッシュアルツハイマー病センターRush Alzheimer's Disease Centerのパトリシア・ボイルPatricia A. Boyle氏(写真)らの研究グループは、人生の目的意識とアルツハイマー病の発症との関係について疫学調査を行い、目的意識が高い人はアルツハイマー病にも軽度認知障害にもなりにくいことを認めました。
調査対象者は、「ラッシュ記憶と加齢プロジェクトRush Memory and Aging Project」に参加するシカゴ地区の介護施設や在宅で生活し調査開始時に認知症を認めない高齢者951人で、7年間以上(平均4.0年間)追跡し、毎年、評価を行いました。人生の目的意識のレベルとは、「過去に行ったことを考えると心地よい」あるいは「人生で方向や目的意識を持っている」などで意識の程度を分類しました。追跡期間中、155人がアルツハイマー病になりました。
年齢、性別、教育歴などを同じとして認知症になったグループとならなかったグループとで比較したところ、目的意識が高いグループは、低いグループより2.4倍、アルツハイマー病になりにくいことを認めました。この傾向は、居住地、うつ状態、神経質性、社会交流、慢性疾患を同じとしても認められました。さらに軽度認知障害にもなりにくく、認知機能の低下も遅いことも認めました。
この論文は、アメリカの精神医学雑誌Archives of General Psychiatryの3月号に掲載されました。
この結果について、研究者たちは次のように述べています。
「この傾向の生物学的背景はわかっていませんが、人生に積極的な目的意識をもつことで免疫機能を高め血管をよい状態と維持することと関係すると考えられます。今回の発見から、高齢者の健康と幸福を高めることを目的とした介入という新たな治療方法が見出されるかもしれません。人生の目的意識は、高齢者が個人的に意味ある活動や目的のある行動に関わるように支える行動面での戦略でもって高められる可能性のある要因です。たとえ行動の変化が小さくても、最終的に、意図している、有益である、妥当であるといった意識を高めることになるかもしれません」
Newswise 3/1/2010 Having Greater Purpose in Life Associated With a Reduced Risk of Alzheimer’s Disease および論文Effect of a Purpose in Life on Risk of Incident Alzheimer Disease and Mild Cognitive Impairment in Community-Dwelling Older Personsより)
編者:もともと人生の目的意識が高い高齢者はよいが、そうでない高齢者はどうしたよいというのだ。簡単に意識を変えることができるとは思わない。


「DHA・EPAが認知機能低下を抑制 島根大などによる研究グループが発表」(2月25日/日経ヘルス) 
青魚などに多く含まれる脂肪酸、EPAやDHAを高齢者にとってもらうことで、認知機能の低下を抑えられることがわかった。島根大学島根県立大学短期大学部などの研究グループが2月2日、マルハニチロホールディングス本社にて記者発表した。
2008年11月からニ重盲検試験を実施しており、今回発表されたのは、1年間の中間報告。認知症とは診断されていない65歳以上の高齢者108人を2群に分け、一方にDHA850mg、EPA200mg含有の魚肉ソーセージを、もう一方にはオリーブオイル含有の魚肉ソーセージを毎日2本食べてもらい、認知機能や記憶力を測定できるMMSE(ミニメンタルステートテスト)と前頭葉機能検査(FAB)を実施した。その結果、MMSEの図形を模写する項目で、DHA・EPA群ではオリーブオイル群に比べ6ヵ月目に改善傾向が、12ヵ月目には有意な改善が確認された。また、FABの指示通りに指を動かすという項目でも、DHA・EPA群ではオリーブオイル群に比べ6ヵ月目で有意な改善がみられた。
認知機能の低下には、遺伝のほか、加齢、生活習慣などが様々な要因が影響するが、島根県立大学短期大学部出雲キャンパスの山下一也副学長は「DHA・EPA含有ソーセージにより、高齢者の短期記憶や運動能力、模写などに関連する認知機能の低下が抑えられたと考えられる。今回の試験で、比較的よく魚を食べる日本人に対してもDHA・EPAが有効であることが確認されたことになる」と話す。
今回の発表内容については、第64回日本栄養・食糧学会(5月21~23日、徳島県徳島市開催)、2010国際アルツハイマー病会議(7月11~15日、米国ハワイ州ホノルル開催)で報告する予定という。 (日経ヘルス、堀田恵美)
日経ヘルスonline 10年2月25日 原文のまま
編者:論文を読んではいないでネット記事の紹介。研究助成がメーカーでは信憑性に問題はないか。


重篤な疾患で入院した高齢者は認知症になりやすい(2月23日/アメリカ)
アメリカ・シアトルにあるワシントン大学医学部Department of Medicine, University of Washingtonのウイリアム・エーレンバッハWilliam J. Ehlenbach医師(写真)らの研究グループは、疾患と入院と認知機能および認知症の関係について追跡調査を行い、入院が認知機能低下や認知症の発症に影響することを認めました。
研究グループは、急性疾患、または重篤な疾患で入院した高齢者、入院しなかった高齢者との人との認知機能の変化を調べました。
対象者は、「グループヘルスコオペラチブGroup Health Cooperative」に所属し「高齢者の思考変化スタディAdult Changes in Thought study」の参加者で、1994年から2007年までに入院したシアトル在住の65歳以上の人で、調査開始時に認知症を認めない2929人です。これらの人を2回以上訪問しました。なお頭部外傷で入院した人は除外しました。
対象者に「認知能力スクリーニングテストCognitive Abilities Screening Instrument (CASI)」を2年ごとに訪問して行い、CASIが86点未満の人は認知症の有無について診察しました。調査開始時の認知機能テスト点数、年齢、性別、教育歴などの因子を同じとして比較しました。平均追跡期間は6.1年、1601人は入院せず、1287人は重篤でない急性疾患で入院し、41人は重篤な疾患で入院しました。CASI点数は、対象者の94.3%にあたる人については退院後45日以降に訪問して調べました。
急性疾患で入院した人と入院しなかった人を比較するとCASIは有意に平均1.01ポイント低く、重篤な疾患で入院した人と入院しなかった人では有意に平均2.14ポント低いことを認めました。また入院しなかった人のあいだで146人が、重篤でない急性疾患で入院した人のあいだで228人が、重篤な疾患で入院した人のあいだで5人が認知症になりました。これらを比較すると、前者では1.4倍、後者では2.3倍、認知症の発症が多いことになります。重篤な疾患だけでなく重篤でない疾患でも高齢者の入院が認知機能の低下だけでなく、認知症の発症を高めることを認めたことになります。
なぜ入院によってこうした変化が起こるかについて研究グループは明確にしておらず、入院した疾患そのものが引き金なる可能性も否定していません。「重篤な疾患が認知機能の影響する仕組みは多様であり、疾患の入院治療に伴う低酸素、せん妄、低血圧、血糖異常、感染症、鎮静剤、鎮痛剤などが影響していると考えられる」と研究グループは見解を述べています。
この研究論文は、アメリカ医師会雑誌JAMAの2010年2月24日号に掲載されています。
Los Angeles Times  February 23, 2010  More evidence of a link between hospitalization and dementiaおよび論文Association Between Acute Care and Critical Illness Hospitalization and Cognitive Function in Older Adultsより)
編者:入院がきっかけで認知症になりやすいと一般に言われてきたことが事実として明らかにした研究だ。研究グループの見解のように入院した疾患が主要因かもしれないが、入院自体が認知機能の低下や認知症発症のきっかけになる可能性も否定できない。医療機関側でどのような注意が必要なのだろう。適切な医療にくわえ医療職の認知症についての知識と認知症の人への技術は不可欠だ。それにしても入院していない人たちの間で約6年間に10%近い人が認知症になっていることも驚かされる。対象者に高血圧、糖尿病、高脂血症などの疾患が多いためかもしれない。


治療を受けていない視力低下の高齢者は認知症になりやすい(2月18日/アメリカ)
アメリカのミシガン大学医学部内科Department of Internal Medicine Medical School University of Michiganのメアリー・ロジャーズMary A. M. Rogers准教授らの研究グループは、視力と目の疾患の治療と認知機能との関係について調べました。
研究グループは、健康と退職研究Health and Retirement Studyおよびメディケアの資料(1992年から2005年)のデータをもとに調査開始時点で認知機能が正常な625人の高齢者を8.5年間、追跡しました。その結果、視力低下があると認知症が発症しやすいこと、また調査開始時に視力がよい人は認知症に64%なりにくいことを認めました。さらに視力低下があるが治療を受けない人はアルツハイマー病に9.5倍なりやすく、認知症ではない認知機能低下に5倍なりやすいことも認めました。また調査開始時に視力低下があり治療を受けなかった人はアルツハイマー病に5倍なりやすいこと、90歳以上のアメリカ人で正常の認知機能の人の77.9%の人は少なくとも1回は目の治療を受けており、アルツハイマー病の人では61.7%が治療を受けていました。以上のことから治療を受けてない視力低下の人は認知機能が低下しやすく、アルツハイマー病にもなりやすいことを認めました。
この論文は、アメリカ疫学雑誌American Journal of Epidemiologyの2月11日電子版に掲載されました。
この結果について、ロジャーズ医師は次のように述べています。
「視力問題があることは重大な結果を招きますが、高齢者の多くが治療を受けていません。視力障害のある高齢者に治療が重要であり、目の問題の原因を知って治療を受けることができます。視力問題とは、白内障、緑内障、網膜障害などでこれらは外科的な治療などで改善されるものがあります」
適切な視力は多くの活動に欠かせません。活動が少ないことがアルツハイマー病の危険因子として認められています。活動とは、読書、ゲーム、知的刺激活動、社会的つながり、歩行などの身体運動などのことです。視力障害によって、こうした正常の活動が困難になるのです。
ロジャーズ医師は「アメリカの高齢者の多くは視力について保健制度上適切な医療が受けられていません。メディケアは、もっとも有益は視力スクリーニングを認めていないのです。目の問題が深刻になり受診する正当な理由があって初めて目の治療を受けているのが通常です」と述べています。
全国目の保健教育プログラムNational Eye Health Education Programの調査によると、このプログラムの受診者の11%未満の人は、緑内障や糖尿病性網膜症などの目の疾患に早期の警戒症状があることを知りません。しかし、視力障害や失明は高齢者の障害の10位内に入っており、他の健康障害や死亡につながりかねないのです。
さらにロジャーズは、「心疾患やがんによる死亡は少なくなっていますが、アルツハイマー病の死亡率は上昇しています。認知症の発症を遅らせることができるなら、こうすことでアルツハイマー病に関係するストレス、出費、負担から認知症の人や家族を守ることができます」と述べています。
疾病管理予防センターCenters for Disease Control and Preventionによると、アメリカ人の5人に1人は50歳以上で視力障害を経験しています。約500万人のアメリカ人がアルツハイマー病で、その数は1980年の倍で、2050年までに1300万人になると推計されています。
PRNewswire  Feb. 18 ,2010 Untreated Poor Vision in Elderly Linked to Dementia, University of Michigan Study Showsおよび論文Untreated Poor Vision: A Contributing Factor to Late-Life Dementiaより)
編者:視力低下そのものがアルツハイマー病など認知症を発症させるのではなく、視力障害により運動や社会参加の機会が減ることで認知症になるやすいとするロジャーズ氏の指摘は妥当だ。また視力障害があることで認知症の症状が早くでやすくなることも要因かもしれない。さらに、これらの目の障害は早期発見、治療で障害を軽減できることから認知症の予防にも重要だとするロジャーズ氏の指摘も適切だ。


アルツハイマー病の少ないインドの村(2月3日/インド)
北インドのバラブガールBallabgarhでは、アルツハイマー病がとても少ない。イギリスでは認知症は82万人以上いて、その数は2051年までに2倍になると推計されています。この傾向を遅くするために、この地域から学ぶことが何かあるだろうか。
バラブガールでは午前中、天気がよく、村の高齢者はいつもの場所に行って語り合い伝統的な水パイプを楽しんでいます。こうした人たちは60歳代、70歳代で、顔からは何年も重労働したことがわかり、頭脳はまだ鋭いです。
世界の多くの地域では高齢者が認知症になりやすいのに、ここではアルツハイマー病が稀です。科学者は、この小さな地域では他の地域よりアルツハイマー病が記録的に少ないと信じています。
76歳のパルシャディ・ラルParshadi Lal氏は「気分は良いし健康に感じます。膝がすこし具合は悪いが毎日歩いている」と話しており、友人たちもうなずいています。
アメリカのピッツバーグ大学University of Pittsburghの研究者がこの地域の55歳の以上の人について7年間かけて調査しました。かれらは、アルツハイマー病に関して5000人以上の人を調べました。これには、地域の文化にあわせ、読み書きができない人に相応しいスクリーニングテストを行い、アルツハイマー病の人を見逃さないようにしました。
研究者は、この地域は、裕福で進んだ地域よい長生きすることが少ないので、アルツハイマー病が少ないだろうと予測しました。しかし、平均寿命が短い要因を除いても、アルツハイマー病の有病率はイギリスより有意に低い―3分の1以下―のです。
研究者の一人のインド加齢研究センターCentre for Ageing Research in Indiaのビジャイ・チャンドラVijay Chandra医師(写真)は「ここが少ないだろうという予感は持った」と語っています。研究者が知る範囲で最も少ない有病率であることがわかりました。
世界で3600万人いるアルツハイマー病からバラブガールの人たちを何が防いでいるのでしょう。
チャンドラ医師は、アルツハイマー病になりやすいアポ4Eの遺伝子が少ないか調査しました。その結果、少なくないのです。アメリカのペンシルバニア州のある地域の人たちと比べても、その遺伝子の頻度はまったく同じであることを認めました。
しかし、ペンシルバニア州や世界の他の地域の人たちの比べ、 バラブガールの人たちはとても健康なのです。農村地域でほとんどの人は身体的にとても活発で、多くの人は脂肪が少ない物を食べ、ベジタリアン的な食事をしています。肥満はほとんどありません。
この肥沃な農村地域では、ストレスが少なく、家族支援はインドの他の地域や都市部よりなお強いのです。
チャンドラ医師は「それらが幸せな体、幸せな心、そして幸せな脳につながっているのです。コレステロール値はとても低く、それことがこの地域を守ってると信じてる」と述べています。
バラブガールの生活は、その他の地域での複雑でストレスの多い状況ととても異なっていわけではありません。この地域社会は私たちに何かを教えてくれているのです。
BBC 3 February 2010 Indian village may hold key to beating dementiaより)
関連論文:Incidence of Alzheimer’s disease in a rural community in India The Indo-US Study September 2001 NEUROLOGY 57 (pdf)
編者:BBCの記者が村を訪問して書いた記事だが、健康的な食事、ほどよい運動、頼れる家族、穏やかで相互依存の地域社会など生活や社会的要因がアルツハイマー病の発病を少なくしているのか、この記事だけではよく理解できない。


認知症の発症を減らす方法(2月3日/イギリス
年を取ることや持って生まれた遺伝子を変えることはできませんが、ライフスタイルを変えることで認知症のなる可能性を20%減らすことができます。イギリス放送協会BBCは、イギリス・アルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの研究部長のクリーブ・バラードClive Ballard教授を議長として専門家による委員会(委員一覧)を開催し、認知症の危険因子を減らす70以上の論文について検討しました。検討の結果、35歳は若いと思われますが、委員会は、勧告について考え始める最も相応しい年ととらえています。もっと多くの人たちが勧告にそった行動をとれば、将来、数千例の認知症が減らすことができるかもしれません。
勧告:認知症の予防におおいに信頼できる証拠がある事項。
○運動
心臓によいことは脳にもよいのです。運動はどの年齢でも認知症を防ぐ効果があります。
1週間に5回、1回少なくとも30分の運動は、認知症の発症の危険性を減らします。ジムに通う必要はありません。活発な歩行が最も実行しやすい方法です。どのような運動でも、心臓の働きを活発にして息をきらせるような運動で目的を達することができます。運動は健康的な体重と血圧を保ち、間接に認知症の危険性を少なくすると考えられています。定期的な運動は、脳の新細胞の成長など細胞や組織の修復機構を活性化するなどの健康に有効であるとする証拠が増えています。
○肥満を避ける
肥満は認知症の危険性を高めます。これは35歳から65歳までの中年期でとくに言えます。肥満は2型糖尿病―これも認知症の危険因子と考えられています―になりやすく、この糖尿病が認知症の原因なのか、肥満そのものが認知症になりやすくしているのかはっきりしません。また肥満は、血液中のコレステロールを高め、血圧も上げます。これらも認知症の危険因子として知られています。臨床的に肥満―BMIが30以上―とします。自分のBMI(体重(kg)/身長(m)×身長(m))をチェックしましょう。
○高血圧を下げる
中年期に常に血圧が高い―140/90mmHg以上―も認知症になる要因です。高血圧が脳に損傷を与えて認知症になりやすくすると考えられています。これは脳血管障害の結果として起こるかもしれませんが、細血管の変化として起こることもあります。全身を流れる血流が減って細胞や脳の神経を損傷します。40歳以上で、家系に認知症があり、心臓血管疾患の人がいるなら、定期的に血圧をチェックしましょう。
○コレステロールを減らす
これは中年期でもっと大きな問題です。高血圧と同様、血中のコレステロールが高いと脳血管障害や細血管障害を起こしやすくなります。しかし、コレステロールは、アルツハイマー病に特徴的な蛋白沈着であるアミロイド斑の原因に直接関係していると考えられていいます。40歳以上で家系に認知症があると、コレステロールをチェックしましょう。保健省Department of Healthは総コレステロールが190mg/dl以下を推奨しています(訳注)。
○禁煙
禁煙については混乱があります。ニコチンを動物に与えるとアミロイド斑が少なくなり認知症に保護的効果があると示唆する研究があります。しかし、喫煙によって他の化学物質も吸引するのでこうした効果は消されます。喫煙は、認知症の危険因子の血管性疾患の危険を高め、脳を低酸素状態にし、これにより脳のアミロイド斑の蛋白形成を促進することになるのです。
勧告:認知症の予防する可能性がある事項
○飲酒
研究によると、たしかに控え目な飲酒は認知機能の低下を防ぐようにみえます。適度な飲酒とは、女性で1日ワイン2杯、男性で3杯とされています。こうした研究は、飲酒者と非飲酒者とを比較して行われ、禁酒する人は健康のためにそうしているかもしれませんが、それがかえって認知症になりやすくしているようです。もし適切な飲酒の基準にそった飲み方をしているのなら止める必要はありません。飲酒をやめさせる必要も飲酒を増やす必要もありませんが、多量の飲酒は認知症の危険因子です。
○地中海料理をみならう
最近の研究によるとアルツハイマー病の危険性を減らす可能性がある料理として地中海料理が注目されています。果物、野菜、穀類、魚、オリーブオイルが多く、乳製品や化学的に加工した食品が少ないものです。ただし、こうした食事の認知症予防の効果を確かめるにはさらに長期的な研究が必要です。
○社会的に活発である
いくつかの研究によると、社会的に活発であることは認知症になりにくくする効果があり、人との社会的なつながりや肉体的ではない趣味が重要と考えられています。しかし、その効果にかかわる因子についての研究はとても難しく、結論については証拠として限られたものとなります。ある研究によると、独身や一人暮らしは認知症の危険因子とされました。社会的孤立は、一般的に健康には有害であり、うつ状態や心臓血管疾患を増やします。研究は、ガーデニングや編み物のような肉体的でない趣味は保護的効果があり、何十年もかけて次第に効果が蓄積されていることを示唆しています。
勧告:効果について判定できなかった項目
○脳トレ
脳の運動が認知症予防になるということは興味あるし楽しいことのようです。特定の条件下で非常に積極的な脳トレが論議や問題解決といったある機能を改善するという証拠はあります。しかし、クロスワードや数字パズルをすること、あるいは50歳で新しい言語を覚えることが、認知症の予防になるという証拠はありません。脳トレが効果があるという証拠は現在のところ乏しいのです。
○ビタミンサプリメント
葉酸、ビタミンB12とB6のビタミンサプリメントが認知症の発症を減らすという証拠はありませんが、研究は続けられています。神経退行性疾患を予防したり改善すると期待されたビタミンEサプリメントが臨床試験で効果が認められませんでした。
委員会委員一覧
Professor Clive Ballard (Chair), Director of Research, Alzheimer's Society
Dr Sarah Aldred, University of Birmingham
Dr Jacqueline Birks, Cochrnae Review, Oxford
Professor Carol Brayne, Institute of Public Health, University of Cambridge
Professor Mia Kivipelto, Karolinska Institute, Sweden
Dr Marcus Richards, Medical Research Council
Professor John Starr, Royal Victoria Hospital, NHS Lothian
Professor David Smith, Founding Director OPTIMA, University of Oxford
Professor Raj Kalaria, University of Newcastle
訳注:わが国120~220mg/dlを基準値とされていたが、2007年、日本動脈硬化学会では「高脂血症の診断基準」を「脂質異常症の診断基準」と名称変更し、基準をLDLコレステロール ≧140mg/dl、HDLコレステロール <40mg/dl、中性脂肪≧150mg/dlとして総コレステロールは基準から除去された。
BBC 3 February 2010 Your guide to reducing the risk of dementiaより)
編者:認知症の予防に関する現在までの知見を簡潔にまとめた勧告として紹介した。認知症の予防は中年期からと強調していることも注目したい。根拠は不明であるが20%減少できると具体的な数字が初めて示されている。
関連記事:Reduction in Dementia Predicted With Midlife Risk Factor Modification
From Medscape Medical News
April 2, 2010 ? According to the calculations of UK experts, the prevalence of dementia could be reduced by between 15% and 20% with appropriate risk factor modification begun by the age of about 35 years. As Tom Russ, MD, and John Starr, MD, from the University of Edinburgh, Scotland, observe in an editorial published online April 1 in BMJ Clinical Evidence, limiting the financial and personal cost of dementia are key goals for healthcare systems.

"One strategy that has recently gained momentum is early intervention to prevent development of the disorder," the authors note. In a BBC-hosted dementia panel held on January 6, panellists discussed 4 main factors that may minimize the risk for dementia across populations.

These include increasing levels of exercise across all ages, controlling midlife obesity, optimizing midlife blood pressure, and reducing midlife cholesterol levels to recommended targets for various risk groups.

With the right interventions, the panel estimated dementia rates could be potentially reduced by 2% per year starting from 2012, provided the interventions occurred in midlife, as there is no evidence that lowering blood pressure or cholesterol later in life effectively prevents dementia.

"Obviously, this would have a huge impact on the population prevalence of dementia, not to mention the potential impact on other disorders, such as cardiovascular disease, which share the same risk factors," Dr. Russ told Medscape Neurology.

Indeed, there is evidence now suggesting that risk factor modification may help prevent damage to the brain not only in vascular dementia, where traditional CVD risk factors most likely contribute to the pathology, but even in Alzheimer's disease, despite its very different pathology, Dr. Russ added.

Mild Cognitive Impairment

As the authors point out, between 11% and 33% of patients with mild cognitive impairment (MCI) develop dementia within 2 years of MCI onset, and MCI may be considered almost a precursor of dementia. There is as yet no reliable way of determining who is likely to progress to dementia and who will not, but some researchers feel that the answer will lie in more detailed neuroimaging or neuropsychological testing than is currently used.

To date, however, there is no evidence that treatment of MCI halts progression to dementia, so the identification of MCI may be of limited clinical use, the authors note.

"It's not terribly new, we are simply suggesting that these risk factors should be controlled as well as possible at a population level and that people should practice healthy lifestyle habits from midlife onwards to reduce their risk of many diseases, including dementia," Dr. Russ observed.

The Alzheimer's Research Trust recently estimated that dementia costs the United Kingdom ?23 billion a year.

Dr. Russ' post is supported by Alzheimer Scotland.

BMJ Clinical Evidence. Published online April 1, 2010.


「DHAの「認知症予防効果」を実証 」(2月2日/山陰中央日報)
島根大学医学部の橋本道男准教授(脂質栄養学)(写真)らの研究グループが、青魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)に、もの忘れや認知症の予防効果があることを、DHA入りの魚肉ソーセージを使い、国内初の100人規模の臨床研究で実証した。2008年11月から1年間の研究成果をまとめ、2日発表した。
研究は同グループが食事と認知機能の関連を疫学調査している島根県川本町で実施。65歳以上の被験者106人を2群に分け、一方にDHAの含有量の多い強化ソーセージを毎日2本食べ続けてもらい、半年ごとのテストで記憶力、運動能力を点数化して変化を調べた。
その結果、重なった2つの五角形を記憶して模写するテストとルールで決めた回数だけ指をたたく検査で、摂取前と比べ、数値改善がみられた。血液検査では赤血球膜中のDHA濃度が上がり、認知機能や運動能力の低下を抑える効果を裏付けた。
これに対し、通常のソーセージを食べ続けたもう一方の被験者群は、いずれも数値が下がった。
日本脂質栄養学会の前会長で、金城学院大学(名古屋市)の奥山治美特任教授は「動物実験はたくさんの報告があるが、人体での実証により、若い人を含めすべての年代での効果が期待できる」とした。
橋本准教授は「2年間の研究で、効果が想定より早く出た。欧米と比べて魚をよく食べる日本で確かめられたのが大事で、予防医学につながる」と話した。継続して安全性などを確かめる。
研究にはこのほか、県立大学短期大学部出雲キャンパス(出雲市)の山下一也副学長、仁寿会加藤病院(川本町)の加藤節司院長らが参加した。
山陰中央日報 10/02/02  原文のまま
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編者:論文を読んでいないが、認知機能が維持、改善したのであって、認知症の予防とは言えない。また、少人数のオープンな臨床試験での結論である。


喫煙は、やはりアルツハイマー病の危険因子(1月29日/アメリカ)
カリフォルニア大学サンフランシスコ校University of California, San Francisco (UCSF)の研究グループは、アルツハイマー病と喫煙の関係についてこれまで発表された論文を分析し、喫煙がアルツハイマー病の危険因子であることを改めて確認しました。研究グループは、研究結果を、研究の方法、発表雑誌の質、発表時期、論文の著者とタバコ産業との関係について調整したのち、タバコ産業とのつながりと研究結果と関係があると認めました。タバコ産業とつながりのある研究は喫煙がアルツハイマー病の予防効果があるとし、タバコ産業とつながりのない研究は喫煙を危険因子としています。
この研究論文は雑誌Journal of Alzheimer’s Diseaseの2010年1月号に掲載されています。
論文の主著者でUCSFの看護学部のジェニン・カタルドJanine K. Cataldo准教授(写真左上)は次のように述べています。
「何年ものあいだ、発表論文や一般メディアは喫煙がアルツハイマー病の予防効果があるかのような神話を持ち続けてきました。アルツハイマー病の生活の質と医療費への影響は増大しています。このため病気の原因をよりよく理解し、とくにタバコの影響についての理解することはとても重要です。
アメリカ・アルツハイマー病協会Alzheimer’s Associationによると、現在、アメリカには530万人のアルツハイマー病の人が居て、ベビーブーマーの世代が高齢になることで、その数は急速に増えるでしょう。65歳以上のアメリカ人にとってアルツハイマー病になると医療費は3倍になります。
研究グループは、1984年から2007年までに発表された43の論文について調べました。
そのうち4分の1の著者はタバコ産業とつながりがありました。
研究グループは、タバコ産業とつながりのない研究にもとづき喫煙者がアルツハイマー病になる平均的危険性が1.72と推計しました。おおよそ喫煙がアルツハイマー病の発病危険性を2倍にすることになります。反対に、タバコ産業とつながりのある研究ではその危険性は0,86となり、喫煙がアルツハイマー病に予防効果があると示唆することになりました。研究全体でみると、喫煙によるアルツハイマー病の発症危険性は有意で1.05でした。
喫煙とアルツハイマー病との関係を調べた前の研究では研究方法やタバコ産業とのつながりは考慮していませんでした。今回の研究グループは、タバコ産業と関係あるかどうかを決定するために、以前は秘密とされた877のタバコ産業の資料を分析しました。
研究グループは、「タバコ産業とのつながり“tobacco industry affiliation”」の包括的な基準を次のように決めました。著者が現在および以前にタバコ産業から助成を受けた、タバコ産業に就職していた、有料のコンサルタントをしていた、10年以内に発表した論文で現在および過去にタバコ産業の助成を受けた人の研究の共同研究者か共同執筆者である。
UCSF医学部で共同執筆者のスタントン・グランツStanton A. Glantz教授(写真左下)は、次のように述べています。
「企業がスポンサーとなった研究は企業に都合のよい結論にいたる傾向があることを知っています。今回の私たちの結果は、現在タバコ産業の助成によってむしばまれやすいこと、また学術的な研究所が自分たちの研究を守るためにタバコ産業の助成を少なくする必要性についても指摘しました」
今回の研究の共同研究者のジュディス・プロシャスカJudith J. Prochaska氏はUCSF精神科の所属で、研究は、カリフォルニアタバコ関連疾患研究プログラムCalifornia Tobacco Related Disease Research Program、国立がん研究所 National Cancer Institute、国立薬物乱用研究所National Institute on Drug Abuseからの助成で行われました。
University of California, San Francisco January 29, 2010 Study shows cigarette smoking a risk for Alzheimer’s diseaseおひび論文Cigarette Smoking is a Risk Factor for Alzheimer's Disease: An Analysis Controlling for Tobacco Industry Affiliationより)
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編者:改めて喫煙がアルツハイマー病の危険因子であることが示されたが、アメリカではいまだに喫煙がアルツハイマー病の保護因子とする説も流布しているのだろうか(もっともわが国では喫煙がアルツハイマー病の危険因子であることも流布していない)。さらにその背後にタバコ産業の存在があることに驚く。日本では、企業と研究結果との関係については曖昧な部分も少なくなく、実際の紹介したような研究が行える素地が日本にあるのだろうか。


運動は身体だけでなく脳にもよい(1月26日/カナダ・ドイツ)
カナダのブリティシュコロンビア大学University of British Columbia脳研究センターBrain Research Centreのテレサ・リュー・アンブローズTeresa Liu-Ambrose准教授(写真左上)らの研究グループは運動と認知機能とくに実行機能との関係について実際に運動を行って追跡して調らべました。
調査対象者は、バンクーバー在住の155人の女性(65歳~75歳)で、抵抗運動トレーニングresistance training (ウエイトマシントレーニングやスクワットなど)を1週間1回o行うグループ(54人)と1週間の2回行うグループ(52人)に、また対照として1週間に2回のバランス運動を行うグループ(49人)とに無作為に分け、12ヶ月間追跡しました。
調査開始時と12カ月後に、決定や問題解決の実行機能などをテストで調べました。その結果、抵抗トレーニングを受けた2つのグループは、バランス運動のグループより実行機能が有意に改善することを認めました。
この論文は、アメリカの内科学雑誌Archives of Internal Medicineの2010年1月25日号に掲載されています。
この結果について、リュー・アンブローズ氏は、「有酸素でないウエイトトレーニングも有酸素運動と同様の効果があるのではと推測して調査を行いました。また抵抗トレーニングはなかり学習を必要とし、とくに器具を使いなれていない高齢者にとっては、機器を使いこなす必要があり、こうした学習も知的機能を維持すると考えらる」と述べています。
また、ドイツのミュンヘン工科大学Technische Universitat Munchenの精神医学心理神療法科のトールライフ・エトゲンThorleif Etgen医師(写真左下)らの研究グループは、地域住民を対象に運動と認知機能との関係について調べました。
対象者は、南ババリア地方の地域住民を対象に行っているINVADE (エバースバーグ地域脳血管疾患と認知症の介入プロジェクトintervention project on cerebrovascular diseases and dementia in the community of Ebersberg, Bavaria)スタディーの一環として、55歳以上の3903人が2001年から2003年にかけてお調査に参加し、2年間追跡しました。調査開始時に、身体運動(なし、週3回未満の中頻度、週3回以上の高頻度)、認知機能テストおよび 結果に影響を与えると思われる因子(潜在的交絡因子)について評価し、追跡終了時に認知機能障害の発症を調べました。その結果、調査開始時に418人(10.7%)に認知障害を認め、2年後の追跡時に、当初認知障害がなかった3485人中207人(5.9%)に認知障害を認めました。運動しない人と比較すると中頻度と高頻度に運動する人では認知機能障害の発症率が有意に低いことを認めました。
この論文もアメリカの内科雑誌Archives of Internal Medicineの2010年1月25日号に掲載されています。
この結果について、エトゲン医師は、「中頻度と高頻度の運動で大きな違いはありません。大切なことはなんらかの運動をすることです。たとえ60歳、70歳になっても、遅すぎることはない」と述べています。
こうした運動が有効な証拠にもかかわらず、すべての研究者が、運動が精神機能低下や慢性疾患の予防の間違いない方法であるとしているわけではありません。
TIME  Jan. 26, 2010 Exercise to Protect Aging Bodies ? and Brainsおよび論文Resistance Training and Executive Functions A 12-Month Randomized Controlled TrialとPhysical Activity and Incident Cognitive Impairment in Elderly Persons The INVADE Studyより)
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受動喫煙は頸動脈狭窄があると認知症の危険因子(1月21日/アメリカ)
アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校University of California, San Franciscoの医学部精神科デボラ・バーネスDeborah E. Barnes准教授(写真)らの研究グループは、疫学調査で頸動脈狭窄のある高齢者は受動喫煙の経験があると認知症になりやすいことを認めました。
調査は1991年から1999年まで行われた心臓血管健康認知調査Cardiovascular Health Cognition Studyに参加した65歳以上の970人を対象に受動喫煙と認知症の発症について6年以上追跡して調べました。対象者は、調査開始時に喫煙者ではなく、臨床的に心臓血管疾患はなく、認知症も軽度認知障害もない人です。受動喫煙が中程度(16年から25年未満)から高度(25年以上)だけでは認知症の発症を高めることを認めませんでしたが、高度の受動喫煙で頸動脈に25%以上の狭窄を認める人については、軽度の受動喫煙(0年以上15年未満)で頸動脈の狭窄が25%の人より、3倍、認知症になりやすいことを認めました。
この研究論文は、アメリカ疫学雑誌American Journal of Epidemiology の2010年2月1日号に掲載されています。
この結果についてバーネス医師は次のように述べています。
「受動喫煙による脳血管障害などの健康被害のリスクはよく証明されてきましたが、今回の調査によって心臓血管系の危険因子をもった人では受動喫煙が認知症の危険因子であることが初めて示されました。二つの状態が合わさって認知症が生じると考えられます。頸動脈狭窄は症状のないことが多く、そのことを知らない人も少なくありません。心臓血管系の危険因子をどのように管理するかについてのさまざまな意見があります。別の集団での調査で今回の結果を確認する必要があり、私たちは単純に因果関係と見るつもりはありません。私たちの結果が改めて確認されれば、受動喫煙を制限するために努力してきた人たちをさらに支援した」
HealthCanal 21/01/2010 Study indicates link between second-hand smoke, narrowed neck artery, and dementiaおよび論文Secondhand Smoke, Vascular Disease, and Dementia Incidence: Findings From the Cardiovascular Health Cognition Studyより)
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ブルーベリーが記憶を改善(1月20日/アメリカ)
アメリカのシンシナッティ大学アカデミック健康センターUniversity of Cincinnati Academic Health Centerの精神科のロバート・クリコリアンRobert Krikorian准教授(写真)らのグループは、抗酸化作用や抗炎症作用をもつアントシアンanthocyaninを多く含むポリフェノー混合物を含むブルーベリーが動物実験で記憶を改善する効果が確かめられ、さらにアントシアンは糖代謝の改善や脳神経シグナルを高めて記憶機能を向上させるとされていることから、人を対象に予備的な臨床試験を行い、この効果を確認しました。
臨床試験は、天然のブルーベリージュース(市販のブルーベリージュース2杯から2.5杯に相当)を加齢に伴う初期の記憶障害のある9人の高齢者に12週間、毎日飲んでもらいたところ、連想学習や単語記憶で改善が見られ、またうつ的症状が少なくなり血糖値が改善しました。さらに年齢、性別で同じ条件の同人数の対照者にブルーベリージュースの含まない飲料水を飲んでもらって比較したところ、同様の結果を認めました。この予備的研究からブルーベリーを補充的に中期間服用することで神経認知面での効果が確かめるられ、予防効果や神経作用に関するより複雑な人でも臨床試験を行う根拠となりました。
この研究論文は、アメリカ化学会American Chemical Societyの雑誌Journal of Agricultural and Food Chemistryの2010年1月4日号に掲載されました。
この結果について研究グループは、「記憶への影響に関する予備的調査でブルーベリーの補充に意義あり、神経退行疾患の改善や予防の新たな研究への方向が示された」と述べています。
ACS News Service  January 20, 2010 First evidence that blueberry juice improves memory in older adultsおよび論文Blueberry Supplementation Improves Memory in Older Adultsより)
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編者:この報告はオープンな対照試験による小規模な予備的臨床試験の結果であり、ただちにブルーベリーが記憶に有効と結論づけることができないが、その可能性を示唆したとみたい。


降圧剤が認知症の発症と進行を防ぐ(1月13日/アメリカ)
アメリカのボストン大学医学部薬学科Department of Pharmacology, Boston University School of Medicineのベンジャミン・ウォロジンBenjamin Wolozin 教授(写真)らの研究グループは降圧剤の一種―アンジオテンシン受容体拮抗薬(略称:ARB)―がアルツハイマー病など認知症の発症や進行の予防に効果があることを疫学調査で認めました。
研究グループは、アメリカ退役軍人局の2002年から2006年までのデータを分析しました。その対象者は、心臓血管系疾患をもった65歳以上の人(男性:98%)81万9491人でした。対象者を、アンジオテンシン受容体拮抗薬(商品名:ニューロタンなど)を服用するグループ、アンジオテンシン変換酵素(略称:ACE)阻害剤(一般名リシノプリル商品名ゼストリルなど)を服用するグループ、またはその他の心臓血管系薬剤を服用するグループに分け、4年間追跡して、この間にアルツハイマー病など認知症の発症の有無を調べました。この分析には、年齢、糖尿病、脳血管障害、心臓血管疾患を同じ条件とし、既にアルツハイマー病など認知症になっている人の病気の進行度については、入院からナーシングホームへの入所または死亡の期間で判定しました。
その結果、ARBを服用していたグループは、ACE阻害剤やその他の心臓血管系薬剤を服用していたグループより認知症の発症が少なく、また既にアルツハイマー病になっている人ではARBを服用していたグループは、心臓血管系薬剤を服用していたグループよりナーシングホームへの入所および死亡が遅いことも認めました。さらにARBの服用量が多いほど、またACE阻害剤を併用しているほどこの傾向が強いことも認めました。
この調査論文はイギリスの医学雑誌British Medical Journal2010年1月12日号に掲載されています。
この結果について研究グループは、ARB効果のメカニズムについては不明であるが、高血圧による血管損傷による神経細胞を保護したり修復したりする作用があるのでなないかと推測しています。
BBC 13 January 2010 Blood pressure drug offers fresh hope for dementiaおよび論文Use of angiotensin receptor blockers and risk of dementia in a predominantly male population: prospective cohort analysisより)
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編者:高血圧は認知症の危険因子であり、その治療が認知症の発症を防ぐ効果があるされるが、今回の報告は降圧剤そのものがアルツハイマー病などの認知症の予防や進行に効果があるするものだ。


ビタミンD欠乏は認知症になりやすい(1月3日/アメリカ)
アメリカのタフツ大学フリードマン栄養科学政策学部Friedman School of Nutrition Science and Policy, Tufts UniversityのブエルJ.S Buell氏らの研究グループは、在宅介護を受けている318人(65歳~99歳)についてビタミンD(25-hydroxyvitamin D [25(OH)D] 編者注:ビタミンDの代謝過程の物質)と認知症と脳血管障害のMRIの所見について2003年から2007年まで追跡、比較分析しました。対象者の14.5%がビタミンD欠乏症(血中濃度が10ng/mL未満)、44.3%が不足状態(10-20ng/mL )でした。この間、76人が認知症で、そのうち41人はアルツハイマー病でした。欠乏症と不足状態はともに認知症の人に多く認められ、不足状態は、MRI上、脳白質部の超強度容積が多いことおよび太い脳動脈の梗塞とも相関していました。年齢、人種、肥満度、教育歴を同じ条件として、ビタミンD不足状態はアルツハイマー病を含め原因疾患に関係なくすべて認知症を2倍以上発症しやすく、また認知症の症状の有無の関係なく脳血管障害を2倍以上発症しやすいことを認めました。これらのことからビタミンDが血管保護作用があると推測されつと研究グループは結論づけています。この論文はアメリカの神経学雑誌Neurologyの2009年1月5日号に掲載されています。
(foodconsumer 03/01/2010 Vitamin D deficiency linked to high risk of dementia および論文25-Hydroxyvitamin D, dementia, and cerebrovascular pathology in elders receiving home servicesより)
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