認知症予防の情報(2012年~2013年)



2013年
「県独自の認知症検診 早期予防に有効 県検討部会 福井」(12月19日)
「会話に花咲く相づちロボ 認知症予防に開発中」(12月12日)
20世紀前半に生まれた人々の認知症の罹患率は低下している(11月27日)
バイリンガルは認知症の発症を遅らせる(11月7日)
女性の中年期のストレスは認知症の危険因子(10月1日)
高用量のスタチンに認知症予防効果を認める(8月31日)
糖尿病の人の認知症発症のリスク値(8月20日)
若年期認知症の9つの危険因子(8月12日)
「糖尿病未発症でも高血糖ほど認知症リスク,7年で1.2倍に 米ワシントン大の高齢者対象研究」(8月8日)
ココア毎日2杯は脳によさそう(8月7日)
母乳で育てた母親はアルツハイマー病になりにくいかもしれない(8月5日)
ラグビーの頭部外傷は若年期認知症に関係する(8月3日)
「貧血による認知症リスク1.5倍,APOE4や当初の認知機能とは独立 米・Health ABC試験を解析」(8月1日)
「高齢うつ病はADの前駆症状か危険因子か? 日本うつ病学会奨励賞受賞」(7月24日)
イギリスで認知症の有病率が低下(7月16日)
「がんと化学療法がアルツハイマー病リスク軽減に関係する研究発表」(7月16日)
退職が遅いと認知症になりにくい(7月15日)
がんの人はアルツハイマー病になりにくく、アルツハイマー病の人はがんになりにくい(7月10日)
血管性因子はアルツハイマー病の認知機能に関係(7月10月)
生涯にわたる認知活動は認知症予防に役立つようだ(7月3日)
緑茶のアルツハイマー病予防効果を示唆―最近の4つの研究―(6月30日)
ビタミンBはアルツハイマー病の予防になる?(5月20日)
「アルミニウムはアルツハイマー病の危険因子?」に関する長い論争を検証(5月8日)
「認知症に「地中海式ダイエット」が効果、米研究」(4月30日)
認知症の罹患率が低下―心臓血管疾患対策の成果?―(4月19日)
「認知症予防に「ふまねっと」 藤枝出身・北沢教授ら考案」(4月9日)
「認知症予防へ脳機能テスト 安曇野市が来年度から無料実施」(2月15日)
中年期の身体の健康は認知症を抑える(2月5日)
難聴の人は認知機能が低下しやすい(1月23日)
受動喫煙は認知症の危険因子の可能性(1月9日)
降圧剤が認知症の発症を抑えるかもしれない(1月7日)
宇宙放射線で宇宙飛行士がアルツハイマー病の発病の恐れ(1月1日)
2012年
大気汚染は認知機能の低下を招く(12月23日)
高齢者の孤独感は認知症の危険因子(12月10日)
「認知症予防実践カフェ 長岡京市、医療機関内に設置」(11月8日)
身体運動は血管性認知症の発症を抑える(11月1日)
「物忘れの程度診断 豊岡、養父に「認知症タッチパネル」」(10月31日)
閉経時のホルモン療法は開始時期が早いとアルツハイマー病を抑えるらしい(10月24日)
NIAが勧めるアルツハイマー病予防9つの行動(9月)
ベンゾジアゼピン系薬剤は認知症の発症を高めるようだ(9月28日)
歯をよくみがくと認知症になりにくいかもしれない(9月13日)
アメフト元選手にアルツハイマー病による死亡が多い(9月5日)
ココアが認知機能を改善するらしい(8月14日)
「脳卒中の実態解明を目指した「久山町研究」50年の軌跡」(8月6日)
短時間の多量飲酒は65歳以上で認知機能低下の危険性を高める(7月18日)
「日本初!認知機能をチェック・管理できるWebサービス『脳測』(のうそく)を発表 」(7月12日)
アメフトの危険性議論のきっかけとなるウェンゼル元選手が死亡(6月22日)
速足の人は認知症になりにくかもしれない(6月14日)
オメガ3サプリメントは無駄、脂の多い魚が頭にいいかも(6月12日)
コーヒーは認知症発症を遅らせるようだ(6月7日)
認知症に影響する都市構造(6月4日)
「金沢大と七尾市が包括協定 中島に拠点」(5月24日)
認知症が減っている?(5月8日)
人生の目的を持っていると脳が保護される(5月7日)
オメガ3脂肪酸が多い食事はアルツハイマー病の予防になるかもしれない(5月2日)
ベリー類は加齢のよる認知機能の低下を遅らせる(4月26日)
日常の身体活動はアルツハイマー病の発病リスクを抑える(4月19日)
ホモシスティン酸がアルツハイマー病の人の認知機能に関与(4月8日)
歯の不健康は認知症の危険因子(4月13日)
がん回復者はアルツハイマー病になりにくい(3月20日)
1日10ペニーのビタミンサプリメントで認知症を抑える―なぜ製薬会社は何10億ポンドも出資するのか―(3月17日)
「飲み過ぎで「脳萎縮」のリスク? 認知症の原因にも」(3月10日)
心房細動の人は認知機能が低下しやすい(2月27日)
女性高齢者は大気汚染で認知機能が低下(2月13日)
喫煙者の認知機能低下は男性のみ(2月6日)



2013年


「県独自の認知症検診 早期予防に有効 県検討部会 福井」(12月19日/産経新聞)
県は18日、県独自の認知症検診として取り組んできたモデル事業が、認知症の早期予防につながる検診方法として検証されたと発表した。県認知症検診検討部会(部会長・池端幸彦県医師会副会長)(写真)が判断したもので、今後は県内の市町に拡大し、認知症高齢者の症状改善などに役立てる。
今年度、認知症検診のモデル事業を鯖江、越前の両市と越前町の65歳以上の男女計1万4186人を対象に実施した。
5月ごろに国が毎年、高齢者を対象に行う介護予防のチェックリストに、「好きなことや趣味への興味や関心が無くなった」、「最近のことが思い出せないことがよくある」など認知機能を確認する県独自の5項目を盛り込んで送付。これに対し、8083人から返信があり、1563人で認知機能の低下が疑われた。このうち、治療が必要と診断されたのは127人だった。
県では全国よりも3年程度早く高齢化が進行していることを受け、認知症の対策に力を入れている。同事業は認知症の早期発見で症状改善につながることや重度化を防ぐことが期待されるとして、ほかの市町でも実施を呼びかけている。
産経ニュース 2013年12月19日 原文のまま
関連資料:福江市広報2013年(pdf2M)
編者:これだけで早期発見、早期予防ができると判断した根拠を知りたい。


「会話に花咲く相づちロボ 認知症予防に開発中」(12月12日/東京新聞)
高齢者の会話を盛り上げることで認知症の予防につなげようと、千葉大の大武美保子准教授(人工知能学)が会話に反応して笑ったり相づちを打ったりするロボットの開発に取り組んでいる。参考にしているのは双子のご長寿姉妹「きんさん・ぎんさん」の妹、蟹江ぎんさん(故人)の娘たち。明るい茶飲み話に学ぶため、ロボットを連れて名古屋市南区の旧ぎんさん宅への訪問を重ねている。 (谷悠己)
先月末の昼下がり。三女の津田千多代さん(95)と四女の佐野百合子さん(92)が、五女の蟹江美根代さん(90)が住む旧ぎんさん宅を訪れ、和室に座布団を並べおしゃべりを始めた。話題は「冬の野菜」。大武准教授が用意した野菜の写真を見ながら会話に花が咲く。
百合子さん「私はニンジンが大好き。特に母親が正月に作ってくれた『煮あえ』がおいしくてね」
千多代さん「あんたの一番のごちそうはニンジンだもんな」
美根代さん「どんな料理にも入れるでね」
ちゃぶ台の上には開発中の人型ロボット「ぼのちゃん」がちょこんと座り、会話の節々で首をかしげながら「そうそう」「うんうん」と相づちを打つ。
所用で欠席した長女の矢野年子さん(99)を含めた「ぎんさんの娘四姉妹」の会話は、互いの相づちをきっかけに話が展開することが多い。それを見習おうとロボットに音声認識機能を付け、事前に入力した相づちの言葉に反応して相づちを返すように設定した。大武准教授は「姉妹のように絶妙の間合いで相づちを打つにはまだ改良が必要」と笑う。
ロボットには外付けのカメラで話し手の表情を認識し、笑顔になるとつられて笑い声を出す機能も。複数の高齢者が集まって会話する場を和ませる役割を期待している。
ロボット工学を専門とする大武准教授は、祖母が認知症になったのを機に二〇〇七年から高齢者の脳機能にも研究を広げた。今年二月に知り合ったぎんさんの娘姉妹の会話に魅了されて協力を依頼。ほぼ毎月名古屋を訪れ、姉妹の会話のデータを取り込んでいる。
実は、楽しい会話が認知症予防に効くか、学術的にはまだ実証されていない。大武准教授は「まずは会話の効能を明らかにして、数年内にロボットを実用化したい」と意気込む。姉妹も「ロボット開発のお手伝いができるなんてめったにない。いい経験をさせてもらっている」と訪問を楽しみにしている。
大武准教授は十三日に科学技術振興機構東京本部(東京都千代田区)で開かれる公開シンポジウム「知の創生と情報社会」でこれまでの研究成果を報告する。入場無料。
TOKYOWEB 2013年12月12日 原文のまま
編者:認知症予防にこうして取り組みもあるのだなーとして紹介する。予防方法が効果なことを学術的に実証することも容易ではない。


20世紀前半に生まれた人々の認知症の罹患率は低下している(11月27日/アメリカ)
アメリカの研究者は、認知症発症の危険性は人口の高齢化にも拘わらず低下しているようだと報告しました。
アメリカの医学雑誌「ニューイングランドジャーナルオブメディスンNew England Journal of Medicine(NEJM)」の11月27日号で、認知症の罹患率が20世紀前半に生まれた人たちのあいだで低下しているらしいとする2つのアメリカの最近の報告および3つのヨーロッパの報告をアメリカの医師が取り上げています。
この見解を論述した論文の共同執筆者の一人でシアトルのワシントン大学University of Washington の臨床教授で、集団医療組合Group Health Cooperativeの事務局長であるエリック・ラーソンEric Larson医師(写真)は次のように述べています。
「今のところ、よりよい教育と経済的な幸せさが寿命を延ばし、高齢期まで生きる人たちの間で認知症の危険性を下げるという学説を支持する証拠があります」
研究者は、75歳以上の人口が増えると予測されているなかで、こうした発見の整合性を「勇気づけて注目に値すること」とみなしています。
さらに彼は次のように述べています。
「もちろん、人々がより長く生きるようになって全世界の人口の高齢化が進んでいます。このため認知症になる新しい事例は多いのです。しかし、人々が認知症にならないで生活できる期間が長くなるだろうと楽天的です」
今年初め、血糖が低い人は認知症になりにくいということが同じ雑誌に研究者の報告がありました。
これについてラーソン氏は「よりよい身体的活動性と食習慣と教育の機会、高血圧の治療、禁煙に関心が高いことが若年期にも高歴期にも、認知症を防いでいる」と言います。
また研究者らは次のように述べています。
「研究によると認知症は、複雑な症状の症候群であるが、認知症の多くを占め、とりわけ高齢期に生じるアルツハイマー病と血管性疾患との複合体が寄与する傾向があります」
イギリスの研究者は、1989年と2011年との間で65歳以上の7500人以上について調査しました。その結果、後期に生まれた人たちは早期に生まれた人たちよりも認知症の危険性が低いと結論づけられました。多分、より高い教育レベルと心疾患や脳血管障害のよりよい予防の成果でしょう。
2010年、カナダアルツハイマー病協会Alzheimer Society of Canadaが委託した報告書は
「カナダの認知症の有病率は30年以内に2倍以上になり、この状態が変化しないとするとその経費は10倍増える」と示唆されています。同時に示唆された変化の一つは、65歳以上で身体的活動性が増えたことです。
CBC News Nov 27, 2013 Dementia developing at later ages, U.S. study showsおよび論文New Insights into the Dementia Epidemic
記事中の5つの論文は以下のとおり
1:Manton KC, Gu XL, Ukraintseva SV. Declining prevalence of dementia in the U.S. elderly population. Adv Gerontol 2005;16:30-37
2:Langa KM, Larson EB, Karlawish JH, et al. Trends in the prevalence and mortality of cognitive impairment in the United States: is there evidence of a compression of cognitive morbidity? Alzheimers Dement 2008;4:134-144
3:Schrijvers EMC, Verhaaren BFJ, Koudstaal PJ, Hofman A, Ikram MA, Breteler MMB. Is dementia incidence declining? Trends in dementia incidence since 1990 in the Rotterdam Study. Neurology 2012;78:1456-1463
4:Qiu C, von Strauss E, B?ckman L, Winblad B, Fratiglioni L. Twenty-year changes in dementia occurrence suggest decreasing incidence in central Stockholm, Sweden. Neurology 2013;80:1888-94.
5:Matthews FE, Arthur A, Barnes LE, et al. A two-decade comparison of prevalence of dementia in individuals aged 65 years and older from three geographical areas of England: results of the Cognitive Function and Ageing Study I and II. Lancet 2013;382:1405-1412
サイト内関連記事:イギリスで認知症の有病率が低下(2013年7月16日)
編者:認知症の有望率や罹患率が前期高齢者で低下しているという事実への関心が高まっている。その要因として教育や予防医学の成果を挙げている。


バイリンガルは認知症の発症を遅らせる(11月7日/インド)
インド・ハイデラバードに在るにニザム医学研究所神経学部Department of Neurology, Nizam's Institute of Medical Sciencesのスヴァルナ・アラディSuvarna Alladi医師(写真左上、イギリスのエジンバラ大学認知機能加齢および認知機能疫学センターCentre for Cognitive Aging and Cognitive Epidemiolog, University of Edinburghのトーマス・バクThomas Bak医師(写真左下)らのグループは、バイリンガルと認知症の発症年齢、および認知症の型との関係について調べました。
対象は認知症の648人(このうちバイリンガルは391人)で専門医の外来で把握された人たちです。話す言語数以外に、教育、職業およびその他可能性ある要因の影響も調べました。
その結果、全般的にバイリンガルの人はモノリンガルの人より認知症の発症が4.5年遅いことを認めました。この傾向は、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、血管性認知症のそれぞれのグループでも認められ、また読み書きのできない人のグループ内で同様の傾向を認められました。ただし2言語以上の話す人についてはさらなる利点は認められませんでした。またバイリンガルの認知症発症年齢への影響は、教育、性別、職業、都市在住と農村在住の要因とは独立した要因であることも認めました。これはバイリンガルと認知症の発症に関する初めての大規模な研究とされる論文はアメリカ神経学会American Academy of Neurologyの雑誌Neurologyの電子版2013年11月6日号に掲載されました。
研究グループは、発症を遅らせる原因としてバイリンガルに伴う注意力や実行機能が考えられ、さらにバイリンガルでの異なる音、単語、概念、文法構造、社会通念によってある種の脳トレーニングが行われているためとも推測しています。しかしバイリンガル社会はモノリンガル社会とは人種的文化的に異なることが多く、要因の関与は複雑としています。
バク医師も次のように述べています。
「こうした結果からバイリンガルは、現在利用できる抗認知症薬より強い影響を及ぼしています。このためバイリンガルと認知機能の関係の研究は私たちの最優先課題です」
BBC 7 November 2013 Speaking a second language may delay dementia 論文Bilingualism delays age at onset of dementia, independent of education and immigration status
サイト内関連記事:「バイリンガルの人は認知症の発症が遅い」(2007年1月11日)
編者: バイリンガルが認知症の保護要因とする研究報告は今回が初めてではない。バイリンガルの人は認知機能のいわゆる「予備力」が多いために発症が遅くなるとする説もある。


女性の中年期のストレスは認知症の危険因子(10月1日/スウェーデン)
スウェーデンのイェーテポリ大学サルグレンスカアカデミー神経科学生理学研究所神経精神疫学部Neuropsychiatric Epidemiology Unit, Institute of Neuroscience and Physiology, Sahlgrenska Academy at Gothenburg Universityのレナ・ヨハンソンLena Johansson氏らのグループは、心理社会的ストレス、長期間の疲労および認知症の発症との関係を、女性を対象に中年期から更年期までの追跡調査しました。
対象グループは、イェーテポリでの女性前向き調査から系統的に選択された女性800人で,初年の1968年に基礎情報として精神医学的検査を受ける1974年、1980年、1992年、2000年および2005年に追跡して再調査しました。このグループの人は、1913年、1918年、1922年、1930年生まれの人たちです。
ストレスについては、18項目の心理社会的ストレス(離婚、未亡人状態、未就労、親族の病気など)を調べました。また疲弊症状は、標準化された質問票によりました。認知症は、「精神障害診断・統計マニュアル第3版改定版DSM-Ⅲ-R」の基準により神経精神医学的検査、面接、病気の記録、登録資料の情報で判定しました。
その結果、37年間の追跡期間中に425人が死亡し、153人が認知症(うち194人がアルツハイマー病)になりました。1968年時点の多くの心理社会的ストレスは認知症およびアルツハイマー病の人に有意に高いことが認められました。社会心理学的ストレスとは別に長期間の疲弊は独立してアルツハイマー病の発症と相関することを認めました。
この研究論文は、イギリスの医学雑誌BMJ電子版2013年9月30日号に掲載されました。
この結果に関連してヨハンソン氏は「ストレスマネジメントや行動療法が認知症の発症を軽減するのに役立つかどうかについてさらに研究が必要です」と述べています。
また「イギリスアルツハイマー病研究Alzheimer's Research UK」のサイモン・リッドレイSimon Ridley医師(写真左)はこの研究結果について次のように述べています。
「この研究から、ストレスが直接、認知症の発症に関与しているのかどうか、あるいはこうした女性集団でストレスが背後の危険因子の純然たる指標なのかどうか、あるいはストレスと認知症の相関がまったく別の因子によるものかどうかを知ることは難しい。私たちは、認知症の危険因子が複雑であり、年齢、遺伝、環境がすべて関与しているらしいことは知っています。現在わかっている証拠から言えることは、認知症の危険因子を軽減する最善の方法は、バランスのとれた食事、規則的な運動、禁煙、血圧やコレステロールを定期的に検査することなのです。もしストレスを感じていたり、健康全般に心配があれば、まず一般医GPにお話しすることを勧めます」
BBC 1 October 2013 Mid-life stress 'precedes dementiaおよび論文Common psychosocial stressors in middle-aged women related to longstanding distress and increased risk of Alzheimer's disease: a 38-year longitudinal population study
編者:ストレスが認知症の危険因子らしいことは既にいくつかの報告がある。それにしてもスウェーデンでは住民対象の長期間の疫学研究の蓄積が多いことに驚く。


高用量のスタチンに認知症予防効果を認める(8月31日/中華民国)
中華民国(台湾)の国立台湾大学病院付属新竹分院National Taiwan University Hospital Hsin-Chu BranchのTing-Tse Lin医師(写真)は、オランダ・アムステルダムで8月31日から9月4日まで開催中の2013年ヨーロッパ心臓学会学術会議 European Society of Cardiology Congresses(ESC Congress 2013)で約5万8000人についての疫学研究から高用量のスタチンに認知症の予防効果あるという報告をしました。
Lin医師は、次のように述べています。
「スタチンは心臓血管疾患の発病の危険性を抑えるために高齢者で広く使われています。最近、アメリカ食品医薬品局US Food and Drug Administration(FDA)が、安全性に関する報告でスタチンによる認知機能の変化―とくに高齢者で―を取り上げました。
前回の研究で、スタチン療法が認知症に有利な効果があることをみました。しかしスタチンの高齢者での新たで非血管性認知症への影響に関する大規模な研究は行われていません。
このため今回は、スタチンを使用することで認知症と初めて診断される事例について調べました」
研究者は、台湾国民健康保健の被保険者の100万人から無作為にサンプルを抽出し、1997年と1998年の2年間で認知症を認めない65歳以上の患者5万7669人を選びました。血管性認知症は除外しました。
おおよそ4.5年の追跡期間中に新たに5516人が認知症と診断されました。その他の5万2153人を対象群とし、スタチンの服薬用量で3つのグループに分けました。
認知症の発症危険性は、スタチンの総服薬量または1日の服薬量と逆相関でした。またスタチンの予防効果は、性別、年齢、心臓血管性危険因子によって異なりました。
さらにLin医師は言います。
「最大の総用量を服用した患者は認知症になる危険性は3分の1でした。1日の総用量が最大でも同様な効果を認めました。
認知症の発症を抑える最大の決定要因はスタチンの溶解性よりはその効力です。高い効力のスタチンは用量対反応でみると認知症の発症と有意に逆相関を示しました。効力が高いスタチンを高用量で服用することは認知症予防の最大効果を示しました。
この結果は、異なるスタチンの種類の1日の用量で分析しても同様でした。すべてのスタチン(ロバスタチンを除く)は、より多く服用することで認知症発症の危険性を低下させます。中用量のロバスタチンは、認知症の発症と正の相関がありました。これはロバスタチンが脂溶性のスタチンで、抗炎症作用やコレステロール低下作用がアトルバスタチンやシンバスタチンの効果とは異なるためでしょう。
わたしたちが知る限りでは、今回の研究は、認知症の新発症に関する異なるスタチンの効果を調べた高齢者での大規模で全国的な初めてのものでした。高用量のスタチンは認知症を予防することを認めました」
注:スタチンの薬剤別同等効力用量 ロバスタチンlovastatin(商品名:メバコール)40mg =プラバスタチンpravastatin(メバロチン)40mg =シンバスタチンSimvastatin(リポバス)20mg =アトルバスタチンatorvastatin(リピトール) 10mg =フルバスタチンfluvastatin(ローコール)80mg =ロスバスタチンrosuvastatin(クレストール) 5mg
ScienceDaily Aug.31,2013 High Dose Statins Prevents Dementia, Study Suggests
Abstract: Statin use and the incidence of dementia in the elderly: a nation-wide data survey
発表スライド:High dose statins prevent dementia(Ting-Tse Lin ESC Date:31-08-13) (pdf800K)
訳注:スタチン (Statin)は、HMG-CoA還元酵素を阻害することで血中コレステロールを下げる薬剤の総称。
サイト内関連記事:高コレステロール血症薬のシンバスタチンを服用している人は認知症になりにくい(2007年7月19日)
編者:必ずしも新しい知見ではないが、スタチンの認知症の予防効果に関する台湾での大規模な疫学調査報告として紹介した。同国の公的健康保険で疫学的に研究に適したデータが得られるか知らない。なおLin医師は本報告でYoung Investigators Awardsを受賞した。


糖尿病の人の認知症発症のリスク値(8月20日/アメリカ)
アメリカ・カリフォルニア州にあるカイザー・パーマネンテ調査部Kaiser Permanente Division of Researchのラヘル・ホワイトマーRachel A Whitmer氏(写真左上)らのグループは、2型糖尿病の患者が糖尿病のない人より認知症に2倍なりやすいが、将来の発症リスクを予期することは困難であることから、2型糖尿病の患者の10年間の認知症発症リスクの推測できるような実際的なリスク値を開発しその有効性を確かめました。
10年間追跡した2型糖尿病の患者(60歳以上)の二つのグループについてカイザパーマネンテ資料から2万9961事例について調べ、追跡期間中に17%の人が認知症となり、発症リスクについて2413事例で有効性を確かめました。可能性のあるリスクとして45項目を選び解析しました。
その結果、「網膜血管など微小血管性疾患」「壊死など糖尿病による足の疾患」「脳血管障害」「心筋梗塞など心臓血管性疾患」「高血糖など急性代謝性発病」「うつ状態」「年齢」「教育」の8つ因子がもっとも強い認知症発症の要因であることを認めました。
これらは報告者が知る限りでは、2型糖尿病の患者が10年間で認知症を発症する予期に関する初めてのリスク値です。このリスク値は、認知機能の低下や臨床試験の参加者で高いリスクをもつ患者の選択を向上させるために使うことができます。
この研究論文は雑誌Lancet Diabetes and Endocrinology電子版の2013年8月20日号に掲載されました。
今回の結果についてこの研究者は「これは『糖尿病に特化した認知症リスク値"diabetes-specific dementia risk score" (DSDRS)』と呼び、医師が認知症の発症リスクが高い2型糖尿病の患者を診察し早期に治療を行うのに役立つ」と述べています。
またホワイトマー氏は次のように述べています。
「不幸なことに2型糖尿病と認知症は多く病気です。二つの関連は起こるだろう公衆保健危機の前兆です。認知症の発症リスクを高める2型糖尿病の患者を早期に発見することは予防的治療を進める対象とするのに役立ちます。数値のシステムは、臨床医が簡単で正確な認知症発症リスクを2型糖尿病の高齢患者で予期する方法です。
次の2段階の進む計画があり、正確さを向上させるため認知機能試験を含める方法です」
この研究論文に関連する評論でフィンランドの「相対的効果と患者の安全性に関するセンターCenter for Comparative Effectiveness and Patient Safety」のアンナマイジャ・トルパネンAnna-Maija Tolppanen医師(写真左下)は次のようい述べています。
「DSDRSは臨床医が認知症発症リスクを決めるのに有用であるとしても、薬の臨床試験での患者の選別に役立つものではないようです。認知症への効果的な予防的介入に関する臨床試験のデータは、現在、ほとんどありません。たとえ臨床試験の候補者の選別にこのDSDRSが使われるとしても、糖尿病とその他多くの要因が排除基準となることを銘記すべきです」
medicalnewstoday 20 Aug 2013  Dementia risk score for people with diabetes 論文Risk score for prediction of 10 year dementia risk in individuals with type 2 diabetes: a cohort study
関連記事:糖尿病患者の認知症リスク予測 年齢・学歴などで点数化 (朝日新聞 2013年8月20日)
編者:非介入観察による認知症リスクの数値化であり、証明されたわけではない。あくまでも参考として利用したい。朝日新聞の記事にはわかりやすいリスク表が載っている。


若年期認知症の9つの危険因子(8月12日/スウェーデン)
スウェーデン・ウメオ大学老年学部地域医療リハビリテーション科Department of Community Medicine and Rehabilitation, Section of Geriatric Medicine, Umea Universityのピーター・ノードシュトロームPeter Nordstr?m教授(写真)らのグループは、65歳未満で認知症と診断される若年期認知症(young onset dementia :YOD)は、家族性の突然変異による遺伝に関係していることは知られていますが、若年期認知症という異成分からなる症候群のグループの理解をより理解するために異なる危険因子を見出す必要があるとしました。調査方法は、1969年1月1日から1979年12月31日までのスウェーデン徴兵制登録Swedish Military Service Conscription Register(訳注:現在、徴兵制はない)のデータを使いました。可能性のある危険因子―認知機能や身体的特徴など―は徴兵時に評価しました。両親の認知症などの危険因子は全国登録national register linkageを利用しました。調査対象者は、義務兵役に登録されたすべてのスウェーデン男性(48万8484人、平均年齢18歳)で、ほとんどは1950年1月1日から1960年12月31日に生まれています。前回の調査と利用できる資料および登録資料の質について確認されたことに基づき認知症の可能性のある危険因子を取り上げました。
その結果、平均37年間の追跡期間に487人が平均年齢54歳で若年期認知症と診断されました。資料を分析した結果、若年期認知症の危険因子は、アルコール中毒、人口寄与危険度population-attributable risk、脳血管障害、抗精神病薬の服用、うつ状態、父親の認知症、アルコール以外の薬物中毒、徴兵時の低い認知機能、低身長および収縮期高血圧が危険因子として認められました。これらのうち少なくとも2つの危険因子を持ち、さらに認知機能の低下のある男性では追跡期間中に発病する危険性は20倍でした。
以上、独立した9つの危険因子が男性の若年期認知症のほとんどの事例に関わることを認めました。こうした危険因子は倍倍で発病を増やし、どの因子もほとんど変化させることが可能で早期予防ができる機会がおおいにあることを示唆します。
この論文はアメリカ医師会雑誌JAMA Internal Medicineの電子版2013年8月12日号に掲載されました。
この結果について、イギリスのアルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの研究担当のジェス・スミスJess Smith氏は次のように述べています。
「なぜ、ある人が認知症になり、ある人はならないのかのその理由を正確に知ることが長くできませんでした。しかし今回の研究から、危険因子として認めるようになったことの多くと同じであることが再度、提示されました。「10代に飲み過ぎや薬物常習も止めよう、うつ状態を早く治療しよう。こうしたことが人生後半の認知症を発症する危険性を減らす鍵になりようです」
The Guardian 12 August 2013 Teenage drinking raises risk of early dementia, study suggests および論文Risk Factors in Late Adolescence for Young-Onset Dementia in MenA Nationwide Cohort Study
訳注:Population attributable risk (PAR) は一般人口からその危険因子が除去された場合、どれくらい病気が減少するかを示しています。独立危険因子には該当しない。
編者:若年期認知症の危険因子の研究は少ない。さすがスウェーデンでは既存の膨大な資料を駆使して疫学調査ができるのだ。この結果を新しい分野である若年期認知症予防にどう生かすか?
関連記事:「男性の若年性認知症の危険因子,アルコール依存など9つを同定 スウェーデン・48万人を40年追跡」(8月15日/MTPro)
18~65歳未満で発症する若年性認知症について,スウェーデン・ウメオ大学地域医療・リハビリテーション学老年医学部門のPeter Nordstr?m氏らは,同国の平均年齢18歳の男性48万8,484人を対象に約40年にわたって追跡し,若年性認知症発症の危険因子について検討した。その結果,アルコール依存,脳卒中既往,抗精神病薬使用など9つの独立した危険因子が同定されたとして, JAMA Intern Med(2013年8月12日オンライン版)に報告した。
対象条件は身長140?215cm未満,体重40?170kg未満
発症年齢が65歳未満の若年性認知症は,高齢発症に比べ遺伝性がより強く示唆され,いくつかの遺伝子変異が同定されているとNordstr?m氏ら。しかし,同疾患の発症には遺伝因子以外の多様な要因も関与することから,より広く適用可能な危険因子が特定できれば,若年性認知症の予防に役立てられる上,発症機序の解明にもつながるとして,大規模集団を対象に研究を行った。
対象は,同国の徴兵制度により1969年9月15日?79年12月31日に兵役に就いた49万7,844人のうち,身長が140?215cm未満,体重が40?170kg未満であった48万8,484人(平均年齢18歳)。入隊時(ベースライン)の標準的な認知機能および身体検査データや,同国の退院患者レジストリによる認知症診断データなどを使用した。なお,軽度認知機能障害(MCI)は除外した。
また,これまでの報告を基に,認知症発症の潜在的危険因子として,両親の認知症,血圧,認知機能,学歴,収入,アルコール依存,薬物依存,脳卒中,心筋梗塞,うつ病・抗うつ薬使用,抗精神病薬使用,糖尿病治療薬使用などを抽出した。
10万人当たり92人が若年性認知症を発症,アルコール依存でリスク4.8倍
2011年12月31日まで追跡(中央値37年)したところ,48万8,484人中506人で若年性認知症を発症していた。そのうち,パーキンソン病に伴う認知症(13人)とレビー小体型認知症(6人)を除く487人について解析したところ,10万人当たりの発症者は91.7人,診断時の平均年齢は53.6歳であった。ちなみに,MCIは36人で認められた。
Cox比例ハザード回帰モデルを用いて,潜在的危険因子別に若年性認知症発症のハザード比(HR)を求めた。その結果,アルコール依存〔HR 4.82(95%CI 3.83?6.05)〕,脳卒中〔同2.96(同2.02?4.35)〕,抗精神病薬使用〔同2.75(同2.09?3.60)〕など9つで独立して有意な発症リスクの上昇が示された(表)。また,これら9つの独立した危険因子と人口寄与リスクとの関連は合計68%(95%CI 39?85%)であった。
危険因子の複合効果でリスクは最大で20倍に
さらにNordstr?m氏らは,今回同定された9つの危険因子における複合効果(joint effect)についても検討した。総合的認知機能により三分位に分け,それぞれに危険因子の数(0,1,2)ごとに分類した上で,総合的認知機能が最も高い最高三分位の危険因子0を対照群とし,若年性認知症のHRを求めた。
その結果,HRは最低三分位では危険因子が0で9.12(95%CI 5.42?15.34),1で14.17(同9.07?22.15),2で20.38(同13.64?30.44)と,若年性認知症発症リスクは最大で20倍にまで有意に上昇することが認められた。
これらの結果から,同氏らは「(スウェーデンの)全国規模の男性コホートにおいて,若年性認知症発症の9つの独立した危険因子が同定された」と結論。さらにそれらの複合効果で最大でリスクが20倍に上ることなどが明らかにされた点を重要視し,早期介入による予防効果への期待が示唆されると結んだ。(松浦 庸夫)
(MTPro 2013年8月15日 原文のまま


「糖尿病未発症でも高血糖ほど認知症リスク,7年で1.2倍に 米ワシントン大の高齢者対象研究」(8月8日/MTPro)
糖尿病と認知症との密接な関連が相次いで報告される中,糖尿病未発症の高齢者における血糖値と認知症発症リスクについての新たな知見が報告された。米ワシントン大学内科学のPaul K. Crane氏(写真)らが,認知症未発症の高齢者を約7年追跡したところ,糖尿病未発症であっても,1日当たりの平均血糖値が100mg/dLと比べた場合の認知症発症リスクは,110mg/dLで1.15倍,115mg/dLで1.18倍と増加することが示されたという(N Eng J Med 2013年8月8日オンライン版)。
65歳以上の2,000人を追跡,1日平均血糖値と認知症リスクの関連を検討
肥満や糖尿病と認知症との関連についてはこれまでも数々の報告がなされてきたが,Crane氏らは今回,長期的な臨床データに基づき,糖尿病未発症者を中心に,高齢者における血糖値と後年の認知症発症リスクについて検討を行った。
対象は,ワシントン州の医療制度Group Health Cooperativeの登録データのうち,登録時に65歳以上で認知症が未発症の高齢者をランダムに抽出(1994?96年登録の2,581人,2000?02年登録の811人)し,2年置きの認知症検査に1回以上参加し,同データへの登録が同試験前に5年以上であることなどの条件を満たした2,067人。また,同試験参加2年以上前の血糖データが入手できることも条件とした。
認知症については,認知機能スクリーニング検査(Conginitive Abilities Screening Instrument;CASI)により,0?100点満点中85点以下の場合に臨床的・精神的評価の他,画像検査などから総合的に診断。認知症が認められなかった人は,その後も2年置きのフォローアップを継続した。
1日平均血糖値は28.7×HbA1c?46.7の計算式により算出した。
2,067人のうち,ベースラインで糖尿病を発症していた人は232人(平均年齢74歳),未発症だった人は1,835人(同76歳)。6.8年(中央値)にわたり追跡し,発症者と未発症者でそれぞれ血糖値と認知症発症リスクについて検討した。
4人に1人が認知症を発症,糖尿病発症者では190mg/dLでリスクは1.4倍
追跡終了時に認知症を発症していたのは2,067人中524人(25.4%)おり,そのうち追跡終了時の糖尿病発症者では343人中74人(21.6%),未発症者では1,724人中450人(26.1%)と,糖尿病未発症者でより多かった。認知症発症者のうち403人がアルツハイマー病(AD)の高い可能性(probable)または可能性あり(possible)であった。
上記を基に,追跡終了時の糖尿病発症者と未発症者別に,過去5年間の1日平均血糖値と認知症発症のハザード比(HR)を求めた。
その結果,糖尿病発症者では,1日平均血糖値が160mg/dLを対照とした場合,それ以下でも以上でも認知症の発症リスクは増加傾向を示し,特に190mg/dLでは1.4倍の有意な上昇が認められた。糖尿病未発症者では,100mg/dL(対照群)と比べ,それ以下では認知症発症リスクは有意な低下が確認されたが,それ以上では微増ながら有意差が示された(表)。
たとえ糖尿病未発症であっても,高血糖であるほど認知症発症リスクが増加することが示された今回のCrane氏らの研究。これまでの同様の研究では糖尿病患者を対象としたものが多く,HbA1cで検討したものが多かったとして,あらためて同氏らの研究が新たなエビデンスをもたらした点を強調。同時に,糖尿病患者とは違うメカニズムの可能性を示唆し,今後の研究課題の1つとした。
MTPro 2013年8月8日 原文のまま
論文:Glucose Levels and Risk of Dementia(N Engl J Med 2013; 369:540-548August 8, 2013DOI: 10.1056/NEJMoa1215740)


ココア毎日2杯は脳によさそう(8月7日/アメリカ)
ブライハム婦人病院Brigham and Women's Hospitalの神経科准教授のファーザネー・ソロンドFarzaneh Sorond医師(写真左上)らのグループは、高血圧など血管性危険因子を持っている高齢者の「神経血管性連携neurovascular coupling(NVC)」と認知機能の関係をNVCがココアの摂取でどう変化するか調べました。
対象者は60人の高齢者(平均年齢72.9歳)で、2重盲検法による臨床試験として、一つのグループはフラバノールが豊富なホットココアを1日2杯、30日間飲み、もう一つのグループはフラバノールが少ないホットココアを同じように飲むグループに分けて行いました。
認知機能は、「ミニメンタルステート検査Mini-Mental State Examination(MMSE)」と「トライアルメーキングテストTrail Making Test(TMT)」で把握しました。NVCは、超音波による中脳動脈の「心拍間血流速度反応」と脳機能を示す「Nバック課題(N-Back Task:NBT)」で把握しました。MRIを受けることができる人については大脳白質の構造を把握しました。
その結果、NVCについてはTMTの値とNBTの値との相関が認められました。またNVCが高いほど大脳白質濃度が高いことも認めました。最終的に、フラバノールの多いココアを30日間飲むことは、試験開始時にNVCの障害を認めた人(参加者のおおよそ3分の1)についてNVCが8.3%増し、TBTが改善することと相関しました。
以上のことから、NVCと認知機能との強い相関が認められ、NVCと認知機能がともに、試験開始時に障害のある人に限り通常のココアの摂取によって改善しました。またよいNVCは白質構造の整合性に強く相関することも認めました。
この論文は、アメリカの神経学雑誌Neurologyの電子版8月7日号に掲載されました。
この研究結果についてソロンド医師は次のように述べています。
「脳の血流の思考機能への影響についてさらに学んでいます。脳の異なる部位でのよりよい機能にはエネルギーが必要で、血流を高める必要があります。この関係がNVCと呼ばれるもので、アルツハイマー病などの疾患に重要な役割を果たしているようです」
ジョンズホプキンス大学医学部Johns Hopkins School of Medicineの記憶アルツハイマー病治療センターMemory and Alzheimer's Treatment Centerの准教授であるポール・ローゼンバーグPaul Rosenberg医師(写真左中)は「ココアと血流障害と認知機能低下との関係を証明するにはさらに研究が必要ですが、今回は将来の研究を示唆する重要な第1歩です」と述べています。
ソロンド医師らの前回の研究(訳注)では、ダークココア―ココアが少なくとも60~70%含まれる―が高血圧と糖尿病の発病に保護的作用があることを認めました。
今回の研究は、ココアが心疾患や脳血管障害に発症する危険性の高い人たちに効果があることを認めたものです。
フラブノールは心臓に保護的効果があるのですが、チョコレートで摂るとカロリーが多く、ココアの効果を消してしまうのではとその効果を疑う人もいます。
しかし別の研究によると、チョコレートは血圧を下げ、インスリンの感受性を高め、糖尿病の発病の危険性を抑えることが認められています。
「イギリスアルツハイマー病研究Alzheimer's Research UK」のサイモン・リドレイSimon Ridley研究部長は次のように述べています。
「今回の小規模な研究は、血管障害と認知機能の低下とが関連するという証拠が新たに加えたのです。ココアを使うといく方法はとてもポピュラーなようですが、その効果を結論づけるにはまだ早い。認知症は私たちが今日、直面する最大の医学的課題の一つです。認知症の予防方法を見つけるための研究に投資することは不可欠なことです。血管についての健康状態が悪いことが認知症の危険因子として知られています。血管障害と脳の健康の衰えとの関係についてさらに理解を深めることは、認知症の新しい治療や予防の研究を支えることになるでしょう」
DailyOnline 7 August 2013 Drinking hot chocolate could prevent ALZHEIMER'S by boosting blood flow to the brainおよび論文Neurovascular coupling, cerebral white matter integrity, and response to cocoa in older people
訳注:論文Cerebral blood flow response to flavanol-rich cocoa in healthy elderly humans. (Neuropsychiatr Dis Treat. 2008 Apr;4(2):433-40.)
編者:紹介するほどではない予備的な研究報告かもしれない。高血圧など血管性障害のある人たちに限りココアが効果あるということだが、認知機能でみて8%程度だ。この結果からココアがお勧めとはいかなだらう。もっとも既に楽しみで飲んでいる人が止めることはない。


母乳で育てた母親はアルツハイマー病になりにくいかもしれない(8月5日/イギリス)
ケンブリッジ大学生物学的人類学科Department of Biological Anthropology at the University of Cambridgeの研究員モリイ・フォックスMolly Fox氏(写真左)らのグループは、人生後期の認知機能と人生早期および中期の要因―たとえばホルモン性の危険因子―との関係が注目されていることから、アルツハイマー病の危険因子として授乳の影響を調べました。イギリス女性の高齢者81人(70歳から100歳)について本人、親族、介護者らから生殖に関するデータを集め、アルツハイマー病の有無も診断しました。アルツハイマー病の発病に関連するライフスタイル要因を考慮したうえ、授乳期間が長いほどアルツハイマー病の危険性が低くなるという相関を認めました。この論文は雑誌Journal of Alzheimer’s Diseaseの2013年7月29日号(Volume 37, Number 4)に掲載されました。
この結果についてフォックス氏らは次のように述べています。
「授乳することは、母親が出会うホルモンに関連した蓄積した危険性を変える重要な要因です。
一つは、アルツハイマー病に発病を防御する役割があると考えられるエストロゲンに反応する脳内ホルモンの感受性が抑えるのがブロゲステロンです。妊娠中にこのホルモンが増加していますが授乳することでその濃度が低下します。
もう一つは、アルツハイマー病では脳内インスリンへの抵抗性がありますが、授乳行為でインスリン感受性を復元し発病を抑えているかもしれません。
もっとも両親や兄弟姉妹がアルツハイマー病の女性では、授受による発病の危険性を下げるという影響は認められませんでした。
わずか81人の女性について行った研究なので注意しなければなりませんが、今回観察された授乳とアルツハイマー病の発病の危険性を下げるという関係は、とても意義深くまた一貫性があります」
授乳は、母親にとっても子供にとっても多くの健康面の利益があり、前回の研究では女性の人生後期の認知機能と関連するらしいことを認めています。
さらにフォックス氏は次のように述べています。
「今回の発見は、地球規模で流行するアルツハイマー病に戦う新しい手法を示している可能性があります。また廉価な予防方法が緊急に必要とされる途上国にとって重要な影響を与える可能性もあります。
なお、中国で行われた数百人規模の同様の調査では反対の結果を認めていますが、今回との違いは遺伝や環境要因によるものかもしれません。
授乳が認知機能面の健康に関連するらしいということはとても注目されます。この関係を明らかにするさらなる調査が必要です。本当に重要なことは、授乳の生理的効果が何であるかを理解することです」
アルツハイマー病協会Alzheimer’s Societyの広報担当者は次のように述べています。
「この研究は奇抜で、育児の方法とアルツハイマー病とに一定の関係を認めたことは興味深い。しかし、小さな規模の研究で、相関の理由を明らかにしてはいません。あまりに予備的な研究のため、このことから母乳と認知症の危険性について母親に勧告することは何もできません」
国民保健サービス NHSは、出産後6か月間は主に母乳で育て、その後は、母親と乳児の希望に沿って母乳と他の食品と合わせて育てる方法を強く勧告しています。
乳児にとって母乳は下痢、感染症、糖尿病、湿疹の危険性が抑え、認知機能や情緒の発展を促すという証拠も増えています。母親にとっては、卵巣がんや乳がんの危険性を抑え、子供との強い絆を造ることの支えとなります。
Independent 05 August 2013 Breastfeeding might reduce women's risk of Alzheimer's disease, suggests study および論文Maternal Breastfeeding History and Alzheimer’s Disease Risk
編者:母乳で育てた母親はアルツハイマー病になりにくいと結論づけるには早いが興味ある研究報告だ。


ラグビーの頭部外傷は若年期認知症に関係する(8月3日/イギリス)
BBCラジオスコットランドBBC Radio Scotlandのインタビューで、ウイリー・スチュワートWillie Stewart医師(写真)―グラスゴーの南総合病院Southern General Hospital―は、元ラグビー選手で行った研究を話しました。その研究では、脳組織の切片を調べ、頭部外傷と通常認知症に関係する異常な蛋白を認めたのです。
彼は「アメリカンフットボール、アイスホッケー、ラグビーといった衝突の多いスポーツでは、元ボクサーが人生の後半でよくある問題を起こし始めている」と述べています。
医師が調べた元選手は、「パンチドランク症候群punch drunk syndrome」として知られる「ボクサー認知症dementia pugilistica」を起こしたアマチュアの元ボクサーより異常な蛋白が高レベルに認められたのです。
記憶や会話や協調性の低下と性格的問題といった症状は、ボクサーになってから15年後ほどで通常現れるものです。
さらにスチュワート医師は、インタビューで次のように述べています。
「この問題は、最近まで頭部へのブロウを繰り返さして起こる脳震盪性の外傷のボクサーに限って影響を受けると考えられてきました。
ラグビー選手のなかでのこの病気になる割合は、脳震盪をよく起こす他のスポーツより低いようですが関心を持つべきです。
頭部外傷が治った人たちの状態で分かっていることは、かれらの脳が認知症の人、あるいはアルツハイマー病の人の脳で見かける顕微鏡下の異常にとてもよく似ているのです。
現在、ボクシングで脳を繰り返し痛めることでパンチドランク症候群に至ることは知っています。
その病理は、「ボクシング認知症」として分類されており、それは何度も脳震盪性の外傷を受けるボクシングに限られていると思っていました。しかし、イギリスやアメリカで分かっていることは、高頻度に頭部外傷を他のスポーツでも運動選手に起こっているということです。
アルツハイマー病では、通常、脳に蛋白の蓄積が見られます。この蛋白は、神経細胞で作られ、脳が適切に働かなくなり記憶障害や性格問題を起こすことに関連します。
よりよい注意が選手と管理者で払われるできです。
アメリカンフットボールやボクシングにおける現在ある証拠に基いて、何も問題はないとか、ラグビーは脳の損傷に太刀打ちできていると考えるのは愚かだと私は思います。
どの程度選手が発病するか、脳震盪を起こすに必要な回数はいくらか、あるいは受傷後どのくらいで発病するかといった疑問に答えることができませんが、発病する人はかなり少ないでしょうが、ゼロではないと予測します。
フットボール、競馬、障害物競馬といった頭部損傷の危険を伴うすべてのスポーツで、選手が十分に回復することを保証する責任があります。
脳震盪の予防に関する一般的な助言は『疑わしければ参加しない』です。
「もし脳震盪を起こしたと思われれば、どのようなスポーツでも、選手は離脱し危険に場面に合わないようにすべきです。脳が適切に回復しないままの短期間に2回目の頭部外傷を受けるとさらに重症化する可能性あります」
(Independent 03 August 2013 Rugby injuries could be linked to early onset dementia, warns scientist)
サイト内関連記事:アメフトの危険性議論のきっかけとなるウェンゼル元選手が死亡(2012年6月22日)
編者:必ずしも新しい話題ではないが、スチュワート医師の見解だけが紹介され反論がないが警鐘として紹介した。イギリスではいくつかのネットニュースでこの話題が紹介され、話題となっているようだ。既にアメリカではアメフトによる認知症が認知されている。柔道に伴う脳損傷が取り上げられているが、他のスポーツではどうか。


「貧血による認知症リスク1.5倍,APOE4や当初の認知機能とは独立 米・Health ABC試験を解析」(8月1日/MTPro)
高齢者でよく見られる貧血は疾病率や死亡率との関連が報告されており,軽視できない。このほど,韓国・亜洲大学精神科および老化研究所のChang Hyung Hong氏らが,米国の高齢者について前向きに観察したHealth ABC試験※のデータを用いて,貧血の有無による後年の認知症発症リスクを検討したところ,貧血がなかった人に比べてあった人では認知症リスクが1.5倍に上ることが分かったとしてNeurology 2013年7月31日オンライン版に報告。このリスクは,認知症の危険因子といわれるアポリポ蛋白(APO)E4アレルやベースラインの認知機能などとは独立したものという。
平均年齢76歳・2,500人超を11年以上追跡
米国における65歳以上の高齢者層の貧血発症率は9.2?23.9%という。最近の研究では,貧血が急速な認知機能低下や認知症リスクとの関連があることも示されているとHong氏ら。両者の関連について,同氏らはより長期的かつ大規模なデータを用いることで,さまざまな交絡因子も考慮した上での解析を行った。
米国で70?79歳の高齢者を対象に1997年に登録が開始され,2007年まで追跡された観察研究Health ABC試験のデータのうち,99?2000年の採血データが入手できた2,552人(平均年齢76.1歳)を抽出。11年以上にわたり追跡し,ベースラインの貧血の有無と認知症発症リスクとの関連を検討した。
ベースラインにおいて393人で貧血が認められ(貧血群),残る2,159人では認められなかった(対照群)。貧血群は,比較的高齢,アフリカ系や男性がより多く,APOE4アレルを持つ人,Modified Mini-Mental State Examination(3MS)スコアがより低いなどが特徴であった。
一方,認知機能および認知症については,数年置きに実施された3MSスコアの他,認知症治療薬の処方データやカルテから認知症の発症を判断した。
併存疾患やEPOなどで調整後も有意なリスク
2,552人を11年以上追跡したところ,455人(17.8%)が認知症を発症した。内訳は,貧血群が393人中89人(22.7%),対照群が2,159人中366人(17.0%)であった。
上記について,Cox比例ハザード回帰モデルにより,対照群と比較した貧血群の認知症発症のハザード比(HR)を求めた。その結果,未調整のHRは1.64(95%CI 1.30?2.07)で,ベースラインに貧血が認められなかった人に比べて,認められた人では認知症発症リスクが1.6倍有意に上昇することが分かった。
また,貧血と認知症発症リスクとの関連は,APOE4アレルや3MSスコアで調整した場合でも〔HR 1.47(95%CI 1.14?1.88)〕,脳卒中,高血圧,糖尿病などの併存疾患,赤血球造血刺激因子製剤(EPO),C反応性蛋白(CRP)などで調整した場合でも〔HR 1.49(95%CI 1.11?2.00)〕有意差は消失しなかった。
これらにより,Hong氏らは「われわれが仮説を立てた,貧血と後年の認知症発症リスクとの関連が示唆された」と結論付けた。貧血および認知症の種類については情報が得られなかったなどの限界を認めつつも,「貧血を認知症発症の危険因子と捉え,発症機序の解明や認知機能への介入などに関するさらなる研究が必要」と主張した。(松浦 庸夫)
※ Health, Aging and Body Composition study
MTPro 2013年8月1日 原文のまま
論文:Anemia and risk of dementia in older adults Findings from the Health ABC study


「高齢うつ病はADの前駆症状か危険因子か? 日本うつ病学会奨励賞受賞」(7月24日/MTPro)
順天堂大・馬場元氏ら,発症年齢とAβとの関連を検討
うつ病の罹患がアルツハイマー病(AD)の発症リスクを上昇させることがたびたび報告されてきたが,近年は若年発症のうつ病患者でも将来のAD発症リスクが高まることが示唆されているという。また,最近になって高齢うつ病患者におけるアミロイドβ(Aβ)蛋白の代謝異常も報告されている。高齢うつ病はADの前駆症状なのか? あるいは,うつ病の罹患がAβの代謝に影響を与える,いわばADの危険因子なのか? 順天堂大学大学院精神・行動科学准教授の馬場元氏(写真)らは,若年発症と高齢発症に分けて高齢うつ病患者の血清Aβについて関連を検討し,第10回日本うつ病学会総会(7月19?20日,北九州市)で発表した(Prog Neuropsychopharamacol Biol Psychiatry 2013; 43: 203-208)。なお,同発表は同学会の奨励賞を受賞した。
高齢うつ病患者を若年・高齢発症に分類,Aβ40対Aβ42比を健康人と比較
Aβは古くからADの原因物質の1つとして知られており,40個または42個のアミノ酸で構成されるが,ADの病態により強く影響を与えるのはAβ42であることから,Aβ40対Aβ42(Aβ40・Aβ42)比が注目されるようになった。
近年,高齢うつ病患者におけるAβの異常が報告され,Aβ40・Aβ42比の高値がADの発症に関与している可能性も示唆されている。しかしながら,高齢うつ病がADの前駆症状を意味するのか,あるいはうつ病の罹患がAβの代謝に影響を与える,AD発症の危険因子を意味するのか,はっきりしないという。そのため,発症年齢別に高齢うつ病患者におけるAβの代謝異常を検討する必要があると,馬場氏らは主張する。
そこで馬場氏らは,同大学で2005年から取り組んできた気分障害患者のデータベース※から60歳以上の大うつ病性障害患者89例を抽出し,若年発症(60歳未満)群35例と高齢発症(60歳以上)群54例に分類,年齢をマッチさせた健康人(対照群)81例と血清Aβ40・Aβ42比を比較した。
その結果,Aβ40・Aβ42比は,若年発症群12.2,高齢発症群10.4で,両群とも対照群(9.0)と比べて有意に高いことが示された(順にP=0.010,P=0.043)。一方,若年発症群と高齢発症群で同様に比べたところ,有意な群間差は認められなかった。
高齢うつ病は認知症の前駆症状ではなく危険因子の可能性を示唆
さらに馬場氏らは,うつ病発症年齢について,脳血管病変の重症度およびAβとの相関関係についても解析を行った。その結果,うつ病の発症年齢は,深部白質血管病変重症度(Deep White Matter Low Density;DWML)とは有意な正の相関を,Aβ40・Aβ42比とは有意な負の相関を示した(順にP=0.002,P=0.032,表)。なお,Aβ40,Aβ42,脳室周囲低吸収域(Periventricular Low Density;PVL)との相関は示されなかった。
今回の研究結果から,同氏らは「高齢うつ病では,若年発症でも高齢発症でも,Aβの代謝異常が存在することが示唆された。Aβの変化は、うつ病の発症年齢が若い方がより強く,逆に脳血管病変は発症年齢が高い方が,その障害がより強いことが示された」と結論。「(高齢発症と同様に)若年発症のうつ病でもADの発症リスクが高まるという所見の生物学的背景として,Aβの代謝異常が関係している可能性が示唆されたと同時に,高齢うつ病が認知症の前駆症状というより,危険因子である可能性を示唆するものと考えられる」と考察した。(松浦 庸夫)
※ Juntendo University Mood Disorder Project(JUMP)
(MTPro 2013年7月24日 原文のまま


イギリスで認知症の有病率が低下(7月16日/イギリス)
イギリスの医学雑誌The Lancetの電子版7月16日号に、イギリスで認知症の有病率が過去20年間で減少したとする研究報告が発表されました。1週間前、同じ雑誌でデンマークの科学者が90歳以上でみると10年前より知的に優れていると報告しています(資料①)。
イングランド・ウエールズの3地域―Cambridgeshire, Nottingham, Newcastle―で2008年から2011年の間で65歳以上の7796人を面接して調べ、認知症の有病率は6.5%でした。同じ方法で1989年から1994年の間で行った調査では8%でした。
この調査の代表でイギリスアルツハイマー病研究Alzheimer's Research UKの研究戦略部長のエリック・カランEric Karran氏(写真左上)は同誌の評論(資料②)で「この結果についての一つの解釈は、一般的な健康状態および健康管理が改善したことが認知症の発症リスクが低下するのに貢献したことです」と書いています。
今回の調査はケンブリッジ大学公衆保健研究所Cambridge Institute of Public Health at Cambridge Universityのキャロル・ブラインCarol Brayn教授(写真左中)の指導によりますが、研究者ら「糖尿病、肥満、身体的非活発がマイナス要因であり、早期教育と心臓疾患予防が役立った」と述べています。
認知症は女性がなりやすく、今回の研究では女性の約7.7%が認知症であるのに対し男性では4.9%でした。また20年前よりナーシングホームにより多くの認知症の人が居ることも認められました。
今回の研究に参加したイーストアングリア大学University of East Angliaの看護学教授のトニー・アーサーTony Arthur氏(写真左下)は「今回の研究は個々人の認知症の発症リスクが減少したことを示すものですで、人口が高齢化していることに伴い絶対数は増加する」と述べています。
この結果は、ボストンで開催中の2013年アルツハイマー病協会国際会議Alzheimer’s Association International Conference2013で報告される予定です。
Bloomberg Jul 16, 2013 Scientists Probing U.K. Dementia Levels Get Pleasant Surprise論文A two-decade comparison of prevalence of dementia in individuals aged 65 years and older from three geographical areas of England: results of the Cognitive Function and Ageing Study I and II(pdf1.9M))
資料
Physical and cognitive functioning of people older than 90 years: a comparison of two Danish cohorts born 10 years apart
Good news on dementia prevalence?we can make a difference(pdf2.1M)
サイト内関連記事:認知症の罹患率が低下―心臓血管疾患対策の成果?―(2013年4月19日)
編者:スウェーデンについでイギリスからも認知症の有病率あるいは罹患率が減少しているという報告だ。わが国ではどうか?
関連論文: The Lancet, Early Online Publication, 11 July 2013
Physical and cognitive functioning of people older than 90 years: a comparison of two Danish cohorts born 10 years apart
Prof Kaare Christensen MD a c d e Corresponding AuthorEmail Address, Mikael Thinggaard MSc a, Anna Oksuzyan MD a, Troels Steenstrup PhD b, Karen Andersen-Ranberg MD a f, Bernard Jeune MD a, Prof Matt McGue PhD g, Prof James W Vaupel PhD a c h
Summary
Background
A rapidly increasing proportion of people in high-income countries are surviving into their tenth decade. Concern is widespread that the basis for this development is the survival of frail and disabled elderly people into very old age. To investigate this issue, we compared the cognitive and physical functioning of two cohorts of Danish nonagenarians, born 10 years apart.
Methods
People in the first cohort were born in 1905 and assessed at age 93 years (n=2262); those in the second cohort were born in 1915 and assessed at age 95 years (n=1584). All cohort members were eligible irrespective of type of residence. Both cohorts were assessed by surveys that used the same design and assessment instrument, and had almost identical response rates (63%). Cognitive functioning was assessed by mini-mental state examination and a composite of five cognitive tests that are sensitive to age-related changes. Physical functioning was assessed by an activities of daily living score and by physical performance tests (grip strength, chair stand, and gait speed).
Findings
The chance of surviving from birth to age 93 years was 28% higher in the 1915 cohort than in the 1905 cohort (6?50% vs 5?06%), and the chance of reaching 95 years was 32% higher in 1915 cohort (3?93% vs 2?98%). The 1915 cohort scored significantly better on the mini-mental state examination than did the 1905 cohort (22?8 [SD 5?6] vs 21?4 [6?0]; p<0?0001), with a substantially higher proportion of participants obtaining maximum scores (28?30 points; 277 [23%] vs 235 [13%]; p<0?0001). Similarly, the cognitive composite score was significantly better in the 1915 than in the 1905 cohort (0?49 [SD 3?6] vs 0?01 [SD 3?6]; p=0?0003). The cohorts did not differ consistently in the physical performance tests, but the 1915 cohort had significantly better activities of daily living scores than did the 1905 cohort (2?0 [SD 0?8] vs 1?8 [0?7]; p<0?0001).
Interpretation
Despite being 2 years older at assessment, the 1915 cohort scored significantly better than the 1905 cohort on both the cognitive tests and the activities of daily living score, which suggests that more people are living to older ages with better overall functioning.
Funding
Danish National Research Foundation; US National Institutes of Health?National Institute on Aging; Danish Agency for Science, Technology and Innovation; VELUX Foundation.


「がんと化学療法がアルツハイマー病リスク軽減に関係する研究発表」(7月16日/SankeiBiz)
【ボストン2013年7月15日PRN=共同JBN】ボストンで開かれている国際アルツハイマー病会議(Alzheimer's Association International Conference=登録商標=2013、AAIC 2013)で15日報告された350万人の退役軍人に対する研究によると、多くの種類のがんがアルツハイマー病罹患のリスクを顕著に減少させていることと関係していることが分かった。この研究はさらに、これらがんのほとんどすべてに対する化学療法が、アルツハイマー病10+ 件罹患のリスクの追加的な減少効果を与えていることを示した。
ほかの3人の研究者は、アルツハイマー病に対するリスク要因とありうる治療法のいずれかまたは両方を解明した疫学的研究結果を発表した。その結果は以下の通り。
*2型糖尿病に対するメトフォルミン(metformin)投薬は、その他療法と比較して2型糖尿病患者のアルツハイマー病リスクを低下させることに関連している可能性がある。
*退役後の加齢は、アルツハイマー病リスクの減少と関係する可能性がありうる。
*社会経済的格差は、これまでに観察されているアフリカ系米国人のアルツハイマー病リスク増の説明になりうる。
アルツハイマー病協会(Alzheimer's Association)の医療・科学的関係問題副会長のマリア・カリリョ医博は「このような大集団の研究その他によって、われわれはアルツハイマー病リスクと予防要因に対するより幅広い実態の概要をつかみ始めている」と語った。
カリリョ医博は次いで、「しかしながら、われわれは認知機能低下とアルツハイマー病リスクを実際に上げ下げする特定の要因が何かについてもっと知らなければならない。われわれはそのためにより大規模、多様な人口集団における長期的な研究が必要であり、より多くの研究資金がそのために必要となる。アルツハイマー病研究は、フラミンガム研究の独自バージョンが有益であり、心臓疾患と発作の予防となるリスク要因について非常の多くのことを教えてくれる」と語った。
同医博は結論として、「アルツハイマー病に対応する国家計画は、進歩に向けて極めて必要である研究への資金供与によって完全に実現されなければならず、今年はアルツハイマー病と認知症研究を対象とする1億ドルが拠出される必要がある」と語った。
▽がん既往歴と化学療法はアルツハイマー病のリスク減少に関連する
ますます多くの証拠がアルツハイマー病のリスク軽減とがんとの関係の可能性を示唆しているが、今日まで、この関係ががんの種類と差異があるのか、あるいはがんの治療法によって変わるのかどうかは分かっていない。
VA Boston Healthcare Systemの老人病学者であるローラ・フレイン医博と同僚は、1996年から2011年の間に同病院に収容され、ベースラインで認知症にかかっていない65歳とそれ以上の退役軍人349万9378人の医療記録を分析した。その目的は19の異なるがん、がん治療および結果としてのアルツハイマー病の医療歴の間の関係を評価することだった。
平均5.65年の追跡調査に対して、8万2028人の退役軍人がアルツハイマー病を罹患したと診断された。アルツハイマー病にかかったこれら退役軍人の24%は、がん既往歴があり、76%はそれがなかった。
この研究者は、多くのタイプのがんが9%から51%の範囲でアルツハイマー病リスクの減少に関係していたことを発見した。リスク軽減は肝臓がんの生存者(51%リスク減少)と一番大きく、次いですい臓がん(44%)、食道がん(33%)、骨髄腫(26%)、肺がん(25%)、白血病(23%)だった。アルツハイマー病10+ 件リスク軽減がないかリスク増大と関係したがんは、メラノーバ(黒色腫)、前立腺がん、大腸がんなど。
研究者はがん既往歴とその他典型的な加齢関連医療効果と間の関係は一切見つからなかった。事実、がんは発作、骨関節症、白内障および黄斑変性のリスク増大と関係していた。ほとんどのがん生存者はまた、非アルツハイマー性認知症のリスクが増大した。
フレイン医博は「これら研究結果は合わせて、多くのがんとアルツハイマー病10+ 件との間の保護的関係は、がん患者の生存率増大によって単純に説明されるものではないことを示唆している。これらの結果がアルツハイマー病の治療上の意味を持つかどうか断定するためには、もっと多くの研究が必要となる」と語った。
がん既往歴を持ち化学療法を受けたが放射線治療を受けていない退役軍人の中では、アルツハイマー病リスクが20%から45%減少したが、それは前立腺がんを除きがんのタイプに依存していた。
フレイン医博は「化学療法のありうる保護的効果は、最近の実験的研究で支援されている。この研究結果は、アルツハイマー病のリスク軽減と関係する個々のがんに関連する特定の経路と治療剤による今後の研究集中への助けになりうることから興味深い。これによってアルツハイマー病予防と治療に対する新しい治療戦略の道を開く可能性がある」と語った。
▽メトフォルミン(metformin)はほかの2型糖尿病治療法より認知症リスクを低減することと関係する
2型糖尿病は認知症のリスクを倍加する。しかしながら最近まで、2型糖尿病治療と認知症リスクの間の関連性が検査されたことはなかった。米Kaiser Permanente Division of Researchのリチャード・ホイットマー博士と同僚は、1999年10月から2001年11月までに期間に糖尿病治療を開始した55歳とそれ以上の2型糖尿病患者集団1万4891人について研究した。単独療法(メトフォルミン、スルフォニル尿素薬、チアゾリジンジオン誘導体あるいはインスリン)を投与されて始まった患者だけが登録された。患者は最高5年間追跡調査された。
インスリン増感剤メトフォルミンを投与された患者は、ほかの糖尿病治療を受けた患者と比較して、認知症にかかるリスクが顕著に減少した。スルフォニル尿素薬を投与された患者と比較すると、メトフォルミン投与の患者は認知症のリスクを20%軽減する一方、チアゾリジンジオン誘導体あるいはインスリンの投与を受けた患者はリスクの差異はなかった。
ホイットマー博士は「これらの結果は、インスリン増感剤の効能が血糖値コントロールだけでなく神経認知上の健康にまで及ぶだろうという予備的証拠となる。動物実験によると、メトフォルミンは新しい脳細胞を生成に貢献し、空間記憶を強化しうることを示している」と語った。
認知症と、いくつかのケースではアルツハイマー病への前駆体になりうると考えられている軽度の認知機能障害に対する潜在的治療法として、メトフォルミンを評価する臨床試験が現在実施されている。
▽より高齢での退職が認知症のリスク軽減に関連する
ある研究では、人生における知的刺激と精神的関わりがアルツハイマー病やその他の認知症防止に有益であるかもしれないとしている。フランスにおける自営業者42万9000人以上の健康保険記録の分析によると、より高齢での退職は認知症のリスク軽減に関連していることが分かった。この調査結果はAAIC 2013で、ボルドー大学院保健科学科教授、フランス国立保健医学研究機構(INSERM)神経疫学(neroepidemiology)研究ディレクターであるキャロル・デュフォール医学博士と同僚が報告した。
この研究者は、2010年12月31日現在までに退職した存命の自営業者の健康と年金データベースを関連づけて調査した。これら自営業者は平均12年以上たった後で退職している。このグループの認知症発症率は2.65%だった。
分析結果によると、認知症と診断されるリスクは、仕事を続ける年ごとに(すなわちより高年齢での退職で)低くなっている。(認知症の危険率は0.968:信頼区間95%=0.962-0.973)。退職後5年以内に認知症と診断された人を除いた場合でも、調査結果は変わらず極めて有意だった(P<0.0001)。
デュフォール博士は「われわれのデータは、使わないとだめになるとの仮説に一致しており、より高齢での退職が認知症発症のリスクを大幅に軽減するとの強力な証拠を提示している。このパターンは、より直近の同時出生集団に焦点を当ててみるとさらに強力である」と語った。
デュフォール博士はまた「プロフェッショナルな活動は知的刺激と精神的関わりの重要な決定要因かもしれないし、それは認知症防止の潜在的力と考えられる。世界の国々が人口の高齢化に対処する中で、われわれの研究結果は、仕事や退職後の人生を通じて認識上、社会上の刺激を高いレベルで維持することの重要性を浮き彫りにしており、個々の高齢者が認識上、社会生活上の関わりを得られるよう援助するための政策が必要であることを示している」と指摘した。
この研究にはまた、フランス国際長寿センター(責任者:フランソワーズ・フォレット教授)が協力している。
▽社会経済的な格差がアフリカ系米国人の間でのアルツハイマー病罹患リスクが高いことの説明がつく可能性がある
アルツハイマー病とその他の認知症は、米国の白人高齢者より黒人高齢者で多く見られるが、この相違に関するリスク要因について広範な研究は行われていない。
注記:アルツハイマー病協会の2013年アルツハイマー病年次報告書によると、高齢のアフリカ系米国人は白人高齢者に比べて約2倍アルツハイマー病やその他の認知症にかかっており、ヒスパニック系米国人は白人高齢者に比べて同程度もしくは1.5倍アルツハイマー病、その他の認知症にかかっていると考えられている。
クリスティーン・ヤフェ医学博士(カリフォルニア大学サンフランシスコ校、サンフランシスコVAメディカルセンター)と同僚は、同時出生集団の高齢者で人種の相違による認知症発症率に違いがあるのか、また相違があった場合にその相違が社会経済状態(SES)の指標(収入、金銭上の適切度、教育、識字率)と健康関連要因によって説明可能かどうかを見極めようと試みた。
この科学者はベースラインとして認知症にかかっていない3075人の黒人、白人高齢者(平均74.1歳)における認知症リスクを評価した。この研究は現行のHealth, Aging and Body Composition Study(健康・加齢・身体組成研究)の一環として行われた。
12年間の追跡調査期間中、参加者の18.7%が処方医薬、病院記録や認知度低下に基づき認知症発症と診断された。この集団では、アフリカ系米国人は白人より1.5倍認知症にかかりやすかった(21.9%対16.4%)。しかし教育水準、識字率、収入、財政の妥当性などの社会経済的な要因に合わせて調整したあとでは、研究者はリスクの差異が統計的に有意でないことを見つけた。
ヤフェ博士は「われわれの研究結果が示唆するところでは、社会経済的な要因の差異は認知症発症率の人種、エスニック上の格差で説明できる可能性がある。将来これらの格差を調査する研究では、広範な社会経済的な要因を考慮する必要がある」と語った。
ヤフェ博士は、「認知症発症率軽減の方法として、社会経済的リスク要因の改善による潜在的恩恵を探求する」ためにより多くの研究が必要であると指摘した。
(発表:ヤフェ博士はAAIC 2013 Program Committeeの共同議長)
▽国際アルツハイマー病会議(AAIC)について
国際アルツハイマー病会議(AAIC)はこの種の会議では世界最大で、世界中の研究者が集まってアルツハイマー病と関連の障害の原因、診断、治療、予防に関する画期的な研究、情報についての報告、討議を行っている。アルツハイマー協会の研究プロジェクトの一環としてAAICは認知症についての新たな知識の創出、生命に関する共同コミュニティーを育成するための触媒の役割を果たしている。
▽アルツハイマー病協会について
アルツハイマー協会はアルツハイマー病のケア、サポート、研究の世界で有力なボランティアの健康組織である。その使命は研究の前進を通じてアルツハイマー病を根絶し、すべての患者にケア、サポートを提供、強化し、脳の健康促進を通じて認知症のリスクを減らすことである。同協会のビジョンはアルツハイマー病のない世界だ。詳しい情報はウェブサイト(www.alz.org)を参照、または電話(800-272-3900)で。
ソース:Alzheimer's Association
▽問い合わせ先
Alzheimer's Association(R)
media line: +1-312.335.4078,
media@alz.org;
AAIC 2013 press room, July 13-18: +1-617.954.3414
SankeiBiz  2013年7月16日 原文のまま
関連資料A Reduced Risk of Alzheimer's Disease is Associated with the Majority of Cancers in a National Cohort of Veterans Laura Frain, MD, MPH, GRECC, VA Boston Healthcare System P3-175 AAIC2013


退職が遅いと認知症になりにくい(7月15日/フランス)
フランスの大規模調査の結果、退職が遅い人はアルツハイマー病など認知症になりにくいことを認めたと、ボストンで7月13日から18日まで開催中のアルツハイマー病協会国際会議2013年Alzheimer's Association International Conference 2013で7月15日に報告されました。報告したのはフランス国立保健医療研究所INSERMの疫学者のカロル・デュフオイルCarole Dufouil氏(写真左上)で「退職が1年遅いと認知症になる危険性は3.2%ずつ低下する」と述べています。
フランスは、ニコラス・サルコジNicolas Sarkozy前大統領が認知症の研究を優先課題としたこともあり、世界的にアルツハイマー病の研究が盛んです。またフランスには、アメリカのメディケアのような医療制度に加盟する自営業者の詳細な保健記録があります。
42万9000人以上の労働者の記録が使われました。その多くは、パン職人や木工製作者などの商店主や工芸作家らです。対象者の平均年齢74歳で平均して退職生活の期間は12年でした。
さらにデュフオイル氏は次のように述べています。
「対象者のうち3%ほどが認知症になりましたが、退職した年齢が高くなるほど発症のリスクは低くいのです。65歳で退職した人の認知症の発症リスクは60歳で退職した人と比較して15%低いのです。知的な低下があって退職が早くなる可能性を除外するため退職後5年以内に認知症になった人は除外しました。仕事が認知機能に影響することが示唆され、その逆ではありませんでした。フランスではさまざまな職業で強制退職制度があります。公務員は65歳までに退職しなければなりません。今回の調査結果から、希望するだけ長く仕事をすべきことが示唆されています。それが健康に良いのです」
90歳になったばかりのジュン・スプリンガーJune Springer氏(写真左中)もそう考えています。彼女は8年前、バージニア州アレキサンドリアにあるキャッフィプランビングアンドヒーティングCaffi Plumbing & Heatingの常勤の受付係として採用されました。
彼女の次のように述べています。
「この年で私を採用した会社を称えたい。働くことが楽しみで、人と一緒にいて、現在の出来事に遅れを取らないようにします。私のしたいことができるのがいいのです。神が使えるようにした期間だけ私は頭を使います。毎日、使っています」
アルツハイマー病協会Alzheimer's Associationの医学科学委員会のヒーサー・スニダーHeather Snyder委員長(写真左下)は次のように述べています。
「この研究結果から、誰もが退職を遅くする必要があるということではありません。認知機能をより活発にし、社会活動を維持し、楽しいことは何にも関わり続けることが重要なのです。私の両親は退職していますが、以前より忙しくしています。地元の大学で授業を受け、講演に出かけ、生活のなかで認知機能的にも社会的にも関わりを維持しようとしています」
人は、身体の他の部分と異なり、脳を健康に保もつことができるようです。フランスの大規模調査から、退職を遅らせ人生の遅くまで働くことが認知症を防ぐのに役立つかもしれません。
USAToday July 15, 2013 Study: Later retirement may help prevent dementia
関連抄録:Older Age at retirement is associated with decreased risk of dementia. Analysis of a healthcare insurance database of self-employed workers (pdf 120K)
編者:ネットニュース記事と抄録に基づき紹介した。退職を遅らせることも、退職後に活発であることも共に認知症の発症を遅らせることに関係するのだろう。


がんの人はアルツハイマー病になりにくく、アルツハイマー病の人はがんになりにくい(7月10日/イタリア)
イタリア国立研究委員会National Research Council of Italyのマッシモ・ムシッコMassimo Musicco氏(写真左上)らのグループは、アルツハイマー病の人のがんの発現とがんの人のアルツハイマー病の発現率を調べました。対象者は、北イタリアの住民2万5000人で、がんについては地域の保健担当部署のがん登録の資料を、アルツハイマー病については薬の処方、入院、支払控除登録の資料を使い、調査期間は2004年から2009年までとしました。
その結果、アルツハイマー病の人のがん発症リスクはない人より43%少なく、がんの人のアルツハイマー病の発症リスクはない人より35%少いことを認めました。
がんもアルツハイマー病は年齢と共に増加しますが、二つの発症は逆相関でした。アルツハイマー病、がん、老化は人の加齢に関係した特異的な現象を示していると思われます。
この研究論文はアメリカ神経学会American Academy of Neurologyの雑誌Neurologyの電子版2013年7月10日版に掲載されました。
この話題は、今週末ボストンで開催され66か国からの4500人が参加すると予測されている「2013年アルツハイマー病協会国際会議Alzheimer's Association International Conference2013」で議論されるそうです。
一握りの研究者よる予感から始まった研究結果はアルツハイマー病とがんという二つの恐るべき診断を受けた人たちにとって、小さいかけらのような良いニュースです。がんがあることでアルツハイマー病を保護し、その逆もまた真実だとうことです。
「退役軍人ボストンヘルスケアシステムVA Boston Healthcare System」とブライハム・女性病院Brigham and Women's Hospitalの疫学者、腫瘍学者、老年科医で今回の研究には関わっていないジェーン・ドライバーJane A. Driver医師(写真左中)は「アルツハイマー病は、費用、生活への影響という面でその他の病気を小さく見せるほどの病気です。この病気について私たちがあるべき状態より進歩していない」と述べています。
誰も、何故アルツハイマー病とがんが逆相関なのか確かなことは知りません。
論文の筆頭執筆者のムシッコ氏は「この二つの病気は加齢の異なる側面だと思います。一定の遺伝子を持っていることでひとつの病気の過程にあるとその他の遺伝子に影響するのでしょう」と述べています。
ドライバー医師はさらに次のように述べています。
「二つの状態は相反する遺伝子活性によるようです。がんは基本的に細胞があまりに多く再生産して死亡することを拒否みはしますが、あまりに早く絶滅します」
彼女は、現在、遺伝子PIN1―二つの状態に関係すると思われる-の活性を高めたり低くする可能性のある候補薬を開発しています。
二つの病気の逆相関は、薬の開発に疑問を呈することになります。アルツハイマー病に効果的な薬を発見すると、それはがんを引き起こすことになるかもしれないのです。
ドライバー医師は「このことを私たちが考えなければならない」と述べています。
すべてのがんがアルツハイマー病に等しく保護的なわけではないようです。今回の研究から前立腺がんは保護的ではありません。科学者はその確かな理由を知りません。
今回の逆相関についてその理由を簡単に「アルツハイマー病あるいはがんのどちらかの人は他方の病気になるほど長生きしないのだろう」という説明を考えている人たちへの回答となっています。今回の研究からは、こうして説明が妥当ではないことを示しています。
またムシッコ医師は「がんと診断される頻度は、後からアルツハイマー病と診断された人では少なく、その逆もまた事実です」と述べています。
ワシントン大学医学部Washington University School of Medicineのキャサリン・ローCatherine Roe氏(写真左下)は次のように述べています。
「私がアルツハイマー病とがんの関係を初めて示唆した2005年当時、科学者仲間は私を笑いました。今回の新しい研究が私の以前の発見を確証するものとして興奮します。もっと多くの科学者がこの関係を今真剣に取り上げるでしょう。人々がまだ考えていなかった研究の道を開くことになるかもしれません。人々はあまりに長く『いつもの容疑者』ばかりを観てきました」
USA TODAY July 10, 2013 Study finds inverse link between cancer, Alzheimer'sおよび論文Inverse occurrence of cancer and Alzheimer disease A population-based incidence study
サイト内関連記事:アルツハイマー病の人はがんになりにくく、がん患者はアルツハイマー病になりにくい(2009年12月23日)
編者:がんとアルツハイマー病の逆相関については上記のとおり2009年に既に報告されている。この当時も増殖性のがんと退行性のアルツハイマー病が分子レベルで共通するとする仮説があった。今回の研究報告についてはアメリカで多くのマスコミが取り上げている。がんとアルツハイマー病の逆相関はアルツハイマー病の理解に新たな指針を示しているのかもしれない。

関連記事
Cancer, chemo linked to vets' lower risk of Alzheimer's (July 15, 2013 USA TODAY)
Military veterans diagnosed with most forms of cancer were less likely to develop Alzheimer's disease, and those who were treated with chemotherapy received even more protection.
BOSTON -- Military veterans diagnosed with most forms of cancer were less likely to develop Alzheimer's disease, and those treated with chemotherapy got even more protection, finds a study released Monday at the Alzheimer's Association International Conference here.
The study of 3.5 million veterans found an inverse relationship between Alzheimer's and all types of cancer except prostate and melanoma ? both of which are largely detected through screening rather than symptoms. Aggressive screening of veterans might find cancers that would not otherwise have caused problems, said researcher Jane Driver, in explaining why those cancers might not share the same relationship with Alzheimer's.
More than 82,000 of the veterans developed Alzheimer's during the five years of the study, 24% of whom were previously diagnosed with cancer. When compared to projections for the general population, the risk of Alzheimer's was 51% lower than expected in liver cancer, 25% reduced in lung cancer and 13% lower in leukemia, according to the research. There was no significant correlation between Alzheimer's and colorectal, bladder, stomach, genital, thyroid, sarcoma and brain cancer. Cancer patients who had chemotherapy lowered their Alzheimer's risk by 20%-45% for all cancers except prostate, the study showed.
Other research also supports this inverse relationship, including an Italian study released late last week, that found that those diagnosed with Alzheimer's ran a 43% lower risk of developing cancer than those without the disease, and people with cancer had a 35% lower chance of developing Alzheimer's. That study, in the journal Neurology, did not look as closely at individual cancers or treatment differences, though it did find a weaker link with prostate cancer and melanoma.
Driver said chemotherapy may offer extra protection because it reduces inflammation and may prevent brain cells from trying to divide. In Alzheimer's, brain cells often try to divide when they shouldn't, leading to their death, she said.
She said no one should take chemotherapy drugs, which are highly toxic, merely to reduce their risk of Alzheimer's, but the link suggests that it may be possible to develop medications to address both diseases. Certain chemotherapy drugs may turn out to be more protective of the brain than others, she added, so it may make sense to prescribe them more often.
Although it doesn't suggest any immediate treatments for Alzheimer's, the apparent connection with cancer is "one more puzzle piece" in helping researchers understand the memory loss and behavior changes of Alzheimer's, a fatal disease that affects an estimated 5.2 million Americans and is expected to strike nearly three times more over the next generation.
People with Alzheimer's suffer loss of memory, decreased thinking and language skills, and behavioral changes that can make caregiving challenging. Current treatments do not address underlying symptoms or stop progression of the fatal disease.
"We're starting to really understand what are the different pieces of the puzzle that make someone at increased or decreased risk," said Heather Snyder, director of medical and scientific operations for the Alzheimer's Association, the advocacy and research group that runs the international conference. "Understanding the pieces will help unlock additional targets and therapies and identify people at increased risk."


血管性因子はアルツハイマー病の認知機能に関係(7月10月/アメリカ)
アメリカのペンシルバニア大学医学部神経退行性疾患研究センターCenter for Neurodegenerative Disease Research, University of Pennsylvania School of Medicineのジョン・トレドJon B. Toledo医師(写真左上)らのグループは、脳血管疾患と血管性危険因子がアルツハイマー病と相関することは既に知られていますが、その他の神経退行性疾患との相関については証拠が限定的であるとして、脳血管疾患、血管性病変および血管性危険因子について認知障害を伴うより多様な神経退行性疾患において比較し、認知症の重症度との関連を観察しました。具体的には、単一の神経退行性疾患(アルツハイマー病、タウ性前頭側頭葉変性症、TDP-43、αシヌクレイノパチー、海馬硬化症およびプリン病)と診断された5713事例(1999年以降の全国に開設された35カ所のアルツハイマー病センターによる国立アルツハイマー病連携センターNational Alzheimer’s Coordinating Centerのデーターベース)について脳血管疾患、血管性病変および血管性危険因子の有無を調べました。さらに比較のため、認知障害のない「ありふれた脳」210事例と典型的な脳血管疾患の280事例についても調べました。
その結果、脳血管疾患を認める事例は、認めない事例より海馬硬化症以外では高齢での事例でした。年齢、性別で補正して比較すると、αシヌクレイノパチー、タウ性前頭側頭葉変性症、TDP-43の事例は、アルツハイマー病の事例よりは脳血管疾患の併発が少ないことを認めました。このことは若年期の事例でより有意でした。併発する脳血管障害は、認知症のある高齢期事例での神経病理学的所見は、アルツハイマー病以外の神経退行性疾患よりアルツハイマー病でより多く―とくに若年期事例で―、さらにアルツハイマー病とαシヌクレイノパチーによる認知症を発症する閾値が低いことを認めました。
結論として、アルツハイマー病とαシヌクレイノパチーでは、脳血管疾患の治療―高血圧、コレステロース、心臓に健康的な食事、運動、ライフスタイルなど―を重視すべきことが示唆されました。
この研究論文はオックスフォード大学の神経学雑誌Brainの電子版2013年7月10日号に掲載されました。
この研究結果について、論文執筆者でペンシルバニア大学アルツハイマー病コアーセンターAlzheimer's Disease Center at the University of Pennsylvaniaの所長で病理学実験医学Pathology and Laboratory Medicine学科のジョン・トロヤノスキーJohn Q. Trojanowski教授(写真左下)は次のように述べています。
「血管性疾患が神経退行性疾患に一定の役割を果たしている証拠は既にありますが、多彩で独特で異なる原因によるよい多くの神経退行性疾患での血管性疾患の関与を比較した初めての研究です。アルツハイマー病以外の神経退行性疾患の事例よりアルツハイマー病での血管性疾患―特に若年期事例で―の強い相関を知って驚きました」
研究対象とした4600事例以上のアルツハイマー病のうち80%近くで脳のなんらかの血管性病変―動脈硬化、血栓、組織壊死、出血―が認められ、パーキンソン病の病変のあるグリープでは66%でした。
論文筆頭執筆者であるトレド医師は次のように述べています。
「アルツハイマー病の経過を変えような疾患修飾治療法が無いなかで、血管性疾患に対する既存の治療を精力的に行うこと、若年期から中年期の人たちに健康的なライフスタイルを推進することがアルツハイマー病による認知症症状を予防したり軽減することに積極的な影響があると望んでいます」
今回の研究は、公衆保健の視点から、また認知障害の人たちがより適切に含まれるような臨床研究の母集団をデザインする際の重要な示唆となっています。さらに、アルツハイマー病など認知症の薬物のテストで新しい治療法への反応を観る場合、脳血管疾患が多く共存していることの影響を検討されるべきです。最近のほとんどの臨床試験では血管性危険因子や脳血管疾患のある人を除外しているのです。
medicalxpress  July 9, 2013 Study shows vascular link in Alzheimer's disease with cognitionおよび論文Contribution of cerebrovascular disease in autopsy confirmed neurodegenerative disease cases in the National Alzheimer’s Coordinating Centre
編者:膨大な病理学的事例からアルツハイマー病での血管性要因の関わりが強いとの証拠が明らかとされた研究論文である。混迷しているアルツハイマー病の原因と治療の研究の新たな指針となりそうだ。


生涯にわたる認知活動は認知症予防に役立つようだ(7月3日/アメリカ)
シカゴに在るラッシュ大学医療センターRush University Medical Centerの神経学行動科学科のロバート・ウイルソンRobert S. Wilson教授(写真左上)らのグループは、生涯にわたる認知活動が人生後期の認知機能低下に関係するが、ありふれた神経病理学的障害には関係しないという仮説について追跡調査を行って検証しました。
調査対象者は縦断的臨床病理学的集団調査に参加した294人で調査開始時の1997年時点で全員55歳以上、約68%は女性で、教育歴は平均14年、37%に軽度思考障害が認められました。参加者に各自の生涯―小児期から青年期、中年期および現在―の思考に関わる活動について報告しました。さらに定期的に記憶と思考の能力の試験を受け、毎年、神経学的な検査も受け、認知機能試験は平均5.8年間実施しました。参加者が死亡すると、本人の臨床データを知らない病理学者が独自に剖検で脳について認知症に関連する明らか所見―アミロイド斑、タウ、粗大および微細な梗塞、レビー小体―を探しました。
その結果、生涯にわたり頻繁な認知活動は、人生後期の認知機能の低下を遅くすることに相関していることを認め、この関係はありふれた神経病理学的な状態とは独立したものであり「認知予備力」という仮説を支持する結果でした。
この論文は、アメリカ神経学会American Academy of Neurologyの雑誌Neurologyの電子版2013年7月3日号に掲載されました。
今回の研究は「使うか、失うかUse it or lose it」という考えに沿ったものであり、本を読む、手紙を書く、日々の問題を解決するといった子供の頃から生涯にわたり脳を刺激する活動が認知症の臨床症状の発症を防ぐのに役立つかもしれないことを示唆するものです。
論文の筆頭執筆者でもあるウイルソン医師は次のように述べています。
「ある事柄が認知機能低下にいたる恐れを強くしたり弱くするのです。脳を活発にしておくことは、脳の回路を効果的に保持することに役立つようです。このことは脳の病気が徐々に形成され始めたとしても言えることです」
この研究は、高齢期に亡くなった人の3分の1が思考、学習、記憶にほとんど問題ないか全くない理由を説明するので。死後の脳剖検で、実際、アルツハイマー病の明らかな証拠があっても認知機能に問題がなかった場合の説明にもなるのです。
さらにウイルソン医師は次のように述べています。
「そうした人たちは理論的には病気なのですが、臨床的には病気ではないのです。アルツハイマー病やその他の認知症の症状を示さないような脳は、なんとか「回避方法」を構築しているとする考え方は、よく『認知予備仮説』とみなされます。」
この概念は、考え、学び、覚える能力が強い人は、なんらかの方法でアルツハイマー病の症状を遅くすることができることを示唆するものです。しかしこの仮説は科学者には難題でした。
ミネソタ州のロチェスター・メイヨークリニックMayo Clinic in Rochesterの放射線科准教授のプラシャンティ・ヴェムリPrashanthi Vemuri准教授(写真左下)は「認知的活動がどのように認知機能を保持するかについては長く議論されてきた」と述べ、同雑誌に書いた論評で、「問題は基本的にどちら―鶏か卵か―が先か」と見解を示しています。
さらにヴェムリ氏は次のように述べています。
「認知活動に関わることは認知機能の低下を遅くするのか、認知症に関わる問題を持っているがために認知活動に関心が少ないのかという問題があります。いずれにせよ今回の研究は新しい分野を開拓したと考えています。認知的刺激となる活動は、これとは独立した病気の進行を遅くするのです」
どのように知的な活動が脳機能を支えるのに役立っているのだろう?
これについてウイルソン氏は次のように述べています。
「脳は負荷となる課題に常に適応しようとします。脳は経験に依存しています。継続的な活動は脳の構造と機能に影響しつづけます。精巧な構造およびとてもよく機能する認知機能回路は、加齢による不可避に起こることに適応できるのです。
私たちの研究は、原因と結果の関係を証明するものではありありません。臨床試験―参加者を無作為に分けて一方のグループに一定の行動を指示し、他方のグループには指示しない―が必要です。しかしこれは倫理的に許される研究ではなく、とても費用がかかります」
このため彼は、現在、神経画像研究を行って、脳保護に役立つのはどのような認知刺激的ライフスタイルなのかをよりよく理解しようとしています。
脳を保護する最善の方法についてウイルソン氏は次のことを勧めています。
「クロスワードやスドクといったものより実際の世界にある活動を見つけることです。それは、課題、焦点、集中の3つの必要事項を組み合わせたものです。持続可能な趣味―刺繍、写真、演劇、モールス信号学習―を見つけることです。身体的活動も重要です」
またヴェムリ氏は次のように勧めています。
「できるだけ若々しく考え記憶する方法を向上させることです。親は、若い時の読書習慣によって自分の子供がよい高齢期を過ごすのに役立つだろうことを知るべきです」
Health  July 3, 2013 Lifelong Reading, Hobbies Might Help Stave Off Dementiaおよび論文Life-span cognitive activity, neuropathologic burden, and cognitive aging
編者:認知症の発症に関する重要な仮説―認知予備力―が実証的に解明され始めた研究論文だ。この種の長期の追跡調査は継続が困難であり、記事で指摘されているとおり無作為2重盲検法的介入は倫理的に実施できないことからしても、今回の研究成果は重要だと思う。


緑茶のアルツハイマー病予防効果を示唆―最近の4つの研究―(6月30日/アメリカ)
緑茶を飲むといった簡単なことでアルツハイマー病を防ぐことができるのでしょうか。多くの新しい研究から、緑茶が脳にどのように影響するかがさまざまな側面から認められるようになりました。
先週、ミシガン大学の「ニューロヘルスNeuroHealth」のブログに優れた神経学者のヘンリー・ポールソンHenry L. Paulson教授(写真左上)は、緑茶に含まれるフラボノイドの一種であるEGCG(epigallocatechin-3-gallate)の強力な効果について書き、EGCGがアルツハイマー病に関連する脳の荒廃の原因と信じられているアミロイド班の蓄積を防ぐようだと述べています。(訳注①)
さらにポールソン医師は新しい研究についてのべています。
それは「アメリカ科学アカデミー紀要:PNAS」に掲載された中国の科学者ミ・ヒ・リムMi Hee Lim准教授(写真左下)らのグループが発表したもので、EGCGがアミロイド班になるタンパクであるベータアミロイドの斑形成を防ぐ作用があることが認められました。(訳注②)
上記の報告に時期的に近くて関連する研究が、雑誌「the Journal of Biological Chemistry」に発表されました。これはリーズ大学University of Leedsのイギリスの研究グループによるもので、緑茶の抽出物と赤ワインの抽出物のレスベラトロールresveratrolをアミロイドタンパクに加えたところ、ビオフラボノイドbioflavonoidsがアミロイド班の神経細胞付着を防ぐことを認めました。(訳注③)
これらの研究のすべて、あるいはそれ以上のことが、Tufts University Health & Nutrition Letterの2013年6月号に掲載されました。「緑茶は脳細胞を保護する」という魅力的なタイトルが付けられ編者は、新しい4つの研究を紹介し、緑茶がいつかアルツハイマー病や他の認知症との戦いに有効な武器となるかもしれないと表明しています。(訳注④)
私の考えでは、その4つのうち最も興味深い研究はEuropean Journal of Clinical Nutritionの昨年8月に掲載されたものです。これまでの一群の緑茶研究群と異なり、人を対象に行われたもので、わずか12事例(偽薬対照2重盲検法)ですが。最も重要なことは、MRIを使って人の脳で実際にEGCGの効果を観察していることです。この研究の参加者は飲み物が提供され、その後、記憶刺激作業を行い脳機能が観察されました。二つの異なる量の緑茶と緑茶が含まれてない物の場合で比較されました。緑茶の抽出液を飲んだ人たちについて、研究者は前頭前野背外側部皮質 Dorsolateral prefrontal cortexの活性が上昇することを認めしました。また研究者は、用量反応の関係も認めています。緑茶を多く飲むほど脳の活性は高まるということです。このことは緑茶の原因結果の関係を裏付けることになります。(訳注⑤)
これらのことは人々に何を意味するのでしょうか。こうした研究では、より大規模でより信頼性の高い人を対象とした研究が行われるまでは証拠については確定的なことと考えられないと注意が添えられてよく発表されます。
しかし、緑茶については、異議を唱えるべき否定的側面が多くはありません。緑茶が健康に有害とみなしてきた人はいません。研究から緑茶が乳がんや多分パーキンソン病のような状態に対して予防的であることが示唆されてきました。私は、こうした研究を実施した研究者がこの現在、自分で緑茶を注いでいるでしょう。私も同じようなことをしようとしています。
Forbes 6/30/2013  Green Tea May Prevent Alzheimer's Disease, Say Four New Studies
訳注①Green Tea and Its Effects on Alzheimer’s(June 25, 2013)
訳注②Insights into antiamyloidogenic properties of the green tea extract (?)-epigallocatechin-3-gallate toward metal-associated amyloid-βspecies (February 20, 2013)
訳注③Prion protein-mediated toxicity of amyloid-β oligomers requires lipid rafts and the transmembrane LRP1 (February 5, 2013)
訳注④Green Tea Protects Brain Cells(June 2013)
訳注⑤Neural effects of green tea extract on dorsolateral prefrontal cortex (29 August 2012)
関連情報:「緑茶抹の摂取により高齢者の認知機能低下が改善される可能性を確認」(伊藤園ニュースリリース 2013年6月25日)
編者:寄稿者のメラニー・ハイケンMelanie Haiken氏(写真右下)は医師でも医学者でもなく、健康やライフスタイルに関するライターであるが、紅茶とアルツハイマー病の関係について最近の多面的な研究成果からその予防的な効果は疑う余地がないとする簡潔で明快な寄稿を書いている。偶然にも伊藤園の最近のサイトに緑茶の効果を示した日本の研究が紹介されている。緑茶のアルツハイマー病予防効果があるらしいとしても、どのくらい量の緑茶をどのくらいの頻度どのくらいの期間飲めばアルツハイマー病の予防につながるのかがはっきりしない。なお紹介記事のECGCはEGCGの間違い。
編者追加情報:Haiken氏の寄稿のコメントを投稿し、掲載されている。


ビタミンBはアルツハイマー病の予防になる?(5月20日/イギリス)
オックスフォード大学薬学部Department of Pharmacology, University of Oxfordのダヴィッド・スミスDavid Smith名誉教授(写真左上)らのグループは、認知機能の低下およびアルツハイマー病に関連する脳の中核的部分の萎縮を予防することは可能なのかどうかを調べています。その一つの方法として、非遺伝的要因を変える試みとして、たとえばビタミンB群で血液中のホモチスチン濃度を低下させる方法があります。血液中のアミノ酸であるホモチスチンが高いことがアルツハイマー病の危険因子であること、またビタミンB群サプリメントがホモチスチンを下げることは既によく知られています。しかし、サプリメントが軽度認知障害(CMI)からアルツハイマー病への進行を遅くするかどうかについては明らかではありません。
アルツハイマー病になる危険性が高いCMIを認める高齢者について、無作為対称試験を行い、ビタミン多量治療(葉酸:0.8mg、ビタミンB6:20mg、ビタミンB12:0.5mg )(この量はイギリスで基準量の各400、20、4倍)を試みたところ、2年間で脳全体の萎縮を少なくするを示したと既に発表しています(訳注)。今回は、さらにビタミンB群療法が、アルツハイマー病の過程でとりわけ重要な大脳の中側頭葉などにある灰白質の萎縮を少なくするかどうかMRIを使って調べました。200人の臨床試験参加者のうち偽薬を服用したグループでは治療開始時にホモチスチン高い人たちで灰白質の早い萎縮が相関することを認めました。しかし、この低下させる効果は、ビタミンB群治療でかなり予防されるのです。今回は、ビタミンB群がよい影響を示す高ホモチスチン血症の高齢者に限定して臨床試験を行いました。次の関係が示されました。すなわちビタミンB群はホモチスチンを低下させる、ホモチスチンは直接的に灰白質の萎縮をもたらし認知機能が低下する。こうして、ビタミンB群サプリメントはアルツハイマー病の過程、また認知機能の低下に重要な脳のある部位の萎縮を遅くすることができることがわかりました。その結論として、高ホモチスチン血症の高齢者に限定すると、ビタミンB群サプリメント療法は認知症の進行を防ぐことができるかどうかについて妥当とされます。
この研究論文は、アメリカ科学アカデミーの雑誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)のオンライン版2013年5月21日号に掲載されます。
この結果についてスミス氏は「初めて、アルツハイマー病の病気の過程を変えることができることを示した」と述べています。
これに対して、イギリス・アルツハイマー病研究Alzheimer's Research UKの研究部長のサイモン・ライドレイSimon Ridley医師(写真左下)は次のように述べています。
「それらの関係を明らかにするにはもっと研究が必要です。大切なことは、こうした臨床試験の効果がMCIのある特別なグループにのみ認められていることを知っておくことです。MCIの一部の人たちしかアルツハイマー病にならないことを知っていますが、その理由はよくわかっていません。さらに研究を追加するには時間がかかるでしょう。ビタミンサプリメントはほとんどの人で安全であり、発病の危険性が高い人たちは、予防的も多量にのむでしょう。耐え忍ぶ必要があると思います。とはいえ、記憶障害のある高齢者がいずれはビタミンBを与えるべきではないとする理由があるでしょうか。事実、多くの医師はビタミンB群を処方しています。昨年のある会議で同じ質問をしました。参加していたある精神科医が手を挙げて『あなたの論文が出てから私たちは既に処方しています。臨床医に止める理由はありません』と答えていました」
NewScientist  20 May 2013  B vitamins may slow the advance of Alzheimer's および論文Preventing Alzheimer’s disease-related gray matter atrophy by B-vitamin treatment
訳注:Homocysteine-Lowering by B Vitamins Slows the Rate of Accelerated Brain Atrophy in Mild Cognitive Impairment: A Randomized Controlled Trial(September 8, 2010 PLoS ONE)
サイト内関連記事:「1日10ペニーのビタミンサプリメントで認知症を抑える―なぜ製薬会社は何10億ポンドも出資するのか―」(2012年3月17日)
編者:ビタミンB群サプリメントが認知機能の低下の予防効果はあるかもしれないが、アルツハイマー病の予防になるかどうかは古くて新しい課題。今回の論文はMRIで脳の萎縮を観察しただけで認知機能やアルツハイマー病の発病を観たわけではない。しかも試験対象を高ホモチスチン血症の高齢者に限定しているので、論文に解釈にはライドレイ医師が指摘していることを尊重したい。とはいえアルツハイマー病を必ず予防する物質が解明されてないなかで、可能性のあるビタミンB群を服用することを止める理由は確かにない。


「アルミニウムはアルツハイマー病の危険因子?」に関する長い論争を検証(5月8日/アメリカ)
アルミニウムがアルツハイマー病に関係あるといういわさで悩む友人たちを見てきました。彼らの恐れが事実に基づくものかどうかも疑っていました。アルミニウム製の鍋やアルミニウムを含む制汗剤を止めなければならないならのでしょか。いつもアルミニウムの健康被害はただのごまかしと聞いてきました。一体、本当はどうなのでしょう?
アルミニウムとアルツハイマー病の関係は、長く続いた科学的議論で虚構といったものではありません。それは1965年に始まりました。この時、ウサギの脳にアルミニウムを注射すると神経線維性変化が起ることが認められました。この変化は、退行性脳障害で記憶や認知機能が破壊されるアルツハイマー病の人に脳細胞に見られるねじれたタンパクです。
この発見で研究が加速しました。そのちょうど8年後、カナダのグループが、死亡したアルツハイマー病の人の脳組織を調べていましたが脳のある部分に正常の脳より2から3倍多いアルミニウムがあることを見つけたのです。1980年までに、ダニエル・パールDaniel Perl氏 (現:軍属健康科学大学Uniformed Services University of the Health Sciencesの病理学教授)(写真左上)とアーノルド・ブロディArnold Brody(現:ツレイン大学健康科学センター医学部病理学Department of Pathology, School of Medicine, Tulane University Health Sciences Centerの教授)(写真左中)は、実際に人で線維性変化を示す脳細胞内を観察しアルミニウムが在ることを発見しました。
パール教授は「そのことで本当に様相が変わってしまい、一般の関心がとても高くよく呼ばれ」と思い出しています。
関心はまったのですが、そのことが人間の健康にどのような意味を持つのか想像することは誰もできなかたのです。こうした問題の一部として、科学的技術―現在もそうですが―があまりに不完全で、答が得られないということでした。アルミニウムに暴露することとアルツハイマー病の関係の課題に取り組むとしても、脳細胞を調べようが、住民を対象とした疫学調査をしようが、研究者の手法が乏しく正確で確定的な結論を出すことができなかったのです。
バージニア大学University of Virginiaの病理学名誉教授のジョン・サヴォリーJohn Savory氏(写真左下)は、透析患者でアルミニウムに暴露することで神経学的で認知症に似た症状が起きることを発見することで研究を支えました。ボヴォリー氏は、次のように述べています。
「アルミニウムは環境ではごくありふれ、とても多い物質なので研究は難しい。どこでもあるので、ちょっとした塵で試料をアルミニウムに汚染することがあります」
自然界のアルミニウムは地球上で3番目に多い元素で、実際、いたるところに在ります。土壌にも在るので、食物―ホウレンソウや茶など―にも認められます。アルミニウムは、多くの工業で使われるので人と接触することが極めて多くなります。多くのアルミニウム暴露に関する研究は飲み水を重視してきました。水道水が出来る過程で水を透明にしたり純度を上げるためにアルミニウム塩が使われます。また食器、食品包装、制酸剤、制汗剤、多くの医薬品、加工食品にもアルミニウムが含まれます。生涯にわたりアルミニウムの暴露しないようにすること、そしてその影響を遮断することは、「きわめ難しい」とパール氏は言います。
このためアルミニウムとアルツハイマー病の関係についての30年間におよぶいろいろな研究で相反する結果が生じたことは驚くに当たりません。
例えば、1997年のイングランド・ウエールズで1000人近い男性を対象とした研究では、アルツハイマー病の罹患率と飲み水中のアルミニウムの推定曝露値とはほとんど相関が認められませんでした。他方、フランスで1925人の男女で15年間追跡した調査では飲み水からのアルミニウム摂取量が高いとアルツハイマー病の発病の危険性が高まると結論づけたのです。また2003年、世界保健機関WHOが行った水道水中のアルミニウムとアルツハイマー病発病の危険性に関する6つの質の高い疫学調査報告を評価したところ、3つの研究では相関があり、その他3つでは相関を認められなかったのです。
南フロリダ大学公衆保健学部University of South Florida College of Public Healthの疫学アミー・ボーレンシュタインAmy Borenstein教授(写真右上)は次のように述べています。
「こうした異なる結果が生まれるのは疫学研究に伴うことが多い難しさによるものです。この種の研究では研究者は、不正確かもしれない記録を頼りにし、長期間人を追跡しなければならないのです」
教授は、制汗剤と食器によるアルミニウム暴露とアルツハイマー病の危険性について20年以上研究を続けてきましたが、結論は明らかではなかったのです。
「できる最善のことをしますが人を調べるのは難しい」と彼は述べています。
またサヴォリー名誉教授は次のように述べています。
「別の問題でしが、話題になったことが簡単に関心を失うということです。アルツハイマー病研究者は遺伝的危険因子や脳のアミロイド班の形成から病気を理解するための簡単に試験できる道を歩んでおり、アルミニウム研究は脇にやられました。アルミニウム研究のための資金を得ることがとてもとても難しくなりました。アルミニウムについて話し始めると『オー、その仮説は何年も前に反論された』と相手にされません。しかしながらアルミニウムが原因でないという証拠があるわけではないのです。真実は誰も知らないのです」
あらにまたパール氏はアルミニウム研究の資金を得ることの困難さに直面しまし、結局は努力を外傷と神経性退行疾患の関係に移したのです。彼はアルミニウムがアルツハイマー病の原因だと信じていないが、決して信じていないが、病気の進行になんらかの関与があららしく、これを研究しないことはアルツハイマー病研究にとって不利益であると話しています。
パール教授は「例えば、糖尿病の原因が何であるか知りませんが、それを治療することはできます。病気の直接原因ではないからといって重要でないとは言えない」と述べています。
これに対してボーレンシュタイン氏は、次のように述べています。
「アルツハイマー病へのアルミニウムの関与はきわめて小さく、これに関して多くの研究が必要とは認めません。アルミニウムになんらかの役割があるとしても、それはとても小さいのです。研究すべきそのほかの多くの重要な危険因子があります。その他の因子とは遺伝子、糖尿病や心疾患のような代謝性疾患や血管性疾患が含まれ、こうした因子の研究でアルツハイマー病と強い相関が示されてきました。知的刺激、教育歴、社会的関わりの因子もあります。こうした因子は研究者がいずれアルツハイマー病と治療したり予防することに役立つでしょう」
しかしパール氏は次のように述べています。
「一体、この問題に関心ある消費者はどうなるのでしょう。アルミニウムでない製品を選んでアルミニウムの摂取を制限することはできないのです。しかし、私たちは優れた勧告を提示するほど、アルミニウムとアルツハイマー病との相関の可能性について本当のところよく理解してはいません」
こんなことを言ってもつまらないでしょうが、パール氏とボーレンシュタイン氏は、自分たちの食器をアルミニウムでないのに交換したり、制汗剤を替えたり、アルミニウムホイルを使わなくなったというわけではありません。ただサヴォリーも同様ではありますが、飲み水は自宅の井戸からのを使っています。井戸水のアルミニウム含有用が街の水道水よりはかなり低いのだそうです。
すべてのアルミニウムと排除することは不可能です。アルミニウムはいたるところに在るのです。アルツハイマー病を心配するのなら、精神を活発し心臓を健康にするようにすることがよいのです。長期的に、こうした手順を踏むことでおおいに脳を守ることになるでしょう。
Delaware County Daily Times May 08, 2013 Examining the long-debated Alzheimer's risk from aluminum
寄稿者:ギスラ・テリスGisela Telis氏(写真右下)は科学や環境問題のフリーのライター。
関連情報:Chemical hazards in drinking-water-aluminium(WHO 2010年)
編者:アルミニウムとアルツハイマー病は古くて新しい問題で、これまれの経過と現在の課題が要領よくまとめられているので紹介した。なおこの記事はWashington PostにDoes aluminum in pans and antiperspirants lead to Alzheimer’s disease?のタイトルで2013年5月6日に掲載された記事の転載。


「認知症に「地中海式ダイエット」が効果、米研究」(4月30日/AFPBB News)
【4月30日 AFP】オリーブオイルを豊富に摂取する「地中海式ダイエット」が、高齢になってからの記憶障害のリスクを低下させるとする報告が29日、米国神経学会(American Academy of Neurology)の学会誌「ニューロロジー(Neurology)」に掲載された。
この種の研究としては過去最大のもので、黒人系と白人系の米国人1万7478人の食事に関する情報に基づいた。対象者の平均年齢は64歳だった。
この中で「地中海式ダイエット」風の食事習慣を持つ健康的な人たちでは、そうした食事習慣がない人たちに比べ、思考や記憶に関する問題が生じる可能性が19%低かった。黒人と白人で認識機能の低下に大きな差異はなかった。
アラバマ大学バーミングハム校(University of Alabama)とギリシャ・アテネ大学(University of Athens)に所属するGeorgios Tsivgoulis博士(写真)は「人生晩年の認知機能維持に役立つことの中で、食事は重要で(自分で)変更可能な行動だ」と述べている。ただし、晩年の精神機能を左右する鍵となる生活習慣の中の一つに過ぎないとも付け加えている。
中でも糖尿病患者には、オメガ3脂肪酸が豊富な地中海式ダイエットは効果がなく「運動、肥満予防、禁煙、さらに糖尿病や高血圧に薬物治療を行うことが大事だ」という。(c)AFP
AFPBB News 2013年4月30日 原文のまま
論文:Adherence to a Mediterranean diet and risk of incident cognitive impairment
Georgios Tsivgoulis, MD,
Suzanne Judd, PhD,
Abraham J. Letter, MS,
Andrei V. Alexandrov, MD,
George Howard, DrPH,
Fadi Nahab, MD,
Frederick W. Unverzagt, PhD,
Claudia Moy, PhD,
Virginia J. Howard, PhD,
Brett Kissela, MD and
Virginia G. Wadley, PhD
Correspondence to Dr. Tsivgoulis: tsivgoulisgiorg@yahoo.gr
doi: 10.1212/WNL.0b013e3182904f69 Neurology April 30, 2013 vol. 80 no. 18 1684-1692
Abstract
Objective: We sought to determine the relationship of greater adherence to Mediterranean diet (MeD) and likelihood of incident cognitive impairment (ICI) and evaluate the interaction of race and vascular risk factors.
Methods: A prospective, population-based, cohort of individuals enrolled in the Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke (REGARDS) Study 2003?2007, excluding participants with history of stroke, impaired cognitive status at baseline, and missing data on Food Frequency Questionnaires (FFQ), was evaluated. Adherence to a MeD (scored as 0?9) was computed from FFQ. Cognitive status was evaluated at baseline and annually during a mean follow-up period of 4.0 ± 1.5 years using Six-item-Screener.
Results: ICI was identified in 1,248 (7%) out of 17,478 individuals fulfilling the inclusion criteria. Higher adherence to MeD was associated with lower likelihood of ICI before (odds ratio [lsqb]OR[rsqb] 0.89; 95% confidence interval [lsqb]CI[rsqb] 0.79?1.00) and after adjustment for potential confounders (OR 0.87; 95% CI 0.76?1.00) including demographic characteristics, environmental factors, vascular risk factors, depressive symptoms, and self-reported health status. There was no interaction between race (p = 0.2928) and association of adherence to MeD with cognitive status. However, we identified a strong interaction of diabetes mellitus (p = 0.0134) on the relationship of adherence to MeD with ICI; high adherence to MeD was associated with a lower likelihood of ICI in nondiabetic participants (OR 0.81; 95% CI 0.70?0.94; p = 0.0066) but not in diabetic individuals (OR 1.27; 95% CI 0.95?1.71; p = 0.1063).
Conclusions: Higher adherence to MeD was associated with a lower likelihood of ICI independent of potential confounders. This association was moderated by presence of diabetes mellitus.
2013 American Academy of Neurology
編者:以前から指摘された認知症、アルツハイマー病あるいは認知機能障害の予防方法の地中海風食事の新たな証拠だ。


認知症の罹患率が低下―心臓血管疾患対策の成果?―(4月19日/スウェーデン)
ストックホルム大学Stockholm Universityとカロリンスカ研究所Karolinska Institutetが共同して設立した「加齢研究センターAging Research Center (ARC)」のチェンフアン・キュChengxuan Qiu準教授(写真左上)らのグループは、ストックホルムで認知症の有病率、生存率、罹患率(訳注)が1987年~1994年の期間と2001年~2008年の期間で変化を調べました。
調査に使ったデータは、ストックホルムの中心部で75歳以上の人たちを対象として行われた二つの横断調査―「クングスホルメンプロジェクトKungsholmen Project (KP)」(1987年~1989年、対象者数:1700人)と「クングスホルメンの加齢とケアのスウェーデン国民調査Swedish National study on Aging and Care in Kungsholmen (SNAC-K)」 (2001年~2004年、対象者数:1575人)のものです。両者とも認知症の診断基準はDSM-Ⅲ-Rとして神経科医が診断しました。すべての参加者は看護師、内科医および心理士で評価されました。
死亡診断書は、KP参加者については1994年12月時点で、SNAK-K参加者については2000年6月時点で生存率の決定に使いました。 有病率と生存率から罹患率を推測しました。
その結果、認知症はKPで225人、SNAC-Kで298人が診断されました。年齢と性別で補正すると認知症の有病率はKPで17.5%(男性:12.8%、女性19.2%)、SNAC-Kで17.9%(男性:10.8%、女性:20.5%)でした。認知症についてSNAC-K対KP比は1.17で有意に高く、死亡率を比較すると認知症の人では0.71、認知症でない人では0.68、全体では0.66でした。
結論として、ストックホルムの中心部で1980年代後期から2000年代初期まで認知症の有病率は大きな変化はないが、認知症の人の生存率が高くなっていることから、認知症の罹患率は減少していることが示唆されました。
この研究論文はアメリカ神経学会American Academy of Neurologyの学術雑誌Neurology電子版2013年4月17日版に掲載されました。
この結果についてキュ準教授は次のように述べています。
「心臓血管疾患が認知症の重要な危険因子であることは知っています。認知症の発症の危険性が低下しているらしいことは、全般的にこの数十年間に心臓血管疾患が減少していることと合致します。健康管理や心臓血管疾患予防についてはスウェーデンで明らかに改善しています。今、この改善が認知症になる危険性の低下に反映されていると見ています」
75歳以降で認知症の原因は多いのですが、その主なものはアルツハイマー病と血管性認知症です。
加齢研究センターAging Research Centerの所長、ロウラ・フラティグリオニLaura Fratiglioni教授(写真左下)は次のように述べています。
「認知症の発症の危険性が低下することはよいことですが、寿命が長くなることと75歳以上の人の総数が増加していることに伴い認知症は増加していることを認識することは重要です。このため、認知症の社会敵負担が増し、今後も医療的社会的支援の必要性は増すのです。現在、認知症を治す方法はありませんが、引き続きこの分野で医療と予防を改善しなければなりません」
ScienceDaily Apr. 19, 2013 Risk of Dementia Declined Over Past 20 Yearsおよび論文Twenty-year changes in dementia occurrence suggest decreasing incidence in central Stockholm, Sweden
訳注:罹患率とはある期間、発症する件数の人口に対する割合。
編者:すごい報告だ。認知症の罹患率が低下したこと、その要因として心臓血管疾患対策があるというのだ。仮説としても、心臓血管系リスクを減らせば、認知症の罹患率は減少し、認知症の増加傾向の低下することが期待されるのだ。認知症の予防はこうした地道な対策と評価研究が融合して成果が出てくるのだろう。認知症ケアでも先駆的なスウェーデンが予防の分野でも先駆的だ。「学習療法」で認知症を予防しようというのとえらい違いだ。


「認知症予防に「ふまねっと」 藤枝出身・北沢教授ら考案」(4月9日/中日新聞)
◇リズム運動で脳を活性化
網で作った五十センチ四方のマス目を床に並べ、網を踏まないようリズムに合わせて歩く「ふまねっと」という運動が、心身の健康や認知症の予防にいいと評判になっている。藤枝市出身で、公衆衛生学が専門の北海道教育大釧路校の北沢一利教授(49)=北海道釧路市=(写真)が学生たちと考案した。卒業生らと八年前に設立したNPO法人「地域健康づくり支援会ワンツースリー」(札幌市)を通じ、普及に努めている。
「いち、にい、さん、いち、にい、さん。その調子、いいですよ」。藤枝市生涯学習センターで三月にあった体験会。市の健康づくり教室に通う六十五歳以上の二十六人が、初めてふまねっとに挑戦した。
マスは横三列、縦八列。普通に歩く動作から、手拍子を入れたり、足を出す順序を交互にしたりと難易度が上がるにつれ「次はどっちだっけ」「考えない方がよいね」といった声が参加者から上がった。
北沢教授によると、ふまねっとは(1)網を見ながら(2)引っかけないように注意し(3)ステップのルールに沿って(4)リズムに合わせ(5)手拍子も打つ-という流れ。歌に合わせたり複雑なステップにしたりと、参加者のレベルに合わせた運動ができる。同時に複数の課題をこなすため、脳の神経活動が活発になる。どれか一つにとらわれてもうまくいかず、歩くだけよりも脳への刺激が大きくなるという。
網は漁業の定置網を使用。もともとは二〇〇四年ごろに授業の一環で始めた健康教室が北海道で広まり、看護師や理学療法士の学会で紹介されると全国で知られるようになった。北沢教授は「歩行や認知機能の改善ではこれまで、下半身を鍛える筋力トレーニングが中心だった。脳の中枢への刺激という違う考え方をした」と説明する。
一般市民に教える「サポーター」と、医療施設で指導できる「インストラクター」は三月現在、全国で計三千人を超えている。インストラクターやサポーターになるには、ワンツースリーが全国の医療施設などで年間三十回ほど開く講習会の受講が必要。本年度からは、東京の財団法人の協力で指導者養成の研修も計画している。
静岡県では昨年十月に北沢教授が藤枝市で養成講座を開き、サポーターとインストラクターは六十人になった。東海地方では愛知、三重、岐阜県ともインストラクターが十人未満とまだ少ない。
住民が集まって楽しめる活動でもあり、東日本大震災の被災地での普及にも力を入れる。宮城県女川町では四月下旬に復興プログラムの一環で体験会を開き、サポーター希望者を募る計画だ。
講習会などの問い合わせは、ワンツースリー=電011(747)5007=へ。
中日新聞 2013年4月9日 原文のまま
編者:予防効果の評価はにわかにはつけがたいが、試みとして記事を紹介した。


「認知症予防へ脳機能テスト 安曇野市が来年度から無料実施」(2月15日/信州 Live on)
安曇野市は来年度、希望する65歳以上の市民や介護予防の運動をするグループを対象に、認知症予防のため脳の機能を調べるテストを無料で実施する。症状がないか早めに気付くことで、運動などを通じて予防に努めてもらい、介護給付費や医療費を抑制する狙いだ。
テストは筑波大などが開発した「ファイブ・コグ」と呼ばれる方式。会場に集まった人にDVDの映像を見てもらい、記憶、思考、言語など五つの脳の機能を調べる。半年ほど後に再び受けてもらい、症状が進んでないか調べる。
市は14日発表した来年度一般会計当初予算案に委託費など75万円を計上。予算案には、介護予防の運動をするグループへの補助(253万円)なども盛った。
市高齢者介護課によると、1月末現在、65歳以上の市民2万6千人余のうち、認知症で介護認定を受けているのは2900人余。同課は、この他にも潜在的に症状があるお年寄りがいるとみている。(提供:信濃毎日新聞9
(信州 Live on 2013年2月15日 原文のまま
編者:認知症関連の介護予防の方法として多くの自治体で既に取り入れられている「ファイブコグ:Five Cognitive Functions」は軽度認知障害ととらえることを意図したものらしいが、ネット上、NPO法人西宮認知症予防会の解説がわかりやすい。


中年期の身体の健康は認知症を抑える(2月5日/アメリカ)
テキサス州ダラスにあるクーパー研究所Cooper Instituteの医療研究主任のローラ・デフィーナLaura DeFina医師(写真左上)らのグループは、どのようなライフスタイルの変化が認知症の発症を防いだり遅らせたりするかの十分な証拠はないとされているとして、地域在住の主に40歳代から50歳代の中年期の1万9458人を対象として追跡調査を行い中年期の心臓呼吸系の健康状態(fitness)とその後のすべて型の認知症の発症との相関を調べました。
心臓呼吸器系の健康レベルは1971年から2009年の間に「バルケトレッドミル方法改訂版Balke Treadmill Test(modified)」(訳注1)で評価しました。認知症の発症は1999年から2009年の間のメディケア請求書のデータからのものです。
その結果、追跡期間中(19年から30年間で中央期間年25年)の12万5700人年で全ての型の認知症の発症は1659件でした。健康状態レベルが最も高いグループ(平均13.1 メッツMETs(訳注2))は、最も低いグループ(8.1 メッツ)より認知症の発症率が有意に低く、また健康レベルが高いほどそれ以前に脳血管障害があってもなくても認知症の発症が低い相関が認められました。
なお今回の調査では、認知症の診断は実際に診断したのではなくメディケア請求書に基づき、また参加者は非ヒスパニック系の白人で健康で教育レベルがよく、クーパー研究所付属クーパークリニックCooper Clinic in Dallas, The Cooper Instituteに受診して調査に参加できる人たちであることによる対象者の偏りがあるかもしれません。
結論として、中年期の心臓呼吸器系の健康状態がより高い人ほどその後の人生ですべての型の認知症を発症する危険性が低いという相関を認めました。この相関は調査開始以前の脳血管障害の有無には関係なく、独立したものでした。
この調査論文は、アメリカの内科学雑誌Annals of Internal Medicineの2013年2月5日号に掲載されました。
運動が認知症の予防になるとする研究報告は多いが、2010年アメリカ国立保健研究所National Institutes of Health(NIH)は、身体運動を強くすることで認知症が予防できるとする十分な証拠はないとの見解を発表しました(訳注3)。この見解の背景は、健康状態がよい人はアルツハイマー病も含む認知症になりやすい心臓血管系疾患や脳血管障害が少ないためとするものでした。しかし、今回の研究からは調査前の脳血管障害に有無に関係なく、運動レベルが高いほど認知症になりにくいという相関を認めています。すなわち運動が独立して認知症の保護因子とみると考えられます。
今回の研究者は疾病管理予防センターCenters for Disease Control and Preventionの身体活動ガイドライン―1日30分の中程度から強い運動(例:活発な歩行)あるいは1週間75分の激しい有酸素運動―に基づくことを勧めています。
このことは中年期を少し過ぎた人でも言えることで、同じ研究所の疫学者である共同研究者のベンジャミン・ウイリスBenjamin Willis医師(写真左下)は次のように述べています。
「運動によって健康と認知機能の利益を得るということで遅すぎるということはありません。確かに、木を植える最善の時期は20年前かもしれませんが、その次の最善の時期は今なのです」
Yahoo!News  02/05/2013 Midlife Fitness May Lower Dementia Riskおよび論文The Association Between Midlife Cardiorespiratory Fitness Levels and Later-Life Dementia: A Cohort Study
訳注1:Balke Treadmill Test
訳注2:厚生労働省の「健康づくりのための運動指針2006」(pdf1.2M)によると「メッツ」(METabolic equivalentsの略語)は運動の強さの単位で、安静時を1として何倍に相当するかを示し、例として激しいセックス;1.5、.普通歩行、軽い筋力トレーニング、バレーボール;3、速歩、ゴルフ、自転車;4、軽いジョギング、エアロビクス、階段昇降;6、ランニング、水泳、重い荷物を運ぶ;8など。
訳注3:サイト内関連記事「アルツハイマー病の予防の根拠の程度を分析(2010年4月28日)
編者:運動が認知症の保護因子であるとの研究報告は多いが、今回その仮説を補強した論文とみることができる。この種の疫学調査の対象者は高齢期の人が多いが、この調査では中年期の人が主であることも特徴で中年期のライフスタイルの影響が高齢期により出やすいと思われる。


難聴の人は認知機能が低下しやすい(1月23日/アメリカ)
「ジョンズホピキンス加齢・健康センターJohns Hopkins Center on Aging and Health」のフランク・リンFrank Lin医師(写真左上)らのグループは、高齢者にとって難聴が単独で認知機能の低下に関連するかどうか明らかにするため追跡調査を行いました。
対象者は「健康、加齢、身体構成スタディHealth, Aging, and Body Composition (Health ABC) Study」に参加した高齢者1984人(中間年齢77.4歳)の認知機能障害のない人で、1997年から1998年に調査が開始され、開始後5年以内に聴力検査を受けました。追跡期間は6年間としました。聴力のよい方の耳で0.5から4ヘルツの純音での聴力の平均値で分類しました。認知機能検査は5年、8年、10年、11年に改訂版MMSEとDigit Symbol Substitutionで行いました。
その結果、調査開始時に難聴のある1162人と難聴のない人と比べ改訂版MMSEとDSSの点数でみると、それぞれ年間41%、32%の低下を認めました。聴力が正常の人と比べ難聴の人は認知機能障害になる危険性は24%高いことを認めました。結論として、難聴は地域在住の高齢者で単独で認知機能低下と認知機能障害を促進させることとの相関関係を認めました。この相関のメカニズムについて、また聴力リハビリテーション的介入が認知機能低下に影響するかについてさらに研究が必要としています。
この研究論文はJAMA Intern Medicine電子版2013年1月21日号に掲載されました。
聴力検査を受ける確かな理由があります。高齢のアメリカ人で難聴で治療を受けてない人たちは思考や記憶の能力が聴力の正常な人より早く低下することがわかったからです。
この研究結果の影響は広いでしょう。国立保健研究所National Institutes of Health (NIH)によると65歳から74歳の人の30%が、75歳以上では47%が難聴なのです。さらに特に70歳以上で補聴器を使っている人が25%~29%しかないないのです。
難聴と認知機能の低下の理由として考えられることは、①認知障害の原因となる脳の仕組みが聴力機能に影響する。②聞き取りにくい音を聞いて理解する障害ある耳は脳にも問題を起こす。③よく聞こえないことで社会的孤立によって脳が影響を受けるかもしれません。あるいはこの3つの理由が合わさっているのかもしれません。
ブランダイス大学Brandeis Universityの神経科学科教授のアーサー・ウインフィールドArthur Wingfield教授(写真左下)―今回の調査には参加してない―は次のように述べています。
「聴力が衰えて思考機能が影響を受けるのは高齢者だけではありません。難聴がある健康な若者も簡単に影響を受けます。リン医師が明らかにした聴力障害と認知機能との関係は、あまり注目されなかった公衆保健の課題として警告になります」
AARP 01/23/2013 Hearing Loss May Speed Up Dementiaおよび論文Hearing Loss and Cognitive Decline in Older Adults
サイト内関連記事:聴力障害は認知症の危険因子(2011年2月14日)
編者:編者は、認知症の2次要因の身体要因のひとつとして経験的に聴力を挙げてきたが、今回の報告はそれを裏付けることになるようだ。


受動喫煙は認知症の危険因子の可能性(1月9日/中国)
中国の安徽医科大学衛生管理学院School of Health Administration, Anhui Medical Universityとイギリスのキングスカレッジロンドン保健・社会支援研究学部Division of Health and Social Care Research, King's College Londonのルーリン・チェン?若陵Ruoling Chen医師(写真)らのグループは、受動喫煙(Environmental tobacco smoke)が広範囲に健康被害を起こしているが、認知症との関係は明らかではないと、受動喫煙と認知症症候群の用量反応関係について調べました。
2007年から2009年の間に中国の5つの省で60歳以上の5921人に面接し、喫煙歴と受動喫煙について調べ喫煙量で分類し、認知症症候群については、コンピューターを使った自動老年医学的検査法(Automated Geriatric Examination for Computer Assisted Taxonomy)を使い重症度で分類しました。
その結果、626人(10.6%)が重度の認知症候群で、869人(14.7%)が、中程度でした。対象者のうち受動喫煙量は重度の認知症症候群になる危険性が有意に高いことを認めました。これは受動喫煙の程度と期間でみると用量反応関係で相関を認めました。重度の認知症症候群は喫煙歴のない人および元喫煙者または現喫煙者とで相関を認めました。受動喫煙と中程度の認知症症候群との正の相関関係は認めませんでした。
このことから受動喫煙は重度の認知症症候群の重要な危険因子と考えられ、受動喫煙を避けることで重度の認知症症候群の発症を全世界的に減少させることができるかもしれません。
この調査論文は雑誌「労働環境医学Occupational and Environmental Medicine」の2013年1月号(電子版は2012年10月26日版)に掲載されました。
中国は3億5000万人と世界で最もタバコの消費者が多い国です。同時に認知症が最も多く、人口の高齢化により急増しています。世界保健機関(WHO)は、公の場での喫煙禁止の法律がある国の人数は全世界人口のわずか11%であと報告しています。中国政府がこうした環境整備に努めていますが成功事例は限定的です。
VOA News January 09, 2013 Study: Passive Smoking Increases Risk of Dementiaおよび論文Association between environmental tobacco smoke exposure and dementia syndromes
サイト内関記事:受動喫煙で認知機能が低下(2009年2月12日)
編者:現在の認知症の人も含め対象者の過去の状態を聞きだし、相関関係を調べる「後ろ向きの疫学調査」は信頼性が低いが、その調査の限界を知った上で受動喫煙が認知症の危険因子の可能性があるとみてよいかもしれない。なお調査では認知症ではなく認知症症候群dementia syndromeで状態を判定しており、これは認知症と同じではないく、認知症ではない認知機能低下が含まれていると思われる。


降圧剤が認知症の発症を抑えるかもしれない(1月7日・アメリカ)
ベータプロッカー(βブロッカー、β遮断剤)と呼ばれる降圧剤を服用している人はアルツハイマー病など認知症に伴う脳の変化が少ないようです。この報告は、今年3月16日から23日までカリフォルニア州サンディエゴで開催予定の「アメリカ神経学会第65回年次会議American Academy of Neurology’s 65th Annual Meeting」で発表される予定です。この研究は、ホノルルアジア加齢研究Honolulu-Asia Aging Studyに参加した日系アメリカ男性774人について行われたものです。参加者が死亡した場合剖検が行われました。774人のうち610人は高血圧か降圧剤を服用していました。治療を受けていた人たち(約350人)のなかで15%がβブロッカーを服用し、18%はβブロッカーと他の薬を服用し、残りの人たちは別の降圧剤を服用していました。
この研究からすべての高血圧治療は、明らかに治療を受けないより良いことがわかりました。しかし降圧剤として単独にβブロッカーを服用していた人たちは、治療を受けなかった人または他の降圧剤で治療を受けた人での剖検で脳の異常が少ないことを認めました。βブロッカーと他の薬を服用していた人では脳は病変の数では中間値を示しました。
こうした脳の病変には明らかに異なる二つのタイプがあり、一つはアルツハイマー病に伴う変化であり、もう一つは微小梗塞と呼ばれる変化―微小で多発性で症状がない脳血管障害の原因―を認めます。βブロッカー単独または他の降圧剤と併用している人では脳の萎縮が有意に少ないことも認めました。
論文筆頭者でホノルルにある「太平洋健康調査教育研究所Pacific Health Research and Education Institute」のロン・ホワイトLon White医師(写真)は次のように述べています。
「人口の高齢化にともないアルツハイマー病の人がかなり増えると予測されています。この病気の進行を遅らせたり予防する要因を確めることの重要性が増しています。βブロッカーは高血圧によく使われている薬なので今回の結果にとても驚いています」
以前の研究によると、中年期の高血圧が認知症の危険因子であることが認められています。
American Academy of Neurology News JANUARY 7, 2013 Can Blood Pressure Drugs Reduce the Risk of Dementia?)
サイト内関連記事:「降圧剤がアルツハイマー病の発症リスクを減らす(2011年10月19日)
編者:降圧剤がアルツハイマー病に予防効果がありそうだとする研究はあるが主にアンジオテンシン受容体拮抗薬のが多いいが、今回はβブロッカーで剖検で脳の病変が確かめられている。降圧剤全般ではなくβブロッカーが単独で予防効果があるということは脳の血管性変化を軽減するというだけでなく、脳の神経細胞に直接作用していることも推測される。


宇宙放射線で宇宙飛行士がアルツハイマー病の発病の恐れ(1月1日/アメリカ)
宇宙飛行は、空気も水もなく、極端に暑く、些細なミスが致命的になるほど危険だとみられてきました。今週、オンライン科学雑誌のPLOS ONE(2012年12月31日版)に掲載され研究によると、さらに脳の健康にも有害らしいことがわかりました。特に火星への3年間の宇宙飛行は脳に危険を伴う恐れがあるのです。
ニューヨーク・ロングアイランドにあるブルックヘブン国立研究所Brookhaven National LaboratoryのNASA宇宙放射線研究室NASA Space Radiation Laboratoryが行った8年間におよぶ研究の結果、宇宙飛行中の宇宙放射線がアルツハイマー病の発症を高めることが認められました。
NASAは、2020年代に火星に近い小惑星に宇宙飛行士を送ることを取り組み始めており、2030年代の火星への飛行計画を検討しています。現在の技術からして、この往復飛行に3年かかるでしょう。現在の宇宙船は地球によってまもられている地場の外で乗組員が受けるだろう宇宙放射線から厳重に保護されるようにはできていないのです。
研究者は、遺伝操作で作られたアルツハイマー病になりやすいマウスを使い、研究室内の実際の似せて作られた宇宙放射線を浴びせました。
今回の論文の上席著者でロチェスター大学医療センターUniversity of Rochester Medical Centerの神経生物学と解剖学の教授である、ケリー・オバニオンM. Kerry O'Banion医師(写真)は「銀河系宇宙放射線は将来の飛行士にかなりの恐れとなる」と述べています。
研究チームは、放射線が遺伝的にアルツハイマー病を発病しやすい人で病気を促進させる可能性があるかどうかを確認したいと期待しました。実験に使うマウスモデルは、この種の研究で広く使われており、どの程度発病するかよくわかっています。
科学者は、大気圏外の宇宙空間で作業し居住して起こりうる危険について気にかけ「地球周囲の低軌道を超えた空間の宇宙放射線は、がん、心臓血管疾患、白内障を起こすらしい」と述べています。
国立宇宙生物医学研究所National Space Biomedical Research Instituteによると放射線を浴びると、嘔気、嘔吐、疲労、皮膚損傷、白血球数の変化、免疫系統の変化などの急性的影響があります。長期的な放射線の影響として、眼、胃腸系、肺、中枢神経系などが損傷されます。
地球上で人は、大気と磁場で保護されています。高度200マイル(約320キロ)にある国際宇宙ステーションInternational Space Stationの乗組員は、ここでも私たちを取り巻く磁場の内側に居るのです。アポロの24人の乗組員は、1969年から1972年までに月に飛行しましたが、彼らは保護されてないままでしがが、最長でも飛行時間は2週間以内でした。
地球周囲の低軌道の外に居ると飛行士は別な異なる放射性粒子の雨を浴びることになります。太陽表面の爆発(フレア)に関連した放射線から守ることができると言い技師もいますが、こうした宇宙放射線を遮断することはできないでしょう。
宇宙飛行士が大気圏外の空間に長く居ればいるほど、この種の低レベル放射線を浴びることが多くなります。
今回の研究は、中枢神経系への放射線の影響―著者が言うところの「神経退行現象」―を初めて確認しました。
オバニオン医師は次のように述べています。
「宇宙空間での放射線暴露によってがんなどの健康被害を高めることがあるだろうと長く信じられてきました。しかし、今回の研究で初めて、火星への飛行に等しい放射線暴露が認知機能障害をもたらし、アルツハイマー病に関連した脳の変化を促進させることが示されました」オバニオン医師は、アルツハイマー病の研究を20年間続けています。
かれらの研究者は、いわゆる高質量高荷電粒子といわれるタイプの放射線の影響を調べました。この粒子にはさまざまな型があり高速で空間を飛びます。爆発した遠方の星からもものもあります。
ブルックヘブン研究所は今回の研究の一端を担いましたが、粒子加速器で宇宙空間でみられる放射性粒子を作ることができます。
さらにオバニオン医師は「こうした粒子を効果的に遮蔽することは現在の技術からしてとても難しい。6層の鉛かコンクリートのブロックで宇宙船を覆う必要がある」と述べています。
今回の研究では家族性アルツハイマー病に関係するヒト変異遺伝子を組み込んだマウスが使われました。
またオバニオン医師は「基本的に、この遺伝子を持つマウスは健康で、通常の環境でアルツハイマー病になることはない」と述べています。
マウスに数分間放射線を浴びさせ、6か月後に暴露の影響について調べられました。
オバニオン医師は次のように述べています。
「マウスでの1、2分の暴露は人間では3年間の相当する暴露です。暴露の仕方は特殊ですが、総量は宇宙飛行士が3年間の火星飛行で受ける量に相当します。宇宙放射線に似た放射線は地球上にはありあません。例外的に核事故で経験します。NASAが直面する大きな問題は、効果的な遮蔽方法がなく宇宙船が長期旅行中の飛行士を保護するに十分な厚さを持ってないということです。研究によって解決されない宇宙空間の放射線の問題がある間、またなぜ人はアルツハイマー病になるのかが解明されてない間は、被爆の問題は無視できません。私の見解ですが、今回の研究は環境によってどのようにアルツハイマー病が影響を受けるかの別の説明になります。マウスの遺伝的な素因に環境による損傷が加わったのです。現在、実験で放射能を浴びたマウスのアルツハイマー病は増悪しています。これはアメフトの選手が脳損傷を受けたのち、アルツハイマー病を発病することに似ているかもしれせん」
ABCnews Jan. 1, 2013 Cosmic Radiation Could Cause Alzheimer's in Mars Astronautsおよび論文Galactic Cosmic Radiation Leads to Cognitive Impairment and Increased Aβ Plaque Accumulation in a Mouse Model of Alzheimer’s Disease
編者:放射線の中枢神経系への急性影響として認知機能障害はよく知られているが、長期暴露の影響はよくわかっていない。したがって福島東電原発事故の影響もよく解明されていない。しかし今回の火星飛行の人体への影響の研究から長期暴露が中枢神経系を損傷しアルツハイマー病発病を誘発する恐れを否定できないかもしれない。


2012年


大気汚染は認知機能の低下を招く(12月23日/アメリカ)
南カリフォルニア大学University of Southern Californiaの「生物人口学と集団保健センターCenter for Biodemography and Population Health」および「アンドラス老年学センターAndrus Gerontology Center」に在籍する国立加齢研究所National Institute on Agingのジェニファー・アイルシャイアJennifer Ailshire博士課程研究員(写真)は、大気汚染が高い地区に住む高齢者は認知機能の低下しやすいことを認めたと、今年11月14日から18日までサンディアエゴで開催されたアメリカ老年学会Gerontological Society of America’s (GSA)の第65回年次学術会議65th Annual Scientific Meetingで報告しました。演題のタイトルは“The Hazards of Bad Air: Fine Air Particulate Matter and Cognitive Function in Older U.S. Adults”です。
この調査は、アメリカ環境保護庁U.S. Environmental Protection Agencyと「健康と退職スタディHealth and Retirement Study」のデータを分析したものです。
アイルシャイア氏は次のように述べています。
「加齢により健康と機能が低下している高齢者は、特に、不健康な空気に触れることによる危険性の影響を受けやすいのです。高齢者では大気汚染が心臓血管疾患、呼吸器疾患、あるいは早死に関係しています。微粒子性大気汚染に触れることで脳の健康や機能に影響するらしいという証拠が出てきています」
男女の高齢者の全国的サンプルから大気汚染が認知機能にどのように影響するかを示したがこれが最初の研究で、大気中の微粒子が認知機能の低下を招く重要な環境性危険因子であることが示唆したものです。
微粒子とは、直径が2.5マイクロメートルより小さいものをいい、吸引すると肺、場合によっては脳に深く沈着すると考えられる小さいものです。
この研究のサンプルは、全国の高齢者を代表する1万4793人の白人、黒人、ヒスパニックの50歳以上の男女で、「2004年健康と退職スタディ2004 Health and Retirement Study」の調査に参加した人たちです。個々人のデータと、全国各地の「環境保護庁空気の質システムEnvironmental Protection Agency’s Air Quality System」 のモニターからの微粒子物質の2004年年間平均濃度とリンクさせたものです。認知機能は、言語想起、知識、言語、見当識を評価する試験で評価され1から35までにランク付けされました。
アイルシャイア氏は、大気中の微粒子物質のレベルが高い地域に住む人が認知機能テストで低いランクであることを認めました。この相関分析では、年齢、人種、民族、教育、喫煙、呼吸器系や心臓血管系の状態などのいくつかの因子を同じとしても認められました。
大気中の微粒子物質とは、1立方メートルあたり4.1から20.7マイクログラムまであることです。
10ポイントこの物質が増えるごとに、認知機能は0.36ポイント低下し、この影響は3年早く歳を取ることにほぼ等しいのです。スタディのすべての対象者では、1つ歳をとると認知機能が0.13ポイント低下するという相関が認められます。
Alzheimer's Weekly December 23、2012 Life in Smoggy Areas Lowers Brainpower
サイト内関連記事:「女性高齢者は大気汚染で認知機能が低下」(2012年2月13日)
編者:大気汚染で認知機能が低下するらしいことは、認知症の発症の増加にも関係する可能性はおおいにあると考えてよかろう。なおこの学会発表は先月のことで、いくつかのネットニュースで既に報じられた。


高齢者の孤独感は認知症の危険因子(12月10日/オランダ)
オランダのアムステルダム自由大学医療センターVU University Medical Centreの精神科のTjalling Jan Holwerda医師らのグループは, 孤独感と社会的孤立と認知症の関係について地域住民を対象とした追跡調査しました。
地域在住で認知症のない高齢者2173人について社会的孤立(一人暮らし、未婚、社会的無支援)と孤独感認知症の発症との相関を調べました。対象者を3年間追跡し、認知症の診断を行いました。相関分析には、社会人口的要因(年齢、性別、経済状態など)、身体状態、うつ状態、認知機能、身体機能を同じとしました。
その結果、孤独感を抱く高齢者は、そうでない高齢者より認知症によりなりやすいこを認めました。社会的孤立と認知症の発症との相関は認めませんでした。
孤独感は、認知症の発症前兆候かもしれないが、孤独感の背景をよりよく理解することによって、弱い人たちを知り、認知症発症のおそれのある高齢者の経過をよくするために介入することができだろうと提言しています。
この論文は、Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatryの電子版2012年12月10日号に掲載されました。
調査した研究者ら次のように述べています。
「この研究から孤独感が高齢期の認知症の独立した危険因子であることが示唆されます。孤立しているより孤独と感じているという事実が認知症の発症に相関することから、認知機能低下の危険性を高めるのは高齢者の客観的状況ではなく社会的接触がないと感じていることと示唆されています。孤独感は、認知症に至る過程に伴う人格の変化の一部とみられる社会的能力の低下の現れと考えられるかもしれません」
イギリスのアルツハイマー病の専門家は、この研究結果の解釈に慎重です。イギリスアルツハイマー病研究Alzheimer's Research UKの研究部長のサイモン・ライドレイSimon Ridley医師は次のように述べています。
「認知症発症の最大の要因は年齢です。この研究は孤独感を認知症の発症を少し高める危険因子とみています。この結論が社会に重要な影響をもたたすかもしれないが、高齢期に原因と効果の関係を決めることは難しい。孤独感は、認知症発症に関与する要因というよりは、認知症の初期症状のひとつである可能性もあるのです
イギリスアルツハイマー病協会Alzheimer's Societyの研究担当のジェシカ・スミスJessica Smith氏は次のように述べています。
「この研究が示唆しているように、孤独感は認知症と関係が深い。孤独感が危険因子なのか認知症の初期症状なのかを確かめるためにさらに研究が必要です」
guardian 10 December 2012 Dementia linked to loneliness, study findsおよび論文Feelings of loneliness, but not social isolation, predict dementia onset: results from the Amsterdam Study of the Elderly (AMSTEL)
サイト内関連記事:孤独はアルツハイマー病の危険因子(2007年2月)
編者:孤独が認知症の危険因子とする報告はこれまでにあった。今回の報告は孤独感と社会的孤立は異なるという点を強調していところが興味深い。


「認知症予防実践カフェ 長岡京市、医療機関内に設置」(11月8日/ 京都新聞)
長岡京市は7日、初期の認知症患者や認知症の不安がある人を支援する「認知症対応型カフェ」事業を始めた。医療機関の喫茶室や福祉施設のサロンなどの気軽に集まれる場所で、脳を活性化させるクイズや体操などのプログラムを提供。認知症の発症や重症化を防ぐことを目指す。
厚生労働省の推計によると65歳以上の10人に1人は認知症で、今後も増加が予想される。自宅にこもりがちで人と話す機会が少ないと重症化しやすいとされるため、市は京都府の交付金480万円を活用し、外出しやすい場所を地域に設けて予防プログラムを提供することにした。
実際の事業は、長岡病院を経営する長岡記念財団(同市友岡)に委託。同財団の認知症地域支援推進員や医師、作業療法士らがチームを組んで活動する。
同財団の喫茶店に同日設けられた「オレンジ・カフェ」は登録制で、市や医師、地域包括支援センターがあっせんした市民を対象とする。週1~2回開き、写真や昔の道具を使って過去を思い出す「回想法」をはじめ、体操や健康講座、クイズやパズルなどの脳トレーニングを行う。
サロン型カフェの「オレンジ・スペース」は、市地域福祉センター「きりしま苑」(東神足)で開設する。65歳以上の市民はだれでも参加でき、回想法などの認知症予防プログラムを体験できる。
市民が要望した場所にスタッフが赴く出前型カフェ「オレンジ・バスケット」も展開する。いずれも参加無料。
京都新聞 2012年11月8日 原文のまま
編者:科学的裏付けの乏しい方法で「認知症予防」を自治体が推進してよいものか?


身体運動は血管性認知症の発症を抑える(11月1日/ポルトガル)
リスボン大学サンタマリア病院神経科Department of Neurociences, Santa Maria Hospital,University of Lisbonのアナ・ヴェルデーヨAna Verdelho医師(写真左上)らのグループは、身体運動が自立している高齢者の認知障害や認知症を阻止するか大脳白質の変化との関係も含めて追跡調査しました。
調査は、ヨーロッパの複数国で行う、自立した高齢者が障害を持つにいたる過程での脳の白質変化の影響を評価する追跡調査「白質変化と障害LADIS (Leukoaraiosis and Disability)」の一環として行いました。調査対象者については、3年間追跡し、期間中は毎年、うつ状態、生活の質、日常生活機能などについて電話で聞き取りしたり、多角的な臨床検査と認知機能および通常の診断基準による認知症の評価を行いました。身体運動は聞き取りで把握しました。MRIは調査の開始時と終了時に実施しました。
その結果、対象者639人の内訳は、平均年齢が74.1歳、男女比は45:55、平均就学期間は9.6年、身体的活発―少なくとも1週間3回、1回30分、ジムでの運動、歩行、自転車運転と運動を―な人は64%でした。追跡終了時に、90人に認知症(血管性54人、アルツハイマー型34人、前頭側頭型2)を認め、147人は認知症ではないが認知障害を認めました。身体運動との相関をみると、認知障害(認知症を含む)の発症を64%、認知症を61%、血管性認知症を42%それぞれ減らすことを認めました。これは年齢、教育歴、脳白質変化、側頭葉萎縮、脳血管障害の既往、糖尿病とは関係なく認められました。以上の結果から、身体活動は自立した高齢者で認知障害、とくに血管性認知症の発症を抑えることがわかりました。
この研究論文はアメリカ心臓協会American Heart Association発行の雑誌STROKE電子版2012年11月1日号に掲載されました。
論文筆頭著者のヴェルデーヨ医師は次のように述べています。
「私たちは、認知障害を防ぐために1週間3回、1回30分の中程度の身体運動を大いに勧めます。特に高血圧、脳血管障害、糖尿病といった血管性危険因子を持っている人たちに重要です」
イギリスには、約82万人が認知症でアルツハイマー病によるものがもっとも多い。これまでの研究から、定期的な運動によって3分の1の認知症発症の危険性を減らし、他方クロスワード、トランプ、コンピューター使用によって脳活性が保たれると唆されています。
イギリスの公式ガイドラインによると、認知症予防には中程度の運動を150分、強度な運動なら75分すべきとされています、しかしイギリス人の4人に3人はこうした運動ができていません。
さらにヴェルデーヨ医師は次のように述べています。
「白質の損傷は、うつ状態を含む認知障害、歩行障害、排尿症状に関与します。また白質の変化は高齢者に多く、主に高血圧や糖尿病といった血管性危険因子に主に相関しています。バランスのよい食事、定期的な運動、禁煙は、血圧やコレステロースの定期的な検査と同様に、認知症発症の危険性を減らすのにとても重要です」
イギリスアルツハイマー病研究Alzheimer’s Research UKの研究主任のサイモン・リドレイ Simon Ridley医師は次のように述べています。
「今回の研究は比較的小規模ですが、心臓によいことは頭にもよいという見方をさらに指示しています。私たちは、心臓血管系への損傷が認知症に関係していることを知っています。今回の結果は、心臓血管系の健康を保つことによって認知症発症の危険性を減らすことができるということを示唆しています」
MailOnline 1 November 2012  Just an hour and half of exercise a week can keep dementia away - and preserve your memoryおよび論文Physical Activity Prevents Progression for Cognitive Impairment and Vascular Dementia Results From the LADIS (Leukoaraiosis and Disability) Study
編者:コメントにある通り、運動が認知障害や認知症の保護因子とする研究は多く、今回の結果はそれを補強するものだ。なお記事にあるイギリスの認知症予防の公式ガイドラインが何を指すかわからない。


「物忘れの程度診断 豊岡、養父に「認知症タッチパネル」」(10月31日/日本海新聞)
認知症の早期発見につなげようと、タッチパネル式の専用診断機器が兵庫県但馬地域2カ所に初めて設置された。画面に触れて設問に答えるだけで、物忘れの進行度合いをチェックできる。但馬でも高齢化の進展に伴い同症患者の増加が予想されており、設置した県は症状が悪化する前に医療機関での受診につなげたい考えだ
設置箇所は、豊岡市幸町の豊岡健康福祉事務所1階玄関と、養父市八鹿町国木の但馬長寿の郷研修棟すこやかセンター。画面上に表示された「練習開始」を押すと、練習問題の後に五つの設問を表示。正答率に応じて「物忘れの心配がない」「物忘れが疑われる」と判定が出る。所要時間は5分ほど。
問題は、自動音声が繰り返す三つの言葉を記憶し九つの選択肢から選んだり、立体的な図形と同じ形を別の角度から見た五つの選択肢から選ぶ。日付や曜日に関する設問もある。
プログラムを開発したのは鳥取大医学部の浦上克哉教授(56)。15点満点中12点以下は90%以上の確率で認知症が疑われるといい、「早期発見に役立ててほしい。持ち運びできるので地域でも活用を」と話している。
豊岡健康福祉事務所によると、但馬の認知症患者は2010年に推計で約5100人だったが、20年には約6500人に増える見通し。同事務所は「疑いの結果が出たらかかりつけの医師に相談し、必要な場合は専門の病院を受診してほしい」と呼び掛けている。
日本海新聞 2012年10月31日 原文のまま
編者:「早期発見機」をどう利用するか、医学的裏付けのある早期発見と事後対応のシステムづくりが必要だ。不安を掻き立てることにならないように。



閉経時のホルモン療法は開始時期が早いとアルツハイマー病を抑えるらしい(10月24日/アメリカ)
アメリカのジョンズホプキンスブルームバーグ公衆保健大学精神保健学部Department of Mental Health , Johns Hopkins Bloomberg School of Public Healthのピーター・ザンディPeter P. Zandi氏(写真左上)らのグループは、ホルモン療法を受けた人はアルツハイマー病になりににくみられる反面、逆に臨床試験では発病のリスクを高めることが知られており、改めてホルモン療法とアルツハイマー病の関係を療法の時期と方法でどのように異なるかをを調べることにしました。
対象者は、1995年から2006年までの地域在住者を対象としたキャッシュカウンティスタディCache County Studyで閉経期とホルモン療法について詳しい経過が把握されている1768人の65歳以上の女性を追跡していました。このうち1,105人がエストロゲン(卵胞ホルモン)単独か、エストロゲンとプロゲスティン(黄体ホルモン)の合剤を服用していました。追跡期間中、176人がアルツハイマー病になりました。このうちホルモン療法を受けた人は87人、受けない人は89人でした。
その結果、閉経後5年間内になんらかのホルモン療法を受けた女性はアルツハイマー病に30%なりにくく、とくに10年以上ホルモン療法を受けた人たちで顕著にアルツハイマー病になりくにことを認めました。他方、閉経後5年以上後にでホルモン療法を始めた人はアルツハイマー病になりにくいことを認められませんでした。またエストロゲンプロゲスティの合剤を始めた人はアルツハイマー病の発病にリスクが高まることを認めました。
以上のことから、ホルモン療法とアルツハイマー病の発病の相関は療法を始める時期によっていることを認めました。閉経開始に近い時期にホルモン療法を始めることの利益はあるとしても、閉経期の後になって始めたホルモン療法―特に複合ホルモン療法―はアルツハイマー病の発病の危険性を高めることに関係しているようなのです。しかしホルモン療法の開始時期とアルツハイマー病の発病の危険性のの関係についてはさらに研究が必要です。この研究論文はアメリカの神経学雑誌Neurologyの電子版の2012年10月24日号に掲載されました。
この結果についてザンディ氏は次のように述べています。
「私たちの結果から、女性がホルモン療法についてその方法を変えるべきだとは思っていません。アルツハイマー病を防ぐためにホルモン療法を行うと考えるべきではないのです」
アメリカでは、ほてり、発汗、膣の分泌物の減少といった症状を軽減するホルモン療法は、できるだけ少ない量で、できるだけ短い期間に止めることを推奨されています。この種のjホルモン療法は乳がん、心疾患、脳血管障害の発病の危険性を高めるからです。
2002年にファイザーのプレマリンとプレムプロの合剤が乳がんと関係すると指摘されるまで、閉経期症状を軽減するために600万人のアメリカ人女性が服用していました。この製薬会社は、訴訟の和解のため11億ドルを、訴訟外の事例の解決のためにさらに5億3200万ドルを支払いました。
さらにザンディ氏は次のように述べています。
「エストロゲンは、脳の神経に有益で保護的であり成長を助けます。さらに脳の血流をよくしているようです。このためホルモン療法によって閉経期のエストロゲの急激な減少を防ぐことからアルツハイマー病の予防に役立っているようです」
この論文の評論を書いたビクター・ヘンダーソンVictor Henderson医師(写真左下)氏は、スタンフォード大学Stanford Universityの保健・政策・神経学・神経科学の教授ですが、次のように述べています。
「閉経期症状の治療としてホルモン療法を受けている人は、今回の結果に安堵するでしょう。しかし、アルツハイマー病の予防としてのホルモン療法を推奨するようにするにはさらに研究が必要です。閉経が始まる次期にホルモン療法を始めることは、閉経期の遅い時期にホルモン療法を始めることによる危険性とは相関してないようです」
なおジョンズホプキンスブルーム公衆保健大学はニューヨーク市長でブルームバーグBloomberg LP. 系列のブルームバーグニュースBloomberg Newsの主なオーナーであるのマイケル・ブルームバーブMichael Bloombergに由来します。
Bloomberg News October 24, 2012 Hormone Use After Menopause Start May Reduce Dementiaおよび論文Hormone therapy and Alzheimer disease dementia New findings from the Cache County Study
サイト内関連記事:ホルモン療法は中年期では認知症の保護因子に、高年期では危険因子(2011年2月2日)
編者:女性ホルモン療法とアルツハイマー病との関係については相反する結果が出て混乱し研究がストップした状態でしたが、今回はホルモン療法の開始時期によってはアルツハイマー病の保護因子になるらしいという新たな相関を認めたことになるようだ。


NIAが勧めるアルツハイマー病予防9つの行動(9月/アメリカ)
アメリカの国立加齢研究所National Institute on Aging(NIA)は、9月「アルツハイマー病の予防 私たちは何を知っているのかPreventing Alzheimer’s Disease What Do We Know?(pdf1.2M)」と題する冊子を発行しました。このなかでアルツハイマー病予防について科学的裏付けのある方法を知ることの重要性や研究の必要性などを指摘し、現在、多くの科学者が勧める予防法として9つの行動を提唱しています。

○ 定期的な運動
○ 果物と野菜が豊富な健康的な食事
○ 社会的で知的な刺激のある活動に参加
○ 2型糖尿病の管理
○ 高血圧を下げる
○ コレステロールを下げる
○ 禁煙
○ うつ状態の治療 

Alzheimer's Disease Education and Referral (ADEAR) Center  September 2012 Preventing Alzheimer’s Disease: What Do We Know?)
編者:アルツハイマー病予防の総括としてわかりやすい冊子として紹介した。


ベンゾジアゼピン系薬剤は認知症の発症を高めるようだ(9月28日/フランス)
フランスの国立保健医療研究所INSERM(訳注1)のベルナール・ベゴーBernard Begaud教授(写真)らのグループは、向神経薬のベンゾジアゼピンbenzodiazepines系薬剤(訳注)と認知症発症との関係について地域住民を対象としたPAQUID研究(訳注3)の一環の疫学調査を行いました。
対象者は認知症のない高齢者1063人の男女(中間年齢78.2歳)で追跡期間最初の3年までこの種の薬剤を服用し始めていない人たちです。認知症の発症は神経科医が確認しました。
追跡期間15年の間253人が認知症になりました。最初の5年間でこの種の薬剤を服用した人は95人がこの種の薬剤を服用し始めました。また認知症になったひとのうちこの種の薬剤を服用したのは30人で、服用しなかったのは223人でした。この結果から、この種の薬剤の服用が認知症の発症の危険性増加と相関することを認めました。分析に際しては年齢、性別、糖尿病および認知症初期症状-不安や不眠-を同じとして考慮しました。また初めて服用する要因についても検討しました。
この研究論文は、イギリスの医学雑誌British Medical Journalの2012年9月28日号に掲載されました。
研究者は、この種の薬剤と認知症の相関を認めただけであって、直接的な因果関係を認めたものではないと注意を促しています。
しかし、今回の研究結果は、これまでのこの種の薬剤と認知症との関係についてのいくつかの研究結果と合致するものです。
こうした薬剤が高齢者に転倒などの重大な事故を引き起こしやすいにも拘わらず、広く、見境もなく使われている現状を考えると、服用の用量と期間-最長、2,3週間がよい-で制限すべきと研究者は述べています。
NBCnews 09/28/2012  Xanax, Valium may increase dementia risk in older adultsおよび論文Benzodiazepine use and risk of dementia: prospective population based study)
訳注1:同薬剤はジアゼパム(一般名:セルシンなど)などで不安障害、不眠症などに使われる。
訳注2 :INSERMはInstitut National de la Sant? et de la Recherche M?dicale(英語名National Institute of Health and Medical Research )の略称。
訳注3:フランスで行われている地域在住の高齢者を対象とした疫学調査。PAQUIDはフランス語Personnes Ag?es(高齢者)とラテン語QUID(何?)の合成語で「高齢者とは何?」という意味。


歯をよくみがくと認知症になりにくいかもしれない(9月13日/アメリカ)
南カリフォルニア大学ケック医学部予防医学科Department of Preventive Medicine, Keck School of Medicine, University of Southern Californiaのアンリア・パガニーニ・ヒルAnnlia Paganini-Hill教授(写真)らのグループは、歯の状態、歯の保健行動および認知症発症との相関について疫学調査を行いました。
調査対象者は、カリフォルニア州のラグナヒルズ・レジャーワールドLeisure World, Laguna Hillsの退職者地域の住人5468人(中間年齢81歳)で1992年から2010年まで追跡して調べました。この間、1145人が認知症になりました。
自前の歯、義歯、歯科受診回数、口腔保健行動など歯の保健に関する質問を行いました。認知症は、対面評価、追跡質問票、病院のデータ、死亡診断書から得ました。
その結果、義歯を付けないで不適切な咀嚼をする男性は、適切な咀嚼をする男性(上歯10本以上で下歯6本以上)より91%多く認知症になりやすいことを認めました。この危険性は女性でより高いのですが、その差は有意ではありませんでした。自前の歯がある人で歯磨きを毎日しない人は、1日3回する人より認知症になる危険性は22%から65%高いことを認めました。
こうしたことから、自前の歯で、健康的で機能的な歯を維持することに加え、口腔の保健行動が高齢者の認知症発症のリスクを低くすることと相関しているとことが認めました。
この研究論文は、アメリカ老年医学会雑誌Journal of the American Geriatrics Societyの2012年8月号に掲載されました。
この結果についてパガニーニ・ヒルズ教授は次のように述べています。
「この研究で歯磨きと認知症の因果関係が解明されたわけではありません。歯を磨くことはアルツハイマー病を必ず予防するという結論を引き出したくはありません」
2007年、アメリカ歯科協会雑誌Journal of the American Dental Associationに掲載された研究は、喪失歯と認知症に関係を示しています。その研究では9個から0個までの最も少ない歯数の人は、これより多くの歯の人より認知症になるリスクが高いと報告しています。
これまで日々の歯磨きは、さまざまな理由から健康に役立つことが示されてきました。健康的な体重から勃起不全の危険性を減らすことまで、そして健康的な笑顔にもよいのです。
Huffingtonpost healthy living 09/13/2012 Brushing Your Teeth May Lower Dementia Risk および論文Dentition, Dental Health Habits, and Dementia: The Leisure World Cohort Study
関連資料:Tooth loss, dementia and neuropathology in the Nun Study(Journal of the American Dental Association October 2007 )
サイト内関連記事
編者:歯と認知症の関係にかんする研究は多く、その解釈もさまざまである。


アメフト元選手にアルツハイマー病による死亡が多い(9月5日/アメリカ)
アメリカの疾患管理予防センターCenters for Disease Control and Preventionーのエヴェレット・リーマンEverett J. Lehman氏らのグループは、アルツハイマー病(AD)や筋委縮性側索硬化症(ALS)などの退行性神経疾患による死亡がプロのアメリカンフットボール選手に多いか分析しました。
調査対象は1959年から1988年まで、少なくとも年金が保障される5シーズンの試合に出場した3439人ので、生死状態を2007年までに追跡して確かめました(この間334人が死亡)。さらに対象者をスピードが求められない選手(ラインマン)とスピードをもとめられる衝突することが多い選手(パンターとキッカーを除く)とに分けて分析しました。対象者の死亡率は一般アメリカ人口と比較し、対象者内でスピード選手と非スピード選手で比較しました。
その結果、選手全体の死亡率はアメリカの一般国民と比べて低いことを認めました。退行性神経疾患による死亡については、原因となる疾患の死亡率で一般国民より死亡率が3倍高いことを、ALSとADではともに4倍高いことを認めました。パーキンソン病では死亡率は同じでした。選手間では、スピード選手のほうが非スピード選手より退行性神経疾患による死亡が高いことを認めました。
こうした結果は、アメフト選手で退行性神経疾患による発症の危険性が高いと示唆する最近のいくつかの研究結果と合致します。
この研究論文はアメリカの神経学雑誌Neurology電子版の2012年9月5日号に掲載されました。
この結果について研究主任のリーマン氏は「結果の数値を知って驚いた」と述べています。
この数年間、ヘルメットへの打撃が蓄積されて起こる脳障害が認知症に似た慢性外傷性脳症(Chronic traumatic encephalopathy :CTE)に関連するとの証拠が増えています。またCTEが数人の選手の死亡解剖で認められています。
ボストン大学外傷性脳症研究センターBoston University Center for the Study of Traumatic Encephalopathyの共同創設者のロバート・スターンRobert Stern神経学教授は次のように述べています。
「こうした選手たちが死亡にいたった疾患がCTEに近いということは当然と思われます」
このセンターは、今回の研究に関与していませんがNational Football League (NFL)の元選手が死亡前にCTEと診断できるかの研究の一部として認知症に関わるかの研究を行っています。
さらにスターン教授は次のように述べています。
「今回の研究結果は頭部をぶつけあうことから来るアメフトの現在の危険性を過小評価しているようです。現在の選手は、今回の研究対象の時期の選手よりますます大きく、強く、速くなっているので、最終的に知的能力の低下に一層起こりやすいようです」
リーマン氏は対象者数が少ないことを認識していますが、結果は統計的に有意であると述べています。
またスターン教授は次のように述べています。
「今回の結果を過大に受け止めるべきでないと注意を促しながらも、研究結果はアメフトでの反復する脳外傷が中高年期のCTEに関係を示唆しています」
今回の研究者は、論文を発表した同じ日にNFLが国立保健研究所National Institute of Health (NIH)に脳外傷と長期的な疾患との関係についての研究を依頼して3000万ドルの寄付を表明したと、述べています。
同じNFLから100万ドルの寄付を受けたことがあるセンターに在籍するスターン氏は「NFLは規則や方針に関して多くの重要な改革を実施してきました。これらは今後の研究に影響をおよぼしている」と述べています。
現在、3400人ほどの選手と家族は、NFLが選手の直面する神経学的危険性を認識し対策を立てることを無視してきたと主張して、訴えています。
原告の一人であるレイ・イースターリングRay Easterling氏(写真)は、1970年代に活躍しましたが、引退10年後に認知症が始まり、今年4月に自殺しました。
妻のメアリー・アン・イースターリングMary Ann Easterling氏は次のように述べています。
「今回の研究は、私がアメフトの選手で引退した後の脳の健康状態について知ったことを補強します。NFLの寄付については、当局がこの問題で真剣にならなければというメッセージと思います」
New York Times September 5, 2012 Study Finds Increased Risks for N.F.L. Playersおおび論文Neurodegenerative causes of death among retired National Football League players
サイト内関連記事
編者:CNN Japanの「NFL選手、3倍の確率でアルツハイマーやALSを発症 米調査」(2012.09.06 )の記事の内容は不正確、医学知識が乏しい訳者による記事の一例だ。


ココアが認知機能を改善するらしい(8月14日/イタリア)
イタリアのラキラ大学生命健康環境科学部Department of Life, Health, and Environmental Sciences, University of L'Aquilaのジョヴアムバッティスタ・デジデリGiovambattista Desideri氏(写真)らは、ココアなどに含まれるフラバノールFlavanolが認知機能の改善につながると指摘されていることから、軽度認知障害の人がフラブノールを事として摂取することで認知機能が改善するとの仮説で試験を行いました。
試験は2重盲検法で行い、対象者は軽度認知障害の高齢者90人で、こに被験者を無作為に3グループ―高いフラバノール摂取グループ(1日990mg以上)、中程度のグループ(990未満520mg以上)、少ないグループ(520mg未満45mg以上)に分け8週間、毎日、ココアとしてフラバノールを摂りました。同時に、フラバノールが含まれる紅茶、ブドウ、赤ワイン、リンゴ、ココア製品は摂取を制限しました。
認知機能は、ミニメンタルステート検査Mini Mental State Examination(MMSE)、トレイルメイキングテストTrail Making Test A・B(TMT)および言語流暢検査verbal fluency testで調べました。
MMSEでは3グループとも変化はありませんでした。TMTでは高摂取グループと中程度摂取グループは低摂取グループより有意に改善しました。言語流暢テストでは高摂取グループが低摂取グループより有意に改善しました。
また、インスリン抵抗性、血圧、脂質過酸化については高摂取グループと中程度摂取グループで低下を認めました。
今回の試験は認知障害とフラバノールに関する初めての介入試験によって、定期的なココアのフラバノールを摂ることが軽度認知障害の高齢者の認知機能の改善に効果があるらしいこと示しました。この改善はインスリン感受性の改善も関与していると考えられます。
この研究論文はアメリカの雑誌HYPERTENSIONの電子版2012年8月14日号に掲載されました。
この結果についてデジデリ氏は次のように述べています。
「認知機能の改善はココアに含まれるフラバノールの直接作用によるのか、心臓血管系の全般的改善による2次的効果なのか今回の試験でもはっきりしません。軽度認知障害の進行をフラバノールが止めるか遅らせる役割についてはさらに研究が必要です。大規模研究を行うことによってココアのフラバノールの摂取する量と摂取する期間を明らかにする必要があります」
なお専門家らは、今回の1回だけの試験の結果から毎日ココアを摂るべきだと考えるないように注意しています。
Healthcare today 14th August 2012 Cocoa could keep dementia at bayおよび論文Benefits in Cognitive Function, Blood Pressure, and Insulin Resistance Through Cocoa Flavanol Consumption in Elderly Subjects With Mild Cognitive Impairment
サイト内関連記事
編者:ダークチョコ1gにフラブノールは20mgが含まれる。毎日500mgのフラバノールを摂るためには25gのダークチョコが摂らなければならないことになる。記事中の注意を守りたい。


「脳卒中の実態解明を目指した「久山町研究」50年の軌跡」(8月6日/日経メディカルオンライン)

創刊40周年記念 特別版「スペシャルリポート」転載 豊川琢=日経メディカル

脳卒中の実態解明を目指して、福岡県久山町の全住民を対象に1961年に始まった久山町研究。生活習慣病全般の研究に発展を遂げ、50年たった今も歩みが続く。心血管病リスクの解明に大きな貢献を果たした米国のフラミンガムスタディーと並び評される日本の国際的疫学研究は、なぜこれだけ長期間にわたって継続することができ、これまでにどんな成果を上げてきたのか。50年の軌跡を追った。
(中略)
認知症への対応も視野に
近年は代謝異常のほかに、高齢化の進展に伴って急増する認知症も主要な研究テーマとしている。
久山町の65歳以上の高齢者における認知症の割合は85年には6.7%だったが、2005年には12.5%に高まった(表2)。特に女性は顕著だ。認知症のタイプ別で見ると、アルツハイマー病が増えている(表3)。
1985年の有病率調査で認知症がなかった高齢の町民を15年間追跡し、認知症の危険因子を調べた結果が図5だ。高血圧は脳血管性認知症発症の相対危険のみを高めるが、耐糖能異常は脳血管性認知症とアルツハイマー病の両方の危険因子となっていることが示唆された。
「脳血管性認知症は動脈硬化の危険因子である高血圧と耐糖能異常が密に関連し、アルツハイマー病では高血糖状態で産生される終末糖化産物が脳内のアミロイドβ蛋白の沈着やタウ形成などを促しているのではないか」と清原氏は分析する。
さらに、「アルツハイマー病は空腹時血糖やHbA1cとの関連が薄く、食後高血糖と関連が強い傾向が示された」(清原裕氏九大大学院医学研究院環境医学教授)(写真左上)という。九大は今春の健診から脳ドックを取り入れた。今後はより簡便に測定できるアルツハイマー病のバイオマーカーを特定し、予防につなげたい考えだ。
久山町研究は、様々な診療ガイドラインにも影響を与えてきた。さらに、久山生活習慣病研究所は2009年に野村総合研究所と共同で、研究データを基に生活習慣病の発症リスクをシミュレーションできるソフトウエア「健康みらい予報」を開発。開業医が日常診
九大第二内科で研究に携わり、1985年に久山町で開業した志方医院院長の志方建氏(写真左中)は、「久山町研究は疾病予防に大きく貢献してきた。『私の言うことを聞けば、90歳までは寿命を保証する』と患者に言えるほどだ」と胸を張る。
一方で、町民の価値観が多様化し、健診受診率や剖検率が徐々に低下しているのも事実。だが、久芳菊司町長(写真左下)は「研究成果を基に町民の健康づくりを促進し、研究の意義をさらに高めたい」と意気込む。九大は今後、遺伝子研究も加速させる考えで、研究テーマは尽きない。研究継続には障壁も少なくないが、まだまだ歩みが止まることはなさそうだ。


















(後略)
NMOnline  2012年8月6日 原文のうち「認知症への対応も視野に」を掲載
編者:ヒサヤマスタディのわかりやすい解説記事だ。認知症と糖尿病の疫学調査では世界的トップレベルの報告をしているが、不思議なことにわが国ではあまり知られていない。


短時間の多量飲酒は65歳以上で認知機能低下の危険性を高める(7月18日/イギリス)
イギリス・エクスター大学ペニンシュラ医科歯科学部Peninsula College of Medicine and Dentistry at the University of ExeterのラングIain Lang医師(写真)らは、65歳以上の高齢者5000人以上について調査し、少なくとも月に2回以上短期間の多量飲酒(binge drinking)をする人は知的機能と記憶について重篤な低下をきたすことを報告します。
この研究によると、イギリスで70万人と推計される認知症の10から24%が飲酒に関連しているのです。
ラング医師は次のように述べています。
「高齢者で短期間の多量飲酒は認知機能の低下する危険性を高めます。認知機能の低下は認知症発症の危険性に関連することはわかったいるので心配です。月に少なくとも2回、短期間に多様飲酒する人たちは認知機能や記憶が共にかなり低下します。この飲酒の影響は、年齢や教育歴といった認知機能の低下に関係する他の要因を考慮しても認められます」
この研究結果は、「アルツハイマー病協会国際会議2012 Alzheimer’s Association International Conference 2012」で発表されます。
この研究は2002年から8年間、アメリカ成人健康調査に参加した人を対象に分析したものでもので1月1回以上短期間の多量飲酒の人は知的機能の低下が多くみられ、記憶でも同様い認められました。さらに月に2回以上、短期間の多量飲酒の人は認知機能と記憶で低下がさらに多く認められました。
興味深いことに、この傾向は男性でも女性でも同じなのです。一般に女性は、アルコールの影響への対応能力は生理的に劣っており認知機能障害のあるた男性よりはるかに危険性が高いと思われていいのたですが、結果からほぼ同じなのです。
飲酒は脳細胞を破壊することは知られていますが、神経学的視点からの健康への影響は以前信じられていた以上に問題が拡がっているようです。
なおこの調査では、1回に4杯以上の飲酒を短期的な多量飲酒とし、認知機能や記憶は電話面接で評価されました。
ラング医師は「私たちがこの研究を行うまで多量飲酒が認知機能の低下および認知症発症についてははっきりしませんでした」と話しています。
今回の研究で、月1回以上の短時間の多量飲酒は男性の8.3%に、女性の1.5%に認められ、月2回以上では男性の4.3%に、女性の0・3%に認められました。
ラング氏は次のように述べています。
「この調査から多くことがわかります。まず、高齢者と医師は、短時間の多量飲酒が認知機能の低下させる危険性があることから、飲酒行動を変えるように努めることです。次は、政治家や公衆保健の専門家は、短期間の多量飲酒が青年や若者たちの問題だけでなはないことを知っておくべきです。短期間の多量飲酒を減らす試みの計画を立てるときは高齢者について考慮すべきです。以前行われた調査によると、多量飲酒は認知症への4つの道の一つとして批判されました。医師は、将来、多量飲酒がアルコール関連の脳障害が増えることになるのではと恐れています」
なお別の研究によると、1日2杯以上の飲酒は4.8年早くアルツハイマー病になる可能性があり、また別の研究では、1日2杯までの中等量の飲酒は認知症の発症を抑える効果があります。
Daily Mail 18 July 2012 Binge drinking dramatically increases the risk of Alzheimer's disease in over 65s
サイト内関連記事
編者:イギリス人の間で通常の飲酒量も少なくなく、ときどき一度の多量の飲酒をする習慣があるらしい。


「日本初!認知機能をチェック・管理できるWebサービス『脳測』(のうそく)を発表 」(7月12日/共同通信)
日本初! 認知機能をチェックできるWeb『 脳測 』サービス開始
株式会社シグナルトーク(東京都大田区、代表取締役:栢 孝文)(写真左上)は、認知機能をチェック・管理できるWebサービス、
『脳測』(のうそく)を、本日7月12日に開始します。
日本の経済成長に貢献された方々の認知症が大きな社会問題となっています。弊社では、「高齢者の方にゲームなどの楽しみを提供し、認知症の予防やリハビリに繋がるサービスが提供できれば、大きな社会貢献ができる。」このような想いから本プロジェクトをスタートしました。
『脳測』は、以下の特長があり、認知機能低下の早期発見を促すと共に、医療機関を早期に受診頂き、治療を行って頂くためのきっかけをご提供します。
1. “認知機能”をパソコンで簡単にチェックし、数値化できます。
2. “認知機能”の推移をオンラインで確認できます。
3. “認知機能”の測定について実効性が証明されたテストを使用しています。
また、認知機能障害の背景には「注意力」「エピソード記憶」「遂行機能」「ワーキングメモリ(作業記憶)」などの低下が原因としてあり、『脳測』では、それぞれに対応した4つのテストによる認知機能チェックができます。これらのテストは、MMSE(Mini-Mental State Examination=認知機能や記憶力を測定できる11の項目からなる医学検査)の結果との相関が見られたことが実証されています。学術的背景(エビデンス)は以下の通りです。
○論文1Computerized Assessment Tool for Healthy Elderly Persons as a Predictor of Cognitive Function(pdf160K)→「Jikeikai Medical Journal 57巻」に掲載
○論文2Validity and reliability of a computerized cognitive assessment tool ‘Higher Brain Functional Balancer’for healthy elderly people→「認知神経科学 Vol.12」に掲載
○フラッシュライト(ワーキングメモリをチェック) 点燈する順番を記憶して答えます。
○ルート99(遂行機能をチェック) ゴールまでの経路を正しく結びます。
○視覚探索(注意力をチェック) 数字や文字の順を早く結び付けます。
○ストーリー(エピソード記憶をチェック) 物語を読み、質問に答えます。
上記の通り、『脳測』サービスは、一般に脳機能をトレーニングすると称して展開されているカジュアルなゲームとは、その目的も機能も一線を画するものです。
『脳測』は、株式会社創生 生体工学研究所代表(日本生体医工学会 BME on Dementia研究会会長、日本早期認知症学会理事長)の志村孚城先生、国立成育医療研究センター・リハビリテーション科医長・発達評価センター長の橋本圭司先生(写真左下)の知見や研究成果に基づく情報を適切に反映していくことを趣旨としており、さらに、諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授、レデックス認知研究所の五藤博義所長のご協力をいただいております。
弊社ではゲームと脳機能に関連する科学的実験・効果検証・測定を繰り返し、認知症20+ 件の早期発見につながるエンターテインメントの構築に、真摯に取り組んでまいります。
『脳測』URL : http://nosoku.jp/?prw=20120712
主な対象: 50歳以上の男女
無料期間: 2012年7月12日開始(~2012年8月14日まで)
株式会社シグナルトーク 概要
URL : http://www.signaltalk.com/?prw=20120712
代表者 : 代表取締役 栢 孝文
所在地 : 東京都大田区蒲田 5-8-7 蒲田K-1ビル8F
本件のお問い合わせ先
株式会社シグナルトーク
メール : info@signaltalk.com
主担当 : 松本 (副担当:関本)
47News  2012年7月12日 原文のまま
編者:試してみたら正常だった。民間企業がこうした有料の認知機能テストを提供する意図がよくわからないが、認知症の開設やテストの利用方法についてほぼ妥当な説明をしていることからある程度の信頼できる「脳測」と思われ、紹介する。


アメフトの危険性議論のきっかけとなるウェンゼル元選手が死亡(6月22日/アメリカ)
ナショナルフットボールリーグNational Football League(NFL)元選手のラルフ・ウェエンゼルRalph Wenzel氏(写真左上)は、今月18日、メリーランド州アナポリスで死亡しました。69歳。かれが若年期認知症になったことでアメフトの安全性についての最近、議論が取り上げられるようになりました。
妻で医師のエレノール・パーフェットEleanor Perfetto氏(写真左中)は「彼の死亡原因は認知症の合併症だ」と話しています。
1966年から1973年まで「ピッツバーグスティーラーズPittsburgh Steelers」と「サンディゴチャージャーズSan Diego Chargers」の選手として活躍し、その後はアメフトの教師やコーチとして成功したウェンゼル氏は、1995年、52歳の時、明らかに記憶が途切れ、その他の認知機能障害が現れました。こうした症状は悪化し、仕事やコミュニケーション、あるいは自分で食べるということまでもができなくなりました。63歳のとき、認知症の人の施設で生活を始めたのです。
公衆保健学博士号を持つパーフェットPerfetto医師は、夫以外のNFL引退選手に同じような問題を持った人たちを見ています。ウェンゼル氏が施設に入ってしばらくしてから、アメフトの脳への長期的な影響についての議論が起こり、全国的なニュースになりましたが、その時、パーフェット医師は、自分の夫をアメフトの選手にも介護する家族にもアメフトの影響の例として強く提示しました。
NFLは、「認知症が元選手で増えていることは、アメフトによるものではない」と常に反論してきました。
2007年3月のNYTの記事で、パーフェット医師は、次のように述べています。
「私が数えられる以上に、症状がないときにウェンゼルはは競技場での打撲の総数を数えてみました。1試合で5あるいは10秒間頭を打って意識がなくなる、ふらついてちゃんと円陣を組めない、2,3のプレーを止めてから試合に戻るといったことがありました」
パーフェット医師は、メディアでウェンゼル氏のその後の状態を明らかにして、アメフトの危険性について一般の認識を高めようとしました。彼女は、NFLのロジャー・グッデルRoger Goodellコミッショナー(写真左下)に、2008年の引退選手との会議とは別に訴えました。この時、グッデル氏は、彼女をウェンゼルを擁護させので出席させなかったのです。とりわけ、彼女は、2009年の10月、アメフトでの頭部外傷に関する下院司法委員会House Judiciary Committeeの聴聞の前、既に、彼女の事例を報告しました。
パーフォット医師は、「NFLは脳外傷と脳疾患との関係を否定することを辞めるべきだ」と委員会で証言して、リーグが本来あるべき先行的に指導することを要請し、ウェンゼル氏の健康が許せば、聴聞会に出席させるとも付け加えて言いました。
さらにパーフォット医師は「脳外傷と脳疾患の関係を否定することは、選手とその家族に失礼であり、また現在の選手や子供たちにとっても危険なことだ」と話しています。
NFLは、その後、ウェンゼル氏の事例を引き合いに出すことなしに、引退して現れる認知症はアメフトに関係しうるとの認識を示し、頭部外傷に関係する方針や安全規則を変更するだけでなく、若い選手の安全面を改善するという変更を受け入れるようになりました。
パーフェオオ医師は、今週、「ウェゼル氏に彼のことが影響を与えたことについて話しましたが、既に理解できませんでした」と話しています。
ボストン大学Boston Universityは「慢性外傷性脳症chronic traumatic encephalopathy」として彼の死後の脳組織を調べることになっています。この脳症は繰り返えされる頭部外傷によって起こる退行性疾患で、若年期アルツハイマー病に似た症状を示します。
( NYT June 22, 2012 Ralph Wenzel, Whose Dementia Helped Start a Debate, Dies at 69)
サイト内関連記事
編者:わが国ではほとんど議論されていないが、アメリカでは関心が高いようだ。日本では学校の柔道実技による急性の脳神経障害は指摘されているが、ボクシングやアメフトでの慢性的な脳症あるいは認知症についての指摘は聞かない。ないのか報告されていないのか。


速足の人は認知症になりにくかもしれない(6月14日/アメリカ)
オレゴン健康・科学大学オレゴン加齢・技術センターOregon Center for Aging and Technology, Oregon Health & Science Universityのヒロコ・ホッジHiroko Dodge医師(写真右)らの研究グループは、在宅での歩行速度の長期的な評価によって認知障害がない状態と軽度認知障害(MCI )とを区分できるか調べました。
歩行速度は、「加齢変動評価知的システムIntelligent Systems for Assessing Aging Change (ISAAC)」の一人暮らし参加者93人(70歳以上)の自宅天井に設置した赤外線センサーで把握しました。
調査開始時に54人が認知機能は正常、31人が非健忘性軽度認知障害(naMCI)、8人が健忘性軽度認知障害aMCIでした。平均追跡期間は2.6年でした。歩行速度は3つのグループ(早い、中程度、遅い)に分けました。
結果はnaMCIの人は「遅いグループ」により多いことを認めました。
歩行速度は軽度認知障害がない状態から軽度認知障害に移行する初期の指標となりうるようです。歩行速度をリアルタイムで把握することは認知症への移行を早期に発見する方法となるでしょう。
この論文は、アメリカ神経学会誌Neurologyの2012年6月12号に掲載されました。
結果についてホッジ医師は次のように述べています。
「歩行速度が、高齢者の将来の記憶や思考の問題を予知することにつながるかどうかはさらに大規模な研究が必要です。今回の研究からは歩行速度が初期の認知症を見つけたり、その予防に役立つだろうということで重要です。在宅での歩行監視が高齢者の自立維持にもっと使われてよいでしょう」
(RTTNews 6/14/2012  Walking Speed Could Signal Future Dementia Risk および論文In-home walking speeds and variability trajectories associated with mild cognitive impairment
訳注:Hiroko Dodge医師は滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門の客員準教授でもある。
編者:どう評価してよいかわからない研究だ。歩行速度を監視して初期認知症を把握することでできるとしても少し大がかりな方法だ。ただし速足が認知症の保らしいということの補足する研究かもしれない。


オメガ3サプリメントは無駄、脂の多い魚が頭にいいかも(6月12日/イギリス)
イギリスのロンドン衛生・熱帯医学大学London School of Hygiene and Tropical Medicineのアラン・ダングールAlan Dangour氏(栄養学)(写真左)らは、食事で摂るオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸omega-3 long-chain polyunsaturated fatty acids (PUFA)が、認知機能低下や認知症を防ぐらしいということがいくつかの非介入の調査で明らかにされていまが、こうした保護的効果が、介入する無作為対照試験で調べられており、健康な高齢者で認知症や認知機能低下へのオメガ3 PUFAサプリメントの予防効果の文献評価を行いました。
評価グループは、2012年4月6日現在で「コクラン認知症認知機能改善グループ特別登録Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group’s Specialized Register」でomega 3などの用語で検索し、論文を集めました。評価と対象とする条件は、オメガ3 PUFAによる介入試験、期間が6カ月以上、試験開始時に認知症や認知機能障害がない60歳以上の参加者であることとしました。
その結果、3つの試験論文がこれに該当し、試験の参加者総数は4080人で、このうち追跡して認知機能が評価されたのは3536人でした
3つの試験のうち2つでは、オメガ3 PUFAが含まれたゲル状カプセルと偽薬としてオリーブオイルかサンフラワーオイルが含まれたカプセルが使われました。もうひとつの試験ではオメガ3 PUFAが含まれたマーガリンと含まれないマーガリンで40カ月間使われました。
どの試験でもオメガ3PUFAの認知症発症への影響については調べていません。2つの試験では、3221人が参加し、追跡してMMSEで調べるとオメガ3 PUFAのグループと偽薬のグループで最終段階でその違いは認められませんでした。2つの試験では、1043人が参加し、言語学習、言語流暢などの認知機能も調べられましたが、オメガ3PUFAのグループと偽薬のグループで違いは認められませんでした。
なおオメガ3PUFAの副作用については、胃腸症状など軽度で、試験を最後まで参加できた人の割合は平均90%以上でした。また評価対象となった3つの試験とも方法論的に質の高い研究と認定されました。
評価の結論としてオメガ3PUFAの認知症発症への影響は認めるられず、認知機能が健康な高齢者にについて認知機能への有効性も認められませんでした。その効果を確かめるにはさらに長期にわたる試験が必要と提案されました。
この評価論文は、コクランライブラリーCochrane Library電子版13 JUN 2012号に掲載されました。
評価研究に加わったダンゴール氏は次のように述べています。
「これら研究から、オメガ3サプリメントが高齢者の認知機能によい影響があるとは認められませんでした。結果には失望しましたが、もっと長くのめば、効果があるかもしれません。魚は健康的な食事の重要な要素であり、1週間に二切れ、そのうち1回は脂の多い魚を食べるのがお薦めです」
イギリスアルツハイマー病研究機構Alzheimer's Research UKのマリー・ジャンソンMarie Janson医師(写真右)は次のように述べています。
「コクランの評価は質の高い科学的根拠を導きだす優れた方法です。オメガ3サプリメントを摂っても認知機能の低下を避けることにはならないようでが、健康的でバランスのとれた食事―オメガ3を含む魚など―はが健康維持に重要です。私たちは心臓によいことは頭にもよいことを知っており、健康的な体重を保ち、バランスをとれた食事と摂り、運動し、血圧をチェックすることが認知機能の低下や認知症の危険性を下げることに繋がっていることも知っていす」
BBC News  12 June 2012  Fish oils 'don't help ward off dementia' 論文Omega 3 fatty acid for the prevention of cognitive decline and dementia (Cochrane review)
編者:やっぱんかという報告だ。しかし研究した範囲では効果がなかったいうことで、さらに長期に服用すれば有効からもしれないが、長期の介入試験は倫理的問題があるので困難だろう。


コーヒーは認知症発症を遅らせるようだ(6月7日/アメリカ)
南フロリダ大学薬学部University of South Florida's College of Pharmacyとバイドアルツハイマー病研究所Byrd Alzheimer's Instituteの神経科学者であるチュアンハイ・カオChuanhai Cao医師(写真左上)らの研究グループはコーヒーと認知症の関係についての人を対象として研究しました。
これまでコーヒーに含まれるカフェインがアルツハイマー病の防ぐ効果があるといする疫学研究や動物実験で示唆されていますが、人についての直接的な証拠はありませんでした。今回の事例対照研究では、124人(65歳から88歳)について血液を採取しカフェインと生体指標(インターロイキンなど)の分析を行いました。対象者は、2年から4年の間、認知機能について追跡し調べま、調査開始当初の血液中のカフェインと生体指標の値が、その後の認知機能の状態にどうような変化をもたらすかを調べました。
調査開始時のカフェイン値は、軽度認知障害から認知症になった人では、軽度認知障害のままの変化しなかった人よりかなり低いことを認めました。さらに軽度認知障害から認知症になった人は当初のカフェイン値が1200ng/mlより高い人は一人もいませんでした。他方、軽度認知障害のままの人の半数では、この値より高いことも認めました。
このように軽度認知障害の人でカフェイン値が1200ng/ml以上の人では2―4年間の追跡期間に認知症に移行しないことと相関していました。血清中の11種のサイトカインについては想定したなかで、GCSF(顆粒球刺激因子granulocyte-colony stimulating factor),ILイインターロイキン Interleukin ) -10,IL-6については軽度認知障害から認知症になった人で減少しましたが、カフェイン値が高く軽度認知障害のままの人では減少することはありませんでした。
コーヒーが、軽度認知障害にとどまっている人たちの主なまたは唯一のカフェインを獲得する物質だったので、今回の研究からコーヒー中のカフェイン摂取が認知症になる危険性を減らすか、その発症を遅らせる―とりわけ軽度認知障害をもった人で―ことに相関することが初めての直接的証拠となりました。
この研究結果はJournal of Alzheimer's Diseaseの電子版(Volume 30, Number 3 20122年6月8日号)に掲載されました。
これについてオカオ師は次のように述べています。
「カフェイン1200ng/mlは血液濃度は、採血2,3時間前にコーヒーを数杯飲んだことに等しい値です。コーヒーの飲んできた人は、記憶障害があるなら辞める理由はありません。朝食後で午前中に1日8オンス(約226グラム)のコップで平均3杯飲むのがよいでしょう。ベータアミロイドはアルツハイマー病の原因ではありません。コーヒーがどのようにアルツハイマー病の進行を遅らせるのかよくわかっていませんが、別の仮説をもっています。ベータアミロイドという蛋白についてですが、私たちは生まれたときに脳にこの蛋白をもっています。何か間違ったのでしょう。この蛋白は、加齢ととともに代謝されなれままの蓄積されます。身体の仕組みによって対処できないので、残った蛋白が脳にたまるのです。カフェインがベータアミロイドの産生を抑えるので、役立つ蛋白すべてが代謝されることになるのです」
コーヒーは、別な健康維持の利点を持っているようです。いくつかの研究によるとコーヒーが、パーキンソン病、脳血管障害、2型糖尿病、乳がんの発病の危険性を抑えることが示唆されています。
マウントサナナイ医科大学Mount Sinai School of Medicineでアルツハイマー病研究のトップであるサム・カンディSam Gandy教授(写真左下)は、今回の新しい発見について評価して、次のように述べています。
「今回の発見については指示するいくつかの理由があります。基礎科学的研究からcyclic AMP(環状アデノシン一リン酸)と呼ばれる物質がアミロイドの形成を抑えることがわかっています。このcyclic AMPをカフェインが増やすことはよく知られています。さらに注意することは記憶の鍵となる要素です。カフェインが注意することを高めることも定着した説です。こうしてカフェインが記憶を改善するということがが十分に考えられます。」
しかしカンディ教授は次のような指摘もしています。
「カフェインがアルツハイマー病の危険因子にどのように影響するのかその評価が決まってはいません。カフェインを含めた薬を推奨するには、無作為臨床試験を行う必要があります。カフェインの物語の明らかに次のステップに移るでしょう」
WebMD June 7, 2012 Drinking Coffee May Delay Alzheimer’s Diseaseおよび論文High Blood Caffeine Levels in MCI Linked to Lack of Progression to Dementia
サイト内関連記事


認知症に影響する都市構造(6月4日/マルタ)
チャールス・セリCharles Scerri氏(写真左上)の5月29日の記事「全地球的な公衆保健の危機A Global Public Health Crisis」(1912年5月29日版)は、予測される認知症の増加する―今から2060年までの間に2倍または3倍になると予測―という重大な課題の公衆保健面へ注意を促します。
今年は、「活発な高齢化のヨーロッパ年European Year of Active Ageing」です。世界保健機関World Health Organisation(WHO)は、高齢者が増えると予測されるなかで健康的なフイフスタイルを勧め生活の質を高めるためる方法を提唱しています。この課題の背景に、今日の健康的なライフスタイルことで将来の高齢者が身体的に良好で、社会への負担を強いないことを保障することがあります。WHOの提唱のなかには、次世代が環境と連携しながら身体的に活発で、中高年で社会に役立つような環境を整備することも含まれます。このことは、加齢に伴う身体機能と認知機能の低下を将来的に少なくし遅くすることが可能だとうということによるのです。
こうした考えからWHOは、身体運動や地域での社会生活の参加する機会を提供することで生活の質を最大限に高め、活発で健康的な加齢を保障するように都市環境が加齢にやさしくなることを提唱しています。
このことは認知症の問題についても該当するのです。
増える認知症問題へのほとんどの健康政策や勧められる方法に予防的側面が無視されています。認知症の集団調査から発症の時期や可能性を決定づける多くの要因が確認されています。ひとつは、年齢、家族歴、遺伝といった変更が不可能な危険因子もあれば、もうひとつは、変更可能な多くの危険因子があります。こうした視点からの取り組みは、認知症をかなり少なくすることができ、少なくとも発症を遅らせることはできます。
たとえば、高齢にさしかかって身体的および精神的に活発であることは認知症の発症を遅らせたり、発症しやすさを少なくすることができることは一般に認められています。最近のフランスのモンペリでの総合的集団調査結果(訳注)によると、精神活動を活発にすること、鬱状態やⅡ型糖尿病を軽減すること、果物や野菜を多くとることは意図してできるよ簡単な予防方法で、これで認知症の有病率を20%減らすことができるのです。マルタでこの方法がうまくいくと、医療費が相当節約できるでしょう。現在の数値からすると毎額2000万ユーロにもなります。
高齢者にやさしい都市ということについては、残念ながらマルタは全く反対の方向に向っているようにみえます。富への熱狂的で短絡的な追及によって爆発的な都市開発が生まれ、多くの街で環境が破壊され、通りの生活が没個性的になったのです。これは集落の中心部の役割が終ったことを意味し、住宅での通りの社会的機能―高齢者にとってとくに有益な―を阻害されているのです。
スーパーマーケットのはびこることで、勝手馴染んでいた中心部にある店や露天がまとめて閉鎖さたのです。こうした最後の店が消えたとき、社会の基本が回復不可能なほどなくってしまいました。生活を営みやすくするのに役立つ集落の中心部が破壊されることで孤立が増え、生活の場と買い物の場が完全に分離して、高齢者への影響が大きいのです。さらなる不健康な結果として、若者が車に頼った買い物をすることでし結果的に歩くことが少なくなるのです。
マルタを健康的で高齢者にやさしい都市環境―そのなかで買い物、医療、楽しみが歩ける範囲内にある―を提唱する考えから離れることで、誰にとっても、とくに高齢者にとって、できるだけ長く歩き、身体的に活発であり、市民生活の参画できるように促されて健康的な高齢期を送るということが不可能になるでしょう。
衰えた都市機能の環境のなあかで鬱や認知症への扉が広がることになるでしょう。
将来マルタは、この結果、高い負担を強いられるでしょう。,
timesofmalta.com June 4, 2012  Urban environment and dementia
寄稿者:ジョージ・デボノGeorge Debono(写真左下)は環境学の専門家。
訳注:論文Designing prevention programmes to reduce incidence of dementia: prospective cohort study of modifiable risk factors(BMJ2010;341:c3885)
編者:興味深い考察だ。認知症の予防に生活様式だけでなく、生活環境も重要だという主張である。認知症の危険因子としての都市構造についての研究も証拠もないにしても。


「金沢大と七尾市が包括協定 中島に拠点」(5月24日/北國新聞)
金大と七尾市は23日、地域の課題解決と活性化を図る包括協定を締結した。同市中島市民センター内に研究拠点を開設し、医療や環境、産業活性化など地域密着型の研究活動や、学生活動に活用する。
同センターで行われた締結式では、中村信一学長が脳老化や認知症予防の「中島プロジェクト」や、里山の変化と里海への影響を調べる「熊木川プロジェクト」など、七尾市で11の研究活動が展開されていることを紹介。「より良い連携、研究のため一生懸命やりたい」とし、特産物のブランド化にも取り組む考えを示した。昨年末に金大へ拠点開設を提案した武元文平市長は「活力ある地域づくりへの協力を期待している」と述べた。
協定締結後、中村学長と武元市長が研究拠点の木製看板を中島市民センターに掲げた。市はセンター内の2部屋計130平方メートルと資材置き場を研究拠点として金大に提供し、夜間も含む終日、研究者や学生が出入りできる。
金大によると、自治体との包括協定締結は県内5カ所目、大学施設以外での研究拠点開設は2カ所目となる。七尾市が結んだ大学との包括協定は法政大に次いで2番目となる。
北國新聞 2012年5月24日 原文のまま
関連情報 「なかじまプロジェクト」(金沢大学大学院 医学系研究科脳医科学専攻脳病態医学講座 脳老化・神経病態学)
編者:認知症の疫学研究にはこうした地域の理解と協力を得た10年以上にわたる長期的追跡活動が不可欠だ。世界的には循環器疾疾患を中心とした「ひさやまスタディ」が有名だが「なかじまプロジェクト」も世界的になることを期待したい。


認知症が減っている?(5月8日/オランダ)
オランダ・ロッテルダムにあるエラスムス医療センターErasmus MC(ロッテルダム大学病院University Medical Center Rotterdam)の疫学部のエリザベス・シュリベールスElisabeth Schrijvers医師(写真)らのグループは、認知症の罹患率がこの20年間で変化しているかどうかを調べる疫学調査を行いました。
地域在住者を対象としてロッテルダムスタディRotterdam Study―ERGO (Erasmus Rotterdam Health study)―の参加者のうち60歳から90歳で後世する2つのグループの認知症の罹患率を比較しました。第一のグループ(5727人)は1990年に始まり、2番目のグループ(1769人)は2000年に始まりました。対象者は調査開始時、認知症を認めない60歳以上で最長5年間追跡しました。二つのグループを年齢を同じとして全体および10歳毎の層および性別に分類して認知症の罹患率を算出しました。同時に、死亡率、血管系危険因子、服薬の頻度の違い二つのグループで比較しました。さらに調査開始時と5年後にMRIの脳画像検査で脳の容量および脳細動脈について比較しました。
調査期間中、1990年のグループ(2万5696年人)では286人が、2000年のグループでは(8384年人)49人が認知症になりました。年齢を同じとして認知症の罹患率は2000年のグループの全年齢層で1990年のグループと比較して有意ではないが罹患率が低いことを認めましたが、全体の分析では境界的有意なものでした。死亡率については2000年のグループで低い、さらに高血圧と肥満が有意に多いことも認めました。これは抗血栓剤と脂質低下剤の使用の増加とが明らかなに並行関係にあることも認めました。2005年から2009年の参加者は1995年から1996年の参加者より、脳総容量で大きく脳細動脈疾患(女性に限る)が少ないことを認めました。
結論として報告者は、二つの異なるグループを比較して認知症の罹患率の違いは有意ではなかったが、1990年から2005年の間に認知症の罹患率が減少していうことを示唆しています。この研究論文は雑誌Neurology の電子版2012年5月2日版および5月8日号に掲載されました。
この結果についてシュリベールス医師は次のように述べています。
「二つのグループのもう一つの際立った違いは高血圧や肥満といった心臓血管系疾患については2000年のグループの方1990年のグループより不健康であるということです。同時にこのグループは、リスクを減らすため高脂血症剤や抗血栓剤といった薬剤をより多く服用しています。薬の服用の増加と認知症の罹患率の減少が直接に関係あると決めつけないことです。調査規模が小さいからなのですが、さらに調査を進める必要があります」
「エラスムス大学医療センター」はロッテルダムスタディとして知られるERGOは、世界的に大規模は疫学調査の一つです。ロッテルダム地区の40歳以上の1万5000人の住民を対象に行っています。
DutchDailyNews  May 8, 2012 Fewer cases of dementia in the Netherlandsおよび論文Is dementia incidence declining? Trends in dementia incidence since 1990 in the Rotterdam Study
編者:ロッテルダムスタディが興味深い報告をしている。認知症の罹患率が減っているらしいのだが、要因は血管系危険因子に対しての服薬―抗血栓剤と高脂血症剤―によるらしいというものだ。それにしても10年ほどで境界差異程度でじゃありが認知症の罹患率に変化が生まれるのだろうか疑問だ。論文ではその違は有意ではないとしているが、下記の記事は有意としているのは間違いだ。(注:その後、編者の指摘で修正される。2012/05/11)
関連記事:「ロッテルダム研究で驚きの結果,認知症が10年で25%減少」(5月10/MTPro)


人生の目的を持っていると脳が保護される(5月7日/アメリカ)
シカゴにある「ラッシュアルツハイマー病センターRush Alzheimer's Disease Center」のパトリシア・ボイルPatricia A. Boyle氏(写真)らのグループは、人生の目的を持つことでアルツハイマー病の発症が少いという相関を疫学的に認めましたが、その効果に神経生物学的背景について、追跡して疫学的臨床病理的な検査および詳細な臨床的評価を毎年行い、死亡した人については脳剖検を行いました。参加者は、1997年に始まった「ラッシュ記憶・加齢プロジェクトRush Memory and Aging Project」の参加者で認知症のない地域在住高齢者246人で、平均10年間追跡しました。
状態の把握は、人生の目的については一定の面接法―「過去に行ったことについて考えることが快適だ」あるいは「人生で方向や目的意識を持っている」、あるいは「意義深く目的をもった活動をする」などの分類―で行い、認知機能および神経学的検査は毎年行い、死後の検査はアルツハイマー病の3つの病理的特徴―脳萎縮など全般的な病理的変化、アミロイド、タウ―を数量化しました。
人生の目的と病理的変化の相関では、人生の目的を持つことは、アルツハイマー病の全般的な病理的変化および認知機能に影響することを認めました。また人生の目的を持つことは、神経源線維変化を少ないこと、高い人生の目的を持つ人ほど、認知機能の低下を伴うアルツハイマー病の病理的影響が少ないことも認めました。結論として、人生の目的のレベルが高いほど、高齢者のアルツハイマー病の破壊的病理的変化が少ないことを認めました。
この研究論文はArchives of General Psychiatry 2012年5月号に掲載されています。
newswise 5/7/2012 Purpose in Life May Protect Against Harmful Changes in the Brain Associated with Alzheimer’s Diseaseおよび論文Effect of Purpose in Life on the Relation Between Alzheimer Disease Pathologic Changes on Cognitive Function in Advanced Age
サイト内関連記事
編者:よくわからない研究だが紹介した。高い人生の目的とは何なのか、高い目的を持った人はそれだけ健康な生活を追求し結果としてアルツハイマー病になりにくいのではないか。あるいは目的意識そのものがアルツハイマー病の脳の病変を少なくするとは考えにくい。またもともと人生の目的意識が低い高齢者はどうしたらよい。


オメガ3脂肪酸が多い食事はアルツハイマー病の予防になるかもしれない(5月2日/アメリカ)
タウブアルツハイマー病・加齢脳研究所Taub Institute for Research in Alzheimer’s Disease and the Aging Brainの神経科医のニコラオス・サルメアスNikolaos Scarmeas准教授(写真左上)らのグループは、食事と血中Aβ40と42の関係について、1219人の認知機能が正常な地域在住の65歳以上の高齢者を対象に調べました。食事に関する情報は、血中Aβの検査前に平均して1.2年間のものを集めました。食事中の栄養素は、飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、ω3多価不飽和脂肪酸polyunsaturated fatty acid (PUFA)、ω-6 PUFA、ビタミンEとC、βカロテン、葉酸、ビタミンB12とDの10種類を調べました。相関を分析する際に、年齢、性別、民族、教育、摂取カロリー、アポリ蛋白E遺伝型で補正しました。
その結果、ω-3(PUFAを多く摂ることと、血中Aβ40が高いことが強い相関を示しました。Aβ42との相関は強くはありませんでした。その他の栄養素については血中Aβとの相関は認めませんでした。
この結果から、アルツハイマー病の発症や認知機能の低下を遅らせることに関連する血中Aβ42が、ω-3 PUFAの摂取が多いこととの相関を示唆しました。
この研究論文は神経学雑誌Neurologyの2012年5月2日電子版に掲載されました。
脂の多い魚やナッツなどω3脂肪酸の多い食事を摂る事がアルツハイマー病の保護因子であることはこれまでの研究で示唆されました。さらに、いくつかの研究から、アルツハイマー病の脳によく見られるAβの血中濃度が高いと記憶障害が現れる前にアルツハイマー病の発症を予見できることも示唆されました。
ω3脂肪酸は2種類あり、ひとつはαリノレン酸(ALA)で大豆油、菜種油、くるみ、亜麻仁に多く、もうひとつはドコサヘキサエン酸 (DHA)で鮭、いわし、マグロなど脂の多い魚に多いのです。
今回の研究結果についてサルメアス氏は「ω3が心疾患を防ぐのに役立っていることは知られていますが、今回、この物質が脳を保護するらしいという新たな証拠を得た」と述べています。以前、同じサルメアス医師らのグループは、ω3が多い地中海風食事がアルツハイマー病予防の関連することを示唆しています。地中海風食事は、果物、野菜、ナッツ、脂の多い魚が多く、赤身の肉、加工肉、バター、その他脂の多い乳製品は少ない。
さらに同じサルメアス医師が加わった2010年の研究では、記憶低下のない2000人以上の高齢者について4年間追跡調査の結果、地中海風の食事を摂る人はアルツハイマー病になりにくいことが示唆されました。また最近の脳画像研究によると、加齢脳を防ぐ役割がω3にあることを示唆しています。 この研究では、認知症のない高齢者でω3の摂取が少ないと脳が小さいことを認めています。脳容量の減少は脳加齢の兆候の一つです。
ファインシュタイン医学研究所Feinstein Institute for Medical Researchのバーバラ・コーンバットBarbara Cornblatt氏(写真左下)は「ω3が多い食事がよいとする理由は多いのですが、アルツハイマー病になるリスクを減らそうと、これらが多い食事やω3のサプリメントを摂ることを勧めるにははまだ早すぎる」と述べています。
彼女は、10代の精神障害に魚脂のサプリメントでその予防効果を研究していますが、「脳機能へのω3脂肪酸の影響についての研究がもっと必要ですが、すべての研究がかなり予備的なものなのだ」と述べています。
WebMD  May 2, 2012 Fish, Flaxseed May Lower Alzheimer's Riskおよび論文Nutrient intake and plasma β-amyloid
サイト内関連記事
「地中海風食事と魚の脂は、やはりアルツハイマー病の発病の危険性を下げるようだ」(2006年)
「食事が認知症のリスクを決めるようだ」(2010)
関連論文
Red blood cell omega-3 fatty acid levels and markers of accelerated brain aging  (Neurology February 2012; 78 (9))


ベリー類は加齢のよる認知機能の低下を遅らせる(4月26日/アメリカ)
ボストンに在るハーバード大学医学部Harvard Medical Schoolおよびブライハム婦人病院Brigham and Women's Hospitalのチャニング研究所Channing Laboratoryのエリザベス・デュボールElizabeth Devore氏らのグループは食事として摂るベルー類とフラボノイドが認知機能の低下に関係するかの疫学調査を行いました。
ベリー類にはフラボノイドflavonoidが―特にアントシアニジンanthocyanidins―が多く含まれていますが、動物実験では認知機能を改善することが証明されています。長期にベリー類を多く摂ればとれほど、またフラボノイドを多く摂ればとるほど、女性高齢者の認知機能の低下を遅くするか追跡調査をしました。
この栄養に関する調査は1980年に始まりましたが、「看護師健康スタディNurses' Health Study」の参加者に食物摂取の質問表を配布し4年毎に記入してもらいました。1995年から2001年の間、70歳以上の女性参加者1万6010人について認知機能の調査を始め、追跡して2年の間隔で2回行いました。長期間のベリー類とフラボネイドの摂取量と認知機能の低下の傾向の関係を推測しました。
その結果、ブルーベリーやストローベリーの摂取が多い人は、認知機能の低下の割合が遅いという相関を認めました。この相関は関連する可能性がある複数の因子で補正した結果です。この相関から、ベリー類(毎週ブルーベリー74gとイチゴ150 g)を摂ると、加齢による認知機能の低下を2.5年まで遅くすることになります。さらに、アントシアニジンと総フラボナイドの摂取が多いほど認知機能の低下の割合が遅くなること相関を認めました。
この研究論文は、アメリカ神経学会雑誌Annals of Neurologyの電子版2012年4月26日に掲載されました。
デボアール氏は次のように述べています。
「これらベリー類の摂取以外の要因についても考慮しなかればならなりません。ベリー類を多く摂って健康的な生活を送っている人たちの影響を排除できてない可能性があるからです。ベリー類が、女性高齢者の認知機能の低下を遅くするという初めて疫学的な証拠を示すことができました。高齢者の認知機能を守りのにベリー類の摂取がかなり簡単な食事方法であることは公衆保健の視点からして意義があることです」
エジンバラ栄養療法センターEdinburgh Centre of Nutrition Therapyのサラ・ステリングSarah Stelling氏は次のように述べています。
「果物は多様で健康的な食事に必要です。ベリー類―特に黒っぽいベリー―を含む多様な食事より優れたものはありません。とても健康的な利益をもたらすと思われています。ストローベリーは多くの優れたビタミンCを含み、オーガニックを選ぶのがよい」
Sctosman.com 26 April 2012 Eating berries can halt dementia for 2? years, say expertsおよび論文Dietary intakes of berries and flavonoids in relation to cognitive decline
サイト内関連記事


日常の身体活動はアルツハイマー病の発病リスクを抑える(4月19日/アメリカ)
ラッシュアルツハイマー病センターRush Alzheimer’s Disease Centerのアロン・バッハマンAron Buchman准教授(写真左上)らの研究グループは、客観的に調べた日間身体運動量とアルツハイマー病の発病との関係について疫学調査を行いました。
運動以外の日間身体活動の総量をアクティグラフ(商品名:Actical)(写真右)で716人の調査開始時の認知症を認めない高齢者で最長10日間ま連続して計測しました。参加者は、前向き観察調査集団の研究を行っているラッシュ記憶・加齢プロジェクトRush Memory and Aging Projectの参加者でした。すべての参加者は、調査開始時に19種類の認知機能検査を含めた計画的な臨床試験を毎年受けました。
追跡期間は平均4年の間で、この間71人がアルツハイマー病を発病しました。年齢、性別、教育歴を同一として日間身体運動量が多いとアルツハイマー病のなりにくいことを認めました。自己報告の身体的活動、社会的活動、認知的活動および現在の運動機能、うつ症状、慢性心疾患、アポE遺伝子を同じとしても、この相関が認めました。
この研究論文は、アメリカの神経学雑誌Neurologyの2012年4月18日号に掲載されています。
身体活動―運動ではない―が高いレベルにあるとアルツハイマー病になる危険性が少ないのです。この相関は80歳以上の人でも認められました。
発病しにくくする保護的身体活動とは、皿を洗う、料理、掃除、庭の手入れ、さらにはトランプ遊びも含まれます。身体活動量が全体のなかで最低の該当する10%のグループの人は、アルツハイマー病の約3倍近くなりやすいのです。
この研究論文の筆頭執筆者のバッハマン氏医師は次のように述べています。
「この研究が意味することは驚くべきことです。確かに運動は脳によいことはわかっていますが、運動以外の身体活動も有意義なのです。運動できないような高齢者でも自分に相応しい方法で行うことができます」
アルツハイマー病を治したり発症を遅らせる薬はありません。アメリカでは約500万人がこの病気で、ベビーブーマーが高齢になることから、その数は3倍になると推測されています。
論文には次のような記載があります。
「活動の自己報告に加えてすべての身体的活動を客観的な物差しで測った最初の調査です。参加者は、活動レベルを計るアクティグラフを腕に付けました。参加者の平均身体活動は、日間平均時間は1日3.3時間で、活動の強さも重要です。この研究は、身体活動が高齢期でも、アルツハイマー病の発症を遅らせる方法になるとう最新の証拠です。研究は、ただしどの程度の活動が最も有用かは今回の調査の対象ではありません。
ニューヨークにあるモンテフィオーレ医療センターMontefiore Medical Centerの老年精神科のガリー・ケネディGary Kennedy科長(写真左下)―今回の研究に関係しない―は次のように述べています。
「筋肉を使う活動が脳を活性化することを知ってはいましたが、この研究はさらに運動を進めるあらたな動機を与えたのです。ジムに行く必要がないことがわかりました。かなりの高齢の人はジムに通うのを好まないことが多いのです」
今回の結果は年齢、性別、教育歴に左右されませんでしたが、その他の要因について次のように指摘しています。
○肥満度BMI、うつ症状、血管危険因子は身体活動とアルツハイマー病発病の危険性の相関に影響しなし。
○アルツハイマー病になる高い危険性があるアポE4 APOE4は同じく相関に影響しない。
ケネディア医師は「アルツハイマー病は症状が出る数年まえから病気が深刻している」と述べています。今回の研究では調査開始時に認知機能検査を厳密に調べ、アルツハイマー病発病の影響を除外しています。
またバッハマン医師は「人口のうち最大を占めるのは高齢者であり、今回の調査結果は社会にとって重要な知らせです。かなり高齢の人たちで、たとえ健康上の理由でフィットネスを実行できなくても身体活動を進めている有用だ」と述べています。
同雑誌の関連論評で、「アルツハイマー病を防ぐために身体活動の効果があると認められたことは、発病を遅くらせる可能性があり、廉価で簡単で副作用がない有用な方法が指摘された」と記述されています。
USA TODAY 04/19/2012 Any kind of physical activity lowers Alzheimer's riskおよび論文Total daily physical activity and the risk of AD and cognitive decline in older adults
サイト内関連記事
編者:これは興味深く、有用なアルツハイマー病予防方法が疫学的に確かめれられたことになる。日常生活のなかに予防方法があるのだ。
なお無症状であるがアルツハイマー病が進行している人は、日常の身体活動が低下する傾向にあると思われ、今回の調査結果は当然といえ、観察的前向きの疫学調査の落とし穴であるが。こうした関係の影響を受けないように調査開始時に認知機能検査を行いっている。


ホモシスティン酸がアルツハイマー病の人の認知機能に関与(4月8日/日本)
佐賀女子短期大学Saga Woman Junior Collegeの長谷川亨Tohru Hasegawa教授(写真)らのグループは、ホモシステイン酸Homocysteic acid (HA)が、アルツハイマー病のマウスモデルで病因であることを示唆しました。しかしHAが、人間でどのように関与しているかは明らかではありません。このため尿中のHA濃度と、アルツハイマー病の人(70人)およびアルツハイマー病でない人(34人)のミニメンタルステート検査(MMSE)点数との関係を調べました。
その結果、尿中HA濃度とMMSE点数との相関が正の統計的に有意の関係にあること、この相関は男性より女性で強いことを認めました。さらに尿中のHA濃度は、アルツハイマー病でない人よりアルツハイマー病の人で有意に低いこと、および加齢や喫煙が尿中のHA濃度を下げる要因であることも認めました。
この予備的研究から、血中HA濃度と尿中HA濃度の相関は、負で統計的に有意の関係にあり、血中HA濃度とMMSE点数も同様の相関を認めました。これらの結果から、排出された尿中HAの濃度が低いことは、血中HAの濃度を上げ、結果的に認知障害を起こすと推測され、HAが尿毒性脳症の神経毒の候補と考えられます。
またアミロイドβは、HAの毒性を高め、HAはNMDA受容体に作用する物質の一つであることから、血中の高いHA濃度が、アルツハイマー病のNMDA受容体を経由して脳の認知機能に影響すると推測されます。
この研究論文は、IOS press電子版2012年4月18日号にJournal of Alzheimer's Disease掲載論文として紹介されました。
IOS press April 18, 2012 論文Urinary Homocysteic Acid Levels Correlate with Mini-Mental State Examination Scores in Alzheimer's Disease Patients
サイト内関連記事
編者:HA は必須アミノ酸メチオニンの代謝の中間物質。


歯の不健康は認知症の危険因子(4月13日/日本)
神奈川歯科大学社会歯科学講座歯科医療社会学分野Division of Sociological Approach in Dentistry , Department of Dental Sociology, Kanagawa Dental Collegeの平田幸夫Yukio Hirata教授(写真左上)らのグループは、歯の不健康と認知症に関係について疫学的調査を行いました。これまで歯の不健康と認知機能低下との関係は示唆されていますが、この二つがどのような関係にあるかは不明でした。研究グループは、「愛知老年学的評価研究Aichi Gerontological Evaluation Study (AGES)」の一環として、65歳以上で地域在住の4425人を対象に調査しました。対象者の自己報告で、歯の健康に関する4項目の回答を得ました。4項目とは「歯の数と義歯の使用」「咬む能力」「歯科受診状況」および「歯の健康への関心」です。2003年に質問表を配布し回答を得、2003年から2007年までの間に認知症の発症についての情報を自治体が担当する介護保険の情報から得ました。年齢、収入、肥満度、現疾患、飲酒量、運動、健忘についても調べ、これを同じ条件として歯の不健康と認知症の発症との関係を分析しました。
その結果、この間認知症の発症を220人に認め、認知症の発症の危険性は、「ほとんど歯がなくて且つ義歯を使わない人」で1.85倍、「よく咬むことができない人」で1.25倍、「定期に歯科受診してない人」で1.44倍、「歯の健康に関心が無い人」で1.76倍でした。このことから歯が不健康の人は認知症になりやすいことを認めました。なお歯が少なくても義歯を使う人では危険性が高まることは認めませんでした。
この研究論文はアメリカ心身医学会American Psychosomatic Societyの雑誌Psychosomatic Medicineの2012年3月9日電子版に掲載され、同雑誌2012年4月号に掲載されました。
平田教授の次のように述べています。
「以前に私たちが行った研究で歯周囲炎とその結果の歯の喪失が認知症の危険因子であることが示唆されました。今回はより大きな集団でこの仮説を検証したのです。この研究から明らかにされた臨床医へ主なメッセージは、認知症予防のために歯の健康―歯を失わないこと、義歯を使うことなど―が重要であるということです。
歯を失うことがどのように認知症に至るかのいくつか可能性のある過程について研究者は推測しています。
たとえば今回の調査グループは論文で以下のように記述しています。
「一つの可能性は、歯周囲疾患によって体内を循環する炎症性マーカーが多くなり、このことが認知症の発症病理に関与するかもしれないとうことです。もう一つの可能性は、歯の不健康でビタミン摂取の減少など低栄養をもたらし認知症を発症するというものです」
イギリスのキングスカレッジロンドン精神医学研究所Institute of Psychiatry, King's College Londonの精神医学疫学および診療情報科学のロバート・スチュワートRobert Stewart教授(写真左下)は次のように述べています。
「今回の研究の著者が述べているように、歯と認知症の関係については私のも含めていくつかの研究があり、口腔の不健康が認知症の危険因子であることを示唆しています。しかし口腔の健康と認知障害または認知症を同時に調査することには問題があります。認知症になる人は同時に口腔の健康を無視している可能性があるからです」
スチュワート教授らのグループは、2010年に同雑誌に口腔の不健康が成人の認知機能の低下に関係する論文を掲載しています。
さらに同教授は次のように述べています。
「今回の研究は、有用な情報を提供しています。一定期間、追跡して対象者を調べていることです。口腔の不健康が確かに認知症の原因になっているらしいのです。さらに結果でとても興味深いことは、歯が少ない多義歯を使わない人でその影響が強く出ていることです。私が韓国で数年前に行った研究結果とよく似ています。歯を失い義歯も使わないのであれば、食事や栄養への影響が深刻であることを知っています。認知症との関係は栄養摂取によって説明できることを示唆しています。原因と影響の関係を説明ができないとしても、認知症と口腔の不健康が同時に起こることを臨床医が認識することは重要です。両者は、身体的健康と生活の質にとって重要で実際的な障害を起こすことが知られています。もし、一般的に一つの問題をもった人が同時に他の問題をもっていることと仮定しって健診を行うことは有用で、認知症の人には必ず歯科検診を、口腔の不健康がある高齢者には認知機能の評価を行うことが望ましいのです」
Medscape Medical News  April 13, 2012 Poor Dental Health Linked to Dementia Onsetおよび論文Association Between Self-Reported Dental Health Status and Onset of Dementia: A 4-Year Prospective Cohort Study of Older Japanese Adults from the Aichi Gerontological Evaluation Study (AGES) Project
サイト内関連記事:記事1 記事2
編者:我が国で行われた有意義は疫学調査報告と思うが、介護保険情報に基づく認知症診断の信憑性が気になる。それにしてもこうし歯と認知症に関する疫学調査論文がなぜ心身医学雑誌に掲載されたのか理解できない。


がん回復者はアルツハイマー病になりにくい(3月20日/アメリカ)
ボストンに在るブライハム・婦人病院Brigham and Women's Hospitalのジェン・ドライヴァーJane Driver医師(写真左上)らのグループは、フラミンガムハートスタディFramingham Heart Studyに登録している人たちについてがんとアルツハイマー病の発症の関係についてために調査しました。この調査の参加者は1278人の65歳以上で調査開始時(1986年から1990年)に認知症を認めなかった、がんについては既往歴の有無は問いません。
平均10年間の追跡で221人がアルツハイマー病を発病しました。がん回復者と、年齢、性別、喫煙について同じ条件とするとがん回復者はがんを発症しなかった人とくらべてアルツハイマー病を危険性が33%低いことを認めました。発症の危険性は、喫煙に関係するがんの回復者は、喫煙に関係しないがんの回復者より74%危険性が低いことを認めました。こうした低い危険性とは反対に、喫煙に関係するがんの回復者は、喫煙の関係ないがんの回復者より脳血管障害の発症の危険性が高いのです。アルツハイマー病になった人は、アルツハイマー病のない人より、その後もがんになる危険性は高いのです。
こうした傾向は、パーキンソン病でも見られることで、今回の調査結果は、がんと退行性神経疾患との逆相関を示唆しています。
この論文は、イギリス医師雑誌British Medical Journal 2012年3月12日号に掲載されました。
この結果についてドライヴァー氏は次のように述べています。
「がんと退行性神経疾患との疫学的相関関係はこれらの病気は生物学的関係ことを示唆し、興味深い。がんは、細胞が不適切に成長する疾患であり、退行性神経疾患は、不適切に細胞の死滅する疾患です」
この調査結果は、雑誌掲載前、昨年ハワイで開催されたアメリカ神経学会第63回会議American Academy of Neurology (AAN) 63rd Annual Meetingで初めて発表されています。
さらにドライヴァー氏は次にように述べています。
「銘記してほしいことは、神経科医が、こうした結果からアルツハイマー病の人に『あなたはがんになる可能性が低い』と話すべきではないことです。そうではなく、がんとアルツハイマー病の逆の相関関係を深く理解するとで、アルツハイマー病の新しい治療法を見つけることにつながるかもしれないということです。今回の発見は、がんになりやすい人たちは退行性神経疾患の危険性が低いという証拠を増やしたことです。
パーキンソン病の人は、ほとんどががんの発症の危険性が低いということが1950年に初めて報告され、そのご疫学的研究による証拠が増えました。また594人が参加した追跡的研究では、調査開始時がんのある人たちはがんの既往がないが人たちより危険性が低いことが示されています(Neurology. 2005;64:895-898)。
また心臓血管健康スタディ Cardiovascular Health Studyの認知機能に関する疫学研究に加わった3020人の結果を分析した報告( Neurology. 2010;74:106-112)によると、調査開始時にがんの回復者はアルツハイマー病になりにくいことが疫学的に確認されました。
同雑誌に関連の評論のなかでピッツバーグ大学医学部University of Pittsburgh School of Medicineのメアリー・ガングリーMary Ganguli医師(写真左下)は次のように述べています。
「この報告書は、アルツハイマー病とがんとが相互的に予防関係―前例がないわけではないが―を示しているこがでが興味深い。こうした関係を示唆するこれまでの研究はがんとパーキンソン病のものです。フラミンガムスディはとてもよい研究集団研で。地域的な住民の追跡調査を長期間にわたって監視、評価で、グループ分けや調査に加わった人たちの思い違い影響を小なくできるのです」
さらにドライヴァー氏は次のように述べています。
「私たちは、調査前にがんで亡くなった人たちががん回復者と同じようにアルツハイマー病になるなりにくい傾向があるかどうかわからないと評論で指摘されました。こうした研究の限界はフラミンガムスタディで疾患の正確な生物的指標があれば取り払うことができるでしょう」
この研究は、国立心臓・肺・血液研究所National Heart, Lung, and Blood Institute、国立加齢研究所National Institute of Agingおよび国立神経疾患・脳血管障害研究所National Institute of Neurological Disorders and Strokeからの助成金を受け取ました。
medscapetoday March 20, 2012 Survive Cancer, Lessen Alzheimer's Risk および論文Inverse association between cancer and Alzheimer’s disease: results from the Framingham Heart Study) 
サイト内関連記事
編者:この疫学調査の目的は予防というより、がん細胞とアルツハイマー病の神経細胞との関係を疫学的に見い出し、アルツハイマー病の生物学的研究の方向付けをするものらしい。アルツハイマー病になりたくなければ、治るがんになるのがよいというお薦めはないだろう。


1日10ペニーのビタミンサプリメントで認知症を抑える―なぜ製薬会社は何10億ポンドも出資するのか―(3月17日/イギリス)
現代医学は私たちに死を免れるかのようにしてきました。臓器を入れ替え、心臓病を無くすために薬をのみ、多くのがんを治し、糖尿病のように以前だったら致死的な状態を管理できるようにしました。その結果、100年前52歳だった平均寿命が今は80歳になりました。こうした恩恵を受けられない状態があるとしたら、それは認知症でしょう。
80万人以上のイギリス人がなんらかタイプの認知症です。その75%はアルツハイマー病です。この病気は、知的機能の低下、記憶障害、言語障害、運動障害そして死に至るのです。
世界中で基本的なアルツハイマー病薬はドネペジル(アリセプト)です。この薬のイギリスでの特許が、先月、無効となりました。その結果、価格は80%安くなったのです。
ドネペジルは軽度から中程度のアルツハイマー病の人、およびこの病気の前の状態である軽度認知障害(MCI)の人の記憶障害を改善します。しかし、すべてのアルツハイマー病の人の3分の1にこの薬は有効でありません。効果がある人にとっては、薬で1年か2年間、生活の質を改善することができます。その後は、病気の進行に伴う脳の破壊で明らかに機能が低下します。この薬の効果は穏やかなので、この種の薬としては最善のもので広く使われています。しかし、このアルツハイマー病という恐るべき病気を叩くには、もっと寛大な方法が必要だろうと信じています。
莫大な資金を「新アリセプト」の求めて使うことは馬鹿げています。ドネペジルがあう程度の成功をおさめました半面、無数の同じような薬が失敗してきました。アルツハイマー病薬の研究の基本的な問題は、すべてが「アミロイド仮説」に基づいているということです。進行性に機能が低下するアルツハイマー病の原因に学説の一つにすぎないのです。
アミロイドは、脳の神経細胞の間に蓄積する毒性の不溶性の蛋白で、神経細胞を破壊するがわかっています。1991年、ロンドンの科学者が、アミロイドの前駆蛋白の突然変異による遺伝子が、アルツハイマー病のなかで稀な遺伝的形態の原因であることを発見しました。それから製薬会社は、このアミロイドを操作することがアルツハイマー病のコントロールする核と考えるようになったのです。
しかし、これは、一つの籠にすべての卵を入れてしまうことになりました。何10億ポンドの資金が使われながら、すべての臨床試験は失敗したのです。認知症の症状を悪くした薬さえありました。
アルツハイマー病治療の研究は、病気の初期に介入することに向けるべきです。アルツハイマー病に関係する神経細胞の死滅することを遅らせたり、止めたりすることになる鍵です。一旦、神経細胞が死滅したり脳が萎縮してしまうと遅すぎるのです。
私は、「オックスフォード記憶・加齢研究プロジェクトOxford Project to Investigate Memory and Ageing (OPTIMA)の創設者です。このプロジェクトは、認知症の原因を研究しています。昨年、記憶障害のある270人の高齢者に参加してもらい、ビタミンB群―葉酸を800mg、ビタミンB12を500mg、ビタミンB6を20mg―の錠剤を渡しました。
これらのサプリメントは1日10ペニー(約13円)ほどの低額で、血液中のホモチスチン濃度が高い人たちでは脳の萎縮を年間で平均30%ほど遅くなること、また認知機能の低下の割合を少なくすることが認められました。ホモチルチンというアミノ酸が高いとアルツハイマー病になる危険性が3倍から4倍高まるのです。
ビタミンB群でホモチスチンを少なくすることで、初期にアルツハイマー病の進行を遅くすることが初めて示されました。こうした治療を続けることで間違いなく病気の進行を遅らせるかどうか確かめるためのさらなる臨床試験が必要です。既にビタミンB群はアリセプトと同じくらい臨床的に有効なことが示されてきました。このビタミンが症状を軽減するだけでなく、病気の進行を遅くさせるということは良いことです。
明らかに稀は家族性アルツハイマー病は別にして、誰がアルツハイマー病になりやすいかを知る方法がないのです。
しかし記憶障害をもった人たちは自分自身のホモチスチン濃度を計ることを薦めます。その結果によって医学的管理のもとで、ビタミンB群の服用を始めるべきでしょう。通常の食事では摂取量が十分ではありません。200mlの半脱脂ミルクに2.5μgのビタミンB12が含まれています。またほとんどの人は1日5μgを摂っています。私たちはビタミンB群の摂取が多い人は認知症になりにくいことを知っています。
栄養と運動が記憶障害だけの状態からアルツハイマー病に変化するのを遅くらせることを確かめるための大規模な研究が必要です。また栄養と運動がドネペジルのような薬への反応をよくすることも知っておく必要があります。
OPTIMAにとって、次のステップは、ビタミンB群の摂取によって2年間で認知症になる変化を防ぐかどうか、1000人の軽度認知障害の人での臨床試験を行うことです。アルツハイマー病は抑えられるでしょうか?私は楽観的です。
寄稿者:ダヴィッド・スミスDavid Smith氏(写真)は、オックスフォード大学University of Oxfordの名誉薬学教授でOPTIMAの共同創設者です。
Mail Online 17 March 2012  The 10p-a-day vitamin supplement that tackles dementia: So why is the drug industry spending billions?
編者:アルツハイマー病の薬物療法のわかりやすい総論である。スミス名誉教授の臨床試験を期待したい。営利を目的とする製薬会社が好まない廉価なサプリメントでアリセプトと同等あるいはそれ以上の効果も期待したい。もっともホモチスチンの高い人に限定されるとなると有用性が減る。


「飲み過ぎで「脳萎縮」のリスク? 認知症の原因にも」(3月10日/日本経済新聞)
飲み過ぎは体によくない。一部のがんになるリスクが高まるだけでなく、認知症と関係があるとみられる「脳の萎縮」を進行させるとの見方もある。体質的にアルコールをあまり受けつけないタイプの人が飲酒量を増やした場合、最も気をつけなければならないと専門家は指摘する。
都内在住の男性Aさん(45)は、ここ数年、物忘れがひどくなり、周囲の勧めで脳ドックを受診した。検査後、医師から「脳が縮んでいる」と告げられた。
Aさんは若い頃からお酒が大好き。平日は仕事後に缶ビール(500ミリリットル)2~3本、週末には朝から晩まで飲み明かすことも。「まさかアルコールで脳の萎縮が進行するとは思ってもみなかった」
脳の神経細胞が大量に死滅し、脳の容積が小さくなると萎縮が起きる。誰でも加齢とともにみられる現象だが、アルコールの大量摂取が萎縮を進行させるとする研究結果が国内外で報告されている。
2008年、米ウェルズリー大学などの研究チームは、飲酒量が多いほど脳全体の容積が縮小するとする調査結果を発表した。平均年齢60歳の男女1839人を飲酒量に応じて5グループに分け、磁気共鳴画像装置(MRI)を使って脳容積を測定した。最も萎縮の割合が高かったのが大量飲酒者のグループだった。一方、全く飲まないグループの萎縮の割合が最も小さく、アルコールと脳の容積の間には有意な関連性が認められたとした。
国内でも千葉大学の研究者らが同じような結果を報告している。10年ほど前の研究だが、脳萎縮の特徴とされる前頭葉の「隙間」を計測したところ、日本酒換算で1日2合以上飲酒するグループの脳萎縮発現率は38.2%で、これ以下の飲酒のグループと比べて13ポイント以上も高かった。
□がんリスクも上昇
東京医科大学病院の羽生春夫教授(写真左上)は「脳の萎縮は加齢に伴って50歳以降に始まるのが通常だが、飲酒量の多い人はそれよりもやや早く始まる傾向にある」と指摘する。
過度な飲酒が悪影響を与えるのは何も脳だけではない。
世界保健機関(WHO)は11年、世界で年間250万人の死に飲酒が影響しているとの調査結果を発表した。03年の評価でも飲酒が口腔(こうくう)がんや喉頭がん、食道がんのリスクを上げる要因になると指摘した。
人の体にはアルコールに関する2種類の酵素が存在する。アルコールをアセトアルデヒドに分解する酵素と、分解したアセトアルデヒドを酢酸に変える酵素だ。
アセトアルデヒドを酢酸にする酵素の強弱は遺伝子レベルで決まっている。「酵素の働きが強く酒に強い人」「働きは弱いもののある程度は飲める人」「酵素の働きが全くない人」の3タイプがある。
アセトアルデヒドはDNA(デオキシリボ核酸)を傷つけ細胞をがん化させる。喉頭がんや食道がんなどになる危険性が最も高いのは、ある程度は飲めるタイプで、日本人の約4割が該当する。体質的には酒に強くないにもかかわらず、「慣れ」によって飲み過ぎてしまうため、病気を引き起こすリスクを高めてしまうようだ。
飲酒の習慣を改めるにはアルコールをいきなり断つのではなく、まずは、節酒を心掛けることが大切だ。
酒への依存度を知ることから始めよう。インターネットなどに掲載されているスクリーニングテストを利用すれば誰でも手軽に判断できる。

□「日記」つけ節制
次に飲酒量をどこまで減らすのか目標を設定する。慶応義塾大学の加藤真三教授(写真左下)は「できるだけ具体的に目標を設定した方が効果的」という。設定したら「飲酒日記」を毎日つける。飲んだ相手や酒の量などを細かく記録し、達成できたかどうかを「○」「×」で書き留める。減らそうとする努力を「見える化」するのが長続きさせるポイント。
脳がどの程度萎縮しているのか確認するには「脳ドック」を受けるしかない。東京クリニック(東京・千代田)には年間2000人弱が脳ドックの検診に訪れる。「脳の萎縮具合を直接目にすることは、禁酒や節酒のいい動機づくりになる」(笹沼仁一・健診センター長)。検診がきっかけで酒を断った人も多くいるという。(上林由宇太)
《ホームページ》
◇飲酒と健康の関係について基本的な情報を得るには厚生労働省の「e―ヘルスネット」(http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-013.html
《本》
◇アルコールと脳の萎縮について知りたい人には「危ない呑み方・正しい呑み方」(仮屋暢聡、毎日コミュニケーションズ)
日本経済新聞web版 2012年3月10日 原文のまま


心房細動の人は認知機能が低下しやすい(2月27日/カナダ)
カナダ・オンタリオ州のハミルトンにあるマックマスター大学McMaster Universityの人口保健研究所Population Health Research Instituteのクーン・テオKoon Teo所長(写真左上)らのグループは、認知障害や認知症に心房細動がどのように関与しているか、またそれが脳血管障害とは独立したものか明らかでないので、心房細動と認知障害および身体機能との関係について55歳以上で高血圧など心臓血管性危険因子のある人たちを対象に大規模調査を行いました。
対象者は3万1546人(実施施設:40カ国の733施設)で、二つ無作為対照試験を分析しました。その試験は、テルミサルタンtelmisartan(降圧剤ミカルディスなど)とラミプリルramipril(降圧剤ラミプリル、日本では未承認)の2剤併用と心臓血管疾患の発症への治療効果およびテルミサルタン単独での治療効果の評価を目的に行われたものです。試験開始時に対象者の心理テスト(MMSE)で認知機能を評価し、2年後および5年後に再評価を行いました。さらに認知症の発症、日常生活能力での自立性喪失、介護施設への入所についても記録しました。
対象者のうち3万1506人について心房細動の完全な情報を得ることができ、このうち男性は70.4%でした。対象者の平均年齢は66.5歳で、試験開始時のMMSEの平均点数は27.7でした。試験開始時に1016人(3.3%)に心房細動があり、平均56カ月の追跡期間中にさらに2052人(6.5%)が新たに心房細動になりました。
分析した結果、心房細動は、脳血管障害または降圧剤服用の有無に関係なく、認知機能の低下、認知症の新たな発症、日常生活能力での自立性喪失および介護施設への入所と関係あることが認められました。
この研究論文はカナダ医師会雑誌CMAJ (Canadian Medical Association Journal)の2012年2月27日号に掲載されています。
この結果について、調査を指導したクーン・テオ教授は次のように述べています。
「人口が高齢化しているなかで今回の結果は重要です。大きな影が忍び寄っており、このことをもっと理解する必要があります。そのためこうした問題が起こらないような治療方法を見つける試みをしなければなりません」
この研究に加わってはいないジェフリー・ワイツJeffrey Weitz医師(写真左下)は、ハミルトンにある血栓・動脈硬化研究所Thrombosis and Atherosclerosis Research Instituteの所長ですが、彼は次のように話しています。
「この調査結果からいえることは、私たちが考えていた以上に多くの患者が障害の危険にさらされており抗凝血治療をしなければなりません。予防的治療ももっと積極的に行うべきです」
35万人のカナダ人が心房細動ですが、テオ所長は「この研究結果が心房細動のすべての人に当てはまるわけではありません。パニックならないでください。心房細動はあるが心疾患のない若い人たちもいるのです。かれらにもこのことは当てはまらない」と述べています。
thespec.com Feb 27 2012 Irregular heartbeats increase the chance of dementia, McMaster researchers reportおよび論文Increased risk of cognitive and functional decline in patients with atrial fibrillation
サイト内関連記事
編者:大規模調査の結果だ。心房細動と認知症の関係についてはいくつかの報告があるが、これまでは心房細動が脳梗塞を起こし結果的に血管性認知症になると考えらてれいるが、今回の調査は脳血管障害がなくても心臓細動が認知機能低下や認知症の危険因子であると示唆している。


女性高齢者は大気汚染で認知機能が低下(2月13日/アメリカ)
ラッシュ健康加齢研究所Rush Institute of Healthy Agingのジェニファー・ウーヴJennifer Weuve准教授らのグループは, 粒子状物質の大気汚染と認知機能の低下との関係について大規模な疫学調査を行い増し。
これまで、粒子状物質の大気汚染の長期に接触することで高齢者の認知機能の低下を進行するらしいと示唆されていますが、この二つの関係についてのデータはとても少ないのです。
大気汚染の原因物質の一つの粒子状物質(PM)は、粒子のタイプ―粗い粒子(直径が5-10 μm [PM2.5-10])および 細かい粒子 (同じく2.5 μm未満 [PM2.5])があり、異なる2種類の粒子との関係について調べました。
調査対象者は、1988年から14年間行われてきた、70歳から81歳までのアメリカの女性1万9409人を含む「看護師健康調査認知機能集団Nurses' Health Study Cognitive Cohort」の集団の人たちとしました。
アメリカに継続した居住していた調査参加者について、調査開始時の認知機能検査(1995年から2001年)を実施する前に、地理情報処理システムを使って、最近―1カ月間―と長期(7年から14年)のPM2.5-10とPM2.5の時間と空間でその変化の情報を得ました。
認知機能は、有効性のある電話による認知機能評価方法で把握しましたが、おおよそ2年間隔で3回実施しました。このテストには、全般的認知機能、言語記憶、同じ範疇の名称を挙げられる数、作業記憶および集中力などを含むものです。
調査の結果、女性高齢者で、PM2.5-10とPM2.5の両方への粒子状物質の大気汚染に長期間接触している程度が高いと、認定機能の低下が有意に早いことを認めました。
この研究論文は、アメリカ医師会の雑誌Archives of Internal Medicineの2012年2月13日号に掲載されました。
研究の主任を担当したウーヴ氏は「私たちの研究は、女性高齢者で認知機能低下と粒子状物質の大気汚染に長期に接触することとの関係について調べました。これまで両者の関係はほとんどわかっていません」と話しています。
粒子状物質の大気汚染は心臓血管疾患の危険因子とされており、このことが認知機能の低下や低下促進の役割があるようです。
さらにウーヴ氏は次のように話しています。
「食事や身体運動といった認知症に関係する他の因子と異なり、大気汚染は、政治、規制、技術を使って社会全体で介入できる課題です。したがって、私たちの研究結果が、さらに他の研究によって確認されれば、大気汚染を軽減することで、加齢に関係する認知機能の低下の将来的な負担を減らすことができるかもしれません」
Rush News Room February 13, 2012 Study Finds Association between Air Pollution and Cognitive Decline in Women および論文Exposure to Particulate Air Pollution and Cognitive Decline in Older Women
サイト内関連記事
編者;女性に限定されているが、大規模な疫学調査だ。ディーゼル車などから排出される微細な粒子状物質に長期に触れたり吸いこむことが認知機能の低下する可能性は高くさらに認知症の悪化要因かもしれない。我が国でに車の排気ガス規制によってこの種の大気汚染は少なくなっていると思われる。それにしても元看護師を対象とした大規模調査は、医学知識がある元看護師が参加しやすく、よりレベルの高い調査を行えるということに目をつけた巧みな疫学調査だ。


喫煙者の認知機能低下は男性のみ(2月6日/イギリス)
イギリスのロンドン大学ユニバーシティ・カレッジUniversity College Londonの疫学公衆保健学部Department of Epidemiology and Public Healthのセヴェリン・ザビアSeverine Sabia医師らの研究グループは、喫煙と認知機能の関係について疫学調査を行いました。
調査対象者は、公務員の健康疫学調査を行ってきたホワイトホールⅡスタディWhitehall II studyの登録者(調査開始時、男性5099人、女性2137人、年齢44歳から69歳で平均年齢56歳)で、1997年から1999年にかけて第1回目の認知機能評価を行い、2002年から2004年にかけて第2回目、2007年から2009年に第3回目を行いました。
認知機能評価は、記憶、言語、実行機能(論理テストおよび2つの言語流暢テスト)を行い、喫煙歴は調査期間中の確認しました。
その結果、調査期間の10年間、男性では非喫煙歴者の認知機能が低下しましたが、中高年男性で非喫煙者と比べ現役喫煙者は著しく認知機能が低下しました。10年以上喫煙してない元喫煙者との認知機能の違いは認めせんでした。なお女性で喫煙と認知機能との一定の関係は認めませんでした。
この研究論文は、アメリカの精神医学雑誌Archives of General Psychiatry電子版の2012年2月6日号に掲載されました。
この結果についザビア医師は次のように述べています。
「中高年の喫煙と認知機能の関係については、喫煙者が死亡や調査対象から脱落することが多く、その関係が低く評価されていたことを私たちの調査結果が示しました。女性では二つの関係が認められない理由は不明ですが、喫煙者が男性比べはるかに少ないの女性では疫学的な相関が認めにくかったのでしょう」
Daily mail 6th February 2012 Men who smoke 'more likely to suffer dementia in later life および 論文Impact of Smoking on Cognitive Decline in Early Old Age The Whitehall II Cohort Study
サイト内関連記事
編者:今回の報告は喫煙と認知機能の関係で、認知症との関係の研究はない。女性での喫煙と認知機能の関係については認められなかったのであって関係ないというわけではない。なおこれまで喫煙と認知症の関係を肯定する疫学調査は多い。