95年質問番号1。戦略情報システムと戦略的情報システムの違い

回答: 若干詭弁的な、こじつけ的な説明なので分かりづらかったのだと思います。

情報システムの対象は、オペレーショナルな(日常業務)レベルから、マネジメント(計画・管理)レベルへ、最後はストラテジック(戦略)レベルを対象とするべく発展しようした。

しかし、経営の戦略行為や戦略政策を情報システムで実行するのは、今の情報システムでは不可能であることが解った。ボタンを押せば「はい、その投資をしなさい。そこに店舗を開店しなさい」といった「経営行為」を「自動化」して実行するのは不可能であることが解った。

しかし、一方、情報システムは、そういった戦略を実現するための手段として確実に戦力になっている。お客様へのサービス向上や在庫ゼロ化など他社との差別化には大きな効果を上げている。これを戦略的情報システムと言った。内容は、オペレーショナルなレベルのものやマネジメントレベルのものも含まれている。


95年質問番号2。MIS(Management Information System;計画・管理システム)

回答:MISとは、マネジメント・インフォメーション・システムの略で、日本語には「経営情報システム」と訳されことが多い。

その意味するところは、コンピュータを「計画や管理」つまり「マネジメント」に使用しようとする考え方である。それまでは、コンピュータは、給与計算、売上高計算や伝票の発行といった日常的な仕事にのみ使用されていた。昭和43年経団連が派遣した米国コンピュータシステム調査団が帰国して「コンピュータシステムは、もっと経営のマネジメントに使用すべきある」と提言を行い。日本でもMISがブームになった。

MISの効果は、計画の精度向上や管理の密度向上によってもたらされる効果が主体で、人手の置き換えという効果ではなく、歩留り向上や稼働率向上といった「管理的効果」がその効果である。


95年質問番号3。SQL言語

回答:SQL言語は、トピックとしてクライアント・サーバ・システムでリレーショナル・データベースを操作するときに使用する言語であると説明した。

SQLは、Structured Query Language の略で日本語はない。リレーショナル・データベー ス(表型のデータ構造をもつデータベース)(データベースとはデータを構造的に記憶すること)(表型とは、データ項目を表のように横に展開してデータをもつこと)を定義したり、データの挿入・検索・更新・削除する命令言語のことである。

例;select 社員名、給与 from 社員マスターテーブル where 社員no = 0241

社員マスターテーブルから社員noが0241の社員の社員名、給与を検索する

(表のことをテーブルとかデータベースとかいう)


95年質問番号4。POSと流通業の情報システム

回答:はっきりとは、知りませんが日本の企業ですから他社もすぐにPOSを「まねて」導入したと思います。

しかし、何でもそうですが「まね」と「本物」には差があります。イトーヨーカ堂の経営は「独立経営者」との「契約」が「企業形態」です。みんな「一国一城の主」です。イトーヨーカ堂は「情報」が「勝負」との認識で「情報の分析と活用」を考案したくさんのノウハウを蓄えて行 きました。「一国一城の主」に「信頼して付いて来て貰うだけの情報」を渡し続けているのです。

「情報分析と活用」は永遠に進歩するのです。「売れ筋商品」から「売れ残り商品」へと分析の重さも変化してきて、時間帯別の変動分析、曜日変動、お天気変動、学校行事変動等あらゆる変動を織り込んだ「売れ残り予防システム」を完成させて行くのです。


95年質問番号5。戦略的情報システムの製品差別化トラスト

回答:戦略的情報システムが戦略を実行する分野をワイズマンは、次の5つに分けた。

 製品の差別化

 価格の差別化

 革新による差別化

成長することによる差別化

 提携による差別化

この中で、「製品の差別化」を戦略的情報システムがどのようにして実現するかを説明する。

まず普通に提供する製品でも差別化することができる。

例えば、見積システムを開発することにより他社より早くいつでも見積を提出することができれば、一つの差別化である。更に、その見積の書類を「相手の会社の社内稟議に使いやすいように作れば、なお一層の差別化になる。また、DDIがlrcによって自社の電話にたくさんつながるシステムを提供しているのは、まさに、基本的製品における差別化である。

次に、期待以上のサービスを付加した差別化がある。例えば、クロネコヤマトの追跡システムによる「存在場所をすぐお答えするサービス」、アメリカ資生堂が実施した「お肌のメークシミュレーション・システムによるお肌の相談」、AT&Tのベル研究所による「水平移植性と垂直移植性に優れたOS(オペレーティング・システム)であるUNIX」の提供等がある

3つ目は、マーケティング・サポートによる差別化である。丸井のデータベースによるマーケティングは有名である。お客様の分類と買い物のパターンをうまく組み合わせてダイレクトメールを発行する。普通1%〜2%といわれるDMの効果を非常に高いものにして、売上を伸ばしているのである。

「製品の差別化」の実現は、戦略的情報システムの最も大きな目的であると私は思う


95年質問番号6.CADについて

回答:CADは、Computer Aided Design(コンピュータで支援された設計)の略です.

簡単にいえば、コンピュータを使って設計図を書くことです.設計図を手で書くときは、烏口と定規を使って方眼紙の上に書きますが、コンピュータを使って書く次のような効果があります。

作図のスピードが早くなる.コンピュータで設計図を書くときは、一般の「絵書きソフト」と同じように、点と点を指定して「直線」と入力すると線が引けたたり、中心を指定して半径100の円を書いたり、既に登録している描画や部品図を持ってきて「拡大」「縮小」「回転」ができますので、設計図の作成は非常に早くなります。

作図しながらチェックができます.コンピュータで作図すると、コンピュータの中で、「この線とこの線は、接近過ぎであるとか」「この部品は回転するとぶっつかるとか」作図しながらチェックができるので、設計の手戻り(完成したと思ったが、やり直しが起こること)がなくなる。

作図しながら解析が可能です.コンピュータで作図すると、コンピュータで体積や重量、さらには強度や電気系なら抵抗値や誘電気の計算ができて、品質の解析ができます。

設計図から部品図が自動的にできる.手で設計しているときは、部品はいちいち製図から拾わないと部品展開表(この製品には、こんな部品がいるという表)はできないが、CADだと部品展開表は、自動的にてきる。

機械加工に直結できる.手で書いた製図で加工するときは、加工機械のセットはすべて人間が製図を見て行う(大抵の機械はセットすると、あとは自動的に加工してくれる)、CADで設計すると、加工機に「制御するためのコンピュータ」がついていると、CADコンピュータと繋ぐことによって加工も自動化できる。これををCAM(Computer Aided Manufacturring)という。


95年質問番号7.省力効果と管理効果の区別

回答:情報システムがもたらす効果の内、人間の作業を人間に代わって実行してくれる効果を「人の労力を省く」という意味で「省力効果」という。たとえば、計算して表を作成する作業で、人間が作業すれば1日(7時間)掛かる表をコンピュータが作成すれば10分で終わるような場合である。この場合「省力効果」は、6時間50分である。

「管理効果」とは、コンピュータで計画・管理することによって発生する効果である。項目として考えられるのは、稼働率の向上、歩留りの向上、納期の短縮、在庫量の削減といった効果である。

(稼働率とは、実稼働時間/稼働可能時間.歩留りとは、製品出来上がり数(量)/製品投入数(量)。納期とは、注文を受けてから商品をお客様にお届けするまでの日数。工期とは、製造をはじめた日から製品が出来上がる日までの日数。)

たとえば、稼働率を上げるには、機械を止めないように同じ種類の製品をまとめて製造するように計画を立案すればよい。在庫量を減らすには、お客様の注文を反映して生産するようにすればよい、計画を週間でなく毎日作成すればお客様の希望を反映した計画が立案できて在庫量は削減できる。


95年質問番号8.情報システムのメリット・デメリット

回答:情報システムの効果については、前期の講義で情報システムの機能、対象、効果を説明したので、講義資料をもう一度読み直して下さい。ここでは、情報システムのデメリットについて述べます。

デメリットの最大は、情報格差が生活の格差になることです。日本でもパソコンを操作できない人は、社内の重要な地位に付けないと明言する会社が増えています。

これから、インターネットなどのネットワークが広がり、縦横無人にパソコンを操れる人は情報をたくさん得て豊かな生活を営むことが容易になりますが、そうでない人は、昔ながらの情報で満足せざるを得なくなるのです。たとえば、将来、自宅診療システムが出来たとき、パソコンを操作出来る人は自宅で高度な診断を受けられるが、そうでない人は病院にいってその病院だけの診断を受けることになるのです。受けるサービスの量には大変な差が出てきます。

デメリットの第二は、社会の脆弱さが増大することです。後期の講義で1時限「情報セキュリティ」について講義しますので、そこで詳しく述べますが、情報化社会は、コンピュータ犯罪の発生情報セキュリティに対する脅威への対策の困難さ、障害に対する脆さが大きな問題です。社会全体が脆弱化することは避け難いかもしれません。

コンピュータによって省力化が進んで人が余るということはありません。情報システム化により従来の仕事はなくなりますが、それ以上の新しい仕事が生まれます。しだがって問題は、適性のアンマッチです、時代の流れに取り残された人たちは就職も難しくなるのです。


95年質問番号9.情報システムと経営形態について

回答:情報システムの役割は、最初の段階では経営の効率化のためにあるのです。だから経営形態の進歩に添って情報システムの対象も変化したと考えるのが妥当です。

大量生産大量販売の経営形態の時代は、情報システムも大量な業務を対象に、とにかく大量生産大量販売が出来るように業務の効率化に寄与したのです。

次に日本を含む先進国で、個人の欲望が「自分は他の人と違った自分自身の価値のある人生を過ごしたい」という風に変化して、物やサービスに対する要請が非常に多様になってきた社会では、それを満たそうとする多品種少量生産に寄与する情報システムを構築したのです。それが組織機能のあらゆる機能を対象に情報システムを構築した時代です。

更に時代は進んで社会というものは、個人の集合体であり、個人こそもっとも主体的に考えなければならない存在である。企業内の組織も、個人間が有機的につながって、個人個人の最高の能力を発揮したときに最高の効率が発揮できるのである。この考えの変化は、情報化の進展により更にはっきりと醸成されて来るのである。ネットワークの発展により情報に企業枠や国家の壁もなくなり、個人が自分の価値に基づいて行動する社会へとなって来たのです。企業は個人の能力を発揮させることに最大の注力を行うのです。

この時代になると、情報システムは、単なる手段ではなく、社会の基盤を形成する一要素となってきているのです。だから情報システムの変化が今度は社会の変化をリードするのです。社内における電子メールの浸透は、従来の担当→係長→課長→部長といった報告ルートを破壊して、今や担当から係長、課長、部長へは「生データ」が同時発信されるのです。従って指示ルートも部長→担当や課長→担当が存在して、「もっともふさわしい人が当事者になる組織=仮想組織」が出来上がるのです。