ついに扉は開かれた。日本 3−2 イラン


■試合日の朝

 早朝、私たちは目覚まし時計で起きて、欧州での熱い闘いを見た。
イタリア対ロシア、最終戦のイタリアは0−0狙いの堅いディフェンス
をしいてきた。対するロシアも攻めが単調で、試合の中身としては
必ずしもおもしろいものではなかったが、イタリアは結局カシラギ
のゴールで勝った。あっこさんはイタリアが好きなので大喜びで
あった。こいつは朝から縁起がいい。

日本も後に続くぞ!!!

■スタジアムに到着

 現地21時開始に対して、15時に石渡さんと待ち合わせをして車で送って
もらった。私たちと石渡さんの会社の後輩二人が、席取り要員で先についた。
はやくも、日本人が山のようにいる。まじか!!こんなところまで、
こんな行列を作ることになるとは。
 その後もどんどんバスがやってくる。2,3分おきに到着するバス。
 石渡さん家族も、16時ぐらいには到着した。すぐ近づくTBSの
カメラクルー。石渡さんには実は昨日の練習見学の時からTBSのTV
クルーがついていた。インターネットを介して、知り合った人にチケット
をとってあげたというのがマスコミに受けたようです。
 日曜日の17時ぐらいからのニュースで出たらしい。私たちもカメラは
回ってたが、多分移らなかっただろうな。

当初18時半と言われていた開門が17時に早まるのではないかという
噂が流れる。17時になるとざわついたりしたがしかし、噂は噂でしかなかった。
マレーシア時間恐るべし。(時間通りにはじまらないと言うことらしい)
18時半すぎ、開門して中にはいるよう誘導されるが、誘導がへたくそで
おしくらまんじゅう状態になる。
 中に入って、走ってまず競技場のバックスタンド上段に駆け上がったが
そこで私たちはホーム側にまわったが、石渡さん達はアウエー側にまわって
しまったらしい。結局試合中は一緒に見ることが出来なかった。
 私たちはちょうどイランサポーターのすぐちかく、ホームスタンドの
左横あたりにすわった。

 殺気立つスタジアムに嫌悪感を覚えた。最近の国立の雰囲気と同じ。
大きな声を出すのが応援か、立ちあがるのが応援か、ものを投げるのが
応援か?

   試合開始前、私とあっこさんもいらだっていたが、落ち着きを取り戻した。
「サッカーを楽しもう」という気持ちで。

■日本 3−2 イラン (延長後半18分)


  カズ 中山
   北澤
 名波   中田
   山口
相馬  井原 秋田 名良橋
     川口    

イラン
  GKアベドザデ DFハクプール、ペイラバニ、アサディ、ザリンチェ
MFマンスーリアン、ナムジュ、エスティリ 
FWマハダビキア、ダエイ、アジジ

中山がカズのパートナーに選ばれる。この2トップが一番いいかどうか疑問
だが託すしかない。
イランは3トップ、ザリンチェが出ている。

○前半
 キックオフ直後のサイドへのボールは大きくタッチを割った。緊張感が
感じられる。そのまた直後に、いきなりビッグプレイがあった。

 左サイドフリーの相馬が右前の中山に大きなハイクロス、なんとこれを
イランDFがナイスヘディングシュート、自殺点だ!!
中山がオフサイドポジションにいたことは確かなのだが、ボールに全く
アプローチしていなかったのに、これがオフサイドにとられる。
どよめくスタジアム。

 その後、日本は危なげなく前半を戦う。特に中盤の攻防は勝っている。
マハダビキアの右の上がりは殺すことが出来ている。たまにダエイにボールが
こぼれるとどきっとする。
 中山は前でかなり相手DFにプレッシャーをかけるので、高い位置で
FKを得る事ができるし、落ちたところを中田などが、シュートを打つ。
(かなりはずれていたが)
28分、こぼれだまからアジジがドリブル、左ペナルティ外あたりから
シュート、川口がはじいて逃れる。両チーム通じて、はじめての惜しい
シュート。
34分、山口のループDFの間で中山がつっこむがカズがじゃまだった。
37分、マハダビキアの右45度からの強烈なシュートは左ポストに
助けられる。危ない。
39分、中田が左前の中山にスルーパス、中山はおちついて、左足インサイド
でシュート、キーパーに触れるが決まった!!!!先制だ!!
わきかえり立ち上がる観客、「落ち着け、座れ!座れ!!」
まだ前半なんだ。
41分、ダエイの直接FKはキーパー正面、川口がっちりキャッチ。
44分には、名波のスルーから相馬が一対一を勝負、なんとまたぎのフェイント
の後、ナイスセンタリング、カズはニアに入らず、キーパーがキャッチ
した。

・北澤がもう少しサッカーがうまければ。なんであんなトラップとパスが
 へたくそなの。
・カズは回りと全くあってないうえにキープができない。ベンチよ動け。
・今日はスペースができる。中田にボールを集めてはどうか。
・イランは、前線と後ろのそれぞれはいいが、つなぎに入る選手
 がいない。

○後半
開始早々、井原の空振り、もつれたところ、マハダビキア
が折り返しダエイにボールが行く。
ダエイ、インサイドで強いボールをシュート気味に中へ、川口が
はじいたところをアジジがシュート!!!同点に追いつかれる。
悪い時間帯で、しかもミスでの失点。もったいなく嫌な感じがする。
48分、名良橋と中田のワンツーから抜け出た名良橋が折り返し、ゴン
シュートでよかったがヘディングでもういちど折り返し、北澤の
シュートは浮いてしまう。49分にもシュートミスの北澤。
50分には名波のセンタリング、北澤の胸での折り返しをダイレクト
で中田。また枠を外れる。
決して悪い流れではなかったのだが・・・。
59分、井原と秋田の間でアリダエイのマークの受け渡しがうまくいかず、
秋田とはなれたところで、名良橋がダエイとせりあう形。ハイボールをダエイ
がヘディングでネットに突き刺す。
私は「お願いだ、カズを代えてくれ!!!」と叫んでいた。
その直後63分、日本が今まで貫いてきたタブーが破られた。
カズと中山を城とロペスに代えてきたのである。
この時、負けているにも関わらず、「行ける」という確信に近い気持ち
を持った。それと、4年前をしる私は、カズの心中を感じ複雑
な思いだった。
 これから後、イランDFも疲れてきたのもあるが、城がスペースに動き
ロペスがマークを引きつけることで、日本のリズムで攻め続ける事が出来る
ようになる。
73分、名良橋のセンタリングを城がシュート、キーパー真正面。
75分、イランの逆速攻を正面で止めた名波が左の中田へ、ヒデが城へ、
城のヘディングシュートはファインシュート!!GOOOAALLLLL!
いつの大会もぎりぎり間に合う男がまた間に合った。城!!!
涙がでそうな衝動におそわれる。
この後も押せ押せ、北澤のシュート、城のシュート、名波のシュート
対するイランは一度、アジジの惜しいシュートがあったがもう防戦一方で
あった。
主審の笛の音、延長だ。

延長に入る前に、なんか足のはやい人がアップをはじめた。
「岡野がでてくるのか?」   大丈夫なのか、岡野で。
北澤に代えて岡野のようだ。

○延長前半
その岡野が何度も中田のキラーパスを受けた。
まず92分、そして、日本攻勢の時間をすぎ、イランが立て続けにFK、
CKを得た攻めを耐えた逆速攻の103分、シュートを打たなかった。
前半ロスタイム、中田が抜け出て、マイナスパス、ロペスのシュートが
跳ね返ったボールを岡野がフジヤマシュート。入れてくれ。

○延長後半、
110分、キーパーと城がポストに激突、キーパーは多分、左の肩
か鎖骨あたりを痛めたと思う。いままで、ずっと時間つぶしだった
のだが、左手が完全に死んでしまう。しかし、3人代えているイランは
選手を交代できない。心配そうな第二ゴールキーパー。
シュートを打つだけで入る状況になった。
 117分、イランはマハダビキアの右からのクロスをダエイ!!!!
しかしわずかにふかしてしまった。助かった。
 118分、ボールを奪った中田が強引にドリブル、シュートを放つ。
キーパーは痛い左手ではじいた。呆然とはずむボールを見送る、
滑り込んだのは岡野だった。ゴールネットに突き刺さった!!!

決まった!!!!!ついにW杯への扉が開かれたのだ。
涙がこぼれるかと思った私の顔は満面の笑みだった。
あっこさん「フランスへ行ってもいいのかねえ。」
い・い・ん・で・す!!!!

喜びを爆発させる日本選手達を後目に、負けて腰を落とし悲しんでいる
イラン選手のもとに行く選手がいた。中田英寿。
なんともいえない複雑な表情で、何人かの選手とこの試合での
健闘を確認し合っていた。涙にくれるアジジの肩に手をやっていた
姿は忘れられない。

選手がどんどん来る、井原の万歳三唱!ださー。秋田がなんか国旗を
振り回している。カズよいろんな意味でご苦労さん、
川口、子供みたいに帽子をかぶり満面に笑み。

スタジアムからホテルまで二人で歩いた。クラクションが鳴っている。
歩いている人はにこにこしていたり、うれし涙を流したり。
こんなに楽しくて幸せでいいんだろうか。い・い・ん・で・す。
「次はフランスだぞ。」

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