Rokuoh-Sha

1886年(明治19年) ゲルツ会社創業
1888年(明治21年) 写真レンズ製造開始
1892年(明治25年) エミール・フォン・フーフ氏はゲルツ会社に就職し、ゲルツはフォン・フーフの既に設計していたアナスチグマットの特許を取り、Double Anastigmat Goerzとして販売した。C.P.Goerz Berlin  
1904年(明治37年) Double AnastigmatをDagorと改名。 
1926年(昭和元年) ゲルツはザイスに資本合同 Zeiss Ikon Dresden Dagor   
 

 1893年(明治26年)   ゲルツ(Goerz)  Double Anastigmat Ser.V  2群6枚 

Double Anastigmat Ser.V f7.7


Double Anastigmat Ser.V f7.7 手提暗箱用


Dagor F6.8 Dagor F6.8 手提暗箱用
 


ツアイス社のパウル・ルドルフ博士は1891年10月、3枚貼合せの単アナスチグマット鏡玉すなわち第6類アナスチグマットを設計したが、1892年(明治25年)、ゲルツ社のフォン・フーフ氏はツアイス第6類アナスチグマットと同じ考案であるが使用するガラスが異なり収差の修正の設計がちがう3枚貼合せの単アナスチグマット鏡玉を開発し、これを絞りをはさんで対称に配置した複玉として特許を出願し、この複玉の一群のみでも景色用鏡玉としても利用できる旨の条項を追加請求した。ツアイス社は第6類アナスチグマットを複玉(第6類Aアナスチグマット)として使用する特許を出願しなかったので、ゲルツ社は「ダブルアナスチグマット」の名を冠した鏡玉の専売特許を得る。これが1893年発売のゲルツ第3類ダブルアナスチグマットである。2群6枚ではじめF7.7であったが、口径を拡げF6.8とした。1904年(明治37年)にダゴールと命名し、1926年(昭和元年)の資本合同でザイス社のダゴールとなる。エナガラス(バリウム極重クラウン、バリタ軽フリント、珪酸クラウン)の3枚接合レンズを絞りを中間に置き対称に配列したもの。
 
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉0番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     12 cm    手札
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉1番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     15 cm    二枚掛
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉2番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     18 cm    カビネ
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉3番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     21 cm    5×8
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉4番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     24 cm    八ツ切
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉5番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     27 cm    7×9
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉6番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     30 cm    六ツ切
ゲルツ第3類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉7番     Double Anastigmat Ser.V (Dagor)       F7.7     36 cm    四ツ切





 1893年(明治26年)   ゲルツ(Goerz)  Double Anastigmat Ser.W  2群6枚  
迅速図写用鏡玉。F11
絞り開放での像面彎曲、非点収差の欠点なきことにより複写及び引伸し用。大なる集合、景色にも適す。

ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉 6番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11   30 cm 
ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉 7番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11   36 cm 
ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉7a番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11   42 cm 
ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉 8番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11   48 cm 
ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉 9番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11   60 cm 
ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉10番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11   75 cm 
ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉11番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11   90 cm 
ゲルツ第4類 ダブルアナスチグマット(ダゴール)鏡玉12番     Double Anastigmat Ser.W (Dagor)       F11 120 cm 





1899年(明治32年)   ゲルツ(Goerz)  Double Anastigmat Ser.Ua  F5.5   2群10枚  

3枚貼合せのゲルツ第3類の鏡玉は均斎式の理としてコマが修正されているが、後玉のみ使用するとコマが発生する。そこで複玉の後玉を焦点距離の長い風景用としても用いられるべく第2類が設計された。4種のガラスによる5枚のレンズを貼合せた鏡玉を絞りをはさんで対称に配置した複アナスチグマットであり、半均斎式(前玉と後玉が焦点距離が異なる同じ設計のレンズ)でツアイス第7類Aの好評にならい組合せ鏡玉としたものがゲルツ第2類アナスチグマット、均斎式(前玉と後玉が同じ)が第2類Aアナスチグマットである。後玉のみ単玉で使用するとF11。非点収差は4番目5番目の反対の性質のレンズによって修正し、5番目で像面の彎曲を修正する。複雑なレンズ設計でコストも高く、しばらくで製造を中止する。

ゲルツA2類 ダブルアナスチグマット鏡玉0番                         Double Anastigmat Ser.Ua             F5.5     12 cm    手札
ゲルツA2類 ダブルアナスチグマット鏡玉1番                         Double Anastigmat Ser.Ua             F5.5     15 cm   カビネ
ゲルツA2類 ダブルアナスチグマット鏡玉2番                         Double Anastigmat Ser.Ua             F5.5     18 cm    5×8
ゲルツA2類 ダブルアナスチグマット鏡玉3番                         Double Anastigmat Ser.Ua             F5.5     21 cm    八ツ切
ゲルツA2類 ダブルアナスチグマット鏡玉4番                         Double Anastigmat Ser.Ua             F5.5     24 cm    六ツ切





ゲルツ(Goerz)  Double Anastigmat  Panter    F6.3からF7.7  2群8枚 
複アナスチグマットにおいて劣勢であったツアイスはゴルツの3枚玉の第3類に勝る鏡玉として4枚貼合せの第7類を誕生させ躍進した。ツアイス第7類は単鏡玉としての使用でコマもなく好評であった(ゴルツ第3類の単使用はコマが出る)。そこでゴルツはツアイス第7類に対抗し5枚玉の第2類Aを製造するが、しばらくで5枚玉を止め4枚玉のパンター鏡玉がツアイス4枚玉第7類の対抗馬としてとってかわる。パンター(Pantar)は4種のイエナガラスを張り合わせた鏡玉を半均斎式とした組合せ鏡玉で、前玉のみ後玉のみと合わせて3種の焦点距離が使える。単鏡玉としてツアイス第7類と同じくコマ、非点収差などが修正されている。単使用の明るさははF12.5である。ツアイス第7類より廉価であったが、ツアイスは優勢を保った。