明治20年 マリヲン著 江崎禮二訳 「写真術独習書」(国立国会図書館蔵) より鏡玉について


-----収差としてはじめに像面湾曲が述べられる

円き(像面湾曲)を避けて平たきを得るため工夫したる入り込みたる組立ての鏡玉あるなり



    次に目立つのは歪曲である。

シングルの「アクロマチック」の鏡玉は最も甚しく歪曲を生ず。例えば四角の物体を写せば図の如く顕わるるなり
しかし、この図は程合いを大きくなして示せり
実際においてはこの如き大なるみだれを生じることなし
その四角き形ただピントグラスの中央において少しの部分がたわむのみなれば、懸念する程のみだれを生ぜざるなり
また言うまでもなきことなれど通常の景色のごときは、そのみだれ僅少にしてほとんど知るを得ざるなり




--- レンズの種類の説明 ---明治中期、鏡玉はその映写の角度(画の周辺に収差が目立たない範囲)と写度(レンズの明るさ)のちがいにより人像鏡玉、風景用鏡玉、速直鏡玉(中庸) と用途に合わせて用いられた。


-----人像用鏡玉  





-----万能鏡玉(明るい速直鏡玉、人像用にも使用できるという意味で万能) (f6)  



-----速直鏡玉(ラピッドレクチリニア鏡玉すなわちシンメトリカル鏡玉 (f8)
この鏡玉は諸鏡玉中の最も便利なるもの、画像に歪曲を生ずることなし
如何なる景色撮影にてもこの鏡玉にてなすを得べし。殊に又光線の加減よろしければ通常の座敷にて人像撮影に用うるを得べし




-----広角直線鏡玉  f18