1Rokuoh-Sha

  Pearl camera
          パール手提暗函                                 
イーストマン・コダック社は乾板よりも利便的なフイルムの販売を始め、フイルム兼乾板使用に改めたフォールディングカメラを製造し好評を博した。これに倣いパールカメラが製品化された。パール手提暗函3號は蛇腹1段伸し、パール手提暗函4號は蛇腹2段伸し。大正に入り、「パール手提暗函3号」の改良機は「パール三號カメラ」(2段伸ばしも有る)、「パール手提暗函4號」の改良機は「パール四號カメラ」と呼び名が改められる。

パールは手札判の乾板とコダック118フイルム(日本では3號フイルムと呼ばれた)兼用のカメラでコダック社の手札判乾板、118フイルム兼用の3號カメラに倣ったものであるのでパールの3號はコダックの「3號」を連想する。しかしコダックの4號フイルムは4×5サイズの写真用であり、パール4號も3號と同じく手札判であるので理屈が合わない。2段伸ばしが4號、言い換えれば仕様が優れ値段が高い方が4號という考えが妥当であるが、別の角度からも更に考えてみたい。「写真とともに百年」には明治42年1月に2號と5號も発売されたように記されているが 当時の広告には3號と4號のみ載っている。


3號 

1909(明治42年)
パール手提暗函3號
手札判


Bausch & Lomb   Symmetrical 2群4枚  


No.118ロールフィルムと手札判乾板 両用
1912(大正元年)にパール3號カメラ手札判となる 


  
明治42年発行の「写真宝鑑」の広告に載っている最初期のパールの写真は「小西六カメラの歴史」24ページの実物写真と金具類が異なっている。自分の所有するパール3號、4號も小西六カメラの歴史に載っているカメラと同様のもので明治44年製ではないかと考えられる(小西六カメラの歴史にはシャッター、レンズの組み合わせ替えただけとあるが)。最初期型のパールは現存を確認できない。



パール3號カメラ葉書判とパールコダックについて

1914(大正 3年)
パール3號カメラ
葉書判
(手彩色絵葉書の流行により登場)
蛇腹2段伸し エキストララピッド アプラナート
No.122ロールフィルムと葉書判乾板 両用



下のパールコダックは大正3年8月精巧堂「写真のとりかた」の目録の図である。パールコダックは手札判と葉書判があったことがわかる。小西本店「写真月報」におけるパール葉書判の広告の初出は大正3年11月である。先にパールコダックとして販売されていたものをパール葉書判として広告したことになる。パール葉書判はまもなくコダックスタイルを止め他のパールと同様のスタイルとなる。コダック社との関係によるものであろう。
        小西本店パールコダック


三越写真部目録のパールコダック


ミニマムパールとミニマムアイデアについて
明治44年4月にミニマムアイデアが発売される前3月にミニマムパールが発売されたと「写真とともに百年」に記されています。エキストラプラスチグマット コンパウンドシャッター 60円 木製革張蛇腹式と記されていますのでこのカメラに類似するものとしてパールコダック(丙)として発売されたカメラがあります。アサヒソノラマ「小西六カメラの歴史」24ページのミニマムパールの写真(蛇腹2段伸ばし)とこのパールコダック(蛇腹1段伸ばし。国産カメラ図鑑15ページに小西六が保存した固体の写真がある)は細部が異なりますが、ミニマムパールとパールコダックは同じ種類と推定されます。
小西本店は手札判、二枚掛の小型カメラであるミニマムパルモスの好評を見て、手札判の最小型手提暗箱を売り出そうとした。しかし写真は引伸しの時代に入り原板は小型化に向かい、カメラ自体も細小型を売る時となった。 明治末、大正時代初めに世界中で小型カメラが流行し、小型判カメラミニマムアイデアが販売されました。ミニマム会の入会資格者はミニマムアイデア愛用者となっています。ミニマムパールの使用例は見当たりません。




    
           パール3號 手札判                 パール3號 葉書判

実撮影面を計ると、手札判 8.2cm×10.7cm 、葉書判 8.2cm×13.9cmであり、
短辺は同寸
(当時の葉書の寸法は9cm×14cm)。

コダックフイルムのスプール 
左No.122フイルム
(葉書サイズ)
右No.118フイルム
(手札サイズ)

 



手札判もスタイルが変更される
 

パール3號カメラ 手札判





1916(大正 5年)
パール3號カメラ 
普通名刺判

フイルムを使用するが、乾板アダプター別途あり
手札判、ハガキ判も同様式に変更される
Wollensak Voltas
 10.8cmF82群4枚  R.R



4號
1909(明治42年) 手札判 パール手提暗函4號 No.118ロールフィルムと手札判乾板 両用 
1911(大正元年)にパール4號カメラ手札判となる   
Wollensak  Voltas 13.5cm F8 2群4枚   R R
注文取付け例
Zaiss   ProtarVa 1番 12  cm F9 2群4枚
Goerz  DagorV  0番 12  cm F6.8 2群6枚 
Zaiss TessarUB 4番 13.5cm F6.3 3群4枚
Rodenstock Extra Rapid Aplanat 13 cm F7.7 2群4枚   1912(明治45年)

左 パール4號カメラ(手札判)        右 同 3號(手札判)
ともに最初期パールの二次製品と考えられる。



1912(大正元年) 葉書判 パール4號カメラ    No.122ロールフィルムと葉書判乾板 両用
(絵葉書の流行に合わせたもの)
Wollensak   Voltas 16.8cm .F8          2群4枚  R.R



1915(大正 4年) 普通名刺 パール4號カメラ    No.120ロールフィルムと普通名刺乾板 両用 
Wollensak Voltas 10.8cm F8          2群4枚  R.R




1913(大正 2年) スペシャルパール  2種    
Rodenstock Extra Rapid Aplanat 13 cm F7.7 2群4枚
Wollensak Vinco 13 cm F6.3 3群3枚



1923(大正12年)              パール2型    No.120フィルム専用 
     
       Wollensak  RAPID RECTILINEAR      12 cm       F8     2群3枚 semi R.R



1931(昭和 6年)           パール2型改   No.120フィルム (6×9cm) 2枚撮り装置付き(さくらフイルムが誕生している)  
      Rodenstock Trinar                   10.5cm     F6.3    3群3枚
     Wollensak   Deltus                   10.5cm     F6.8    3群3枚




1933(昭和8年)              パール          No.120フィルム (6×9cm) 2枚撮り装置付き。濃緑色、鳶色の色変りボデーあり。
                                          (昭和11年に Hexar F4.5付き発売。
                旭光学合資会社  
Zion     10.5cm   F6.3
Zion     10.5cm   F4.5

Optor  10.5cm   F6.3
Optor   10.5cm   F4.5
     

                               

            
初期のパールカメラの広告