凸凹レンズの組合せと収差について
コンラッド氏は技芸協会における鏡玉にかかる講談で各種の凸凹単玉に生じる球面収差をいと簡易に説明した。その講談によれば、単玉の球面収差は右図のとおりである。平凸単玉をその平面の方を被写体に向けて撮影すると、その球面収差は著しいが(第五)、凸面を被写体に向けて撮影すると球面収差は少ない(第一)。この図の凸面及凹面の単玉は、同一の焦点なるが故に、第一を第六に組合せ、第二を第七に組合せ、以下これに準じて、組合せと為し得らるるなり(凸凹2枚のレンズを組合せた系としての凸レンズ)。このレンズは光軸に平行な光線について球面収差を少なくすることができるが、斜めに入る光線については修正されない。そのレンズの凸面の方を被写体に向けて写すときは中心部はかなり鮮明だが、 斜めに入る光線によりコマ、非点収差が生じぼやける(例.第一と第六の組合せの場合)。 これに反して、凹面(あるいは平面) を外にして撮影するときは、コマ、非点収差は減少し周辺部がはっきりするが球面収差は増大し中心部も鮮明でなくなる(例.第五と第十の組合せの場合)。


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1枚の凸レンズの球面収差はメニスカス(三日月型)とすることにより修正されるが、さらに収差を少なくするには凸凹レンズを組合せて系としての凸レンズとし使用する。1枚の凸レンズは周縁部ほど屈折が強いが、凸凹2枚のレンズを右図のように空気間隔を入れて組み合わせた場合、レンズの中央部は屈折率が強まるが、周縁部は単玉であるのと変わらない (凸レンズの正の球面収差と凹レンズの負の球面収差が打ち消しあう)。故に中央部分と周縁部を通った光線が同じ点に集まるよう屈折の調節をすることができ、球面収差が修正される。

(2枚以上のレンズを組み合わせた単レンズ(色消しレンズ)は小口径のものは松やにで貼合せるが、人像鏡玉に用いるような大口径のものは空気間隔を置いて組む)