Rokuoh-Sha


    米 Wollensak社(ウォ
小西本店は大正3年に(米) Wollensak社のベリートレンズ(Verito 2群3枚)の輸入を始めている。ベリートは色収差と球面収差とが綾なすソフトフォーカスの描写で有名である。当時の写真誌に、このレンズは設計にあたり色収差を除くことができなかったのだ、との見方が載っているが、ヲーレンサック社はベリートのほかにもいくつかソフトフォーカスレンズを設計している。芯のある軟焦点描写がベリートの特徴でそれ以前のダルメイヤーなどの球面収差によるソフトフォーカスレンズとは異なる映りをする。また現在の(カラー写真時代の)ソフトフォーカスレンズは色収差をはじめ各収差を修正し球面収差のみを残存させ、ソフト度を調整するものであるが、ベリートは色収差と球面収差を残存させ、とくに色収差の適度の残存が芯のあるソフト描写の要になっている。ベリートの生まれた黒白写真の時代は整色性のない乾板が用いられていて、ベリートは乾板が強く感応する青色・紫色光線と肉眼で最も明るく感じる黄色光線との色消しがされていないので、肉眼でピント合わせをしてから僅かにずらし紫光線のピント位置に合わせた(色消しでないレンズは一般にずらしが必要であった)。すると紫光線がピントの芯をつくりそのまわりに他の波長の光線がハロをつくり、そこに球面収差によるソフト効果が重なりあう。(肉眼でピント合わせたままだと一番感光性の強い紫色・青色光線によるボケた描写が強調されピントの芯はなくなる)
大正11年になるとズレの調節の手間がいらぬよう改められる。
多量の球面収差と少量の色収差を巧みに組み合わせたレンズとなる。
 



1919年{大正8年)Wollensak社カタログ







吾輩の聞き及んで居る所によると、通例球面収差の匡正と色収差の匡正とは或程度まで相伴って居るもので、ヴェリト(ズレあるverito)の如きは例外的に球面収差を保存して色収差の一部を匡正したものだといふことである、果して然りとすれば、森君が著書に於いて球面収差はチャント匡正してあるといふと共に、色収差の量は全然匡正されない場合の量を取って居るのは全然ウソといはなくてはならない。(大正10年 写真月報 第26巻第3號 高桑勝雄 )


針孔には焦点がないというのは事実であるが、焦点に類するものはあるので、針孔の大さと映像距離とが或特定の関係になったときに映像は最も鮮明になり、映像距離を之より増しても減じても鮮明度を減ずるのみならず描写の軟性をも減ずるのである、この事情はヴェリトで精密に焦点が合った場合に描写が最も軟かいのと酷似して居る (大正10年 写真月報 第26巻第2號 南 實 )



さて、軟焦点(ソフトフォーカス)の描写を得る為めには球面収差のみによってもよい筈なのであるが、之と共に色収差を利用すれば画調においても、焦点の深さにおいても更に一層優秀なる結果が得られるのである。嘗てDallmeyerでは色収差を修正し球面集差を残した軟焦点鏡玉の効果を確むる為めにBergheim鏡玉と同様に色収差を匡正した(球面収差は残した)鏡玉を作り多く写真家及批評を乞ふたところ、実験者の報告はいずれも色収差ある鏡玉の如き好結果を生じないといふことに一致したのである。この如き事情であるから軟焦点の鏡玉には皆色収差が存していて、ヴェリトもまた多量の球状収差と少量の色収差とがある。
  







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