精神科ってどんなとこ? 〜精神科 Q&A〜


経験年数○年の若手(ウソ)精神科医YASU-Qが,その

独断と偏見に基づき「精神科」についてのQ&Aを提供します

統合失調症についてのQ&Aはこちら

新しいQ&A項目の希望はメールでどうぞ

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Q:精神科医の一日って?

A:以前,外来でドタバタしている私を見て,先生いつ昼ゴハン食べるの?いつトイレ行くの?と心配してくれる患者さんが時々いました(アリガト)。診療科によって医師の一日の行動パターンはかなり異なります。また勤める病院によっても異なってきます。
「朝一番早いのは〜」という歌が昔ありましたが(古過ぎ),多分,朝一番早いのは麻酔科・(オペ日の)外科医,朝一番遅いのが精神科医です(笑。

では,精神科医の一日はハードなのかダルダルなのか?私があちこちの病院に勤めた経験から各種精神科医の一日をここに再現してみましょう。
あくまで私自身の一日ですので,他の先生方はもっと勤勉だと思いますが...

ある大学病院研修医の平和な一日

AM8:00起床シャワーを浴びてカロリーメイトをかじる
AM8:45出勤電車3駅+歩き15分
AM9:15病院着本当は9時出勤のはずだが...
AM9:40コーヒー1杯飲んで病棟へすぐ行けよ
午前中ずっと患者さんの面接・その他雑用雑用というのは処方書き・検査結果チェック・指示出し等
PM0:30生協へ行ってメシを買うパン類とコーヒーの場合が多い
お午医局へ帰って同僚とメシ話題は上司のグチとか,病棟のカワイイ看護婦さんのこととか
PM1:30再び病棟へ午前中の続き
PM4:00医局へ帰るコーヒー飲みながら駄弁ったり読書したり
PM5:00終了ミーティング当直医への申し送りがメイン
PM6:00勉強会自分が訳や発表の当番でなければ船こぎながら参加
PM8:00医局へ帰る出前をたのんだり近所のラーメン屋へ行って夕食
PM9:00医局や病棟でウロウロ患者さんのサマリーを書いたりカルテ記載したり
PM10:30帰宅平均するとこれぐらいの時間になることが多い
PM11〜くつろぎのひと時彼女にTELしたり,本読んだり,クルマで峠行ったり
この頃はまだPC持ってなかった
AM2就寝かなり不健康な毎日です

*これはかなり平和な一日です。外来のお手伝い(外来番)とか入院受けがある日はもっともっと忙しくなります。
それにしても,今を去ること十数年前,のどかな時代でした。

ある総合病院精神科医の平和な一日

AM6:50起床ちゃんと朝メシ食わないともたないのでキチンとご飯食べる
AM7:20出勤電車乗りつぎ2回
AM8:45病院着9時ジャストにタイムカードチェック有り
AM8:55ちらっと病棟へ調子の悪い患者さんの状態のみチェック
AM9:05外来へすでに患者さんいっぱいです
午前中ずっとひたすら外来合間に病棟から呼ばれることも(泣
PM0:30やっと外来終了結構ヘロヘロなってます
お午院内の職員食堂でメシ外来の担当看護婦さんとグチグチ話しながら
PM1:00医局へ帰るしばし読書したりコーヒー飲んだり一休み
PM1:30病棟へ患者さんや家族の面接・検査結果チェック・指示出し・処置などやることいっぱい
PM4:30終了ミーティングお茶を飲みながら上司に一日の報告
PM5:00もう一度病棟へ夜間の指示出しや当直医へ申し送りしたり
PM6:00帰途に着く途中で本屋やCD屋に寄り道することも
PM7:30帰宅かなりヘロヘロなってます
PM9:00やっと一息夕食や入浴を済ましてグッとビールでも
PM11〜ネットと読書のお時間ちょっと元気が出てきます
AM1就寝少し早めに寝るようになりました

*総合病院ですが精神科の患者さんを一般病棟に結構な人数入院させてましたので,かなり忙しい病院でした。
特に,入院があったり救急受診があったりすると地獄で,昼メシ食えない日もよくありました。これはかなり平和な一日です。

ある大学病院助手の平和な一日

AM7:30起床朝メシを食わないことが多くなりました(全く食欲なし)
AM8:10出勤電車で急行6駅+歩き15分
AM8:50病院着さすがに9時には出勤していないと...
AM9:15コーヒー1杯飲んで病棟へだからすぐ行けって
午前中ずっと患者さんの面接・その他雑用教育のため研修医の先生と一緒に行動することが多い
PM0:15生協へ行ってメシを買うパン類とコーヒーの場合が多い
PM1:00ポリクリの学生さんの講義私は臨床脳波の担当
PM2:00学生さんの臨床脳波実習講義の続き
PM3:00外来へ走って行く予約制の特殊外来
PM5:00終了ミーティング当直医への申し送りがメイン
PM6:00勉強会自分が訳や発表の当番でなければ船こぎながら参加
PM8:00もう一度病棟へ研修医の先生のカルテや処方をチェック
看護婦さんとグチグチ雑談も
PM9:00研究室へデータの整理や論文書きの続き
PM10:30帰途に着く平均するとやはりこれぐらいの時間になることが多い
PM11:30〜やっと一息メシ食って風呂入ったらもう夜中
ネットやってるヒマもありません
AM2就寝以前よりさらに不健康な毎日です

*これはかなり平和な一日です。外来日は下記のようになります。

ある大学病院助手の平和でない一日(外来日)

AM7:20起床朝メシを食います(食わないともたない)
AM8:10出勤電車で急行6駅+歩き15分
AM8:50病院着すぐ外来へ走ります
AM9:00外来スタート患者さんは朝6時から並んでます
午後までずっと外来途中で病棟から呼ばれたり,入院が入ったりして泣くことも多し
新患さんを診たり,ポリクリの学生さんの指導をしなければなら
なかったりすると確実に昼メシは飛びます
PM2:30やっと午前の外来が終わりすぐ売店へ走りウィダーインゼリーと缶コーヒーを購入・胃に流し込む
PM3:00予約外来の患者さんが来る摂食障害や人格障害の患者さんがメイン(1人30分〜45分の予約)
PM5:00終了ミーティングに走って行く間に合わないことも多い
PM5:30病棟へ患者さんの家族との面接(家族療法)なども
PM8:00そのまま病棟で研修医の先生のカルテや処方をチェック
看護婦さんとグチグチ雑談も
PM9:00外来へ戻る一人ぼっちでカルテの清書したり治療上の戦略を考えたり
PM11:00帰途に着くもっと遅くなることもアリ
PM12〜やっと一息家に帰ったらすでにもう夜中
ネットやる元気なんて残ってません
AM2就寝メシ食って風呂浴びたらもう2時です

*これでも外来日としてはマシな方。昼メシどころかトイレすら夕方まで行けないこと多し。この頃はよく患者さんに
身体の心配をされました。
一日の外来でだいたい30〜40人の患者さんを診ます。私は精神分析的なアプローチも好きなので診察に時間がかかることが
多かったのですが,開業している先生方はもっとたくさんの患者さんを一日にさばいておられます(とてもマネできません)。

ある精神病院勤務医の平和な一日

AM7:45起床朝メシは通勤途中のコンビニでゲット(パンとコーヒーのこと多し)
AM8:10出勤電車乗りつぎ1回+歩き
AM9:15病院着新聞を読みながら朝メシをとる
AM9:35病棟へ1つ1つの病棟を回りながら調子の悪い患者さんの状態をチェック
AM11:00そのまま病棟でその日の担当病棟の患者さんの問診
PM0:30午前の部終了医局へ帰って昼メシ(病院食)
PM1:45ごろボチボチ病棟へ患者さんの問診の続きとか患者さんの家族との面接とか
PM4:30医局へ戻ってくるお茶を飲みながら同僚と駄弁る
PM5:30帰途に着く当直医へ申し送りして帰る
たまにこの後再度病棟へ行って仕事の続きをすることも
PM7:30帰宅まだまだ余裕です
PM11〜ネットと読書のお時間バリバリ元気です
AM2就寝ついつい寝るのが遅くなります

*一般的な単科精神病院での一日です。これはかなり平和な一日ですが,入院受けや外来の日はもうちょっと忙しくしてます。
でも,昼メシ食えない日は珍しいです。

私の経験では研修医時代と単科精神病院勤務医時代が一番元気で余裕がありました。逆にすごいハードだったのが総合病院精神科医と大学の助手時代でした。
誤解のないように再度繰り返しますが,これはあくまで私自身の例ですので,他の先生方はもっと勤勉な毎日を送っておられるかもしれませんし,もっとダルダルの...(以下略)。

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Q:リスカは病気ですか?

A:リスカ(=リストカット,手首自傷)がなかなか止められず悩んでいる人は非常にたくさんいると思われます。ネット上でも,リスカは病気ですか?どうやったら治るんですか?とよく質問されます。

くどいようですが,精神科では「病気かどうか」の判断は常に困難です。リスカの常習者さんでも,社会生活を無難にこなし,本人や周囲がリスカを全く気にしていないなら病気とは言いにくいですし(実際にそういう人もいます),たとえ数回だけのリストカッターでも,それに真剣に悩んでいるなら病気と考えていいでしょう。
ただいずれにせよ,リスカは本来望ましい行為でないことは確かです。あなたではなく,あなたの家族の誰かが,あなたの大事な人がリスカをしていたらあなたはどう思うでしょう。うれしいですか?
また,誰もがする行為ではありませんので明らかに「異・常」な行為でもあります。当然ながら危険もあります。手に深刻な障害を残した患者さんもいます。したがって広い意味で言えば,リスカは「病気」です。患者さんがリスカをすれば必ず私は止めます。

ほとんどのリスカは自殺目的ではありません。自傷,つまり自らを傷つけることが主目的です。しかもくり返しくり返し行われます。痛いし,傷も残るのにどうしてそんなことをしてしまうのでしょうか?...そこには何かそれなりのメリットがあるはずです。あなたがリスカを止めたいならばそれを考えて見て下さい。

YASU-Qも職業柄,たくさんのリストカッターを知っています。非患者さん,つまり精神科に受診していないリストカッターの方も知っています。以下は彼らから聞いた話をYASU-Qの推測を込めながらまとめたものです。もちろん全ての人がこうだ,と言っているわけではありません。全然違うよ,という方もおられて当然です。

多くのリストカッターは不思議と口をそろえて「リスカの時は痛くない」と言います。後になってから痛む,という人もいますので,おそらくリスカ決行時は「痛みを感じにくい」状態になっていると思われます。多くの人がリスカ決行時には「自分の世界に入り込んでる」感じを持っているため,おそらく軽いトランス状態のような自己催眠のような,「知覚の幅が極端に狭まった」状態になっているのかもしれません。精神医学用語で「解離状態」と言います。
自分が,カミソリを持った右手とカミソリをあてられた左手(左利きなら逆)だけになったような,「切る自分」と「切られる自分」だけになったような(あるいはそれに「それを見ている自分」を加えた3者),そんな感覚かもしれません。

そしてまた多くのリストカッターが,「流れる紅い血を見,その暖かさを感じるとホッとする,安心する,やっと我に帰る」と言います。中には献血マニアを兼ねていて,リスカと同様,チューブを流れる暖かい血を感じるとホッとする,という方も結構います。
これらから考えると,流れ出た血を見たり,暖かさを感じたりすることが,緊張の「緩和」をもたらしているように思われます。つまり手首を切る瞬間まで高まりに高まった緊張が,流れる血を感じることでスーッとなごむ,「切る」と「血を感じる」の一組の行為がある種の「緊張」→「緩和」になっており,これが何らかの快感に結びつくのでしょう。皮肉っぽい言い方になりますが,一種の「癒し」効果とも言えるかもしれません。

この「緊張」→「緩和」のパターンは,「過食」→「嘔吐」などの行為にも共通しています。この種の「自分一人で」「比較的たやすく」「それほど大きなリスクがなく」得られる快感というのは,人によっては強力な依存性・嗜癖性を発揮します。いったんクセになってしまうと非常に止めにくい,ということです。そういう意味でも非常に危険な行為と言えるでしょう。くれぐれも興味本位でマネをしたりしないで下さい。因みにこの「緊張」→「緩和」のパターンは,精神分析学的には様々な意味付けをできるところですが...まあここでは止めておきましょう。

リスカは傷跡が残ります。一生消えない傷,ではありませんが数週間から数ヶ月,数年は残ります。この傷跡にも色々な意味がありそうです。
傷のない手首。それは何でもない普通の手首でしかありません。ところが,そこに傷が入った途端,それは普通の手首ではなくなります。それが明らかに人為的な傷であったらなおさらです。それは「傷つけられた手首」になります。傷つけられた手首は,見る人に様々な感情を起こさせます。同情を起こさせるかもしれませんし,嫌悪感を起こさせるかもしれません。いずれにせよその時,手首がそれを見る人に何かを語っている,訴えているわけです。「傷つけられた手首」は「語る手首」とも言えるかもしれません。
多くのリストカッターは傷を隠します。少なくとも一般大衆の前では(夏場は大変です)。その持ち主を知らない人達に対しては「語る手首」も多くは語りませんから。しかしある程度の関係を持った人達に対しては,手首は,口よりもよっぽど雄弁になることがあります。
でも手首を傷つけることによって語るその言葉は,あなたの意図したように相手に伝わるとは限りません。大きな誤解を受けたり,相手を傷つけてしまうこともあります。安易に手首に語らせるのではなく,語りたいことはキチンとあなた自身の口から出る言葉で語るべきです。

他の精神科の先生もサイト上で嘆いておられましたが,最近,リスカを賛美しこれをカッコいいこととするような風潮があるのは困ったことです。「強い感受性を持った芸術家肌の人間なんだ」,自分を他人と区別して,密かにそのような優越感を楽しんでいる患者さんもいるようです。いつの時代でも自殺や自傷行為をもってその人の「特殊性」「天才性」の証とするような風潮はありますし,実際にそういう芸術家もいますが...
でも考えてみて下さい。優れた感受性を持った人がみんなリスカに走るでしょうか?みんな自傷行為や自殺企図をくり返すでしょうか。「もし」そんな自己陶酔的な感情をもってリスカをしているなら,それはむしろとてもカッコ悪いことです。少なくとも私はそう思います。

リスカを止める。これは要するにあなたがリスカから得ているものを手放すことに他なりません。したがってあなたはリスカで得ている安心感や癒し,その他もろもろのモノを手放すことになります。これは非常につらい,寂しいことです。
また,リスカを止めた途端,あなたがこれまでリスカによってまぎらわせていた色々なストレスや感情に再直面することになります。これは避けられないことです。
これらは場合によっては医療の助けを借りないと乗り越えられないこともあります。ただ,医者やクスリが直接あなたの手を持ってリスカを止めてくれるわけではありません。
したがって,一番大事なのはあなた自身の「リスカを止める」という決心です。精神科医やカウンセラーは「あなたが自分で問題を解決する」手助けはできますが,「あなたの代わりに問題を解決する」ことはできません。カウンセリングもおクスリもあくまで問題解決の手助けであって,問題解決そのものにはなり得ません。大事なのはあなたの決心です。そのことさえ分かっていれば,精神科医やカウンセラーはとても重要な味方になってくれる可能性はあります。

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Q:患者のブラックリストってあるの?

A:私,結構ドクターショッピングしてるんだけど,ブラックリストに載せられてないか心配...という相談をもらいました。

精神科の患者さんはみんなナイーブでピュアな精神の持ち主です...なんてことはYASU-Qは決して言いません。精神科の患者さんと言ったってみんなタダの人間ですから,いろんな人がいます。ハッキリ言ってイヤな感じの患者さんもいますし,トラブルメーカーの患者さんもいます。「精神科医は騙してクスリを処方させるもの」と考えている患者さんだってそりゃいるでしょう。もちろんナイーブでピュアな精神の持ち主だっているでしょう。

病院や施設によっては確かに,過去に大きなトラブルのあった患者さんや,治療上,対応に特別の注意を要する患者さんに関してのリストは存在することがあります。それは施設の自己防衛というより,その患者さん自身や周囲の他の患者さんをトラブルの再発から守るためのもので,このリストに基づいて診療拒否をしたりするものではありません(とYASU-Qは信じています)
他にも,例えば当直時間帯に救急を頻回に受診する患者さんなど,当直医によって対応がちぐはぐだといけませんので,「対応マニュアル」を作ります。これも治療上のことなので「ブラックリスト」という言葉には当たらないでしょう。

依存性のある薬物をあちこちの医療機関から違法かつ強引に得ようとするようなかなり悪質な患者さんについては,医師会レベルで回覧が回ることがありますが,それ以外の単なるドクターショッピングのレベルでブラックリストが作られるということは,まずないでしょう。開業医の先生同士がそんなに詳細な情報をやりとりしているということはないと思われます。

ただ,あなたがもしあちこちの精神科医療機関から複数の処方を受け,特定のおクスリを大量にストックしたり自己調剤を楽しんだりしているとしたら,あなたのしている行為をもう一度考え直してみて下さい。それは場合によっては命にも関わる危険な行為です。キチンとした治療を放棄し,死神のブラックリストに自ら記名する行為です。
治療やおクスリの処方は自分自身でコントロールしたい,精神科医なんかに頼りたくないという気持ちはよく分かりますが,どうかモチのことはモチ屋に任せて下さい。その方が結局は"より"安全で確実です(もちろん精神科の治療が万能だとは言ってませんよ)

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Q:精神科医ってもうかる?

A:下記は,世界で最も高いと言われる米国の(研修医を除く)医師の診療科別の平均年収です("New York Times" 2000年11月より.換算レート1ドル=124円)。別の数字を出している資料もありますが一応これは信頼できる数字と思われます。

1.放射線科医26万ドル (3200万円)
2.麻酔科医22万ドル (2700万円)
3.外科医21.7万ドル (2600万円)
4.産婦人科医20万ドル (2400万円)
5.病理学医17万ドル (2100万円)
6.内科医15万ドル (1800万円)
7.一般家庭医13.5万ドル (1700万円)
8.精神科医13万ドル (1600万円)
9.小児科医12万ドル (1500万円)
All全科平均16.4万ドル (2000万円)

はあぁ...。ため息が出ます。精神科は下から2番目ですが(笑),それでも日本の精神科医は,絶対,こんなにもらってません。

日本の医師の給与はというと,全診療科の常勤勤務医の年収を平均すると,卒後5年で(28〜30歳ぐらい)1000〜1200万円,卒後10年で1400〜1600万円という数字があります。はあぁ...。うらやますぃ。

そして我ら精神科医の年収はと言うと...他の科の半分,とまでは言いませんが正直なところ他の科の2/3から3/4ぐらいじゃないでしょうか。人の生命を扱っているのは他の科と同じですし,責任もリスクも同じ,連続当直もあるし,訴訟もある,社会保障は無いに等しく,老後の年金なんてまず期待できない...それなのになぜ精神科だけが...ふ,不当だ。

精神科でのクリニック開業も,もう都市部ではピークを越え,過当競争に入っているということです。開業医の年収も,医院の運営費用を差し引けば勤務医とちっとも変わらないなんていう話をよく聞きますし,よほどの基盤がない限り今後は新規の開業は難しいでしょう。
地方ではまだまだ精神科医は不足しています。しかし毎年毎年全国でかなりの数の精神科医が新たに誕生していることを考えると,いずれは飽和してきます。これからは精神科医はどんどん余ってくると考えていいでしょう。

精神科は(少なくとも他の診療科と比べて)絶対にもうかりません。「それでも精神科医になりたい」というあなた。私達はあなたのような人を待っています。
何となくラクそうだ,何となく格好良さそう,今のところ食いっぱぐれはなさそうだ,それなりにお金にはなるだろう...そういうイメージだけで精神科を志望しているあなた。精神科は止めときなさい。他の科へ行くか,いっそ米国に渡りなさい。

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Q:紹介状ってどんなこと書かれるの?

A:気になって気になって仕方ないのでつい自分で開けて中を見ちゃった,という患者さんも時にいます。それぐらい,気になるもんなんですね,紹介状。確かに誰でも,自分について書かれた文書があって,それが他ならぬ主治医の書いたもので,これからの治療を左右する内容で,しかもそれが今自分の手許にある,となると,読んでしまいたくもなるでしょう。

さらには,主治医のことを信用できない時はワザとウソの理由を言って紹介状を書かせ中身を確認する,何ていう奥の手を披露しているサイトもありますし,紹介状の文面で訴訟になったケースもあるようです。信用されてませんね,精神科医。仕方ないか(苦笑。

ただ,紹介状を開けて中を見てしまうことで,あなたのこれまでの治療やこれからの治療に取り返しのつかない大ダメージが生じることもあります。あなたの主治医に代わり,不肖YASU-Qがここであなたの紹介状の中身を解説しますので,どうか中を開けて読むのは思い止まって下さい。

精神科医の書く紹介状の中身は,紹介する相手によってかなり変わります。

パターン1:精神科医を相手に書く場合
当然ながら,精神科の診療に関する情報を書きます。診断・病名以外では,初診の時に聞かれるようなこと,つまり病歴・既往歴・家族歴と,自分の行った治療の概要,現在の処方などを書きます。
非常にていねいに書く先生もおられれば,「何やねん,これ」と言いたくなるようないい加減なモノも存在します(失礼!)。

パターン2:精神科医以外の医師を相手に書く場合
その診療科の病気に関することを中心に書きます。相手が歯科なら歯・口腔のこと,眼科なら眼の症状について。精神科のことについては,診断名,現在の処方内容などは(必ずではないですが)書きます。思わぬところで症状がつながっていることもあるからです。

パターン3:福祉関係,患者会関係へ書く場合
相手側が守秘義務を負っていない場合も多いですので,必要な情報に限って簡単に書きます。ただ場合によっては,ある程度病歴その他個人的なことを書かざるを得ない場合もあります。

パターン1の場合,問題になるのは

  1. 治療上の重要な情報を主治医が患者さんに伝えていない場合
    例えば「診断はアルツハイマー型老人性痴呆の初期ですが,本人には"抑うつ状態"と伝えています」とか書いてあったり
  2. 主治医との関係性について言及している場合
    例えば「人格的に不安定で,容易に依存的/攻撃的となり,治療関係には特別な注意が必要です」だとか書いてあったり
のような際に患者さん本人が中身を目にしてしまうことでしょうか。
1.の診断名の告知の問題についてはこちらのQ&Aも見て下さい。残念ながら患者さん本人に正直な病名を伝えにくいことは現在でもしばしばあります。そのような場合でも,(精神科相手の)紹介状には正確な診断を書かざるを得ません。こんな場合に紹介状を本人が目にしてしまったら,何もかもぶち壊しです。私の患者さんではありませんが,実際に病名を告知されて自ら命を絶たれた患者さんもおられます。
相手が精神科医ならどうせまた診断し直すことになるのだから診断名なんか書かなくていい,という意見もあるかもしれませんが,前の主治医がどのような診断に基づいて治療を行っていたのかは非常に重要な情報です。
「診断名」という診療上最も重要な情報はなるべく患者さんと主治医との間でオープンにされ共有されるべきものですが,精神科の病気に対し患者さん自身を含め多くの人が偏見や誤解を持っている日本の現状では,安易なインフォームドコンセントは非常に危険なこともあります。
2.のような情報も診療上とても重要ですが,本人が目にしてしまうと,とても傷ついたりそれまでの治療関係が台無しになってしまう可能性があります。
そんなこと後になれば判ることだしわざわざ書かなくていいじゃん,という声もあるかもしれませんが,前の主治医がどのようなことで失敗したか/苦労したかというのも極めて重要な情報です。患者さんのためにも次の主治医にキチンと申し送られるべきことでしょう。

パターン2やパターン3で問題になるのは,どのくらい精神科の情報が書かれるか,ということでしょう。精神科の病歴や家族歴などは,患者さんにすれば,できれば隠しておきたいと思っていることが多いので,精神科と関係ない所へ宛ててあれこれ書かれるのは当然,嫌がられます。精神科医もこれには気をつけている,はずです。

このように,紹介状の中には確かにマル秘な内容が書かれていることがあります。中身を読みたくなるあなたの気持ちもよ〜く分かります。ただ,待って下さい。主治医があなたにそれを託したということは,主治医はあなたを信頼しているということです。患者さんに渡さず,直接相手に郵送することもあります。 どうかその信頼を裏切らないで下さいお願い。あなたがそれを開けて得るものより,失うものの方がずっと大きいこともあるのです。ちょうど,パンドラの箱や浦島太郎の玉手箱のように...。

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Q:便秘がひどいのですが...

A:食事中の人,いましたらスイマセン。

精神科のおクスリ,特にメジャートランキライザーと抗うつ薬には,常に副作用として「便秘」がつきまといます。またメジャートランキライザーの副作用予防薬としてよく同時に処方される抗コリン剤も「便秘」を招きます。これらのおクスリで逆に下痢になったりする人もたまにいますが,大半の患者さんがこの便秘の問題に悩まされるといっていいでしょう。(→おクスリ一般に関してはこちら,他の副作用に関してはこちらも御参照に)

この便秘,おクスリをのんでいるうちに次第に慣れてくることもあるのですが,おクスリをのんでいる限り頑固に続くこともあります。ですから,便秘のひどい患者さんにはたいてい便秘薬,つまり下剤が処方されます。

下剤の代表的なものは酸化マグネシウム剤(名前の真ん中をとって"カマグ"と呼ばれます)という粉薬と,生薬成分を主成分とする錠剤("プルゼニド"とか"チネラック"など)です。液状になったおクスリ("ラキソベロン液"とか"シンラック液"など)もよく使われます。

これらのおクスリは確かによく効いてくれるのですが,長期に連用していると耐性ができ,だんだん効きにくくなる欠点があります。中には,普通の人が服用するとひどい下痢になるぐらいの量を毎日のんでいても1週間ぐらいビクともしない患者さんもいます。いずれにせよ,おクスリの副作用を止めるためにまた大量のおクスリが処方されるような状態は(やむを得ないこともありますが)なるべく避けなければなりません。

このためにはやはり普段の生活から便秘になりにくいように心がけるべきです。

まず,運動不足を避けなるべく身体をこまめに動かすこと(もちろん病状がそれを許さない場合は仕方ありませんが)。
1日1回は簡単な体操をすること(ラジオ体操でもOK。なるべく身体をねじる運動が良いそうです)。
繊維分を多く含んだ食事を毎日必ず一定量摂ること。
一日の生活を規則正しくし,(なるべく)早寝早起きをこころざすこと。
出ても出なくても決まった時間にトイレでがんばる習慣をつけること。
寝る前にコップ一杯の水を飲むこと(飲み過ぎないように)...などなど。急には難しいかな。でも,ぜひお勧めします。

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Q:精神科のおクスリと妊娠・出産について

A:これは,女性にとっては大きな問題です。実際に相談もよくあります。
ただ,いきなり結論を言ってしまうと,「主治医の指示通りにのんでる場合,ほとんどのおクスリはまず問題ありません」,ということになります。自分ののんでいるおクスリが気になる方は,主治医に相談し,納得いくまで説明してもらって下さい。ハイ,終了。

...これだけじゃあんまりなので,以下,ちょっと重箱の隅をつつくような話をしてみます。そのつもりで読んで下さい。

妊娠中の赤ちゃんの成長のプロセスをごく簡単にまとめると次のようになります。

1.妊娠最初期(妊娠3週末・1ヶ月まで)受精から着床直後まで
2.妊娠初期(4〜14週・3ヶ月まで)赤ちゃんの身体が形成される時期です(「器官形成期」といいます)
3.妊娠中・後期(15〜34週・9ヶ月まで)赤ちゃんがどんどん大きくなる時期です
4.妊娠末期(35週以降・10ヶ月)母体が出産への準備に入る時期です

...このように赤ちゃんの身体は妊娠初期にほとんど完成してしまいますので,おクスリが良からぬ影響を与える危険性は妊娠初期に集中していると言っていいでしょう。確かに精神科のおクスリのいくつかは,この時期の赤ちゃんに影響して奇形などのトラブルを起こす可能性を若干,高めるというデータがあります。したがって,こういうおクスリは「妊婦へは投与しないこと」または「やむを得ない場合に限って投与する」ことになっています。
参考程度に書いておきますと,1.の時期はまだ受精卵の細胞分裂の時期なので,おクスリが何か影響した場合は妊娠そのものが成立せず,むしろおクスリの影響は考えなくていい時期です。また,3.や4.の時期にはすでに赤ちゃんの身体はほぼできあがっているので,子宮内での発育不良や流・早産・死産などへの影響はわずかにあり得ますが,2.の時期と比べるとずっと危険性は低くなります。
ただ,主治医は当然,どのおクスリが危険か,その危険性はどのくらいかなどを踏まえた上でおクスリを処方しますので,主治医から処方されたおクスリを指示通りにのむ場合はまず大丈夫です

問題は,"主治医の指示通りにのんでいない場合"でしょう。特にOD(オーバードーズ:大量服薬)や複数のおクスリを勝手な組み合わせでのんでいる場合が危険です。一般におクスリの量や種類が増えるにつれ,奇形だけでなく流・早産・死産,胎児の発育不良などのトラブルが起こる危険性も高くなります。妊娠・出産そのものが大きなストレスになるのはよく分かりますが,何とか思い止まって下さい。ただ,仮に妊娠初期にこういうことをしてしまったとしても,おクスリによって危険性が増えるのはせいぜい数%が十数%になる程度なので,安易に赤ちゃんの命を奪うことを考えないで下さい。パートナーや主治医と十分話し合って,納得できる結論を出しましょう。

妊娠という出来事は,たいてい,予期せぬときに起こるものです(汗)。いざという時にあわてないよう,可能性のある人は,(できれば)一度さりげなく主治医に相談しておくことをお勧めします。主治医の方でもたいていは判ってますが(笑。

くどいようですが,もう一度。くれぐれも,おクスリは主治医とよく相談して指示通りにのむように(努力)しましょう。こういうこと(妊娠とか)が起こった時に主治医がキチンと判断・対応できるようにするためにも。

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Q:精神科のおクスリと月経について

A:これも,女性にとっては大きな問題です。実際に相談もよくあります。

一般に精神科のおクスリ(特にメジャートランキライザー)の副作用に月経不順というのがあります。これは身体の中に「プロラクチン」という妊娠時に産生されるはずのホルモンが増えてしまうことが原因で,卵巣からの排卵が抑制され,無排卵月経や月経不順・無月経が起こるものです。このホルモンの数字は採血により簡単に知ることができます。
また,このホルモンにより,妊娠していないのに乳房が張り,乳汁が分泌されることもあります(男性でも!)。
一時的に「妊娠しているかのような」状態になるわけですが,このホルモンによって「妊娠反応」が陽性になることはありません。「妊娠反応」では別のホルモンを調べています。

おクスリを止めればこの症状も治りますし,後に後遺症が残るような性質の悪い副作用ではありません。ただ,当然ながら気持ちのいい症状ではありませんので,気になる場合は,主治医に相談した上でそのおクスリを止めたり他のおクスリに変更したりすることが必要です。

おクスリの副作用以外でも,精神科の病気で月経が不順になったり止まったりすることはよくあります。特によく見られるのが摂食障害により急激に体重が減少,あるいは増加した際に見られる月経不順です 拒食症では無月経も重要な診断基準の一つです。うつ病で急激に体重が減った場合も,同様のことが起こる場合があります。

また,当然ながら婦人科の病気でも月経不順や無月経が起こってきます。脳外科的な病気で同様の症状が出ることもあります。場合によってはこれら別の病気である可能性を除外するための検査が必要になることもありますので,自分の判断で勝手におクスリを止めたり減らしたりはしないで,必ず主治医に相談して下さい(^_^)。

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Q:ずばり "セックス"について

A:別に今さら照れる必要もないですね(笑。セックスについてです。

一般に精神科の病気では,性機能にマイナスの影響がでることがしばしばです。
確かに,躁状態では性欲が亢進することがありますし,知的機能の減退を伴う病態(痴呆とか脳器質性疾患とか)や意識障害時に見られる脱抑制状態(ずばり抑制がとれちゃうこと)でも性欲が亢進しているように見えることがありますが,これらはむしろ例外です。性欲が減退したり,たとえ行為に及んでもどうもうまく"いかない"場合が圧倒的に多いでしょう。

また,精神科のおクスリもセックスには悪影響を与えます。たいていのおクスリは「精神安定剤」系なわけですから,せっかくムラムラともり上がった興奮に水をさすはたらきしかしません。感じにくかったり,興奮が持続しなかったり,なかなかクライマックスに至らなくなったりといった現象はこのせいです。抗うつ薬なども,残念ながら,この点に関してはちっとも気分をもり上げてはくれません。おクスリを変えることにより若干状態が改善することもありますが,基本的にセックスに関しては,精神科のおクスリは足を引っ張るものが多いと考えていいでしょう。
安定剤によって脱抑制的な状態になりすごく燃えたというケースも聞いたことがありますが(笑,通常はこういう薬効はまず期待できません。また,一部の抗うつ薬で男性のインポテンツの治療に用いられるものもありますが,これも例外的な使用法です。おクスリの乱用は"ダメ!絶対"ですよ。

ただ,安心して下さい。これらの状態は,あくまで精神状態や薬物の影響によるものですから,一時的なものであり,あとに残るものではありません。決して,もうずっとダメになっちゃったわけではありません。精神的な調子が良くなれば,あるいはおクスリが減れば必ず回復します

セックスの機能というのは非常にビミョーなものですから,病気が良くなっても,少しでも精神的な症状が残っているうちはセックスの方も「今一つ」な感じがすることもあり得ます。でも,たいていはあなた自身のこだわりやプライド,自信のなさなど病気に関係のないメンタル部分がそうさせていることが多いのです。病気は病気,セックスはセックス。「それはそれ,これはこれ」であまり気にせず気楽に楽しみましょう。

そのためには,まずパートナーにあなたの状態をよく分かってもらうことが必要です。決してイヤだから,嫌いだから"できない"のではなく,こういう事情があってできないということを伝えてみましょう。あなたが患者さんのパートナーである場合は,患者さんの調子に合わせ,当り前ながら決してセックスを無理強いしたりすることのないようにして下さい。これほど相手を傷つける行為はありません。
また,セックスを型にはめて考えず,その時のあなたやパートナーの調子に応じて臨機応変に楽しむこともできるはずです。「○○して××して,それから...」というのだけがセックスではありません。「△△して□□して,ハイそこまで」とか「☆★をヾして,∀をДしてみる」とか...いろいろ楽しみ方はあるはずです。あまり臨機応変になり過ぎるのもコワイですが...

日本では,たとえ相手が医者であっても他人と「セックスについて語る」のはタブーのような感じがありますが,たいていの患者さんが多かれ少なかれセックスの問題で悩んでいるのが事実です。また,最近になって日本の精神科医の間にもセックスの問題の重要さが認知されるようになっています。特に異性の主治医にはなかなか言いにくい問題ではありますが,精神科医と言えども医者は医者,セックスに関する問題でも,クールになって堂々と相談して下さい。

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Q:診断書と病名について

A:「診断書」というのは,通常は会社や学校に提出するものですから,患者さんの社会生活にとって影響の大きい,非常に重要な文書です。そこにどのような病名が書かれるかによってあなたの人生が変わります,というとちょっと大げさかもしれませんが。

悲しいことに,21世紀になった現在でも日本では精神病や精神科の病気に関する偏見・先入観が強く,診断書に正直な診断病名を書くことが患者さん本人にとってマイナスの結果にしかならないことがあります。
精神科に通院しているとか,入院歴があるとかそういうことが職場に判ったとたんに周囲の目が変わり,昇進がストップしたりさりげなく休職や退職を勧められたなどという例はいくつもあります。もっと露骨にクビにされるケースもあるようです。精神科医の仕事の何分の一かは,患者さんとともにこういった世間の逆風と闘うこと,と言ってもいいでしょう。

ですから,患者さんを守るためにも診断書の病名は「当り障りのない」病名を書くことが多いのです。もちろん診断書は法的にも正式な文書として扱われますのでウソは書くことができません。ですから「ウソにならない程度」で「当り障りのない」病名ということになります。
また,診断書を提出する先がどこであるかも書かれる病名に影響します。ある程度ストレートに書いてもOKな場合もあるでしょうし,ちょっとでもメンタルな要素をにおわすとマズイ場合もあるでしょう。実際のあなたの病気が非常に軽症であっても「当り障りのない」病名の方を書く場合だってあります。

実際にYASU-Qがよく診断書に書く病名を例にあげると,

病名の例イメージ当り障り度
"自律神経失調症"
"心身症"
"アルコール性肝障害"
"食思不振" など
非メンタルな感じの病名 当り障りなし
"不眠症"
"抑うつ状態"
"不安抑うつ状態"
"軽躁状態"
"神経衰弱様状態" など
軽症な感じの病名 まずまず当り障りなし
"統合失調症""精神分裂病"
"躁うつ病"
"てんかん"
"強迫性障害"
"アルコール依存症"
"摂食障害" など
教科書そのまんまの病名 提出先によっては当り障りがあることも

こんな感じです。これらのバリエーションの中から,患者さんと相談しながら提出先に合わせて診断病名を決めます。これはあくまで例ですので,あまり表の中身を真面目にとらないで下さい。

くどいようですが,診断書の病名と実際の病名は必ずしも100%一致しません。と言っても,あなたが実際に狭義の自律神経失調症であったり,軽いうつ状態であったりする場合はもちろん診断書の当り障りのない病名と実際の病名が完全に一致することになりますが。

また障害年金や保険関係の診断書では,少しでも障害の等級を高く認定してもらうことを考えると,逆に症状を「ウソにならない程度に」誇張気味に書く方が患者さんのプラスになる場合があります。ウソを書いたら犯罪です。エライことになります。
このような場合には,患者さん本人の自己評価よりかなり重症っぽい内容の診断書になることもあり得ますので,患者さんが目にしてショックを受けられることがあります。
YASU-Qもなるべく患者さん本人に「こんな風に書いてるよ」と診断書を見せて説明するようにしているのですが,時間がなかったりしてそうできない場合もあります。もしあなたが自分の診断書を目にしてあまりの重症さにビックリしたなら,それはきっと上記のような事情のもとで書かれたものですので,安心して下さい。

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Q:クルマの運転,大丈夫かなぁ

A:まず免許証について。

運転免許証は,本来の目的以外にも,身分証明や職を得る条件として非常に重要なものです。ところが従来,日本の法律では,精神障害者は自動車運転免許を持つことができないとされていました。最近やっとこの法律に改正の動きがあり,現在は特定の病気の場合以外は免許をとれることになっています。この「特定の病気」の条文にはちょっとマズイ点が残っており,法律"改正"ではなく"改悪"であるという声もあります。
ただ仮にあなたがその「特定の病気」であったとしても,実際には免許試験場で精神科医が面接をするわけでもなく,障害年金や手帳や32条の情報が公安委員会に流れるとかいったこともなく,自分でわざわざ申請しない限りは全く問題なく免許は取れてしまいます。それが本来あるべきことかどうかは分かりませんが,それが現実です。
ですから,あなたが主治医からどのような診断名を聞かされているにせよ,免許をとることは可能です。

ただ,主治医には自動車学校の申し込みをする前に一言相談しておいて欲しいと思います。というのは,あなたのその時の調子によっては自動車の運転が危険である場合もあり得ますし,次に述べるおクスリの問題があるからです。

精神科のおクスリ,特に安定剤系のおクスリは,脳のはたらきを全体的に,あるいは部分的に少〜し抑えることによって効果を表します。これはある意味でアルコールと似た面があると言っていいでしょう。
ですからおクスリをのんでいる時のあなたは,細かい微妙な判断力や素早い反射的行動力に関しては,自分で気づいていなくても少〜し低下していることがあります。たいていは運転に差し支えないレベルですが,急に危険な状況にさらされた際にこの微妙なおクスリの影響が悪い方向にはたらかないという保証はありません。またおクスリによっては安定剤以外でも結構な眠気を引き起こすものもあります。これが居眠り運転に結びつかないという保障もありません。

とは言え,今さら車の運転をするなとは言えないのが今の社会です。車の運転ができないということは行動範囲を狭めますし,生活や職業活動を制限して患者さんにむしろ大きな悪影響を与えるケースもあります。

どうしても車の運転が必要な場合は,一言そのことを主治医に伝えておいて下さい。「気をつけてね」くらいは言うかもしれませんが,たいていは黙認してくれるはずです。YASU-Qも実際に患者さんの運転を制限したことはほとんどありません。
もし主治医から運転を止められたら,それは本当に危険だと言うことです。どうか一時,運転は見合わせて下さい。大きな事故を起こしてしまったら,人生そのものが大きく狂ってしまいます。あなたが起こす事故の被害者の人生のことも考えてみて下さい。

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Q:コーヒーとかお茶でおクスリをのんでもいい?

A:私もよくカゼ薬とかゼンソクの薬なんかをコーヒーでのんだりしますが(笑,本当はダメです。

コーヒー,紅茶,緑茶などに"カフェイン"が含まれているのはみなさん御存知ですね。このカフェイン目当てでこれらの飲料を飲む人が多いと思うのですが,実はカフェインはおクスリがお腹の中で吸収されるのを邪魔することがあるのです。ですからおクスリの効き目のことを考えると,胃の中でこれらの飲料とおクスリが共存することのないようにするのがベストです。すなわちおクスリの服用前後1〜2時間はこれらの飲料の摂取をひかえる,コーヒーで服用したりするのはもってのほか,ということです。

また,カフェインは脳に対して弱い興奮作用を持っていますから(目が覚めるのはこのせいですね),不安や興奮,イライラ,眠れないなどといった症状を悪化させる可能性があります。ちょうど安定剤系のおクスリとは逆の作用になりますので,おクスリをのみながら同時にカフェインを摂ることは,わざわざおクスリの効果を打ち消していることにもなりかねません。

以上が一般論です。

でも...でもね...コーヒー飲んで落ち着くってこともあるじゃない。ね?ね?
因みにYASU-Qは一日に何回もコーヒー飲む人間です。

何かを口にするということはモノに関係なく不思議な精神安定作用があります。コーヒー・お茶もそうですし,タバコもそうでしょう。"過食"という現象もそれに類するものかもしれません。精神分析学的に言うと...以下略
これらにはいずれも若干の依存形成作用があります。口にするそのモノとか成分よりも,それを口にする"行為"に依存する,と言った方がいいかもしれませんが。こういう状態になってしまうと,おクスリ服用の前後数時間はガマンせよとか言われてもムリです。よけいに不安定になってしまいます。少なくとも私はそうです。
それだったらたとえ少々効果が減弱しても,コーヒー飲んじゃっても...いいよね?医者とは思えぬこの発言。

カフェインの問題に関しては,カフェインレスの製品に変える,モノを薄い目にする,服薬の直前直後だけは何とかガマンする,などである程度は回避可能です。もしどうしてもガマンできない人,(コーヒー類をしょっちゅう飲んでて,かつ)おクスリの効き目に不満がある人などは試してみて下さい。

精神科のおクスリ以外では,貧血のおクスリ(鉄製剤)がお茶の成分(タンニン)の影響を受けます。おクスリの説明の紙にも書いてあると思いますが,よく読んで注意して服用して下さい。

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Q:「人格障害」って言われました (泣)

A:精神科の病名の中には,告知することで患者さんを非常に傷つける可能性のあるものがあります。
「人格障害(英語では"personality disorder")」という病名もそうではないでしょうか。「あなたは人格障害です」と言われて誰もいい気持ちはしないでしょう。「人格」に「障害」って,要するに性格悪いってこと?とネット上でも質問を受けることがあります。日本語では「人格」というのはその人の存在そのものをさす意味がありますので,この病名にはまさにその人の存在そのものを否定するイメージがあります。

そもそも精神科の診断は常に「便宜上」「とりあえず」病名を付けている面があります。病気の本態が今なおよく分っていない以上,精神症状や検査の結果 (精神科には大した検査はないけど),あとは主治医の主観でとりあえず一時的な診断名を付けざるを得ないわけです。もちろん病因に直結した診断病名もありますが,大半の診断名は極めて便宜的なものです。
ですから精神科の診断体系は時代によってコロコロ変わります。現在世界的によく用いられているのが米国の"DSM (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)"という診断基準で,日本の精神科医もこの基準にそって診断をつけていることがほとんどです。そして「人格障害」という病名もこの診断基準に基づくものです。

"ICD"というWHOの出している診断基準もよく使われますが,細かい点でDSMとは相違があり,どちらに準拠するかで診断が変わってくることもあります。またDSMもICDも何年かに一度改訂があり,患者さんによってはこれで診断が変わってくることもあります。診断名そのものにはそれほど大した意味がないことがこれでもよく分ります。

もともと,精神病的な症状を呈するものの大きな悪化はなく,子供時代または思春期頃からあまり変わらない経過を持つようなケース,つまり精神病的ではあるが精神病や神経症ではなくむしろその人の持ち前の人格傾向に基づく病理が疑われるケースを「精神病質 "Psychopathy"」と古い精神医学では呼んでいました(業界用語ではサイコパチーを略して「パチー」と言います)。そして,精神的あるいは社会的に何らかの問題を抱えているけれど精神病や神経症とは診断できないようなケース,あるいは単に主治医や家族にとってやっかいで手に負えないようなケースが何でもかんでも「パチー」と診断され,無理やり(決して愉快ではない)精神科の治療の対象にされたという暗い過去が,この病名にはあります。ところが現在の「人格障害」の定義を見ていても,この「精神病質」の考え方の影響があちこちに見てとれます。

確かに,精神的・社会的に様々な問題を抱え本人がその解決を願って精神科を訪れたけれど,精神病ではないし,神経症とも言えないし,周りの環境のせいだけとも言えないし,その人の持ち前の人格傾向に原因があるとしか言いようのないケースは存在します。治療法も経過も精神病や神経症とは異なってきますから,こういう患者さん達に一つの診断名を与えグループ化して考えることは必要でしょう。ただこれはあくまで精神科医の側の都合・便宜のためであって,絶対的な病名ではないことを忘れてはいけません。人格傾向に線引きをし,ここまでは健康でここからが病気,なんて決めることは神様ででもない限りできないはずです。

DSM第4版にある人格障害の診断基準も読み方によっては結構あいまいです。

例えば境界型人格障害という診断の項目の一つで「慢性的な空虚感」というものがあります。
これを読んでいるあなた。あなたは慢性的な空虚感を感じてませんか? 私感じてます(笑)。というか,こんなあいまいで抽象的な表現をされても,感じているとも感じてないとも言えるじゃないですか。
他にもいっぱいあります。反社会性人格障害という診断の項目の中に「自分または他人の安全を考えない向こう見ずさ」というのがありますが,これだってどっちにもとれます。私は普段は慎重すぎるぐらい慎重ですが,時おりまさにこの診断基準通りの無茶をして周囲を驚かせることがあります。演技性人格障害という診断項目の中には「浅薄ですばやく変化する感情表出を示す」というのがありますが,私,示しているような気がします(笑)。
もちろんもっと定義のしっかりした項目もありますし,常にいくつかの項目を同時に満たさないと人格障害の診断できないことにはなっていますが,肝心の項目の中にこのようなあいまいで抽象的な表現がいくつも含まれているとなると,まさに診断を下すに当たって空虚感を感じざるを得ません。

また一般に人格障害というのは症状が長期にわたってほぼ固定しているのがその大前提で,おクスリや短期の精神療法では難治とされていますが,分裂病質人格障害と診断されて紹介されてきた患者さんが抗うつ薬でアッサリ治ってしまったり,私が統合失調症として治療し安定していた患者さんが,主治医が交代した途端に不安定になり境界型人格障害という診断に変わったこともあります。いや,そりゃ私の診断の方が間違ってたかもしれませんがね...
人格障害の患者さんが示すとされる心性は誰の心の中にも普通に存在し,他の精神病や大きなストレスがかかって心に余裕がなくなった時に,極端な形で表面化することはよくあります。このような状態にでもいとも簡単に人格障害の診断がなされてしまうのは,精神科医の心の中に「やっかいな患者,手に負えない患者はみんな人格障害」というバカな浅薄な思い込みがあるからでしょう。

このように「人格障害」という診断はあくまで医者の都合でなされる便宜的・操作的なものであって,主治医の側には一定の意味を持つものの,患者さんにとってプラスの意味を持つとは私は思いません。これを一つの独立した疾患の病名であると誤解し患者さんに堂々と告知するようなバカな乱暴な精神科医はいないと信じたいところですが...もしあなたの主治医が「あなたは○○型人格障害です」などとのたまったら,完全にムシするか,「私のどこがどう○○型人格障害なのですか?」と反論しておやりなさい。それでしどろもどろになるようなバカな頼りない医者は...以下略。

診断基準DSM-IV」や「精神病質」の概念については「サイコドクターあばれ旅」の中にも詳しい解説があります。

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Q:精神科医になるにはどんな勉強をしたらいいですか?

A:下記のようにがむばって下さい。

  1. まずとにかくどこでもいいから医学部に入ること。
  2. とにかく学生の間に色々なバイトをしてみること。
  3. とは言え,とにかく何年かかってもいいから卒業はすること。
  4. 卒業したら,とにかく何年かかってもいいから国家試験に合格すること。
  5. 首尾よく医者になったら,とにかく真面目に研修医すること。
  6. 身近な先生で格好いいと思う人がいたら,とにかく真似をすること。

以上で十分です。別に精神分析・精神病理学やカウンセリング理論を学生のうちから勉強する必要はなし。神経解剖や生理学,内科学など一般医学の勉強を真面目にする方がよっぽど大事です。また要領よくスイスイ進級するより,少々回り道しても色々な体験を積んだ方が打たれ強くなってイイかもしれません。精神科医には適度な感受性と適度な無神経さ,適度な弱さと適度なタフさが必要です。

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