10年目の復活 〜その4〜
   アンコールではやはり、伊黒俊彦と今川勉を伴って、辻仁成と伊藤浩樹は登場した。同窓会のはじまりだ。
 今までのライブでは必ず大きな声で「アンコール!」というかけ声がかかった。あまり格好のよいかけ声ではないけど、誰かが叫べば、誰かがこたえた。今回はついに「アンコール」のかけ声は聞かれず、まばらな拍手が手拍子に変わり、そしてまた拍手に戻り、と、波が押し寄せては引くような手拍子であった。今までECHOESのライブでは一度も座ったことがなかったが、10年たった僕は、多くの客がそうしたように、はじめて腰を下ろして仁成の再登場を待った。流れた年月は、ECHOES のメンバーだけでなく ECHOES kids にも強く感じ、そこにいた僕自身も例外でなかった。

 オリジナルメンバーによるアンコール1曲目はノスタルジックにも、"Oneway Radio" であった。オールナイトニッポンから入った ECHOES kids も多いだろう。やはりこの曲ははずせないのだなと思った。しかしDJをしていた仁成はともかく、他のメンバーはどうなんだろう。ECHOESよりもDJ辻仁成を思い起こさせるこの曲は、オリジナルメンバーでの1曲目でよかったか?むしろ"Visitor" や "Between"は?"Stella" や "Bad Boy" は?

 オールナイトニッポンをワクワクしながら聴いたあの頃を思い出しながら、"Oneway Radio" の演奏に興奮し、そして心のどこかにちっぽけなわだかまりが残った。

 そして "Someone Like You" が続いて演奏された。
 「誰かが君を好き」なのではなくて、「君に似た誰か」。このタイトルには胸に響くものがあった。もう聴くことのないと思っていたこの曲を今、目の前でオリジナルメンバーが演奏している。とても不思議な光景を見ているようだった。

  朝まで騒いだ街を あの時のままの君が
  他の誰かと 流してる
  僕らは変わるけれど あの時は変わらない
  出した手紙 戻ってきても         (SOMEONE LIKE YOU)


 一つ目のアンコールが終わり、同じような手拍子からまたメンバーが2回目のアンコールにこたえるために出てくる。

 "ZOO" がかかる。このときにも、"ZOO" から入ったファンを思い浮かべ、この曲でよかったと思い、また意識が曲に向かっていく。ツトムやトシが演奏していることを考えると、この曲がこのライブで最後の曲だ。辻仁成と伊藤浩樹が新しく組むユニット「Echoes of Youth」がどんな演奏をしたところで、オリジナルメンバーはこれが最後。悲しいけれどこれが現実。でも演奏がままならないツトムとトシを無理矢理ステージに立たせるのもこれが最後。仁成大はしゃぎの同窓会の夜は更けていく。

 ライブが終わってみると、一つの区切りを終えた気になっていた。

 いつもなら、会場の外でギターを演奏している ECHOES Kids にまざって騒いでいるところだったが、今回は連れがいたこともあって、その光景を目に焼き付けて帰ることにした。

 最後のECHOESにさよならして。

 

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