10年目の復活 〜その3〜
   "Shout"、"Reverse Rock City" と、アルバム「EGGS」に入っていたリズミカルな曲が続き、仁成はステージ中を駆け回り、ステージの両端に立てたECHOESの旗が翻る。

 MCが終わると"Rainbow" でまた場内はわき上がる。

  愛を探してると君が言う
  愛が気にかかると彼が走る
  愛が届かないと奴が怒鳴る
  愛が素晴らしいと僕が歌う  (Rainbow)


歌詞は相変わらず多く間違えていた。仁成は以前からよく間違えていたし、10年ぶりともなれば仕方ないかもしれないが、ルックスやタイアップではなく、歌詞を大事にするECHOESを楽しみにしてきた身としては少し残念でもあった。

 小田原さんが叩くドラムは聴き心地がよかった。以前にレベッカのライブも武道館で観たことがあり、あのときの"lonely butterfly"の乾いたドラムが胸に染みたのを思い出した。時折そこにツトムがいないことに気づきつつも、小田原さんのドラムもいいものだと耳を傾けた。

 MCでは仁成がメンバー紹介をやる順番を間違えていたと苦笑していた。いつものように、いやそれ以上に口癖の「all right!!」を繰り返し、さすがに疲れはあるのだなと思わせた。しかし饒舌な彼のトークはとても心地よかった。

 "Foolish Game" "Rolling Rock" とアルバム「HURTS」からのナンバーが続くが、ツトムがいないためだろう、"Tug Of Street" は演奏しない。そして、フルメンバーが揃わないまま、最高潮を迎え"Jack"。 "Bad Boy"からのつながりを期待していたが、仁成が「カモーン、、」と叫んでしまったから仕方ない。僕らも張り裂けんばかりに、そしていつものように「Jack!」と答える。アルバム「No Kidding」のような"Welcome to the Lost Child Club"もない、アルバム「Gold Water」のバージョンように、のっけからビートののったサウンドが包み込む。

  愛を切らしてる君に
  On the road On the road
  明日この道の上で (Jack)


"ZOO" から入った人たちには、このサウンドに一心不乱にこぶしを突き出す僕らをみて、一種の気味悪さを覚えたのではないかと思う。音楽を通じて頭の中で放出される麻薬物質で、こんなにも酔ってしまうのかと自分でも怖かった。

 そして今日のライブの中心を占めるアルバム「EGGS」のとりでもある "東京" が流れる。

  東京を愛せない 東京がとてもにくい
  別れるたび 部屋を変えたのに 心は未だ越せず  (東京)


 そして、辻仁成と伊藤浩樹は、ステージを降りた。

 

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