年休(年次有給休暇)権の行使に関して,管理職が「どうしやぁた?」と聞くのは,「6箇月以下の懲役刑,または30万円以下の罰金刑」の刑罰に該当します。
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ここで,一つ,練習問題。あなたならどう考えますか?
一昔前に実際にあった話です。ある教職員組合の青年部長がその中学校の職員室の公式の話し合いの場で年休のことで大声で発言しました。「生徒が学校を休むときには学校の担任に休む理由を告げるのであるから,教職員が年休を取るときには,校長先生に年休の理由を言わなければならないのは当然ではないか」と。聞いていた人たちの一部でしたが,この発言にしばしあっけにとられてポカ〜ン。さて,この発言のどこが根本的に間違っているでしょうか。
そうですね。保護者の親権の下にある児童・生徒と,すでに実社会の労働現場に出て労使関係の中で働いている者とを,まったく混同して区別できないでいます。
労働者は現実の資本家との関係の中では常に憲法と労働基準法等の法制下で使用者の虐待・人権侵害からまもられなければならない存在です。年休の理由を聞かれるということは,個人のプライバシーをのぞかれるということです。誰であろうと主権者である国民のプライバシーに踏み込む権限はありません。
年休の理由を言わないと年休が取れないとしたら,年休を取りたい人はプライバシーをのぞかれても良いと覚悟するか,プライバシーを知られたくない人はそのつど年休を取るための嘘の理由を考えなければなりません。ここに憲法で保障するほんとうの自由があると言えるでしょうか。何の気兼ねもなく年休を取れるのがほんとうの自由な状態です。
上の最高裁の判例が,年休の使用目的に使用者が干渉することを労働者の年休取得の自由への侵害としてきびしくしりぞけているのはそのためです。
元青年部長F氏は,児童・生徒に対してすらまもられなければならないプライバシー保護の権利という憲法の崇高な自由権が,労使関係の中で大人にも当然のごとく同様に保障されなくてはならないという市民社会の初歩的な原則すら“まったく理解の範囲外”というわけであり,こういう人物やその同類が平気で教壇に立つ学校とはなんと恐ろしいところであるか,心胆を寒からしめられずにはいられません。
次の問題に移ります。(いわゆる「時季変更権」)
管理職の中には,年休の届け出をしても,「その日は職場が忙しいからダメだ」と,使用者側の「時季変更権」を振りかざして妨害してくる者もあります。これがまかり通ったら,年休権は事実上行使できないという不合理なことになります。
ですから,最近の判例では,以下のように使用者の「時季変更権」の濫用を明確に断罪しています。
「時季変更権」って?
労働基準法:第39条・第4項;「使用者は,有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし,請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては,他の時季にこれを与えることができる。」
この「ただし,」以降の部分を,管理職は「時季変更権」などと言っています。
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忙しいからダメ,ということがまかり通れば,常に忙しくされている職場では,絶対に誰も年休を取ることができません。この点がとても重要なのです。
当局側は,繁忙な教育現場の状態をすみやかに改善し,教職員が請求する時季にいつでも年休が取れる状態にする義務があります。
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