ローリング・ソバット

タイガーマスクといえばローリング・ソバットである。81年４月23日、蔵前国技館での初代の衝撃的なデビュー戦で、開始ゴング直後にこの技をデモンストレーションして見せたのはいまだに鮮烈な記憶だ。以後、歴代タイガーはなぜかデビュー戦で、このムーブを見せるという隠れた「伝統」もある。ソバット（サバット、サファーデ）とはもともとフランスの打撃格闘技（フレンチボクシングとも言う）の名前であり、その技術なのだろう。初代はサミー・リーと名乗ってのイギリス修行時代から、この技を多用していた。宮戸らが使っていた単なるソバット（後ろ回し蹴り）ではなく、ジャンプして回転しながら足底で相手のアゴもしくは鳩尾を蹴る技で、正確にはフライング・ローリング・ソバットと称するべきだろう。この発展形が延髄ローリング・ソバットである。
歴代タイガーの中では初代がダントツの名手であり、幾多の名勝負で常に見せてきたが、４代目もなかなかの使い手である。逆に２代目はフライング・ニールキックらしき蹴りをまれに見せていたが、ローリング・ソバットを綺麗に決めたシーンというのは記憶にない。また３代目もたまに使ってはいたが、やや腰高で安定感に欠けていた印象がある（これは現在の金本が見せるパンチ・キックにも共通する欠点だ）。その他の使い手では、武藤、ジュニア時代の高田らが挙げられる。