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「統合失調症 期末試験」の正解と解説です。
分からなかったところ,自信のないところだけでなく,できれば全部をもう一度読み直して勉強してみて下さい。

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問1:統合失調症は最近まで○○という病名だった・・・・・・ (一般的知識・易)
× 精神失調病
× 自律神経失調症
× 早発性痴呆 → 昭和の初期までこの呼び名でした。
精神分裂病 → この病名をめぐって様々な論議があり最近やっと病名が変わりました。

問2:「統合失調症」の元になった"schizophrenia (Schizophrenie)"という病名の名付け親は? (一般的知識・中)
E. ブロイラー
× S. フロイト →「精神分析学」の創始者です。
× E. クレペリン → ブロイラーの先輩で「早発性痴呆」という病名の提唱者です。
× H.C. リュムケ →「プレコックス感」という概念の提唱者です。

問3:有病率から計算すると人口1万人中,統合失調症の患者さんは約何人? (一般的知識・易)
70〜100人 →この病気の有病率は0.75〜1%なので,大体このぐらいの人数の患者さんがいることになります。
× 1000〜1200人
× 10〜40人
× 1人いるかいないか

問4:どんな人がなりやすい? (一般的知識・易)
× 知能の高い人がなりやすい
知能に関係なく誰でもなり得る → 知能の高さと発病には相関がありません。
× 標準的な知能の人がなりやすい
× 知能が低い人がなりやすい

問5:好発年齢は? (一般的知識・中)
× 3〜5歳 → 小児の発病例もありますがまれです。
15〜30歳
30〜45歳 → このぐらいの年齢での発病もよく見られますが,もう少し若い年齢での発病が多いです。
× 50〜70歳 → 初老・老年期の発病例もありますが多くはありません。

問6:遺伝との関係について正しいのは・・・・・ (一般的知識・易)
× 両親のどちらかが発症した場合,子供の発症する確率はせいぜい10-20%と言われています。75%もありません。
× 統合失調症はメンデルの法則に一致した優性遺伝形式をとって発症する →大ウソです。
× 一卵性双生児で一方が発症した時のもう一方の発症率は30-80%との報告があります。決して100%ではありません。
病気の「素因」の形成に遺伝が関係することはありますが,病気そのものが遺伝することはありません。

問7:親の養育態度について・・・・・ (一般的知識・中)
× 親の養育態度に矛盾が多いことが子供の発症リスクを増やすという説(ダブルバインド説)が過去にありましたが,これが主要因とは言えません。
× 同様に,親の虐待や無視がこの病気のリスクを増やすことはあっても,最大の原因とはなりません。
× 同様に,親が子供を甘やかすことは発症リスクを高める可能性はあっても,大きく高めることはありません。
発症の危険性に確実に影響することが証明された養育態度などは存在しない →したがってこれが正解です。

問8:統合失調症を患っていたと考えられている著名人は? (一般的知識・中)
J. ナッシュ(数学者) →映画「ビューティフル・マインド」で有名ですね。映画の中の症状の描写はウソっぽいですが。
芥川龍之介(小説家) →この人も有名ですね。「河童」や「歯車」を読んでいると辛くなってきます。
ゴッホ(画家) →他の病気だったという説もありますが,統合失調症説が有力です。
上記の全員 →したがってこれが正解です。

問9:統合失調症の発症について正しいのは?(その1) (症候学的知識・中)
× 一部に共通した症状はありますが,自閉症と統合失調症はもともと全く別の病気です。
いつから発症したのか分らないような緩徐な発症をすることがある →「潜在性発症」といいます。
× 最近,前頭葉のドーパミン活性低下がこの病気の「素因」と関係していると言われていますが,発症との関連は不明です。
× 陽性症状の発現にはドーパミンが大きく関わっていますが,必ずしも発症時に脳内のドーパミンが増えるわけではありません。

問10:統合失調症の発症について正しいのは?(その2) (症候学的知識・中)
発症時には必ずしも幻覚や妄想といった症状が出るとは限りません
× ほとんどのケースで発症時には幻聴が存在する →幻聴はよく見られる症状ですが「ほとんどのケース」とまでは言えません。
× 急性発症時には興奮して他人に危害を加えることが多い →むしろ自傷や自殺の危険性があります。
× 発症時に無理に治療を受けさせるのは危険である →初期治療が非常に大切です。

問11:統合失調症では決して見られない精神症状はどれ? (症候学的知識・中)
× 抑うつ →しばしば見られます。
× 気分の高揚 →しばしば見られます。
× リストカット →時々見られます。
「統合失調症では決して見られない症状」なんてない →したがってこれが正解です。

問12:統合失調症と似た症状が出ることのある病気について・・・・・ (症候学的知識・中)
× 多くはありませんが,時に糖尿病の合併症によって意識障害を起こし急性精神病として精神科に運ばれてくるケースがあります。
× 白血病で幻覚・妄想が出ることはない →中枢神経浸潤により幻覚・妄想状態になることがあります。
覚せい剤中毒ではしばしば被害的内容の幻覚・妄想が見られます。
× 側頭葉の脳腫瘍で幻覚・妄想が出ることはない →部位によっては「1級症状(シュナイダー 1939)」が出るケースもあります。

問13:統合失調症の症状として正しいのは? (症候学的知識・中)
精神症状は大きく陽性症状・中性症状・陰性症状に分けて考えられることが多い →中性症状というのはないです。
やる気が出ず根気が続かないというのは陰性症状の1つである →その通り。代表的な陰性症状です。
× 誰かが自分の悪口を言う声がどこからか聞こえてくるというのは陰性症状の1つである →悪口の幻聴は代表的な陽性症状です。
× 現在世界で最も広く用いられている診断基準(DSM-IV)では陰性症状のみを重視している →むしろ陽性症状を重視しています。

問14:(DSM-IVによる)統合失調症の病型として存在しないものは? (症候学的知識・易)
× 解体型(破瓜型) →存在します。思考や行動がまとまりにくかったり陰性症状がメインとなる病像です。
× 残遺型 →存在します。陽性症状がほぼ消褪して陰性症状がメインになった状態に相当します。
× 妄想型 →存在します。妄想や幻覚などの陽性症状がメインの病像です。
AB型 →血液型じゃないんですから...

問15:E. ブロイラーが統合失調症の基本症状の中でも特に「基礎障害」として重視したのは? (病理学的知識・難)
× 感情の平板化 →これも4つの基本症状(4A)の中の1つですが,むしろ基礎障害によって2次的に出てくる症状とされています。
概念のつながりが弱くなり,思考のまとまりが悪くなること →これが4Aの中でも全ての基礎になる症状「連合弛緩」です。
× 複数の声が互いに会話をしているような幻聴 →シュナイダーの1級症状(1939)の1つです。
× 被害妄想 →他の病気でもしばしば見られる精神科では非常にありふれた症状です。

問16:ブランケンブルクが統合失調症の基礎障害としてあげたのは? (病理学的知識・中)
自明性の喪失 →「みんなにとって当りまえで常識になっているような『自明な』ことが分からなくなる」症状です。
× アンテ・フェストゥム →「祭りの直前」を意味し,木村敏氏が統合失調症の患者さんの時間感覚を表現した言葉。
× 本質属性の突出 →患者さんの知覚異常の根底にあり,マトゥセックが「妄想知覚の基礎になっている」と述べた現象。
× お金の喪失 →患者さんを苦しめる害悪の1つですが,ブランケンブルクとは関係ありません。

問17:統合失調症の生物学的背景について・・・・・ (生物学的知識・難)
× 陽性症状の発現にドーパミンが大きく関わっていることは否定できない事実です。
患者さんには冬生まれが多いことなどから周産期のウイルス感染が発症リスクを高めているという説が最近有力です。
× クロウの分類で神経細胞の脱落や脳の構造的変化が見られるとされているのは陰性症状主体のII型統合失調症です。
× PCP精神病との関連で注目されているのはNMDA受容体で,陽性・陰性症状どちらにも大きく関与している可能性があります。

問18:統合失調症の治療について正しいのは?(その1) (治療の知識・易)
× 過去には広くECTが行われていましたが,現在は薬物が無効だったり特異体質で薬を使えないようなケースに限られています。
× 周囲の人が十分な愛情を注げば他に治療は必要ない →残念ながら愛情だけではどうにもならないことが多いのです。
ほとんどのケースで薬物療法は有効であり,副作用というマイナス面を差し引いても,最も重要な治療法と言えます。
× 症状が治まれば速やかに薬物療法を止めるべきである →症状が治まっても再発予防のため薬物療法を続けることが大事です。

問19:統合失調症の治療について正しいのは?(その2) (治療の知識・易)
たとえヤブっぽくても医者には「経験」があります。客観性を欠く勝手な自己診断よりはある程度アテになります。
× 社会復帰を急ぐことは,ほとんど全てのケースにおいて有害です。症状を遷延させたり再発の危険性を大きく増大させます。
× 食事療法の有効性を頭から否定するわけではありませんが,少なくとも薬物療法と並行して行なわれるべきでしょう。
× 同様に,除霊の有効性を頭から否定するわけではありませんが,少なくとも薬物療法と並行して行なわれるべきでしょう。

問20:統合失調症の薬物治療について正しいのは?(その1) (治療の知識・易)
× 副作用が疑われる時は主治医に黙ってクスリの服用を止めるべきである →よほど緊急の場合以外は主治医に相談してから。
× たくさんのクスリを出す医者は間違いなくヤブである →その傾向はありますが,必ずしもそうとは言えません。
× 抗精神病薬には少なくとも身体依存性はありません。長期に服用しても安全です。
副作用が疑われる時は,まず病院・医師に相談してから指示に従って止めるなり,量を減らすなりしましょう。

問21:統合失調症の薬物治療について正しいのは?(その2) (治療の知識・易)
× 抗精神病薬は長期に服用していても全く安全です。
症状の再発を防ぐため長期に服用する必要がある →どうか糖尿や高血圧みたいに「持病」の薬と思ってガマンして下さい。
× カゼをひいた時は精神科薬を中止してかぜ薬をのむべきである →たいていは併用して大丈夫ですが,主治医に確認しましょう。
× ヤブ医者のたわ言より,ネット上の情報や論文・書物で読んだことが一番正しい →嘘を嘘と見抜ける人でないと...(以下略)

問22:急性期の治療について・・・・・ (治療の知識・易)
× 興奮の極致にあっても患者さんは結構周囲のことを分っているものです。たとえ簡単にでも治療に関する説明はあるべきでしょう。
× 本人が納得して治療を受けるのとそうでないのとでは結果に大きな違いが出てきます。まず十分な説得が試みられるべきです。
× 本人が服薬を拒否する場合はまず十分な説明と説得が試みられるべきです。無理やり注射されるのが好きな人なんていません。
どんなに患者さんが拒絶的で興奮していようとも,治療にあたってはなるべく同意を得るべく努力がなされるべきです。

問23:回復期の治療について・・・・・ (治療の知識・易)
× 回復期でも幻覚や妄想が残っている場合はよくありますし別に危険なこともありません。完全主義に走らずボチボチ行きましょう。
焦らずにじっくり腰をすえ,のんびり療養して行く覚悟が大事である →この心の余裕が消耗した精神を自然と癒します。
× 薬物の減量・中止を何よりも優先すべきである →薬は少ないに越したことはありませんが,再発しちゃったら元も子もありません。
× 経済的自立が何より大事なので,なるべく早く社会復帰をうながすべきである →ある程度安定してから少しずつ進めるべきです。

問24:再発について・・・・・ (治療の知識・中)
× いったん症状が完全に良くなっても,再発の危険性がなくなったわけではありません。
× 再発すれば治療は全てやり直しになります。それまでにかけた時間も努力も無になってしまいます。
再発を繰り返すことで失うものは大きいので,再発の兆候には細心の注意が払われるべきです。
× 一般に再発を繰り返すほど症状は治りにくくなることが多いので,再発を防ぐために最大限の努力がなされるべきです。

問25:再発を防ぐために大事なことは・・・・・ (治療の知識・中)
× 回復の途中には,社会復帰を急ぐより部屋でゴロゴロしていることが大事な時期があります。
面倒くさくても医師の指示通りにクスリをのみ続けること →これが何より大事です。
× 薬を長期間のんでいるからといって薬に頼っていることにはなりません。薬物を上手に利用して早く良くなることが大事です。
× 親孝行をし日々感謝の念を忘れないこと →これも大事なことですが,これだけでは再発は防げません。

問26:家族・友人としての対応について・・・・・ (その他の知識・中)
× 妄想は定義からいっても「訂正不能」です。過剰に迎合するのもダメですが,妄想を訂正しようと議論をするのは良くありません。
× 友人や知人はむしろ遠くからそっと見守ってあげているのがベターです。
いろんな人がいろんなことを言えば患者さんはよけい混乱してしまいます。
× 患者さんの病的な発言は時に聞き流すことも大事ですが,最初から真面目に耳を傾けないなんて論外です。

問27:患者さんの自殺行為について・・・・・ (その他の知識・易)
× うつ病を併発していない限り自殺行為の心配はしなくて良い →必ずしも抑うつと関係なく自殺行為が突発することがあります。
× リストカットや狂言自殺が多く致死的な自殺行為はほとんどない →致死的な自殺行為もしばしば見られます。
× この病気では他者に危害を加えることはあっても自殺・自傷をする患者は極めて少ない →まるっきり逆です。
症状の苦しみや社会からの差別・偏見など患者を自殺に追いやる要因は多い →あなたもこの病気になれば分るはずです。

問28:病名告知について・・・・・ (その他の知識・中)
× 精神病の場合は安易な病名告知が患者さんにとってトラウマになってしまうこともあります。慎重な態度が必要です。
× どんな疾患であっても精神病者には病名告知すべきではない →というのは言いすぎ。告知できるケースでは告知すべきでしょう。
「自律神経失調症」などと当り障りのない病名を告知する →ストレートに告知できないようなケースでは間違いとは言えません。
患者自身も精神病に対し偏見を抱いていることが多く,病名告知には慎重な姿勢を要する →強いて言えばこれが正解です。

問29:「社会的入院」について・・・・・ (その他の知識・難)
日本では精神科の平均在院日数は今でも1年を越えている →平均370〜390日前後です。
× 精神病者は社会にとって危険なので精神病院に長期隔離しておくべきである →そんなこと言ってる人の方が危険です。
× 日本の精神科入院患者さんは約32〜3万人で,そのうち約60〜70%が統合失調症患者さんです。
× 精神医療の進んでいる北米では社会的入院はほとんど見られない →今でも結構存在します。

問30:入院に関する法律について・・・・・ (その他の知識・中)
× 明らかに精神病と診断された時でも患者さんの人権は保護されますし,それだけで強制的入院の対象とはなりません。
どういう入院形態であっても,病棟から都道府県知事や人権擁護機関に人権に関する不服を申し立てることができます。
× 明らかに精神病と診断された時には家族の同意なしでも強制的に入院させられる →措置入院の時だけです。
× 警察官は犯罪予防のため精神病が疑われる者を逮捕し精神病院へ入院させることができる →現在そのような法律が作られようとしています。


用語解説 (簡単にね)
Capgras(カプグラ)症候群 替え玉妄想の1種で,自分の周囲の人たちがみな偽者と入れ替わっているように感じる妄想
途絶(思考途絶) 思考が突然止ってしまう症状
カタレプシー 被動的にとらされた姿位をじーっと続けてしまう症状で,緊張型に特異的とされる
水中毒 低Na血症を起こすほど水を大量に摂取してしまう症状
世界没落体験 世界の終末のようなえも言えぬ恐怖・不安感を感じる症状
臨界期 中井久夫氏の提唱した概念で,回復の途中で一時的に心身ともに不安定になる時期をいう。急性期からの回復のために極めて重要な時期とされる。
アポフェニー期 前駆期から一気に陽性症状が顕在化する時期を表現したコンラートの言葉
象徴的実現 セシュエー女史が発表した統合失調症の精神療法技法の1つ
気付き亢進 中安信夫氏の概念で初期統合失調症の重要な特徴の1つ
精神自動症 クレランボーの概念で「自生体験」にあたる症状
父の名の排除 ラカンの概念で統合失調症の病理の根底にある構造のこと
β要素 ビオンの概念で断片化した思考・認知を表し,統合失調症の病理で重要な働きをするもの
P50 事象関連電位(脳波)の1種で刺激のゲーティング機能を反映していると言われ,統合失調症患者では異常が見られるという報告が相次いでいる
EE 感情表現 "Emotional Expression"の略語で,家族メンバーのEEが高い家庭では患者さんの再発率が高いという報告がある
COMT カテコールアミン-O-メチルトランスフェラーゼの略語。この酵素の遺伝子多型性が前頭葉ドーパミン活性や前頭機能低下と関連していることがトピックとなっている。
SPEM 滑動性追跡眼球運動の略語。統合失調症患者さんで異常が見られ,最近は遺伝子との関連も注目されている。
WCST ウィスコンシン・カード・ソーティング・テストの略語。前頭葉機能を最も鋭敏に反映すると言われ,統合失調症の研究で頻用される。
マクノートン法 1843年世界にさきがけ心神喪失者の免罪を法制化した英国の法律。マクノートンは首相を殺害しようとした患者の名前。
ライシャワー事件 1964年米国の駐日大使ライシャワー氏をある患者が襲った事件。これをきっかけに社会防衛的な空気が強くなり精神衛生法が大きく改正(改悪?)された。
バザーリア法 1978年にイタリアで成立した精神病院解体と地域医療充実の法律。この法律のため実際にイタリアでは古い形の精神病院はなくなった。バザーリアは提唱者である精神科医の名前。


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