辻仁成のオールナイトニッポン
   高校2年か3年の頃だった。夜中に熱い語りをしているDJがいることに気付いた。
 月曜夜のオールナイトニッポン(ANN)は、1部(AM1時〜3時)が中島みゆきからデーモン小暮に変わった頃だった。2部(3時〜5時)なんてほとんど聴いたことがなかった。
 この辻仁成がECHOESのボーカリストとわかったのは少し後だった。

 夜更かしして3時。布団にくるまりラジオを抱えANNの2部が始まる。
 エアロスミスの「Walk this way」にのって、クサいセリフのオープニングが始まった。

 Hello Hello This is Power Rock station
 こんばんはDJの辻仁成です。
 真夜中のサンダーロード
 今夜も抑えきれないエネルギーを探し続けている
 ストリートの上のロックンライダー
 夜更けの固い小さなベッドの上で
 愛を待ち続けている sweet little sixteen
 愛されたいと願っているパパも 融通の利かないママも
 そして今にも諦めてしまいそうな君にも
 今夜はとびっきりご機嫌なrock'n roll musicを届けよう
 アンテナをのばし、周波数をあわせ
 システムの中に組み込まれてしまう前に
 僕が送るHot Number をキャッチしておくれ

 愛を 愛を 愛を 今夜も オールナイトニッポン!!


 TWO WAYをモットーに、カード(手紙)を読み上げて仁成は熱く語る。
 スタンダードなロックンロールが紹介される。John Cougar Mellencamp, The Doobie Brothers, Jackson Brown, Janis Joplin ......
 送られてくるカードには熱いメッセージが多かった。片想いを語る奴、ロックンローラー目指している奴、死にたいといっていた女の子と、それに対してのたくさんのカード。生き甲斐を見つけたかな? 夢なんてクサくて言えなかったけど、仁成の声を聴いていると素直に言えた。ココロにズンズン飛び込んできた。
 深夜に布団に潜り込んで聴く、同世代の奴らの熱い話。仁成はもともと話が長いけど、熱く語り出すとまるで終わらない。スムーズな喋りではない。わき出てくる言葉が口の中で喧嘩していた。
 よき相談者だけでなく、時には「ラジオを頼るな」と突き返す。説得するのではなく、一緒になって考えていた。
 コマーシャリズムに飲み込まれていく音楽界に対しての想い。

 1989年10月2日、放送最後の日、予備校生であることも忘れ、いてもたってもいられずに、有楽町のニッポン放送へ駆けつけいた。400-500人集まった仲間たちと同じ時を共有した。

 僕の青春はこうして辻仁成に強く影響された。

 

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