4代目タイガーマスク

評伝

(注:1996年9月11日執筆。現状と一部そぐわない部分もあります)



4代目オリジナルのマスク

ファンが育てる新時代の虎

4代目タイガーマスクはデビューしてまだ1年そこそこであり、評伝などという段階には至っていない。また、みちのくプロレスは4代目タイガーをじっくりと育てる方針であり、東北以外のファンの厳しい視線にさらしたこともあまりない。
彼の特異性は、最初からタイガーマスクとしてデビューしたという点に尽きる。これまでのタイガーはすべて前座を経て海外遠征に出た経験を持ち、マスクを被った時点である程度のキャリアのあるレスラーであった。従って、完成度の高いファイトが出来て当然だったし、タイガーのマスクを被る以上、普通のレスラー以上に高難度の技を要求された。そこで落ちこぼれたのが3代目タイガーであり、タイガーらしいファイトを出来るだけの技量が未だ備わっていなかったがために、彼はマスクを脱ぐしかなかった。
しかし、4代目タイガーはまったく違う。いくらスーパー・タイガージムでキックやレスリングを学び、また天性の運動神経に恵まれているとはいえ、ことプロレスに限っていえば彼はズブのシロウトである。虎殺法はおろか、プロレスらしい試合すらまともに出来るはずがない。しょっぱくて当たり前なのである。そんなグリーンボーイがこともあろうにタイガーのマスクを被るということは、これはもう自殺行為以外の何物でもない。せめて違うマスクを被るなりして1〜2年、試合経験を積ませるという手もあったろうに、下手を打てばせっかくの将来ある好素材を徒に潰してしまいかねない、そんな危険な賭けだったのである。
こうした事情は、しかし、まったく違った効果を生み出すことになった。それは、ファンもまた4代目タイガーをグリーンボーイとして見ていたということである。かつてのような、信じられない空中殺法を次々と繰り出す超一流レスラーとしてのタイガーマスクではなく、これから一歩一歩成長していくであろう新人マスクマンを暖かく見守ろうとしていた。平成の、観客が優しくなった時代に生まれ落ちたことがタイガーにとっても救いだったと言えよう。技を失敗しても嘲笑されることはなく、むしろ声援を送ってもらえるのだから。
かくして4代目タイガーは、ファンとともに育ち、成長していくキャラクターとして自らを確立しつつある。かつてのようなエリートとしての超レスラー、タイガーマスクはもういない。平成の虎戦士は雑草に過ぎない。しかし彼は、一歩一歩地道に、新たなる虎伝説を築きはじめている。

デビュー後ほとんどの試合をこのマスクで通している

初代の復帰をどう乗り越えるか

4代目タイガーは着実に成長しつつある。最大の課題とも思えた体づくりも徐々に奏効し、レスラーらしい体つきになりつつある(こういうところからスタートするタイガーマスクというのが、いかに特異かお分かりだろう)。ザ・グレート・サスケは早期引退を考えているようであり、みちプロの将来のエースとしての座もほぼ間違いなさそうだ。デビュー2年目にして伝統あるUWA世界ミドル級王座も獲得した。ケガの多さは気になるが、タイガーはまずまず順調に歩んでいる。
そんなタイガーにとって、意外な落とし穴になりそうなのが師匠の初代タイガーのカムバックだ。当初はエキジビション的復帰に終始すると思われたが、どうやら本格的にファイトしていく意向らしい。みちプロのリングにも、4代目と共に上がっている。リングネームはとりあえず「初代タイガーマスク」としているものの、4代目さえいなければ本家本元のタイガーマスクを名乗りたいのが正直なところだろう。
4代目にとっては、実にやりにくい状況のはずである。マスコミもなりゆき上、リングネームに「4代目」を冠せざるを得ず、イメージ的にどうしても損をする。何しろ相手は偉大な存在であり、しかも師匠。正面きって張り合うのもかなり無理がある。せっかく独り立ちして新しいタイガーのスタイルを確立しようという時期に、何とも厄介なことになってしまった。
4代目タイガーは、初代タイガーとはまったく違ったところで、自分なりの道を歩み始めていた。しかし思わぬ初代の復帰で、歴代のタイガーすべてが苦しんできた初代超えに、またぞろ直面することを強いられたのである。3代目の轍を踏むことにならないことを祈るしかない。
初代タイガーが今後、長期的にファイトしていくのであれば、あるいは4代目は、残念ながらマスクを脱ぐなり、リングネームを改めるなりせねばならなくなるのではないだろうか。そんな危惧を拭えない。



年譜

国内シングル全戦績

覆面の変遷



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