その他のタイガーマスク

メキシコ


オホ・デ・ティグレ

銀地に黒のマスクもありました 偽者タイガーマスクの草分けといってもいい存在で、83年ごろ出現したルード。リングネームはスペイン語で「虎の眼」を意味し、英語に直せば「アイ・オブ・ザ・タイガー」。つまりサバイバーが歌った映画「ロッキーIII」の主題歌(後にスーパー・タイガータイガーキングの入場テーマ曲としても使われた)に引っかけたものである。
マスクは銀または黒を基調にしたもので、口の周囲には牙が描かれ、初代ブラック・タイガーを想起させるデザイン。その名の通り、額には眼が描かれている。
ティグレは当時メキシコに存在した第3団体「スペル・リブレス」に所属していたが、この団体は84年半ば、ザ・タイガーが復帰したころの第1次UWFとパイプがあり、本人も来日してタイガーと戦いたいとインタビューで語っていた。しかしシューティング路線の開始で実現せず、ティグレもいつの間にか消えてしまった。

フェリーノ

このヒトはいろんなカラーリングのマスクを所有 一連の偽者タイガーとしてはもっとも成功した例といえよう。父はペペ、兄にネグロ、弟にカネロ(ヘビー・メタル)を持つ名門カサス一家の次男で、82年にベビー・カサスとしてデビューした。89年にEMLLでフェリーノに変身。CMLL世界とナショナルの両ウェルター級王座を制覇した。ユニバーサルやIWAジャパン、WARに来日経験があり、97年にはEMLLの日本ツアー「ルチャ・フィエスタ」にも参加、そのままCMLLジャパンの常連となるなど、日本でもすっかりお馴染みとなった強豪だ。96年7月29日、アレナ・メヒコでのインターナショナル・グランプリ・トーナメント1回戦では4代目タイガーとの猫系マスクマン対決が実現、一蹴している。
マスクは伝統的なタイガーマスク・スタイルに極めて近いデザインで、よくできている。浅井嘉浩が91年、EMLLに移籍してタイガーマスクを名乗ろうとした際、「既にフェリーノがいるから…」と却下され、結局ウルティモ・ドラゴンに変身したというエピソードもある。

ティグレマン

なかなか良く出来たマスク。ここまでやってこそのニセモノだ! 93年ごろ、AAAに出現。初代タイガーそのものの外見であり、ここまで徹底した偽者も例がない。日本の専門誌には1度紹介されたきりで詳細は不明だが、ファイトスタイルもタイガーを真似ていたというからたいしたものだ。現在は消息が聞かれない。
マスクは初代タイガーでいう「IIIマーク」だが、肝心の額のマークがない。タイツは黒ベースに金模様で、ベルトのバックル部にリングネームを略した「TM」の文字がある。本人は初代タイガーと同じ「ティグレ・エンマスカラド」を名乗りたかったかも知れないがメキシコのコミッションは意外と厳しいといい、果たせなかったのかも知れない。4代目タイガーも遠征時、「ティグレ〜」を名乗ることは許されず、「タイガーマスク」そのままで行ったという。

ウルトラ・タイガー

どうもタイガーって感じがしないんだなあ 92年2月からWWAで修行に入ったFMWの上野幸秀(現・フリー)が正体。すなわち、後にWARにも上がった超電戦士バトレンジャー(超電戦士バトレンジャーZ)であり、大阪プロのポリスメ〜ンでもある。上野は当初、「カミカゼ・ニンジャ」を名乗ったが、同年4月にスペル・ムニェコとのマスカラ・コントラ・マスカラに敗れ、5月15日のティファナ大会でこのスタイルに再変身、タッグでサンボ浅子(引退)と対戦した。一応、耳も白毛も表現されてはいるが、いかにも安っぽいマスクである。コスチュームはシューティング・スタイルで、蹴りを多用したファイトだったという。現地ではアミーゴ・ウルトラ(帰ってきたウルトラマン、ダミアン)、ウルトラ・タロウと「ウルトラ・ファミリー」なるトリオを組んでいたとか。

ティグレ・オリエンタル

いまごろどこで何をしているんでしょ これも日本人だが、現地デビュー組だ。初マットは93年8月、米ロス。本名は宮下和也といい、広島電機大学付属高のレスリング部で獣神サンダー・ライガーの1年先輩に当たる人物という。当時のマスクはエル・アセルティホや上記のウルトラ・タイガーに似たチープな印象のデザインで、額に日の丸をあしらい、ボアを付けたものだった。
97年10月に一時帰国し、IWAジャパンのリングに逆上陸した。このときマスクも一新したが、2代目タイガーのものを作成した人物(山崎一彦氏か?)に依頼したとかで、本格的なタイガーマスク・スタイルのものになった=写真れねさん提供。得意技はオリジナルのホイップ系の投げ技だそうだ(情報提供:スポーツ冒険家maxxさん)が、あまり実績を挙げられぬまま帰国、以後はお呼びがかかっていないのが残念である。なお、最近の動向は不明であり、引退したものと推測される。このレスラーについては、詳しくはれねさんの「原色怪奇派図鑑」をご参照ください。

エル・ティグレ・デ・トーキョー

会場ではサヤマ・コールが起きたとか リングネームは「東京の虎」の意。92年、当時ユニバーサル・プロレス(後のFULL)所属だった巌鉄魁(本名佐藤茂樹、現・ディック東郷=フリー)がマスクマンのSATOとしてメキシコに遠征していた際、グァテマラでプロモーターの要請により一時的に名乗ったという。パンフレットには初代タイガーと佐山の写真が載っており、リンピオとして大人気だったといい、やむを得ず初代タイガーの動きを再現して喝采を受けたとのことだ。マスクはかなり本格的なタイガーマスク・スタイルで、額に目の模様をあしらうなど、上記のオホ・デ・ティグレのものに似ている。

キング・リー

顔のデカく見えるマスク 新日本プロレスの金本浩二は92年、エキジビションなどで4試合、3代目タイガーマスクを経験。その後は素顔で闘っていたが翌年1月、メキシコUWAへ初の武者修行に出発し、このマスクマンに変身したものである。ジムでのトレーニングを経て同月30日、パチューカ大会でザ・キングと組み、エンヘンドロ、ウリセス組との対戦でデビュー。以後、G・浜田やSATO(現D・東郷)らと組み連日、トップでファイトした。試合スタイルはローリング・ソバット、サマーソルト・キック、スピニング・レッグロックなど正に初代タイガーそのものであり、客席からは「サヤマ!」との声援も飛んだという。マスクは本人が日本で「タイガーとU・ドラゴンをミックスし、より複雑に」と注文・製作し、持参したもので、スマートさはいま一つだがかなり凝ったデザインだった。
金本が帰国後にタイガーとして正式デビューをすることは既に織り込み済みであり、K・リーとしてのファイトもマスクに慣れるなど、タイガー再変身への予行演習としての意味合いが強かった。当時の「東京スポーツ」紙なども1面トップでリーを大きく取り上げ、「3代目タイガー出現へ!」と書いていたものである。果たせるかな金本の遠征はわずか3ヶ月で打ち切られ、5月の福岡ドーム大会でタイガーとして凱旋を果たすことになった。今にして思えば急ぐことなく、最低1年はリーとしてメキシコでの試合経験を積み、じっくり熟成させてからタイガーになって欲しかったという気がする。

ブラック・タイガー(メキシコ版初代)/ザ・タイガー(メキシコ版)

果たしてみちプロへの来日はあるか 99年秋に確認されたリンピオのマスクマンで、中身は恐らく無名の地元選手ではないかという。アレナ・プエブラでは前座試合に登場し、ベテランのネグロ・ナバーロと対戦。グラウンドではキャリアの浅さを露呈し翻弄されたものの、スタンドではなかなかの動きを見せたとのことだ。メインエベントのアトランティス対ビジャノIII戦ではセコンドにもついていたとかで、今後が期待される(写真及び情報提供:スポーツ冒険家maxxさん)。虎縞地のマスク=写真左=は耳も白毛もないが、初代タイガーの「伝説」タイプを模したものと思われる。
(01年3月12日追記)スポーツ冒険家maxxさんより、その後の写真及び情報提供をいただいたので紹介する。相変わらずプエブラで試合をしているそうだ。マスクはより手の込んだものになったようで、写真右では分かりにくいが真っ黒の耳とボアが追加され、よりブラック・タイガーらしくなっている。試合内容は「あまり進歩してない感じ。動きはまぁまぁなんで、日本にきてもそこそこは仕事できると思う」とのことだ。
(01年10月1日追記)その後、下記の「2代目」が登場したため、こちらはザ・タイガーと改名を余儀なくされてしまったという。01年夏の段階では、試合内容は「なかなかの選手」だったそうだ(情報提供:Shuuさん)。

ブラック・タイガー(メキシコ版2代目/新日本版3代目)

4代目タイガーと抗争させたい! 01年6月15日、EMLLの殿堂アレナ・メヒコに出現した最新のマスクマンだ。日本からやってきたと称し、2週続けてドクトル・ワグナーJrとタッグで対戦した。正体はシルバー・キングだと言われており、兄弟で抗争していたことになる。写真はその折のもので、マスクはタイガーキングのそれをモチーフにした感じだが、非常に凝ったデザイン。コスチュームもなかなか完成度の高いものである。日本へは同年11月、新日本プロレスに登場。好ファイトが評価されてタイトル挑戦も実現するなど、ジュニア戦線の常連となっている。02年5月2日の東京ドーム大会では、4代目タイガーとの対戦も実現した。
なおS・キングはかつてエル・テハノとのロス・カウボーイズで鳴らし、来日経験も多い強豪。CMLL世界ヘビー級、同世界タッグ、UWA世界ライトヘビー級、WWA世界タッグといったタイトルを手にしている。偽タイガーの中では上記のフェリーノやかつての新日版両ブラック・タイガーと並ぶ実力者でもあり、今後の活躍が楽しみである(情報提供:Shuuさん)。

その他

どちらも試合内容はパッとしない選手だそうで 詳しく言及はしないが、初代タイガーが「ティグレ・エンマスカラド」として人気を集めたこともあり、覆面王国メキシコにはタイガーの影響を受けたと思われる猫系・虎系マスクマンが多数出現している。古いところではエル・アセルティホという選手がいたし、日本でもおなじみのパンテーラブルー・パンテルティグレ・ブランコなどもタイガーに似たデザインのマスクを被っている。こうした傾向は現在もなお続いており、無名の者も含めれば枚挙に暇がない。たとえば上述の4代目タイガーらの96年のメキシコ遠征の際にはティグレ・ロホ(写真左)、アンヘル・プラタ(同右)という2選手が確認されている。
(01年3月12日追記)またこれは偽タイガーではないが、ビバビバルチャリブレ(スポーツ冒険家maxxさん)によれば、佐山聡のミゼット版、ペケーニョ・サヤマなる選手も登場しているというから驚く。佐山に似た髪形で、龍の刺繍の入ったハッピで入場するとか。正体はマスカリータ・マヒカとのことだ。



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